この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
シーシャバーの開業では、立地や内装デザインに意識が向きがちです。しかし現地検査で実際に見られるのは、客席ではありません。調理場です。
ポイントは、シーシャバーが保健所にとって件数の多い業態ではないため、判断が担当者に委ねられる部分が大きいことです。だからこそ、工事に入る前の事前相談が決定的に重要になります。
この記事では、シーシャバーが保健所の検査でつまずきやすい設備要件と、事前相談で確認すべきことを整理します。内装の設計に入る前に読んでおいてください。
調理場と客室は、間仕切り等で物理的に区画されていなければなりません。
▶壁とドアの設置が最も確実
▶スウィングドアやウエスタンドアなどの簡易的な間仕切りでも認められることがある
▶カーテンは間仕切りとして認められません
シーシャバーでは、開放的な空間づくりのために「カウンターだけで仕切りたい」という希望をよく聞きます。しかし、カウンターは区画とは認められません。
最低限、スウィングドア等の設置を想定して設計してください。ここを見落とすと、内装が仕上がってから扉を追加することになります。
令和3年6月施行の改正食品衛生法により、シンクの基準が変わりました。
| 改正前 | 幅45cm×奥行36cm×深さ18cm以上の2槽シンクが全国一律で必要 |
| 改正後 | 使用目的に応じた大きさ及び数という定め方に変わり、柔軟になりました |
この改正が、シーシャバーの設備計画に直接影響します。
| 営業内容 | シンクの目安 |
|---|---|
| 料理を提供する(食材を洗って調理する等) | 2槽シンク+給湯設備 |
| ドリンク提供のみ(乾き物・レンジ惣菜程度) | 1槽シンクでも可とされることがある |
| シーシャ+ドリンク(軽食なし) | 1槽シンクで可の場合が多いが、必ず事前確認 |
保健所の担当者によって判断が分かれる部分です。自治体によっては、シーシャ器具を洗う専用のシンクの設置を求められる場合もあります。
【実務上のポイント】
「あとからメニューを増やしたい」という希望が少しでもあるなら、最初から2槽シンクと給湯設備を設置しておくことを強くおすすめします。
1槽で許可を取った後にフードメニューを本格展開しようとすると、シンクの追加工事が必要になります。壁を壊して配管をやり直す工事は、数十万円の追加費用と数週間の営業停止を伴います。
最初に数万円多く払うか、後で数十万円払うか、という選択です。
改正食品衛生法で、最も多くの店舗が影響を受けた項目です。
従業員用の手洗い器の水栓は、洗浄後の手の再汚染を防止できる構造でなければなりません。具体的には、水を止める際にハンドルに触れなくてよい構造です。
▶レバー式への交換が最も簡単・安価
▶既存のハンドルをレバーに付け替えるだけで対応できる場合がほとんど
▶自動水栓、足踏み式、肘で操作するタイプなども該当します
前の店舗がハンドル式の手洗い器のままだった場合、そのままでは許可されません。再汚染防止構造は法改正以降の要件なので、古い設備が残っている物件では対応が必要です。
事前確認を怠って検査で不合格になるケースが実際にあります。内見の際に水栓の形を見ておいてください。居抜きで引き継ぐ場合の注意点は居抜き物件を引き継ぐ手続きの記事で解説しています。
| 設備 | シーシャバーでの注意点 |
|---|---|
| 床・壁・天井 | 調理場の床と壁の下部は防水素材が必要。コンクリート打ちっぱなしの天井は、客室では問題なくても調理場ではホコリの落下等を理由に指摘されることがあります |
| 換気設備 | 調理場に独立した換気設備が必要。客室のシーシャ用換気とは別物です。窓で自然換気する場合は網戸を設置 |
| 冷蔵設備 | 必須。ドリンクを提供するなら最低限の冷蔵庫が必要です。家庭用でも可とされますが、温度計がない場合は設置します |
| 保管設備 | 食材の保管用に戸棚等を設置。虫やネズミの害を防げる構造であること |
| 更衣場所 | 更衣室は必須ではないものの、着替えた服を入れる更衣箱等を調理場に出入りしやすい場所に設置します |
| トイレ | 従業員の人数に応じた数が必要。客用との共用可。調理場から直接つながる構造は不可。トイレ内またはすぐ近くに手洗い器が必要 |
| 廃棄物容器 | 蓋つきの容器を設置 |
| 清掃用具 | 調理場専用の清掃用具を用意し、保管場所・手順を決めておく |
【実務上のポイント】
表の中で、シーシャバーが最も見落とすのが換気設備の二重構造です。
シーシャの煙を排出するための客席換気に予算と設計の意識が集中し、調理場の換気扇が計画に入っていないということが起こります。この2つは別物として設計してください。客席の換気設備についてはシーシャバーの換気設備と法律の記事で解説しています。
事前相談は法律上の義務ではありません。しかしシーシャバーの場合、事前相談なしで進めるのはリスクが高すぎます。理由は2つです。
ラーメン店や居酒屋であれば、担当者も勝手が分かっています。しかしシーシャバーは比較的新しい業態です。
