シーシャバーにカラオケは置ける?遊興・接待との境界線と騒音規制【愛知県】

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。


「客からカラオケをやりたいと言われた」「競合店が導入している」——シーシャバーのオーナーからいただくご相談が増えています。カラオケは集客力の高いコンテンツですが、風営法と騒音規制という2つのハードルがあります。
ポイントは、カラオケ装置を置くこと自体は問題にならず、店側がどう関与するかで結論が変わることです。スタッフの動き方ひとつで、無許可営業になります。


しかも2025年の風営法改正で、無許可営業の法定刑が大幅に引き上げられました。この記事では、愛知県・名古屋市でシーシャバーを営む方に向けて、カラオケ導入に関わる法令を整理します。



前提:多くのシーシャバーは「深夜酒類」で営業しています    BASE

午前0時以降に酒類を提供するシーシャバーは、深夜酒類提供飲食店営業の届出をして営業しています。


この営業形態では、「接待」も、深夜における「遊興」もできません。カラオケ問題の核心は、この2つの概念にあります。


深夜酒類提供飲食店営業の届出そのものについてはシーシャバーの深夜酒類提供飲食店営業届出の記事で解説しています。


「接待」と「遊興」は別の概念です    DEFINE


接待(風営法第2条第3項)

接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。警察庁の解釈運用基準では、次のような行為が挙げられています。


▶特定少数の客の近くに座るなどして、継続的に会話の相手になったりお酌をする行為
▶特定少数の客に対し、その客が使用している客室等でショー・演奏などを見せる行為
▶特定少数の客の近くで、歌うことを勧めたり、手拍子や掛け声で盛り上げたり、デュエットをする行為
▶特定の客と一緒に踊る行為
▶特定少数の客とともに遊戯・ゲーム・競技等を行う行為
▶客と体を密着させる、手を握るなど身体に接触する行為


ポイントは「特定少数の客」に対して、店側が積極的に働きかけることです。単に客のリクエストに応じてカラオケをセットする行為は、これに当たりません。


遊興

遊興とは、営業者側が客に対して積極的に遊び興じさせる行為を提供することです。解釈運用基準では次のような行為が挙げられています。


▶不特定の客にショー・ダンスその他の興行等を見せる行為
▶不特定の客に歌手の生歌やバンドの生演奏を聴かせる行為
▶ダンスをさせる場所を設け、音楽や照明の演出を行って不特定の客にダンスをさせる行為
▶のど自慢大会等の遊戯・ゲーム・競技等に不特定の客を参加させる行為
▶カラオケ装置を設け、不特定の客に歌うことを勧め、歌に合わせて照明の演出や歌をもてはやす行為
▶スポーツ等の映像を見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為


装置を置くこと自体は「遊興」ではありません

スポーツバーで映像を流しているだけ、ダーツバーで客が自主的にダーツを楽しんでいるだけ、といった状態は店側の積極的な行為がないため、遊興させているとは言えません。
カラオケも同じです。装置があることではなく、店側がどう関与するかが判断の分かれ目になります。


接待の判断基準についてはシーシャバーで「接待」に当たるのはどこからかを解説した記事で詳しく扱っています。


カラオケが問題になる2つのパターン    RISK


パターン 行為の例 必要になる許可
遊興 スタッフが曲を選んで客に歌わせる/カラオケ大会などのイベントを開催する 特定遊興飲食店営業許可
(深夜に酒類を提供する場合)
接待 スタッフが客とデュエットする/手拍子や掛け声で盛り上げる 風俗営業許可(1号)


深夜酒類提供飲食店営業の届出だけでこれらを行えば、無許可営業になります。


2025年改正で罰則が引き上げられました    PENALTY


無許可営業は5年以下の拘禁刑・1千万円以下の罰金

2025年(令和7年)の風営法改正により、無許可営業の法定刑が5年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金、またはその両方に引き上げられました。法人の場合は3億円以下の罰金です。
改正前は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」でした。拘禁刑の上限が2.5倍、罰金は5倍になっています。古い記事の数字を前提に判断しないでください。


出典:愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」(令和7年6月28日施行)


