著者:行政書士 猪飼久遠 | シーシャ開業専門の行政書士
この記事では、方針が決まった方に向けて「具体的にどう申請するのか」を解説します。出張販売許可・小売販売業許可それぞれの申請手順、必要書類、審査基準、そして制度解説だけではわからない申請実務のリアルまで、行政書士の視点でまとめました。
※本記事は財務省リーフレット「たばこ小売販売業の申請者の皆様へ」(令和7年3月3日改正)および財務省HPの公式情報をもとに作成しています。
シーシャバー開業で必要なたばこの販売許可。「出張販売と小売販売、どちらを選ぶべきか」は別記事(→「小売販売vs出張販売」選ぶべきはどちらか?)で詳しく解説しています。
2020年4月に改正健康増進法が全面施行されて以降、原則として飲食店での喫煙は禁止されました。しかし、一定の条件を満たす施設は「喫煙目的店(喫煙目的施設)」として例外的に店内喫煙が認められています。
喫煙目的店の条件のひとつが「たばこの対面販売を行っていること」です。つまり、たばこの販売許可がなければ対面販売ができず、喫煙目的店にもなれず、結果として店内でシーシャを吸わせること自体が違法になります。
⚠️ たばこ販売許可はシーシャバーの生命線
たばこの販売許可は、シーシャバーにとって「営業形態の根幹を支える許可」です。飲食店営業許可や深夜酒類の届出だけでは、シーシャを提供する法的根拠が成立しません。
| 手続名 | 製造たばこの小売販売業の出張販売の許可 |
| 手続根拠 | たばこ事業法第26条 |
| 手続対象者 | 製造たばこの小売販売業者で、その営業所以外の場所に出張して小売販売業をしようとする者 |
| 審査基準 | たばこ事業法、たばこ事業法施行規則、製造たばこ小売販売業許可等取扱要領 |
| 標準処理期間 | 申請書を受理した日の属する月の末日から2月以内 |
| 手数料 | なし(許可を受けた場合は登録免許税3,000円の納付が必要) |
| 不服申立方法 | 行政不服審査法に基づく不服申立てによる |
| 提出先 | 小売販売業の許可を受けている営業所の最寄りのJT支社 |
| 提出方法 | 持参、郵送又は宅配便等 |
| 受付時間 | 月〜金曜日(祝祭日除く)9:00〜17:40 |
①たばこ小売業者を見つける
出張販売許可の申請者は「たばこ小売業者」です。シーシャバーのオーナーではありません。まず協力してくれるたばこ小売業者を見つけるところからスタートします(後述の「たばこ小売業者の探し方」を参照)。
②
申請書類の作成・提出
たばこ小売業者が申請書類一式を作成し、小売販売業の許可を受けている営業所の最寄りのJT支社に持参、郵送又は宅配便等により提出します。
⚠️ 提出先を間違えやすいポイント
提出先は出張販売をしようとする店舗(シーシャバー)の所在地を管轄するJT支社ではなく、小売業者の営業所所在地の最寄りのJT支社です。申請書の記載方法は、同じJT支社に相談できます。許可制度全般の相談先は、営業所の所在地を管轄する財務(支)局又は財務事務所等です。
③
JTによる現地調査
申請書類に問題がなければ、出張販売を行う店舗の現地調査が行われます。JTの検査官が、たばこの販売場所や喫煙設備(灰皿等)、店舗の外観などを確認し、写真を撮影します。調査自体は10分程度で終了します。
④
財務局による審査
現地調査の資料等に基づき、財務(支)局にて審査が行われます。
⑤
許可・登録免許税の納付
許可となった場合、許可通知書が届きます。最寄りのJT支社より納付書と登録免許税領収証書提出書を受け取り、金融機関等にて3,000円を納付後、領収証書を貼り付けてJT支社に提出して手続き完了です。不許可の場合は行政不服審査法に基づく不服申立てが可能です。
出張販売許可申請書(たばこ事業法施行規則別紙様式第21号)に、以下の書類を添付します。
※添付書類の原本還付を請求する場合は、原本還付申請書(様式第33号)と送付費用分の郵便切手(郵便料金+簡易書留料金)等を提出。
シーシャバー側が満たすべき要件
☐喫煙を主目的とする施設で、たばこの対面販売が行われていること
