この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
「スタッフが客席で話しかけるのは接待になるのか」「シーシャの味調整中の会話はグレーではないか」——開業準備中の方から、よくいただくご相談です。
ポイントは、会話をしたかどうかではなく、店側が特定の客に対して継続的・積極的に歓楽的雰囲気を作り出しているかどうかで判断されることです。
シーシャの提供は技術サービスであり、その過程での確認や説明は通常の接客業務です。ただし、一線を越えれば風俗営業許可が必要になります。この記事では、その境界線を法令と警察庁の解釈運用基準にそって整理します。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第2条第3項は、接待を次のように定義しています。
歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと
また同法第2条第1項第1号は、風俗営業のひとつを「キャバレー、待合、料理店、その他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」と定めています。
つまり「接待」+「遊興又は飲食」の組み合わせが、風俗営業(1号営業)の要件です。
条文だけでは判断できないため、警察庁の解釈運用基準が具体例を示しています。
▶特定少数の客の近くに座るなどして、継続的に会話の相手になったりお酌をする行為
▶特定少数の客に対し、その客が使用している客室等でショー・演奏などを見せる行為
▶特定少数の客の近くで、歌うことを勧めたり、手拍子や掛け声で盛り上げたり、デュエットをする行為
▶特定の客と一緒に踊る行為
▶特定少数の客とともに遊戯・ゲーム・競技等を行う行為
▶客と体を密着させる、手を握るなど身体に接触する行為
キーワードは「特定少数の客に対して」「継続的・積極的に」「歓楽的雰囲気を作り出す」の3点です。
シーシャバーのスタッフは、炭の調整やフレーバーの配合を変えるとき、立ったまま客に話しかけます。「煙の量はどうですか」「もう少し甘くしましょうか」といった会話です。
この種のやりとりは、商品の品質を確認するための技術的な接客です。バーテンダーがカクテルを作りながら好みを聞くのと同じ構造で、歓楽的雰囲気を醸し出すことを目的としていません。
| 項目 | 解釈運用基準が挙げる接待行為 | シーシャの味調整 |
|---|---|---|
| 目的 | 歓楽的雰囲気の醸成 | 商品の品質確認・技術的な説明 |
| スタッフの姿勢 | 客の近くに座る | 立ったまま作業・確認 |
| 会話の性質 | 継続的な歓談・もてなし | 作業に付随する確認 |
| 継続性 | 特定の客に継続的に付く | 作業が終われば離れる |
接待に当たるかどうかは、行為の外形だけでなく、営業全体の実態から判断されます。同じ「会話」でも、作業に付随する短いやりとりと、作業が終わった後も特定の客に付いて続く歓談とでは、評価が変わります。
この記事で「味調整中の会話は絶対に接待にならない」と断定することはしません。実際の接客の中身によって判断が分かれる領域です。
シーシャバーのスタッフは、法律を意識していなくても「客の隣には座らない」という動き方をしていることが多くあります。
これは偶然ではありません。シーシャの提供は、スタッフが常に「商品を整える側」として動く仕事だからです。客と一緒に飲んで場を盛り上げる仕事とは、業務の構造そのものが違います。
【実務上のポイント】
この「立ってサービスする、隣に座らない」という現場の自然な形が、そのまま風営法上の安全側の運用と重なります。
逆に言えば、この形が崩れたときが危ないということです。忙しくない時間帯、常連客だけの深夜帯、スタッフが疲れているとき。崩れやすい場面はある程度決まっています。ルールとして明文化しておく意味は、そこにあります。
接待と判断されるリスクがあります。世間話そのものが問題なのではなく、「特定の客の近くに座って継続的に歓談する」という形になることが問題です。立ったまま話すのとは、法的な意味が違います。
接待に当たる可能性が高い場面です。「特定少数の客とともに遊戯・ゲーム等を行う行為」は、解釈運用基準に明示されています。客同士が遊ぶのは問題ありませんが、スタッフが加わると評価が変わります。
個室であること自体が接待になるわけではありません。ただし、深夜帯は酒類の注文が増え、個室の利用も多くなります。個室+深夜+酒類という組み合わせは、接客が歓楽的なもてなしにエスカレートしやすい環境です。スタッフの行動ルールをより厳密にしておく必要があります。
状況によって判断が変わります。「あのスタッフに作ってほしい」という客の希望自体は、技術サービスへの指名なので問題になりません。
ただし歓談が主体になっている場合は、実態として接待に近づきます。指名を売りにした料金体系を設けるような場合は、慎重な検討が必要です。
接待を伴う営業をする場合は、風営法第3条第1項に基づく風俗営業許可(1号営業)が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 風営法第2条第1項第1号・第3条第1項 |
