この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
「過去に前科があるが、シーシャバーを開業できるのか」というご相談をいただくことがあります。
結論からお伝えすると、犯罪歴があっても開業できるケースは少なくありません。重要なのは「どの法律に違反したか」と「いつの話か」の2点です。
欠格事由は許可の種類ごとに別々に定められており、対象となる犯罪の範囲も異なります。この記事では、シーシャバー開業に関わる許可ごとに整理します。
欠格事由とは、許可を受けられない条件のことです。これに該当すると、申請しても許可が下りません。
重要なのは、欠格事由が許可の種類ごとに別々に定められているという点です。ひとつの許可で問題がなくても、別の許可では引っかかることがあります。逆もまた同じです。
シーシャバーの開業に主に関わるのは、次の3つです。
▶飲食店営業許可(食品衛生法)
▶たばこ小売販売業許可(たばこ事業法)
▶深夜酒類提供飲食店営業の届出(風営法)
接待を伴う営業をする場合は、これに風俗営業許可が加わります。こちらは欠格事由の範囲が大きく異なります。
食品衛生法は、営業許可を与えない場合として、食品衛生法またはこれに基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者を挙げています。
飲食店営業許可の欠格事由は、あくまで食品衛生法違反によるものです。それ以外の犯罪歴は、この許可の欠格事由にはあたりません。
また、食品衛生法違反であっても、刑の執行終了等から2年が経過していれば申請できます。
たばこ事業法にも、許可を与えない場合が定められています。たばこ事業法の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して一定期間を経過しない者が対象です。
こちらも、対象は「たばこ事業法違反」に限定されています。それ以外の犯罪歴は、この許可の拒否事由にはあたりません。
【実務上のポイント】
出張販売の形で進める場合、許可を申請するのはシーシャバーのオーナーではなく、協力するたばこ小売販売業者です。そのため、オーナー側の経歴が直接この拒否事由にかかるわけではありません。
ただし、協力事業者との契約や、店舗側の実態は審査で見られます。出張販売の仕組みはたばこ出張販売許可の記事で解説しています。
深夜0時以降に酒類を提供する場合、深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要です。
この届出は許可ではなく届出なので、営業者の経歴に関する欠格事由は定められていません。
深夜酒類の届出は、飲食店営業許可を取得していることを前提とする手続きです。
飲食店営業許可の欠格事由に該当して許可が取れなければ、そもそも届出もできません。入口は食品衛生法のほうにあると考えてください。
ここが最も注意が必要な部分です。接待を伴う営業をする場合に必要な風俗営業許可は、欠格事由の範囲がほかの許可と比べて格段に広くなります。
▶破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者
▶1年以上の拘禁刑に処せられ、執行終了等から5年を経過しない者
▶風営法違反など一定の罪により罰金刑に処せられ、5年を経過しない者
▶集団的または常習的に暴力的不法行為等を行うおそれがある者
▶アルコール・麻薬・大麻・あへん・覚醒剤の中毒者
▶心身の故障により業務を適正に実施できない者として国家公安委員会規則で定めるもの
▶営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
▶法人の場合、役員に上記に該当する者がいるとき
▶許可を受けようとする者と密接な関係を有する法人が一定の要件に当たるとき
出典:愛知県警察「風俗営業の許可申請手続」(2026年9月時点)
「1年以上の拘禁刑」は罪名を問いません。食品衛生法やたばこ事業法の欠格事由とは、対象範囲がまったく違います。
【実務上のポイント】
2025年(令和7年)の風営法改正で、「懲役」が「拘禁刑」に改められ、密接関係法人に関する欠格事由が追加されました。
古い記事は改正前の「懲役」表記のままになっていることがあります。また、接待を伴わない営業であればこの欠格事由はかかりません。自分の店が接待に当たるかどうかは接待の境界線を解説した記事で確認してください。
| 許可・届出 | 対象となる犯罪 | 期間 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 食品衛生法違反 | 執行終了等から2年 |
| たばこ小売販売業許可 | たばこ事業法違反 | 法令に定める期間 |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 欠格事由の定めなし(飲食店営業許可が前提) | — |
| 風俗営業許可 | 1年以上の拘禁刑は罪名を問わない。ほか破産・暴力的不法行為・中毒者など幅広い | 5年 |
許可の種類によって基準が違います。食品衛生法やたばこ事業法では「罰金以上の刑」が基準で、罰金刑も含まれます。風俗営業許可では、罪名を問わない基準は「1年以上の拘禁刑」で、罰金刑については風営法違反など一定の罪に限られます。なお、罰金より軽い科料や拘留は含まれないのが一般的です。
執行猶予の期間中は「執行を受けることがなくなった日」に至っていないため、欠格事由に該当する状態が続きます。執行猶予が満了した時点から、それぞれの法律が定める期間を数えることになります。
いいえ。期間の経過は欠格事由の解消であって、許可を保証するものではありません。設備基準・立地条件など、ほかの要件も満たす必要があります。個別の事情によって判断が変わる領域なので、不安がある場合は申請前にご相談ください。
なりません。風俗営業許可では、役員に欠格事由に該当する者がいる場合、法人としても許可を受けられません。2025年改正では、許可を受けようとする者と密接な関係を有する法人に関する欠格事由も追加されています。法人か個人かの判断材料は法人と個人事業主どちらで開業すべきかの記事をご覧ください。
▶欠格事由は許可の種類ごとに別々に定められている
▶飲食店営業許可は食品衛生法違反のみ、執行終了等から2年
▶たばこ小売販売業許可はたばこ事業法違反のみ
▶深夜酒類の届出には欠格事由の定めがないが、飲食店営業許可が前提
▶接待をするなら風俗営業許可となり、欠格事由の範囲が大きく広がる
▶風俗営業許可は「1年以上の拘禁刑」なら罪名を問わない
▶2025年改正で「懲役」が「拘禁刑」に改められ、密接関係法人の欠格事由が追加された
「犯罪歴があるから開業できない」と諦める前に、どの法律に違反したのか、いつの話なのかを確認してください。接待を伴わないシーシャバーであれば、道が開けているケースは少なくありません。
開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめをご覧ください。
※本記事は一般的な解説です。欠格事由の判断は個別の状況によって異なります。過去に刑事処分を受けた経歴がある場合は、申請前に必ず専門家または窓口へご確認ください。
経歴に不安がある場合も、内容を伺ったうえで該当の有無を確認します。ご相談の内容が外部に出ることはありません。
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