☐通常主食と認められる食事を主として提供しないこと(おつまみ程度はOK)
☐受動喫煙防止の設備基準を満たすこと(煙が施設外に流出しない構造)
☐二十歳未満の者の立入り・雇用をしないこと
☐たばこの販売場所が店舗の外から見えない位置にあること
出張販売許可で最初にぶつかる壁が「協力してくれるたばこ小売業者をどう見つけるか」です。
制度上は、既存のたばこ小売業者が申請する形になります。しかし、近所のたばこ屋やコンビニに飛び込みで「うちの店の出張販売先になってもらえませんか」と頼んでも、断られる可能性は高いです。先方にとってメリットがほとんどない上に、手続きの手間と責任だけが発生するためです。
実際には、行政書士がたばこ小売業者を紹介するケースが主流になっています。出張販売許可を専門的に扱っている行政書士は、すでに協力関係のあるたばこ小売業者のネットワークを持っていることが多く、マッチングから申請書類の作成、JTへの提出までを一括で対応できます。
代理申請は行政書士のみ
2026年1月以降、行政庁への代理申請は行政書士のみが行えるよう規制が強化されています。資格のない代行業者がたばこ小売業者の紹介と申請手続きをセットで請け負っているケースも散見されますが、行政書士法に抵触する可能性があります。依頼先が行政書士資格を持っているかどうかは必ず確認してください。
もうひとつ押さえておくべきなのは、出張販売許可はたばこ小売業者に紐づくという点です。小売業者が廃業すれば出張販売許可も自動的に抹消され、喫煙目的店の根拠が消滅します。この廃業リスクの詳細と対策については、別記事(→「小売販売vs出張販売」選ぶべきはどちらか?)で詳しく解説しています。
出張販売の場合、卸売業者が出張販売先のシーシャバーまで巡回してたばこを届けにくるということはありません。たばこの補充は、小売販売業者が自ら行う必要があります。
シーシャ用のたばこ(フレーバー)は一般的な紙巻たばこと違い、種類が非常に多く、フレーバーの入れ替わりも早いのが特徴です。在庫管理が煩雑になりやすく、どのフレーバーをどれだけ仕入れるかの判断を小売業者側と密に連携しなければなりません。
現場より
実務上は、シーシャバーのオーナーが業務委託の形で仕入れ・補充のオペレーションを回していることが多いです。この業務委託の内容を明確にした覚書を作成しておくことが重要です(必要書類4番にあたります)。仕入れの記録と販売の帳簿を適切に保存しておくことも求められます。
ノンニコチンフレーバーも規制対象
シーシャ用のたばこ葉は「製造たばこ」または「製造たばこ代用品」に分類されます。製造たばこ代用品とは、製造たばこ以外の物であって喫煙用に供されるものを指し、ノンニコチンのフレーバーであっても、たばこ事業法の規制対象です。
出張販売場所では、たばこの販売場所を店舗の外から見えない位置に設置する必要があります。これは、小売販売業の厳しい距離基準をクリアして許可を得ている既存のたばこ小売業者との公平性を保つための要件です。
JTの現地調査では、検査官が店舗の外観からたばこの販売場所が視認できないかを必ずチェックします。カウンター横や入口付近にたばこを陳列していると、窓やドアの隙間から見えてしまい、指摘を受けるケースがあります。
現場より
内装設計の段階から、たばこの販売スペースの位置を意識しておくことが重要です。入口から直接見通せない位置、窓から死角になる位置にたばこの陳列棚や販売カウンターを配置してください。図面を作成する際に、この点を反映しておけば現地調査もスムーズに進みます。
※ほとんどの店舗はこの項目は問題ないですが見落としがないように気を付けましょう
出張販売ではなく、自分自身がたばこ小売業者になることを選択する場合の申請手順を解説します。小売販売業の許可は出張販売と比べてハードルが高い分、許可が自分に紐づくため他者の廃業リスクがなく、長期的な安定性があります。
| 手続名 | 製造たばこの小売販売業の許可 |
| 手続根拠 | たばこ事業法第22条 |
| 手続対象者 | 製造たばこの小売販売を業として行おうとする者 |