風俗営業1号許可では深夜営業ができません    TRAP

「では風俗営業1号許可を取ればいいのでは」と考える方もいますが、風俗営業の許可を受けた営業は、風営法により午前0時以降の営業が原則として禁止されています。


シーシャバーは深夜帯が最も賑わう業態です。午前0時で営業を終えなければならないとなると、ビジネスモデルが根本から変わります。


つまり、深夜にカラオケを提供したいなら、選択肢は特定遊興飲食店営業許可になります。


選択肢A:特定遊興飲食店営業許可を取る    OPTION A

深夜に遊興を提供しながら酒類を出すには、特定遊興飲食店営業の許可が必要です。ただし要件は厳しめです。


▶客室の床面積が33平方メートル以上であること
▶客室の見通しを妨げる設備を設けないこと
▶善良の風俗を害するおそれのある写真・広告物等を設けないこと
▶学校・病院・図書館・児童福祉施設等からの距離規制
▶用途地域の制限
▶申請者が欠格事由に該当しないこと


【実務上のポイント】
客室33㎡以上という要件は、小規模なシーシャバーにとって高いハードルです。深夜酒類提供飲食店営業の9.5㎡と比べると3倍以上です。
また立地の制限が深夜酒類より厳しくなるため、現在の物件のままでは取得できないことがあります。検討する場合は、まず物件の要件充足を確認してください。


選択肢B:遊興に当たらない形で置く    OPTION B

特定遊興飲食店営業許可の取得が難しい場合、店側が関与しない形でカラオケを使える環境を整えるという方法があります。


ただし、運用が崩れれば無許可営業になります。スタッフ全員が理解している必要があります。


鉄則1:スタッフは絶対にデュエットしない

スタッフが客と一緒に歌う行為は接待に直結します。客から誘われても断る、とルール化してください。「断りにくい」場面が必ず来るので、断り方まで決めておくのが実務的です。


鉄則2:手拍子・掛け声・盛り上げをしない

客の歌に対して手拍子を打つ、「上手いですね」と声をかける。こうした行為も接待に該当し得ます。悪気なくやってしまう典型なので、全員への周知が必要です。


鉄則3:スタッフはカラオケ機器を操作しない

客のために機器を起動する、曲を選ぶ。これらは遊興に該当し得ます。客が自分で操作できる環境を整えてください。操作マニュアルを置く、リモコンの使い方を紙で掲示するといった対応が考えられます。


鉄則4:カラオケイベント・企画を行わない

「カラオケ大会」「歌自慢コンテスト」「歌い放題プラン」は遊興の典型例です。SNSでの告知も記録として残ります。


鉄則5:スタッフへの継続的な周知

上の4つをオーナーだけが知っていても意味がありません。スタッフの行動が、オーナーの責任につながります。採用時の説明、定期的なミーティング、チェックリストの配布といった仕組みで担保してください。


導入前に警察署へ相談してください

上の5つを守っていれば必ず適法、と言い切れるものではありません。実際の運用がどう評価されるかは、店の状況によって変わります。
カラオケ装置を導入する前に、管轄の警察署の生活安全課に相談することを強くおすすめします。導入してから指摘を受けると、機器の費用が無駄になります。


もうひとつのハードル|騒音規制    NOISE

風営法と並んで問題になるのが騒音です。愛知県では2つの規制がかかります。


①愛知県条例による騒音規制

飲食店・喫茶店・カラオケボックスは、夜間(午後10時〜午前6時)の営業騒音について、営業所の敷地境界で次の基準を超えてはなりません。


地域 基準
第1・2種低層住居専用地域/第1・2種中高層住居専用地域/第1・2種住居地域/準住居地域 40dB
近隣商業地域・商業地域・準工業地域 50dB
工業地域 60dB
工業専用地域 70dB
その他の地域 50dB



40dBは「深夜の住宅街」「図書館の中」程度の静けさです。住居系地域でカラオケを使うなら、相当な防音が前提になります。


音響機器の使用制限(午後11時〜午前6時)

