この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
「テラス席を作りたいが、深夜は使えないと聞いた」「テラスは個室扱いになるのか」——シーシャバーの開業相談で、テラス席の質問は意外と多くいただきます。
ポイントは、テラス席には保健所・警察署・保健所(受動喫煙)の3つの角度から確認が必要で、しかも自治体によって扱いが違うことです。
ネット上の情報は東京都の運用にもとづくものが多く、そのまま名古屋に当てはめられません。この記事では、何が法令で決まっていて、何が確認事項なのかを分けて整理します。
| 法律 | 規制の対象 | テラス席との関係 |
|---|---|---|
| 食品衛生法(保健所) | 飲食店の衛生管理 | 屋外に客席を設ける場合の取扱いを確認する必要があります |
| 風営法(警察署) | 深夜営業の構造の条件 | テラスが「客室」に含まれるかで面積の基準が変わります |
| 健康増進法(保健所) | 屋内での喫煙 | テラスが「屋内」か「屋外」かで喫煙の可否が変わります |
飲食店が屋外に客席を設ける場合の取扱いは、自治体によって異なります。
東京都には「飲食店営業及び喫茶店営業の屋外客席に関する要綱」という公開されたガイドラインがあり、営業者の遵守事項が定められています。
一方、名古屋市について、屋外客席に特化した公開ガイドラインは確認できませんでした。
つまり名古屋市でテラス席を設けるなら、管轄の保健センターへの事前相談が唯一の確認手段です。東京の要綱をそのまま当てはめることはできません。
名古屋市に同じルールが適用されるわけではありませんが、屋外客席で何が論点になるかの参考にはなります。
▶屋外の客席数が屋内の客席数を超えないこと
▶屋内の客席と屋外の客席が隣接していること
▶屋外に調理設備を設置しないこと
▶屋外の客席の範囲を区画すること
出典:東京都「屋外に客席を設置して営業を始められるみなさんへ」(東京都の運用であり、他の自治体に当然に適用されるものではありません)
【実務上のポイント】
「テラス席に届出が必要」と書いている記事を見かけますが、その届出が名古屋市にあるかどうかは別の話です。
名古屋市で検討するなら、設計図を持って保健センターに事前相談してください。そこで求められる手続きが、その物件における正解です。飲食店営業許可の手続き全体は飲食店営業許可の記事をご覧ください。
シーシャバーのテラス席で最も混乱しやすい部分です。
午前0時以降に酒類を提供する場合、次の条件がかかります。
▶客室が1室のみの場合を除き、客室の床面積は9.5㎡以上
▶客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
▶照度を20ルクス以下としないこと
▶騒音・振動を条例で定める数値以下に保つこと
テラスが「別の客室」とみなされた場合、それが9.5㎡未満だと届出に支障が出ます。逆に、テラスが客室に含まれないなら、この基準はテラス自体には適用されません。
ネット上には「テラス席は深夜帯に使用できない」と書いている記事が複数あります。
東京都の屋外客席に関する要綱には、営業者の遵守事項として「居住区域等で営業する場合は、周辺環境確保の観点から、深夜にはテラス席を使用しないようにする」という趣旨の記載があります。
ここで注目すべきは2点です。
▶「居住区域等で」という限定がかかっている
▶これは東京都の要綱であって、全国一律の法令ではない
名古屋市にはこの要綱自体が存在しないため、そのまま当てはめることはできません。
ただし、これは「名古屋なら深夜のテラス営業ができる」という意味ではありません。
▶テラスが「営業所」に含まれるかの判断
テラスを営業所の一部(客室)として届け出るのか、営業所の外として扱うのか。この判断によって、構造設備の条件がテラスにかかるかどうかが変わります。所轄の警察署によって扱いが異なる可能性があるため、事前確認が必要です。
▶騒音の基準を満たせるか
深夜酒類提供飲食店営業では、騒音・振動を条例で定める数値以下に保つことが求められます。テラス席は屋内と比べて音が外に漏れやすいため、深夜帯の基準を満たせるかどうかが実質的なハードルになります。
愛知県の騒音基準は住居系地域で深夜40dB、商業地域で50dBです。詳しくはシーシャバーにカラオケは置けるかを解説した記事で、騒音規制の表を掲載しています。
【実務上のポイント】
「法律で一律に禁止されている」のではなく、「所轄の判断と騒音基準と用途地域」が実際の分かれ目です。
