シーシャバーのたばこ許可|出張販売と小売販売どちらを選ぶ?【愛知県・名古屋】

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。


「たばこの許可は出張販売と小売販売、どちらを選べばいいのか」——シーシャバーの開業で最初に決めなければならない分岐です。ここを間違えると、内装が仕上がっても店内でシーシャを提供できません。
ポイントは、出張販売の許可を申請するのは店舗の経営者ではなく、すでに小売販売業の許可を受けている事業者だということです。自分ひとりで完結する手続きではありません。


この記事では、2つの許可の違いを比較し、繁華街で開業する場合の現実的な選択と、将来の切り替えで問題になる点を解説します。



なぜシーシャバーにたばこの許可が必要なのか    WHY

そもそもの話から整理します。「店内でシーシャを提供する」という行為自体に、たばこの許可が必要と決まっているわけではありません。


必要になるのは、健康増進法上の「喫煙目的施設」として店内で喫煙させるためです。健康増進法施行令第4条第2号は、喫煙目的施設の要件のひとつとして「たばこを販売する者によって、対面によりたばこを販売し」ていることを挙げています。


▶たばこ事業法の許可がなければ、対面販売の要件を満たせない
▶自動販売機の設置だけでは「対面販売」に当たらない
▶要件を満たさなければ、屋内は原則禁煙になる


喫煙目的施設の要件全体はシーシャバーの改正健康増進法ガイドで解説しています。


2つの許可の違い    COMPARE

たばこ事業法には、2つの入口があります。


  小売販売業許可 出張販売の許可
根拠 たばこ事業法第22条 たばこ事業法第26条
誰が申請するか たばこを販売しようとする者(=店舗の経営者) すでに小売販売業の許可を受けている事業者
申請手数料 なし なし
登録免許税 15,000円 3,000円
標準処理期間 いずれも、申請書を受理した日の属する月の末日から2月以内
提出先 日本たばこ産業株式会社の支社(相談窓口は財務局・財務事務所等)



出張販売は自分では申請できません

財務省は出張販売の手続対象者を「製造たばこの小売販売業者で、その営業所以外の場所に出張して小売販売業をしようとする者」と定めています。
実務上は、すでに小売販売業の許可を持っている事業者(この記事では「協力店」と呼びます)に、自分の店を出張販売場所として許可を取ってもらう形になります。協力店との間で業務委託契約を結び、その内容を明らかにした書類を添付します。


【実務上のポイント】
この構造から導かれる結論はひとつです。協力してくれる小売販売業者を確保できるかどうかが、開業計画の前提条件になります。
物件を探すより先に、ここの見通しを立ててください。内装が仕上がっても、協力店が見つからなければ店内でシーシャを提供できません。


出張販売のメリット・デメリット    DELIVERY


メリット①:好立地でも取得できる可能性がある

小売販売業許可には、既存のたばこ販売店との距離基準があります。出張販売は、この距離基準の適用の仕方が小売販売業許可とは異なるとされています。そのため、既存店が密集する栄・名駅・錦といった繁華街でも取得できる可能性があります。立地で弾かれにくいことが最大の利点です。


メリット②:登録免許税が安い

登録免許税は1件3,000円です。小売販売業許可の15,000円と比べて負担が軽く、初期費用を抑えられます。


デメリット①:仕入れ条件が不利になりやすい

たばこは定価販売が原則で、販売店の収入は小売定価と仕入価格の差額です。一般に販売店のマージンは1割程度とされています。出張販売は協力店を経由する分、この取り分を分け合う形になり、実質的な仕入れコストが高くなる傾向があります。


ただし、具体的な取引条件は協力店との契約次第です。「必ず1割高くなる」といった一律の目安はありません。候補が複数あるなら条件を比較してください。


デメリット②:協力店に依存する

出張販売の許可は、協力店が持つ小売販売業許可を前提としています。そのため、協力店がたばこ販売をやめたり廃業したりすれば、自店の出張販売も続けられなくなります。協力関係が解除された場合も同じです。


【実務上のポイント】
たばこ販売店は個人経営の高齢事業者が多く、後継者不在による廃業は珍しいことではありません。協力店を選ぶ段階で、事業の継続性を確認しておくことをおすすめします。
経営形態(個人か法人か)、事業の主体がたばこ販売なのか他業種なのか、契約終了時の扱いをどう定めるか。このあたりを契約前に整理しておくと、後の選択肢が広がります。


小売販売業許可のメリット・デメリット    RETAIL


メリット①:仕入れルートを自分で持てる

協力店を経由しないため、仕入れ条件を自店で交渉できます。同じ本数を売っても手元に残る額が大きくなります。


メリット②:他店に依存しない

協力店の廃業や契約解除といったリスクがありません。たばこの販売という、シーシャバーの根幹に関わる部分を自分でコントロールできます。


デメリット①:距離基準がある

予定営業所と既存のたばこ販売店との間に一定の距離が必要とされる基準があります。この距離は営業所の所在する地域の区分に応じて定められており、おおむね25メートルから300メートルの範囲で設定されています。繁華街ほど既存店が密集しているため、基準を満たすのが難しくなります。


