著者:行政書士 猪飼久遠 | シーシャ開業専門の行政書士
「テラス席を作りたいんだけど、深夜は使えないって本当?」「テラスって個室扱いになるの?」──シーシャバーの開業相談で、テラス席に関する質問は意外と多く寄せられます。
テラス席は保健所・風営法・健康増進法の3つの法律が交差するテーマです。ネット上には不正確な情報も多いため、この記事では法令の原文と実務の両面から整理します。
シーシャバーにテラス席を設ける場合、以下の3つの法律がそれぞれ別の角度から関係してきます。
| 法律 | 何を規制しているか | テラス席との関係 |
|---|---|---|
| 食品衛生法(保健所) | 飲食店の衛生管理 | テラス席の設置には「屋外客席設置届」が必要 |
| 風営法(警察) | 深夜営業の構造基準 | テラスが「客室」に含まれるかで面積基準が変わる |
| 健康増進法(受動喫煙防止) | 屋内での喫煙規制 | テラスが「屋内」か「屋外」かで喫煙の可否が変わる |
順番に見ていきましょう。
飲食店にテラス席を設置する場合、飲食店営業許可とは別に保健所へ「屋外客席設置届」を提出する必要があります。工事着工前に設計図を持参して事前相談を行い、認められたうえで届出を出す流れです。
主なルールは以下の通りです。
・テラス席数は屋内客席数を超えないこと
急な天候変化の際にテラスのお客さんを屋内に移動させるためです。
・屋内の客席エリアとテラス席が隣接していること
道路を挟んだ場所への設置は原則認められません。
・テラス席に調理設備を設置しないこと
ドリンクバーやセルフサービスのコーナーも不可です。
・テラス席エリアを区画すること
植栽、ロープ、デッキ等でテラス席の範囲を明確にする必要があります。
東京都には「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」(平成18年11月1日)という公式ガイドラインがあり、営業者の遵守事項が細かく定められています(東京都福祉保健局:屋外に客席を設置して営業を始められるみなさんへ)。
一方、名古屋市にはこのような屋外客席に特化した公開ガイドラインは存在しません。名古屋市保健所の食品営業許可ページ(名古屋市公式)には一般的な営業施設の基準はありますが、テラス席のルールについては触れられていません。
つまり、名古屋市でテラス席を設ける場合、管轄の保健センターへの事前相談が唯一のルートです。東京のガイドラインをそのまま当てはめることはできません。
ここがシーシャバーのテラス席で最も混乱しやすいポイントです。
深夜0時以降にお酒を提供するシーシャバーは「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が必要です。この届出には、風営法施行規則99条に基づく構造基準があります。
・客室が1室のみ → 面積制限なし
・客室が2室以上 → 各客室の床面積が9.5㎡以上必要
・客室の内部に「見通しを妨げる設備」(高さ1m以上の仕切り等)を設けないこと
つまり、テラスが「別の客室」とみなされた場合、そのテラスが9.5㎡未満だと深夜帯の届出に支障が出ます。逆に、テラスが「客室」に含まれないなら、この面積基準はテラス自体には適用されません。
ネット上には「テラス席は深夜帯に使用できない」としている記事が複数あります。「テラス席を午前0時以降に使用することは周辺の環境の確保の観点から禁止」とまで書いているサイトもあります。
しかし、風営法および施行規則の条文を確認する限り、「テラス席を深夜に使用してはならない」という明文規定は存在しません。
風営法32条1項が規定しているのは「営業所の構造及び設備を、国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない」ということであり、テラス席の深夜使用を直接禁じる条文ではありません。
では、なぜ「深夜テラス不可」という情報が広まっているのか。
先ほど紹介した東京都の屋外客席に関する要綱の中に、営業者の遵守事項として「居住区域等で営業する場合は、周辺環境確保の観点から、深夜にはテラス席を使用しないようにする」という記載があります。
ここで注目すべきは2点です。
・「居住区域等で」という限定がかかっている
商業地域(名古屋であれば栄・錦など)では、この遵守事項がそもそも適用されない可能性があります。
・これは東京都独自の要綱であり、法律ではない
名古屋市にはこの要綱自体が存在しないため、東京の運用をそのまま当てはめることはできません。
現場を知る行政書士として
実際に、名古屋市内のシーシャバーで深夜帯もテラス席を営業している店舗は存在します。ネット上の「深夜テラス不可」は東京の運用指導に基づいた情報であり、全国一律の法的禁止ではありません。ただし、これは「どこでも深夜テラスOK」という意味ではありません。テラスが深夜に使えるかどうかは、管轄の警察署の判断次第です。
テラス席の深夜利用が認められるかどうかは、以下の2点に集約されます。
・テラスが「営業所」に含まれるか否かの判断