他店で深夜にテラスを使っているからといって、それが適法かどうかは分かりませんし、自店で同じ扱いになる保証もありません。風営法の構造の判断には地域ごとの運用があるため、他店の事例を当てはめるのは危険です。必ず管轄の警察署に確認してください。
もう一つ重要なのが、受動喫煙対策における「屋内」「屋外」の区別です。
| 屋内 | 屋根があり、かつ側壁が概ね半分以上覆われている場所 |
| 屋外 | 上記に該当しない場所 |
| 注意点 | 側壁が概ね半分以上覆われていない場合でも、店内との境界が壁やガラス扉で仕切られていなければ、屋根に覆われた場所は「屋内」として取り扱われます |
出典:厚生労働省「「健康増進法の一部を改正する法律」の施行について(健発0222第1号)」
最後の点が重要です。「屋根があるけど壁は少ないからテラスは屋外」と考えていても、店内との間に仕切りがなければ屋内扱いになります。
シーシャバーは喫煙目的施設として店内で喫煙できる業態です。テラスについては次のように整理できます。
▶テラスが「屋外」に当たる場合/健康増進法の屋内喫煙の規制の対象外
▶テラスが「屋内」に当たる場合/店内と同じ扱いになり、喫煙目的室としての要件が問題になる
紙たばこの喫煙場所としてテラスを活用しているシーシャバーがあるのは、前者の整理によるものです。
ただし、テラスから店内へ煙が流入しない構造であることも求められます。ドアを開けたときに煙が入る構造では問題になります。喫煙目的施設の要件は改正健康増進法のガイドをご覧ください。
| パターン | 用途 | 確認先 |
|---|---|---|
| 紙たばこ用の喫煙テラス | 店内はシーシャ専用、テラスで紙たばこを吸ってもらう | 保健所 |
| シーシャも提供する客席テラス | テラスでもシーシャを提供する。開放感が売り | 保健所+警察署 |
| イベント用テラス | シーシャとイベントを組み合わせる | 保健所+警察署+消防署 |
【実務上のポイント】
テラスでシーシャを提供する場合、炭の取り扱いについて消防署への確認も必要になります。屋外だからといって火気の管理が緩くなるわけではありません。
また、隣接する建物や通行人との関係で、煙の問題が起きやすい点にも注意してください。消防計画への記載については消防計画の書き方の記事をご覧ください。
健康増進法上の「屋内」に近づきます。屋根があり側壁が概ね半分以上覆われていれば屋内です。側壁が少なくても、店内との境界に仕切りがなければ屋内扱いになります。雨対策で屋根を付けたことで扱いが変わる、というのはあり得る話です。設計前に確認してください。
運用として深夜に使わないことは可能です。ただし、テラスが営業所(客室)に含まれるかどうかの判断は、使用の有無とは別に構造の問題として残ります。届出の内容と実際の運用が食い違わないよう、警察署に相談したうえで決めてください。
騒音については条例の基準がありますが、基準を満たしていても近隣との関係が悪化すれば営業に影響します。シーシャバーは煙の量が多く、テラス席はその煙が外部に流れやすい構造です。物件を決める前に、周辺の状況を確認しておいてください。
▶屋外客席の取扱いは自治体によって異なる。名古屋市に公開ガイドラインは見当たらない
▶名古屋市で検討するなら、保健センターへの事前相談が唯一の確認手段
▶風営法に「深夜のテラス使用禁止」の明文規定は見当たらない
▶「深夜テラス不可」の出どころは東京都の要綱で、しかも居住区域等に限定された遵守事項
▶実際の分かれ目は、所轄の判断と騒音基準と用途地域
▶健康増進法上は、屋根と側壁、店内との仕切りの有無で屋内・屋外が決まる
▶テラスでシーシャを提供するなら、消防署への確認も必要
テラス席は「使えるか使えないか」の二択ではなく、「どういう形なら通るか」を設計するものです。ネット上の情報は東京の運用にもとづくものが大半です。名古屋で開業するなら、名古屋の窓口に確認するのが確実です。
法律の確認を後回しにして工事を進めると、「テラスは作ったが使えない」という事態になりかねません。テラス席を検討している方は、物件契約の前にご相談ください。
開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめ、物件選びの確認事項は出店できないエリアの記事をご覧ください。
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