距離基準は数値だけで自己判断できません

距離の基準は、繁華街・市街地・住宅地といった環境区分ごとに異なります。どの区分に当たるかの判定は財務局が行うため、地図上の距離を測るだけでは結論が出ません。
「大通り沿いは繁華街扱いだが、1本裏の路地は別区分と判定される」といったことも起こり得ます。検討中の物件がある場合は、住所を示して財務局に相談してください。
用途地域とは別に、たばこの許可という観点でも立地が影響します。物件選びで確認すべき点はシーシャバーが出店できないエリアの記事にまとめています。


デメリット②:取扱高の基準もある

距離だけでなく、たばこの取扱予定高についても基準があります。シーシャ用のフレーバーだけで基準を満たせるかどうかは、店舗の規模と客数によります。


詳しい審査基準はたばこ小売販売業許可の距離基準・取扱高基準を解説した記事をご覧ください。


比較表    TABLE


  出張販売の許可 小売販売業許可
申請者 協力店(小売販売業者) 店舗の経営者
距離基準 小売販売業許可とは扱いが異なる おおむね25〜300メートル
繁華街での取得 可能性がある 難しい
仕入れ条件 協力店との契約による 自店で交渉できる
独立性 協力店に依存する 依存しない
主なリスク 協力店の廃業・契約解除 距離基準を満たせない
登録免許税 3,000円 15,000円
標準処理期間 受理した日の属する月の末日から2月以内


整理すると、仕入れ条件と独立性なら小売販売、立地の自由度と取得しやすさなら出張販売という関係です。繁華街で開業する多くのシーシャバーは、まず出張販売から始めることになります。


出張販売の具体的な申請手順と協力店の探し方はたばこ出張販売許可の記事で解説しています。


「出張で始めて、後から小売に切り替える」はできるのか    SWITCH

多くのオーナーが考えるのが、「取得しやすい出張販売で始めて、軌道に乗ったら小売販売に切り替える」という戦略です。


併存できるかどうかは財務局への確認が必要です

出張販売と自店名義の小売販売業許可を同時に持てるかどうかについて、明確に説明した公表資料を確認できませんでした。両者は許可の性質が異なるため、実務上は個別の判断になると考えられます。


この記事で「併存できる」とも「できない」とも断定することはしません。切り替えを検討する段階で、必ず財務局に確認してください。


切り替えで問題になるのは「空白期間」です

仮に併存できないとすれば、切り替えは「出張販売を終了し、自店名義の小売販売業許可を新たに取得する」という乗り換えになります。このとき問題になるのが、たばこを販売できない空白期間です。


▶①出張販売を終了する手続き
▶②自店名義の小売販売業許可が下りるまでの審査期間(受理月の末日から2月以内)


この空白期間中はシーシャを提供できなくなる可能性があり、営業の根幹に関わります。


空白を短くできるかは、最初の契約次第です

②の審査期間は、契約では短くできません。財務局の手続きだからです。


一方、①の終了タイミングは、協力店との業務委託契約の組み方で調整できます。解約予告期間が適切に定められていれば、「小売販売業許可の見通しが立ってから出張販売を終了する」という段取りが組めます。逆に、解約に長い予告期間や重い違約金が課される契約だと、タイミングを合わせられず空白が長引きます。


出張販売を始める前に確認する契約条項

▶解約予告期間
▶中途解約時の違約金
▶最低仕入れ量の縛り
▶契約終了時の在庫の扱い
▶協力店側の事情で契約が終了する場合の取り決め
最初の契約内容が、数年後の進路変更の自由度を決めます。


よくある質問    FAQ


Q. 協力店はどうやって探せばいいですか

シーシャ用フレーバーの仕入先が小売販売業の許可を持っている場合、そこに相談するのが一般的です。ほかに、近隣のたばこ販売店に協力を依頼する方法もあります。探し方の詳細はたばこ出張販売許可の記事で解説しています。当事務所でもご相談を承ります。


Q. ノンニコチンのフレーバーだけなら許可は不要ですか

必要です。たばこ事業法第38条は「製造たばこ代用品は、これを製造たばことみなしてこの法律の規定を適用する」と定めています。代用品とは「製造たばこ以外の物であつて、喫煙用に供されるもの」です。たばこ葉を使っていなくても、喫煙用に供されるものであれば同法の規制がかかります。詳しくはノンニコシーシャの許認可を整理した記事をご覧ください。


Q. 申請してから許可までどのくらいかかりますか

標準処理期間は「申請書を受理した日の属する月の末日から2月以内」です。起算点が月末なので、月の前半に申請したほうが実質的に早く進みます。開店日はここから逆算してください。待ち時間の使い方は審査「2か月」の間にやるべき開業準備の記事にまとめています。


まとめ    SUMMARY

▶たばこの許可が必要なのは、健康増進法上の喫煙目的施設の要件を満たすため
▶出張販売の許可を申請するのは、すでに小売販売業許可を持つ協力店
▶繁華街では小売販売の距離基準を満たしにくく、出張販売から始めるのが現実的
▶出張販売は協力店に依存するため、継続性と契約内容の確認が重要
▶距離基準の区分判定は財務局が行うため、地図上の距離だけでは判断できない
▶出張販売と小売販売の併存の可否は、公表資料で確認できないため財務局に要確認
▶標準処理期間は受理月の末日から2月以内。月の前半に申請したほうが早い


開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめをご覧ください。


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