「シーシャの炭はどこで扱うのか」「ボウルやホースの洗浄設備をどう位置づけるのか」といった点で、担当者が判断に迷うことがあります。事前相談で営業内容を具体的に説明し、必要な設備について合意しておくことで、検査時のトラブルを防げます。
事前相談の段階なら、「シンクの位置を変えてください」「手洗い器を追加してください」という指導にも柔軟に対応できます。
工事完了後に同じ指摘を受けると、壁を壊して配管をやり直すことになります。追加で数十万円の費用と、数週間の遅延が発生します。
▶内装図面(案)/調理場の配置、シンク・手洗い器・冷蔵庫の位置を記入したもの
▶メニュー構成(案)/シーシャのほかに何を提供するか。ドリンクのみか、軽食も出すか
▶営業時間の予定/深夜営業をするなら、警察署への届出も必要になることを伝えておく
メニュー構成は必ず持っていってください。シンクの数の判断がここで決まります。
シーシャの炭をヒーターやコンロで熱する場所が、調理場の区画内にあるかどうかが問われることがあります。客席側に設置する場合は、衛生管理の方法を説明できるようにしておいてください。
調理場のシンクとは別に、バックヤードで洗浄する計画の場合でも、衛生面の説明を求められることがあります。どこで、どのように洗い、どこで乾かすのかを整理しておいてください。
前述のとおり、調理場には独立した換気設備が必要です。「店全体に大きな換気設備を入れているから大丈夫」という説明は通りません。
現地検査では、担当者が店舗を訪問し、申請時に提出した図面と実際の設備を照合します。
▶調理場/シンク・手洗い器・冷蔵庫・保管設備・換気設備・床壁天井の素材等
▶トイレ周り/手洗い器の有無、調理場との隔離構造
▶更衣場所(設ける場合)
担当者は実際に水を流し、お湯が出るかを確認します。シンクの排水が正常に流れるか、手洗い器の水栓が再汚染防止構造になっているか。これらを実地で確認します。
【実務上のポイント】
よくある失敗が、検査当日にガスが開栓されておらずお湯が出ない、給排水の配管がつながっていないというものです。再検査となり、数日から1週間の遅延が発生します。
施工業者には「内装が終わっていればいい」ではなく、「検査日までに、水とお湯が出て、排水が流れる状態にしてください」と具体的に伝えてください。この一言があるかどうかで結果が変わります。
申請時の図面と実際の設備配置が多少異なっていても、必要な設備がすべて揃っていれば原則として許可されます。大幅に異なる場合は、完成後の図面に差し替えれば足ります。
ただし「必要な設備が足りない」のは不合格です。再検査となり、設備を整えたうえで改めて検査を受けることになります。
図面の種類と作成のポイントは飲食店営業許可に必要な図面の記事で解説しています。
調理場とトイレ周りが完成していれば検査を受けられます。客席部分は未完成でも構わず、テーブルや椅子が未設置でも問題ありません。飲食店営業許可は内装工事の完成前でも申請できるため、検査日を先に押さえて、そこに合わせて調理場を仕上げるという段取りが可能です。
提供する内容が変わり、設備が基準を満たさなくなる場合は、設備の追加が必要になります。後からの配管工事は費用も時間もかかります。将来メニューを広げる可能性があるなら、最初から2槽シンクにしておくほうが安く済みます。
再検査になります。指摘された設備を整えたうえで、改めて検査を受けることになります。その分だけ開業が遅れます。シーシャバーの場合、たばこ販売許可の審査と並行して進めていることが多いため、ここでの遅延がスケジュール全体に響きます。
▶調理場と客室は間仕切り等で区画する。カウンターだけでは不可、カーテンも不可
▶シンクは「使用目的に応じた大きさ及び数」。シーシャ+ドリンクなら1槽で可の場合が多いが要確認
▶将来メニューを増やす可能性があるなら、最初から2槽シンク+給湯設備を
▶手洗い器の水栓は再汚染防止構造(レバー式等)でなければならない
▶調理場には客席とは別に独立した換気設備が必要
▶シーシャバーは保健所にとって件数の多い業態ではない。事前相談は前提と考える
▶事前相談には内装図面案・メニュー構成案・営業時間の予定を持参する
▶検査では実際に水とお湯を流して確認される。施工業者に具体的に伝える
シーシャバーの開業でつまずく原因の多くは、設備に関する認識のズレです。1槽シンクで足りるのか、シーシャ器具の洗浄をどう扱うのか、炭の取り扱いはどこまで求められるのか。これらは法令に明確な答えが書かれておらず、保健所ごとの運用に委ねられている部分が大きいのが実情です。
設計前・工事前のタイミングでご相談ください。飲食店営業許可の手続き全体はシーシャバーの飲食店営業許可の記事、開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめをご覧ください。
図面段階での設備チェックから、保健所への事前相談の同行までお引き受けしています。
「この内容で許可が取れるか」「保健所にどう説明すればいいか」という段階でも構いません。LINEなら夜間・土日も対応します。
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