飲食店・喫茶店は、住居系地域では午後11時以降、カラオケ装置・音響再生装置・楽器・拡声装置・有線ラジオ放送受信装置を使用してはなりません。


ただし、その音が営業所の外部に漏れない場合は、この制限を受けません。十分な防音設備を整えれば、住居系地域でも深夜帯の使用が認められる余地があります。


②風営法施行条例による騒音規制

深夜酒類提供飲食店営業(午前0時〜6時)を行っている場合は、こちらの基準も適用されます。


地域 昼間
(6時〜18時)
夜間
(18時〜0時)
深夜
(0時〜6時)
住居系地域 55dB 50dB
(22時以降40dB)
40dB
近隣商業・準工業・工業・工業専用・その他 60dB 55dB 50dB
商業地域 65dB 60dB 50dB


深夜帯が中心のシーシャバーでは、最も厳しい「深夜」の基準が常に問題になります。


防音対策の目安

カラオケの音量は一般に80〜90dBに達します。住居系地域の40dBをクリアするには、40〜50dB以上の低減が必要です。


対策 低減効果の目安
窓/アルミサッシ引き違い窓 約20dB
窓/アルミサッシ二重窓・防音サッシ 約25〜30dB
換気扇防音カバー 約30dB
壁/コンクリートブロック(モルタル仕上げ) 約40dB
壁/鉄筋コンクリート(モルタル仕上げ) 約45dB
出入口/木製ドア 約15〜20dB
出入口/鉄製ドア 約20〜25dB


出典:愛知県「騒音防止に関する資料


【実務上のポイント】
音はわずかな隙間から漏れます。天井・壁・床・開口部をバランスよく総合的に対策しないと、遮音性能の低い一か所から音が集中して漏れ出します。単一の対策では不十分です。
シーシャバーの場合、換気ダクトが音の抜け道になりやすい点にも注意してください。煙を出すための開口が、音を出す開口にもなります。換気と防音は同時に設計する必要があります。


客が出す音も規制の対象です

愛知県条例では、飲食店の利用者が発生させる騒音で周辺の生活環境を損なう行為も禁止されています。カラオケで盛り上がった客が店外で騒ぐことも問題になり得ます。退店時の声かけを徹底してください。


よくある質問    FAQ


Q. カラオケ機器を置くだけなら届出は不要ですか

装置を設置すること自体を規制する制度はありません。問題になるのは、店側が客に歌うことを勧めたり、盛り上げたりする行為です。ただし、置いてある以上は運用次第で遊興と評価される余地が生じるため、導入前に警察署へ相談することをおすすめします。


Q. BGMを流すのも遊興になりますか

BGMを流すことは、通常、遊興には当たりません。遊興は「客に積極的に遊び興じさせる行為」を指します。ただし音量については騒音規制がかかります。住居系地域では午後11時以降、音響再生装置の使用制限もあるため、用途地域を確認してください。


Q. 騒音規制に違反するとどうなりますか

愛知県条例・風営法のいずれについても、改善命令や営業停止といった行政処分、罰則の対象になり得ます。深夜酒類提供飲食店営業での騒音規制違反は、営業停止処分に直結し得ます。風営法違反の記録が残ると、将来の許可申請にも影響します。


まとめ    SUMMARY

▶カラオケ装置を置くこと自体は規制されない。店側の関与の仕方で結論が変わる
▶スタッフのデュエット・手拍子・掛け声は「接待」に当たり得る
▶スタッフによる選曲・機器操作・イベント開催は「遊興」に当たり得る
▶深夜に遊興と酒類提供を両立するなら特定遊興飲食店営業許可。客室33㎡以上などの要件がある
▶風俗営業1号許可では午前0時以降の営業ができない
▶2025年改正で無許可営業は5年以下の拘禁刑・1千万円以下の罰金(法人3億円)
▶騒音は愛知県条例と風営法施行条例の両方がかかる。深夜の住居系地域は40dB
▶換気ダクトが音の抜け道になるため、換気と防音は同時に設計する


導入を検討する段階で、現在の営業形態・物件の用途地域・想定する運用を整理しておいてください。開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめ、営業できない用途地域はシーシャバーが出店できないエリアの記事をご覧ください。


カラオケ導入の可否判断から、警察署への事前相談までご相談いただけます。


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