この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
「シーシャバーに個室を作りたいけれど、広さの決まりはあるのか」——開業を考えているオーナーからよくいただく質問です。個室に関わる面積の基準は2つあり、しかも向きが逆です。
ポイントは、片方は「9.5㎡以上でなければならない」、もう片方は「5㎡以下だと別の許可が必要になる」というルールだということです。混同すると設計を間違えます。
この記事では、2つの基準がそれぞれいつ問題になるのかを整理し、実務で最も多い「意図しない個室化」の落とし穴まで解説します。内装の設計に入る前に読んでおいてください。
| 基準 | 内容 | いつ問題になるか |
|---|---|---|
| 9.5㎡以上 | 客室の床面積が9.5㎡以上であること(客室が1室しかない場合を除く) | 午前0時以降に酒類を提供する場合 |
| 5㎡以下 | 他から見通すことが困難で、かつ広さが5㎡以下の客席を設けると、風営法の3号営業に該当する | 営業時間を問わず |
つまり、深夜に酒類を提供する店は「9.5㎡以上」を満たす必要があり、それとは別に「5㎡以下で見通しの困難な客席」を作ると許可制の営業になるという構造です。
午前0時以降に酒類を提供する場合、深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要です。その構造設備の条件として、客室の床面積が9.5㎡以上であることが求められます。
ワンフロアで仕切りのない店なら、店が狭くても面積基準に引っかかりません。問題になるのは、客室を2つ以上に分けたときです。分けた瞬間に、それぞれの客室が9.5㎡以上でなければならなくなります。
【実務上のポイント】
9.5㎡はおおよそ6畳弱です。テーブル1つとソファを置いて、人が通れる程度と考えてください。「2人がゆったり座れる程度の小さな個室」はこの基準を満たしません。
シーシャバーで人気のある「4人掛けの半個室を複数」というレイアウトは、深夜営業をする場合に成立しないことが多くあります。物件の広さから逆算して、何室作れるかを先に確認してください。
深夜酒類提供飲食店営業の構造設備の条件には、面積のほかに「客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと」「照度を20ルクス以下としないこと」があります。
いずれも、店内の状況が外から、あるいは店内の他の場所から把握できる状態を保つための条件です。面積の基準も、この考え方の延長線上にあります。
根拠:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、同法施行規則/愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」(2026年9月時点)
| 営業スタイル | 9.5㎡の制限 | 向いている業態 |
|---|---|---|
| 午前0時以降に酒類を提供する | かかる | シーシャバー |
| 午前0時前に閉店する | かからない | シーシャカフェ、昼営業中心の店 |
| 深夜も営業するが酒類を出さない | かからない | ノンアルコール専門店 |
午前0時までに閉店すれば、狭い物件でもコンパクトな個室を複数設けられます。賃料の安い小型物件で個室スタイルを実現したい場合、閉店時刻を早めるのは有効な選択肢です。
営業時間を早めることの許認可上のメリットは午前0時で閉める3つのメリットの記事にまとめています。
風営法第2条第1項第3号は、風俗営業のひとつとして次のような営業を定めています。
喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席を設けて営むもの
これに該当すると、営業時間にかかわらず風俗営業の許可が必要になります。愛知県の申請手数料は24,000円で、営業所の場所についても学校・病院等からの距離規制がかかります。
面積だけで決まるわけではありません。「5.1㎡以上にしておけば安全」という説明を見かけますが、正確ではありません。
面積を確保しても見通しの状態によって判断は変わりますし、逆に狭くても見通せる構造なら3号営業には当たりません。個別の判断が必要な領域なので、図面を持って管轄の警察署に確認してください。
| 客席の状態 | 3号営業に該当するか |
|---|---|
| 5㎡以下だが、他から見通せる | 該当しない |
| 見通しは困難だが、5㎡を超える | 該当しない |
| 5㎡以下で、かつ他から見通すことが困難 | 該当する |
ここが実務で最も注意すべき点です。自分ではフロアの一部だと思っていても、審査では客室を分けていると判定されることがあります。
深夜酒類提供飲食店営業の構造設備の条件には「客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと」があります。ここでいう見通しを妨げる設備には、仕切り、ついたて、カーテン、高さがおおむね1メートル以上の設備などが含まれるとされています。
こうした設備で区切られた空間は、客室として扱われ、9.5㎡以上の面積基準が適用される可能性があります。基準を満たさなければ、届出が受理されません。
▶背もたれが1メートルを超える高いソファ
▶空間を分けるために置いた棚や観葉植物
▶視線を遮るカーテンやスリット
▶高さ1メートル以上のパーテーション
▶格子状で反対側が見える構造のものも、判断が分かれます
【実務上のポイント】
カーテンについては、生地の厚みや透け感によって判断が変わることがあります。図面だけでは判断できないため、実物での確認が必要です。
どうしても格子状の仕切りやカーテンを設けたい場合は、図面とあわせて、実際の生地の切れ端や仕切りの現物写真を管轄の警察署に持参し、担当者に直接確認してもらってください。内装工事に入る前にこれをやっておくと、後戻りを避けられます。
シーシャバーは、落ち着いた薄暗い空間と、視線が遮られた半個室的な席を組み合わせたくなる業態です。しかしこの2つは、深夜酒類提供飲食店営業の条件と正面からぶつかります。
照度は20ルクス以下にできず、見通しを妨げる設備も置けません。「雰囲気重視の内装」と「深夜営業」は、設計段階で折り合いをつける必要があります。
シーシャバーは煙の量が多いため、席の配置が換気の効率に直結します。面積基準を満たすレイアウトと、換気が機能するレイアウトを同時に成立させる必要があります。詳しくはシーシャバーの換気設備と法律の記事をご覧ください。
料金体系に組み込んだVIPルームを考えている場合は、面積と見通しの両方が問題になります。詳しくはVIPルーム料金にシーシャを含める営業形態の記事をご覧ください。
おおむね1メートルが目安とされていますが、高さだけで機械的に決まるものではありません。設置場所や店内全体の見通しの状況によって判断が変わります。数センチの差で迷うようなら、選定前に警察署へ確認するのが確実です。
深夜に酒類を提供するなら、見通しを妨げない範囲での空間の演出になります。床の段差、天井からの吊り下げ、照明の当て方、床材や壁の色の切り替え。視線を遮らずに「区切られている感じ」を出す方法はあります。設計者と一緒に検討してください。
営業所の構造や設備の概要に変更があった場合、変更届の提出が必要になります(軽微な変更を除く)。背の高い什器を後から入れると、届出時の構造と変わってしまう可能性があります。入れ替えを検討する段階でご相談ください。
▶深夜0時以降に酒類を提供するなら、客室は9.5㎡以上(1室のみの場合を除く)
▶午前0時前に閉店するなら、この面積基準はかからない
▶5㎡以下かつ他から見通すことが困難な客席は、風営法3号営業に該当する
▶3号営業は面積だけでは決まらない。見通しとの両方が条件
▶高さおおむね1メートル以上の什器で、意図せず客室を分けたと判定されることがある
▶カーテンや格子の判断は現物確認が必要
面積も見通しも、内装が仕上がってからでは変えられません。レイアウトを決める前、できれば物件を契約する前にご相談ください。そもそも深夜営業ができない用途地域もあるため、シーシャバーが出店できないエリアの記事とあわせて、物件を決める前に確認してください。
深夜営業の手続き全体は深夜酒類提供飲食店営業届出の記事、開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめをご覧ください。
レイアウトの検討から図面作成、警察署への事前相談までお引き受けしています。
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