| 審査基準 | たばこ事業法第23条、たばこ事業法施行規則第20条〜第22条 |
| 標準処理期間 | 申請から決定まで2か月程度 |
| 手数料 | なし(許可を受けた場合は登録免許税15,000円の納付が必要) |
| 不服申立方法 | 行政不服審査法に基づく不服申立てによる |
| 提出先 | 予定営業所の所在地を営業区域とするJT支社の受付窓口 |
| 提出方法 | 郵送又は持参 |
| 相談窓口 | JT各支社(書き方等)、最寄りの財務(支)局担当課(制度全般) |
一般小売販売業:店舗や自動販売機で一般消費者にたばこを販売する形態です。
特定小売販売業:劇場・旅館・飲食店・大規模小売店舗(売場面積400㎡以上)など、閉鎖性があり、かつ喫煙設備を有する消費者の滞留性が高い施設内で販売する形態です。シーシャバーの場合、特定小売販売業に該当する可能性があります。特定小売販売業では距離基準が免除されるため、繁華街でも許可を取得できる余地があります。ただし取扱高基準(月間3万本)は適用されます。
①事前確認予定営業所の立地が許可基準を満たすかを確認。最寄りのJT支社に相談できます。
②申請書類の準備許可申請書や誓約書、図面等の必要書類を揃えます。様式はJT各支社または財務省HPで入手可能。
③申請書類の提出予定営業所の所在地を営業区域とするJT支社に郵送または持参で提出。「小売販売業許可申請書受付票」は審査結果通知まで大切に保管。
④現地調査JTがたばこ事業法及び同法施行規則等に基づき現地調査等を行います。
⑤財務局による審査・結果通知財務(支)局が審査を行い、許可または不許可を決定。申請から決定まで2か月程度。許可を受けた方は登録免許税15,000円の納付が必要。
小売販売業許可申請書(施行規則別紙様式第17号)に以下を添付します。
以下のいずれか1つに該当する場合は不許可です。
(1) 人的要件:たばこ事業法による罰金刑を受けて2年以内の者、破産者等。
(2) 場所の要件:予定営業所が袋小路に面しているなど、たばこ購入に著しく不便な場所。
(3) 距離基準:予定営業所と最寄りのたばこ販売店の距離が基準に達していない場合。
| 環境区分 | 繁華街(A) | 繁華街(B) | 市街地 | 住宅地(A) | 住宅地(B) |
|---|---|---|---|---|---|
| 指定都市 | 25m | 50m | 100m | 200m | 300m |
| 市制施行地 | 50m | 100m | 150m | 200m | 300m |
| 町村制施行地 | ― | ― | 150m | 200m | 300m |
※「指定都市」は人口50万人以上の市制施行地および東京都の特別区。環境区分は申請後のJT現地調査で判定。沖縄県は距離基準・取扱高基準とも適用されません。
(4) 自動販売機の管理要件:店舗に併設されていない場所で、管理・監督が不十分な場合。
(5) 取扱高基準:月間4万本に満たない場合(特定小売販売業は月間3万本)。
(6) 営業所の使用権限:使用権限がない場合(許可後1か月以内に開業見込みがない場合を含む)。
(7) 法人の目的範囲:たばこ販売が定款の目的に含まれていない場合。
シーシャバーに特に関係する特例
・特定小売販売業の特例:距離基準を満たしているとみなされる。取扱高基準は月間3万本に緩和。
・視認の特例:繁華街・市街地で、最寄り店が歩行者から直接見えない場合は距離を測定しない。
・地上と地下の特例:異なる階層の道路に面している場合は距離を測定しない。
・ 4車線道路の特例:往復合計4車線以上の道路を隔てている場合は距離を測定しない。
その他の特例として、身体障害者等の特例(基準距離・取扱高ともに8割に緩和)、休業店・低調店の特例(距離を測定しない)、廃業跡地の特例(1欄左の環境区分の数値を適用)、大規模団地・交通拠点の特例(同)があります。
シーシャバーの開業には、たばこ販売許可のほかにも複数の許可・届出が必要です。これらをどの順番で、どのタイミングで進めるかで、開業までの期間が大きく変わります。