| 申請先 | 営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課 |
| 手数料 | 24,000円(愛知県) |
| 営業時間 | 深夜(原則として午前0時以降)は営業できません |
| 場所の制限 | 用途地域の制限と、学校・病院等からの距離規制があります |
| 審査期間 | 申請時期等により変動するため、確定した標準処理期間は定められていません。目安は愛知県公安委員会の審査基準に定めがあります |
風俗営業の許可を受けた営業は、風営法により午前0時以降の営業が原則として禁止されます。
深夜帯の売上が大きいシーシャバーにとって、これは営業モデルの根本に関わる制約です。「接待をしながら深夜も営業する」という選択肢は、制度上存在しません。
接待を伴わない通常のシーシャバー営業であれば、風俗営業許可は不要です。午前0時以降に酒類を提供する場合は、深夜酒類提供飲食店営業の届出で足ります。詳しくは深夜酒類提供飲食店営業届出の記事をご覧ください。
接待を伴う営業を無許可で行った場合、風営法第49条第1号により5年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。法人の場合は3億円以下の罰金です。
出典:愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」(令和7年6月28日施行)
これは2025年(令和7年)の風営法改正で引き上げられた法定刑です。改正前は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」でした。古い記事の数字を前提に判断しないでください。
【実務上のポイント】
罰則の重さもさることながら、実務上より深刻なのはその後です。風営法違反で罰金刑を受けると、一定期間は風俗営業の許可を受けられない欠格事由に当たります。
つまり、後から正規に許可を取って営業しようとしても、その道が数年間閉ざされることになります。許可ごとの欠格事由の違いは犯罪歴がある場合の記事で整理しています。
接待に当たるかどうかは、オーナーの意図ではなく実際の接客の中身で判断されます。スタッフの行動が、そのままオーナーの責任につながります。
▶客の隣に座って会話することを禁止する
▶客のゲーム・遊戯への参加を禁止する
▶客に歌うことを勧めたり、手拍子・掛け声で盛り上げたりしない
▶作業が終わったら客席を離れる
▶客から誘われた場合の断り方まで決めておく
最後の項目が実務的には重要です。「隣に座らない」というルールがあっても、常連客から誘われたときに断り方を決めていなければ、現場では守れません。
カラオケ設備を置く場合は、遊興との関係でさらに検討が必要です。シーシャバーにカラオケは置けるかを解説した記事をご覧ください。コンセプトカフェ型の接客を考えている場合はコンカフェシーシャと風営法の記事もあわせてご確認ください。
解釈運用基準に明示された行為ではありませんが、営業全体の実態から判断されます。記念に一枚撮る程度と、それをサービスとして提供している場合とでは意味が変わります。サービスメニューとして位置づけるなら、事前に警察署へ相談してください。
カウンター越しの接客は、一般に接待とは評価されにくい形です。ただしカウンター越しであれば何をしても問題ない、というわけではありません。継続的に特定の客に付いて歓楽的な雰囲気を作っていれば、位置関係にかかわらず判断は変わり得ます。
一杯受け取る行為だけで直ちに接待になるわけではありません。しかし「客と一緒に飲む」という形が常態化すると、歓楽的なもてなしと評価される方向に近づきます。スタッフの飲酒については、接待の問題とは別に、シーシャの品質管理や安全管理の観点からもルールを決めておくことをおすすめします。
▶接待とは「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(風営法第2条第3項)
▶判断の軸は「特定少数の客に」「継続的・積極的に」「歓楽的雰囲気を作る」の3点
▶シーシャの味調整に付随する会話は、通常の接客業務として扱われる
▶ただし営業全体の実態から判断されるため、外形だけで安全とは言えない
▶客の隣に座っての長時間の歓談、ゲームへの参加は接待と評価され得る
▶接待を行うなら風俗営業許可(1号)が必要。ただし深夜営業ができなくなる
▶無許可営業は5年以下の拘禁刑・1千万円以下の罰金(法人は3億円以下)
▶スタッフルールを文書化し、断り方まで決めておく
判断に迷う営業スタイルを考えているなら、開業前に管轄警察署へ相談してください。開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめをご覧ください。
営業スタイルが接待に当たるかの検討から、警察署への事前相談までご相談いただけます。
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