テラスを営業所の一部(=客室)として届け出るのか、営業所の外として扱うのかで、構造基準の適用範囲が変わります。この判断は法令上の明確な定義がなく、所轄警察署ごとに異なります。風営法の構造基準は地域によってローカルルールが存在するため、他の店舗の事例を安易に当てはめるのは危険です。
・各都道府県の騒音条例への適合
風営法施行規則99条は「騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること」を求めています。テラス席は屋内と比べて音が外に漏れやすいため、深夜帯の騒音基準を満たせるかどうかが実質的なハードルになります。
つまり、「法律で一律禁止」ではなく「所轄の判断+騒音基準をクリアできるか+用途地域」が実際の分かれ目です。テラス席の深夜利用を検討するなら、必ず管轄の警察署に事前確認してください。
シーシャバーのテラス席を考える上で、もう一つ重要なのが受動喫煙防止法(健康増進法)における「屋内」「屋外」の定義です。
厚生労働省の通知(健発0222第1号)では、以下のように定められています(厚生労働省:「健康増進法の一部を改正する法律」の施行について)。
・屋内
屋根があり、かつ側壁が概ね半分以上覆われている場所
・屋外
上記に該当しない場所
・テラス席の特別ルール
側壁が概ね半分以上覆われていない場合でも、店内との境界が壁やガラス扉で仕切られていない場合は、屋根に覆われている場所は「屋内」として取り扱う
シーシャバーは「喫煙目的施設」として店内全体で喫煙が可能な業態です。ではテラスはどうなるか。
テラスが「屋外」扱いであれば、健康増進法の屋内喫煙規制の対象外です。紙タバコの喫煙場所としてテラスを活用するシーシャバーが存在するのは、このロジックに基づいています。
ただし、テラスでの喫煙が健康増進法の規制対象外であっても、テラスから店内へ煙が流入しない構造であることが求められます。テラスと店内をつなぐドアを開けたときに煙が店内に入る構造はNGです。
実際のシーシャバーでは、テラス席を以下のようなパターンで活用しています。
| パターン | テラスの用途 | 確認先 |
|---|---|---|
| 紙タバコ用の喫煙テラス | 店内はシーシャ専用、テラスで紙タバコを吸ってもらう | 保健所(屋外客席設置届) |
| シーシャ提供ありの客席テラス | テラスでもシーシャを提供する。開放感が売り | 保健所 + 警察署(深夜利用の可否) |
| BBQ・イベント用テラス | シーシャ+BBQやイベントで差別化 | 保健所 + 消防署 + 警察署 |
東京では、屋上テラスでBBQとシーシャを提供する店、ドームテントを設置したテラス席、こたつ付きテラスなど、多様な活用事例があります。名古屋でもテラス席を設けているシーシャバーは複数存在し、深夜帯に営業している実例もあります。
シーシャバーのテラス席について整理すると、以下の通りです。
・保健所への「屋外客席設置届」は必須
テラス席数は屋内客席数以下、屋内と隣接、調理設備不可。名古屋市には東京都のような公開ガイドラインがないため、保健センターへの事前相談が唯一のルート。
・風営法に「深夜のテラス使用禁止」の明文規定はない
「深夜テラス不可」の出どころは東京都の要綱であり、しかも「居住区域等」に限定された遵守事項。名古屋市にはこの要綱自体が存在しない。ただし所轄警察署の判断と騒音条例がハードルになるため、事前確認は必須。
・テラスが「屋外」扱いなら健康増進法の屋内喫煙規制の対象外
ただし店内への煙の流入を防ぐ構造が必要。
テラス席は「使えるか使えないか」という二択ではなく、保健所・警察署・消防署に事前相談しながら「どういう形なら通るか」を設計するものです。ネット上の情報は東京の運用に基づいたものが大半です。名古屋で開業するなら、名古屋の所轄に確認することが最も確実なルートです。
現場を知る行政書士として
テラス席は集客面でも大きな武器になります。開放感のあるテラスでシーシャを吸うのは、室内とはまったく違う体験です。ただ、法律の話を後回しにして内装工事を進めてしまうと「テラスは作ったけど使えない」という事態になりかねません。テラス席を検討している方は、物件契約の前の段階で一度ご相談ください。
「テラス席を作りたいけど、法的に大丈夫?」
保健所・警察署・消防署への事前確認から図面作成・届出代行まで、
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法令
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)(第32条:深夜飲食店の構造基準)
・風営法施行規則(e-Gov法令検索)(第99条:深夜飲食店の技術上の基準)
厚生労働省
・「健康増進法の一部を改正する法律」の施行について(健発0222第1号)(屋内・屋外の定義)
東京都
・東京都福祉保健局:屋外に客席を設置して営業を始められるみなさんへ(屋外客席の遵守事項・深夜利用の制限)
名古屋市
・名古屋市:食品取扱施設 営業許可(営業施設の基準 ※屋外客席に関する個別ガイドラインは公開されていない)