| 許可・届出 | 管轄 | タイミング |
|---|---|---|
| たばこ出張販売許可 | JT→財務局 | 内装設計確定後すぐ(最も時間がかかる) |
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 内装工事完了後に検査→即日〜数日で交付 |
| 深夜酒類提供飲食店営業届出 | 警察署 | 工事中に準備、開業10日前までに届出 |
| 防火対象物使用開始届 | 消防署 | 使用開始7日前まで |
行政書士より
出張販売許可が最も時間がかかるケースが多いため、これを起点にスケジュールを逆算することが重要です。物件契約後すぐにたばこ小売業者の選定と申請準備を開始→内装設計確定で図面作成・出張販売許可提出→並行して保健所事前相談・深夜酒類届出準備→工事完了後に保健所検査・消防届出→出張販売許可の審査結果を待って開業。標準処理期間の2か月を超えることも珍しくありません。余裕をもって3〜4か月前には動き始めてください。
小売販売業の許可を目指す場合、最大のハードルは距離基準です。そして距離基準のハードルの高さは、環境区分によって大きく変わります。繁華街(A)なら指定都市で25メートル、住宅地(B)なら300メートル。同じ場所でも環境区分の判定次第で結果が180度変わります。
環境区分は申請後のJT現地調査で正式に判定されますが、事前にある程度読むことはできます。Googleマップの航空写真やストリートビュー、実際の現地踏査で街路沿いの店舗構成を確認し、繁華街(A)の定義(乗車人員5,000人以上の駅がある、または遊興飲食施設・商店・観光客施設が50店以上連続する街路)に該当するかどうかを判断します。
⚠️ 不許可の最多パターン
「自分は繁華街(A)の25メートル基準だと思っていたが、実際には市街地の100メートル基準で判定されて不許可になった」──これが環境区分の見込み違いによる不許可です。距離基準ギリギリの案件では、申請前に行政書士が現地を踏査し、街路沿いの施設数を数え、環境区分の見立てを立てた上で申請の可否を判断します。見立てが厳しい場合は、財務(支)局への事前相談を行い、感触を掴んでから正式申請に進むこともあります。
※行政書士に依頼をしたら必ず許可が下りるわけではありません。
「たぶん大丈夫だろう」で申請して2か月待った挙げ句に不許可、というのが最悪のシナリオです。事前の調査と判断に手を抜かないことが、結果的に最短での許可取得につながります。
・たばこ出張販売許可書等の関係書類を店舗に保管
・店舗入口に「喫煙目的室の設置」標識を掲示
・喫煙できる場所であることを示す標識を掲示
・二十歳未満の者の立入り不可の標識を掲示
・たばこの販売・仕入れを記載した帳簿を保存
※喫煙目的店の具体的な条件は都道府県によって異なる場合があります。詳細は各都道府県や最寄りの保健所にお問い合わせください。
・営業所の移転・廃止は事前届出が必要
・相続・合併等による承継には承継手続きが必要
・1か月以上の休業は正当な理由がある場合でも事前届出が必要
・二十歳未満と思われる者には運転免許証やマイナンバーカード等で年齢確認を確実に行い、ポスター等で注意喚起を行ってください。
たばこ小売販売業の許可:財務省
https://www.mof.go.jp/policy/tab_salt/tobacco/tobacco_kouri_kyoka.html
出張販売の許可:財務省
https://www.mof.go.jp/policy/tab_salt/tobacco/tobacco_kouri_syuccyouhanbai.html
申請書類のダウンロード:財務省
https://www.mof.go.jp/policy/tab_salt/tobacco/tobacco_tetuzuki.htm
JT支社窓口一覧:日本たばこ産業株式会社
https://www.jti.co.jp/news/approval_list.html
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