シーシャバー開業時の定款に「たばこ販売」は不要?書かない方が損する理由

この記事は、行政書士久遠事務所の代表が執筆しています。当事務所代表は、シーシャバーでの現場経験を持つ行政書士です。風俗営業許可・たばこ販売許可・古物商許可・飲食店営業許可を中心に、シーシャ・水たばこ業態の開業支援を専門としています。


「シーシャバーを法人で開業したい」という場合、会社設立の最初のステップが定款(ていかん)の作成です。定款は会社の根本ルールを定める書面ですが、シーシャバー開業ではただの形式的な書類ではありません。定款の書き方ひとつで、たばこ販売の許可が取れないという事態すら起こり得ます。


結論からいえば、シーシャバーを開業するだけなら定款にたばこ販売は必ずしも必要ではありません。
ただし書くことによってのメリットもあります


本記事では、シーシャバー開業を見据えた法人設立において、定款に何を書くべきか、どの許認可とどう関係するのかを、行政の公式情報に基づいて解説します。


なぜシーシャバーの定款は特別なのか


シーシャバーの営業には、一般の飲食店にはない許認可が複数必要です。そして、法人で申請する場合、その多くの手続きで定款の提出が求められます


飲食店営業許可(保健所)
たばこ小売販売業許可(財務局/申請窓口はJT)
深夜0時以降に酒類を提供する場合:深夜酒類提供飲食店営業の届出(警察署)


特に重要なのが、たばこ小売販売業許可と定款の関係です。


「定款にたばこ販売がないと不許可」は本当か?


シーシャ(水たばこ)のフレーバーは、たばこ事業法上の「製造たばこ」に該当するため、店舗で提供・販売するには財務大臣の小売販売業許可が必要です。そして、たばこ事業法には「申請者が法人であって、製造たばこの販売が定款で定められた目的の範囲に含まれない場合」は許可しないことができるという不許可事由があります。(参照:財務省|製造たばこの小売販売業の許可


ここから「定款の目的に『たばこの販売』と書かないと許可が取れない」と解説されることがありますが、実は正確ではありません。財務省の「製造たばこ小売販売業許可等取扱要領」では、株式会社や合同会社などの営利法人については、定款に「物品販売」や「たばこの販売」の規定がなくても、「その他前各号に附帯する業務」等の規定があれば、目的の範囲内として扱うと明記されています。つまり、ほとんどの定款雛形に入っている「附帯事業」条項さえあれば、法律上は許可が下り得るのです。(参照:財務省|製造たばこ小売販売業許可等取扱要領(PDF)


ただし、これは「明記しなくていい」という意味ではありません。附帯事業条項すらない定款なら不許可事由に該当し得ますし、後述のとおり、あえて明記しておく実務上のメリットが大きいためです。


深夜営業の届出でも定款は提出書類


バースタイルのシーシャ屋で深夜0時以降にお酒を出すなら、深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要です。法人で届出をする場合、愛知県では定款と登記事項証明書、役員全員の住民票の添付が求められます。定款は警察のチェックを受ける書類でもあるわけです。(参照:愛知県警察|深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続


シーシャバー法人の定款「目的」記載例


定款には必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)として、目的・商号・本店所在地・出資財産の価額・発起人の氏名住所があります(会社法27条)。このうちシーシャバー開業で実務上最も重要なのが「目的」です。以下は記載例です。


【目的の記載例】
1. 飲食店の経営
2. 製造たばこの小売販売
3. 喫煙用具、雑貨の販売および輸入
4. 前各号に附帯又は関連する一切の事業


ポイントは次の3点です。


「製造たばこの小売販売」を明記しておく:前述のとおり附帯事業条項でも目的の範囲内とはされますが、たばこ事業法の用語で明記しておけば、JT窓口や財務局とのやり取りで疑義が生じる余地がなくなり、金融機関や取引先が登記簿を見たときにも事業実態が一目で伝わります。
将来の事業も見据えて記載する:シーシャ機材やフレーバー関連グッズの物販、2号店展開などを考えているなら、設立時に入れておくのが得策です。
「附帯関連する一切の事業」で締める:目的の解釈に幅を持たせる定番の条項です。


【実務上のポイント】
ぶっちゃけて言えば、定款の目的に「飲食店の経営」も「たばこの販売」も入っていなくても、シーシャバーは開業できてしまうケースがほとんどです。
保健所の飲食店営業許可は定款の目的を審査しませんし、たばこ許可も附帯事業条項で足りるのが公式運用だからです。
しかし、それでも設立時に目的を固めておくべき理由があります。創業融資の審査や法人口座の開設では登記簿の目的欄と事業内容の整合性を見られますし、後から目的を追加すれば、株主総会の特別決議に加えて目的変更登記の登録免許税3万円がかかります(参照:法務局|株式会社変更登記申請書(目的の変更)記載例)。「開業できるか」と「事業として信用されるか」は別問題、というのが現場の実感です。


