この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
シーシャバーを法人でやるか個人事業主でやるか。税務や融資の話はよく出ますが、許認可の手続きで必要な書類が変わることは意外と知られていません。
ポイントは、法人の場合、登記が完了していなければ申請そのものができないことです。開業スケジュールの起点が変わります。
この記事では、飲食店営業許可と深夜酒類の届出それぞれで、法人と個人でどう違うかを整理します。
許可証に記載される申請者名が異なります。
| 個人事業主 | 法人 | |
|---|---|---|
| 許可証の名義 | 個人の氏名 | 法人名+代表者の氏名 |
| 賃貸借契約との関係 | 個人名義で借りて個人名義で申請 | 法人名義で借りて法人名義で申請 |
個人名義で物件を借りているのに法人名義で許可を取ろうとすると、貸主の承諾書などが追加で必要になることがあります。
「先に個人名義で契約して、あとで法人を作る」という進め方は、余計な手間を生みます。法人でいくと決めているなら、物件契約の段階から法人名義にしてください。
| 書類 | 個人 | 法人 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 営業許可申請書 | ○ | ○ | — |
| 施設の構造・設備を示す図面 | ○ | ○ | — |
| 食品衛生責任者の資格を証するもの | ○ | ○ | 養成講習会の修了証など |
| 水質検査成績書 | △ | △ | 貯水槽・井戸水を使用する場合のみ |
| 登記事項証明書 | — | ○ | 申請書に法人番号を記載すれば省略できる場合があります |
| 申請手数料 | ○ | ○ | 名古屋市16,000円/愛知県18,000円 |
法人で増えるのは、実質的に登記事項証明書だけです。飲食店営業許可の書類は、もともとシンプルです。
【実務上のポイント】
提出方法(原本の提示か、写しの提出か)は自治体によって扱いが異なります。取得したら原本を持参できる状態で窓口へ行ってください。
なお、法人が設立されて登記が完了していなければ、そもそも申請できません。飲食店営業許可の手続き全体はシーシャバーの飲食店営業許可の記事をご覧ください。
深夜酒類の届出は書類が多く、法人ではさらに増えます。
| 書類 | 個人 | 法人 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 営業開始届出書 | ○ | ○ | 1通 |
| 営業の方法を記載した書面 | ○ | ○ | 愛知県警察の様式があります |
| 営業所の平面図 | ○ | ○ | 面積の計算根拠が分かるもの |
| 住民票の写し | 本人分 | 全役員分 | 本籍または国籍が記載されたもの |
| 定款 | — | ○ | 写しの場合は原本証明が必要になることがあります |
| 登記事項証明書 | — | ○ | — |
出典:愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」(2026年9月時点)
上記のほか、審査の過程で次のような資料の提出を求められることがあります。公表されている添付書類の一覧には含まれていませんが、準備しておくと手続きが早く進みます。
▶メニュー案(営業の方法の別紙として求められることがあります)
▶営業所周辺の地図
▶物件の賃貸借契約書の写し
▶求積図(営業所・客室)、音響照明設備図
▶飲食店営業許可証の写し
▶所轄独自の誓約書
▶在留カードの写し(外国人の場合)
所轄の警察署によって求められる資料が異なります。提出前に必ず確認してください。届出の全体像は深夜酒類提供飲食店営業届出の記事で解説しています。
個人事業主なら本人の住民票1通で済みます。法人の場合は、代表者だけでなく全役員分が必要です。
役員が遠方に住んでいる場合、書類が揃うまでに時間がかかります。名義上だけの役員がいる法人では、ここで手間取ることがあります。役員構成は開業前に整理しておいてください。
接待を伴う営業をする場合は、風俗営業許可が必要になります。この場合、法人にすることの意味が大きく変わります。
風俗営業許可では、役員に欠格事由に該当する者がいると、法人としても許可を受けられません。また2025年(令和7年)の改正では、許可を受けようとする者と密接な関係を有する法人に関する欠格事由も追加されています。
【実務上のポイント】
「個人だと不安があるから法人にする」という発想は、風俗営業許可では通用しません。役員全員が審査の対象になるためです。
逆に言えば、接待を伴わない通常のシーシャバーであれば、この論点は生じません。許可ごとの欠格事由の違いは犯罪歴がある場合の記事で整理しています。
法人では、飲食店営業許可も深夜酒類の届出も登記事項証明書が必要です。そのため「法人設立(登記完了)→申請」という順番が固定されます。
▶①法人設立・登記完了(登記事項証明書が取得できる状態にする)
▶②法人名義で物件の賃貸借契約を締結
▶③協力事業者と調整し、たばこ販売許可の申請へ(受理月の末日から2月以内)
▶④保健所に飲食店営業許可を申請
▶⑤許可取得後、警察署に深夜酒類の届出(営業開始の10日前まで)
一般的な飲食店であれば、法人設立から開業まで1か月半から2か月程度で見積もれます。しかしシーシャバーの場合、たばこ販売許可の標準処理期間が「受理した日の属する月の末日から2月以内」です。
法人設立を待ってから動き出すと、その分だけ開業が後ろにずれます。法人でいくと決めているなら、設立を最優先で進めてください。
「まず個人で始めて、軌道に乗ったら法人化したい」という方も多くいます。
令和5年12月13日以降、法人成り(個人事業主が法人に成り代わること)は事業譲渡として、飲食店営業許可の地位承継の届出により引き継げるようになりました。個人と法人の間の譲渡契約書等の写しが必要です。
| 手続き | 法人化するとどうなるか |
|---|---|
| 飲食店営業許可 | 地位承継の届出で引き継げます |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 承継の制度がありません。法人として新規に届出をします |
| たばこ出張販売許可 | 協力事業者との契約を結び直すことになります |
飲食店営業許可は引き継げても、他は取り直しです。この手間を考えると、法人でいくと決めているなら最初から法人で始めるほうが結果的に楽になります。
承継制度の詳細は居抜き物件を引き継ぐ手続きの記事をご覧ください。
事業目的の書き方は、後から変更しようとすると変更登記が必要になり、時間と費用がかかります。たばこ販売許可には2か月かかるため、この段階での手戻りはスケジュール全体に響きます。考え方は定款に「たばこ販売」を書くべきかを解説した記事で説明しています。
許可の名義は原則としてひとりです。出資者と名義人の関係を整理しないまま進めると、後から修正がききません。法人にして共同で役員になるという方法もありますが、風俗営業許可では役員全員が審査対象になる点に注意が必要です。詳しくは共同経営と名義設計の記事をご覧ください。
変わりません。飲食店営業許可の手数料も、深夜酒類の届出(手数料なし)も同じです。増えるのは書類の取得費用と手間のほうです。役員の人数が多いほど、住民票の取得コストがかさみます。
▶許可の名義と賃貸借契約の名義は揃える
▶飲食店営業許可で法人に追加されるのは登記事項証明書
▶深夜酒類の届出では、全役員分の住民票・定款・登記事項証明書が追加
▶所轄の警察署によって求められる資料が異なるため、事前確認が必須
▶法人は登記完了が申請の前提。設立を待つ分だけ開業が後ろにずれる
▶シーシャバーはたばこ販売許可に2か月かかるため、影響が大きい
▶法人成りは飲食店営業許可なら承継できるが、他は取り直し
▶接待を伴う営業では、法人の役員全員が欠格事由の審査対象になる
法人か個人かは、税務だけでなく開業スケジュールにも直結します。物件を探す前に決めておいてください。
開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめ、開業資金の内訳はシーシャ開業の費用を解説した記事をご覧ください。
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