それでも定款に「製造たばこの小売販売」を書くべき3つのメリット

法律上は附帯事業条項で足りるとしても、シーシャバー開業の実務では、定款に「製造たばこの小売販売」を明記しておくメリットは大きいです。理由は次の3つです。
財務局・JT窓口での疑義が生じない
たばこ小売販売業許可の申請窓口はJTの各支社ですが、審査を行うのは財務局です。附帯事業条項でも目的の範囲内とはされるものの、担当者によっては目的欄を見て確認を求めてくることがあります。最初から「製造たばこの小売販売」と法律の用語そのままで記載しておけば、その一手間が省け、審査もスムーズです。
創業融資・法人口座開設の審査で有利になる
日本政策金融公庫の創業融資や銀行の法人口座開設では、登記事項証明書(登記簿謄本)の提出を求められ、事業目的欄が信用審査の判断材料になります。事業目的欄と実際の事業内容が一致していないと、金融機関から事業実態が不明瞭と見られ、融資審査や口座開設で不利になるケースがあります。シーシャバーは「飲食+たばこ販売+深夜営業」という複合業態だからこそ、定款で事業内容を正確に示しておくことが信用面で効いてきます。
物件オーナー・卸業者への説明コストが下がる
シーシャバー用の物件を借りるとき、オーナーからは「何のお店か」を必ず聞かれます。フレーバー卸業者との契約時にも登記簿の提示を求められることがあります。定款の目的欄に「製造たばこの小売販売」「喫煙用具の販売」と明記されていれば、その一枚で事業内容の説明が完結します。逆に「飲食店の経営」しか書かれていないと、シーシャ業態への理解がない相手には毎回口頭で説明が必要になります。


【実務上のポイント】
シーシャ業界はまだ社会的な認知が低く、「シーシャ=違法薬物では?」という誤解も残っています。登記簿の目的欄に「製造たばこの小売販売」と正式な法令用語で書かれているだけで、金融機関や物件オーナーに与える印象は大きく変わります。定款作成は法律上の要件を満たすだけでなく、業態理解のない相手に対する「翻訳装置」でもあるのです。


株式会社と合同会社、定款の扱いはどう違う?


シーシャバーの法人形態は株式会社か合同会社が一般的です。定款の観点から両者を比較します。


株式会社 合同会社
定款の作成 必要 必要
公証人の認証 必要 不要
認証手数料 1万5,000円〜5万円 0円
設立登記の登録免許税 最低15万円 最低6万円


株式会社の定款認証手数料は引き下げ済み(令和6年12月〜)


株式会社の定款は公証人の認証を受けなければ効力が生じません(会社法30条1項)。この認証手数料は、令和6年12月1日施行の公証人手数料令改正により、資本金100万円未満で、①発起人全員が自然人かつ3人以下、②発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける、③取締役会を置かない、という条件をすべて満たす場合は1万5,000円に引き下げられました。小規模スタートのシーシャバーなら、この条件に当てはまるケースは多いはずです。(参照:日本公証人連合会|会社の定款手数料の改定


電子定款なら収入印紙4万円が不要


紙の定款には4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款であれば印紙税がかかりません。これは株式会社・合同会社共通のメリットです。行政書士は電子定款の作成・認証手続きの代理に対応できるため、専門家に依頼した方が自分で紙定款を作るよりトータルで安くなることも珍しくありません。


定款作成で失敗しないためのチェックポイント


目的に「製造たばこの小売販売」が入っているか
飲食店経営が入っているか(保健所許可・深夜届出の前提)
物販・輸入など将来の展開を見据えた目的になっているか
資本金の設定は認証手数料の減額条件(100万円未満)や融資戦略と整合しているか
本店所在地は営業予定地の用途地域・保全対象施設の調査と矛盾しないか


なお、定款作成・認証は行政書士の業務範囲ですが、その後の設立登記の申請は司法書士の業務です。当事務所では提携司法書士と連携し、定款作成から許認可取得までワンストップでの対応が可能です。



シーシャの開業・たばこ販売許可についてご相談ください

行政書士久遠事務所では、シーシャバーの現場経験を持つ行政書士が、フレーバー販売・たばこ販売許可・飲食店営業許可・風俗営業許可まで一貫してサポートします。「自分の店はどの許可が必要か」「どの許可をとればいいかわからない」など、お気軽にご相談ください。

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