
はじめに
「お客様がカラオケをやりたいと言っている」「競合店が導入しているから気になっている」
シーシャバーのオーナー様から、こういったご相談をいただくことが増えています。
カラオケは集客力の高いコンテンツですが、シーシャバーにカラオケを導入するには、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)と騒音規制という2つの大きな法的ハードルがあります。
何も知らずに導入してしまうと、最悪の場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金という刑事罰を受けるリスクがあります。
この記事では、愛知県・名古屋市でシーシャバーを営む方に向けて、カラオケ導入に関わる法律をわかりやすく解説します。
この記事の監修者 : 行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠 風営法・飲食店営業許可を専門とする行政書士。
シーシャバーは、多くの場合、深夜酒類提供飲食店営業の届出をして営業しています。
深夜酒類提供飲食店営業とは、午前0時以降に酒類を提供する飲食店が必要とする届出です。シーシャ(水たばこ)を提供しながらお酒も出している場合、この届出が必要になります。
しかし、深夜酒類提供飲食店営業では、「接待」と「遊興」が厳禁です。
この「接待」と「遊興」の定義を正確に理解することが、カラオケ問題の核心です。
風営法では、「接待」と「遊興」は明確に区別されています。
接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。
風営法に関する解釈運用基準では、以下の行為が接待に該当するとしています。
①お酌など
特定少数の客の近くに座るなどして、継続的に会話の相手になったりお酌をする行為
②ショーなど
特定少数の客に対して、その客が使用している客室や客室の一部でショー、演奏などを見せる行為
③カラオケなど
特定少数の客の近くに座るなどして、その客に対して歌うことを積極的に進めたり、手拍子や掛け声などで盛り上がる行為やデュエットをすること
④ダンスなど
特定の客と一緒に踊る行為、また、客の体に接触しない場合であっても継続してその客と一緒に踊る行為
⑤ゲームなど
特定少数の客とともに、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為
⑥その他
客と体を密着させたり、手を握る等客の体に接触する行為
店側が接待の主体となって積極的に、特定少数の客や特定の客に働きかける、そして客もそのような陥落を期待して来店する、というのが接待行為のポイントです。したがって、単に客のリクエストに応じてカラオケをセットするような行為は接待行為にはあたりません。
「遊興」とは、営業者側が客に対して積極的に遊び楽しませる行為を提供することです。
風営法に関する解釈運用基準では、以下の行為が接待に該当するとしています。
①不特定の客にショー、ダンスその他の興行等を見せる行為
②不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏を聴かせる行為
③客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定に客にダンスをさせる行為
④のど自慢大会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為
⑤カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを推奨し、歌に合わせて照明の演出や歌をもてはやす行為
⑥バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為
ただし、「スポーツバーなどでただ映像を流している」「ダーツバーなどで客が自主的にダーツを楽しむ」など店側の積極的な行為がなければ、そもそも遊興させているとは言えません。
具体的には以下のような行為が遊興とみなされる場合があります。
・スタッフが曲を選んで客に歌わせる
・店内でカラオケ大会などのイベントを開催する
これらの行為を深夜酒類提供飲食店営業の届出のみで行うと、無許可営業となります。
多くのシーシャバーが届出している深夜酒類提供飲食店営業では、接待も遊興も厳禁です。
つまり、この届出のみで営業しているシーシャバーがカラオケを導入すると、以下のリスクが生じます。
カラオケを「遊興」として提供した場合、特定遊興飲食店営業の許可が必要になります。
この許可を取らずに営業した場合の罰則:2年以下の懲役または200万円以下の罰金(風営法第49条)
スタッフがカラオケで一緒に歌ったり、盛り上げたりする行為は「接待」に該当します。
深夜酒類提供飲食店営業で接待を行った場合:風俗営業1号許可の無許可営業とみなされ、同様の罰則が適用されます。
「では、風俗営業1号許可(キャバレー・クラブ等)を取ればいいのでは?」
そう考える方もいますが、風俗営業1号許可には致命的な制限があります。
風俗営業1号許可では、深夜(午前0時以降)の営業ができません。
シーシャバーの営業は深夜が最も賑わう時間帯です。午前0時で営業を終了しなければならないとなると、ビジネスモデルが根本から崩れてしまいます。
「遊興」を深夜も提供したい場合は、特定遊興飲食店営業許可が必要です。
ただし、この許可には厳しい要件があります。
・客室の床面積が33平方メートル以上
・客室の見通しを妨げる設備を設けないこと
・善良の風俗を害する恐れのある写真・広告物がないこと
・学校・病院・図書館・児童福祉施設等から一定距離以上離れていること
・用途地域の制限
・申請者が欠格事由に該当しないこと(過去の風営法違反歴など)
特定遊興飲食店営業許可の取得が困難な場合、「遊興」に該当しない形でカラオケを楽しめる環境を整えるという方法もあります。
・客が完全に自分の意思・操作でカラオケを使う環境を整える
・スタッフは一切カラオケ機器に関与しない
・カラオケイベントや企画を一切行わない
・後述する「5つの鉄則」を厳守する など
ただし、事前に管轄の警察署の生活安全課に相談することを強く推奨します。
深夜酒類提供飲食店営業の届出のみでカラオケ設備を置く場合、以下の5つの鉄則を必ず守ってください。
スタッフが客と一緒に歌うことは「接待」に直結します。
たとえ客から誘われても、断ることをルール化してください。
スタッフが客の歌に対して手拍子を打つ、「上手い!」などと声をかける行為も「接待」に該当します。この点はスタッフ全員に徹底指導が必要です。
スタッフが客のためにカラオケ機器を起動したり、曲を選んだりする行為は「遊興」に該当します。客が自分で機器を操作する環境を整える(マニュアルを置くなど)ことが必要です。
「カラオケ大会」「歌自慢コンテスト」「カラオケ歌い放題プラン」などは「遊興」の典型例です。
SNSでのイベント告知も証拠になりますので注意してください。
上記4つの鉄則を知っているのがオーナーだけでは意味がありません。
・採用時に必ず説明する
・定期的にミーティングで確認する
・チェックリストを作成してスタッフに配布する
・
スタッフの無意識の行動が、オーナーの刑事責任につながります。
風営法と並んでカラオケ導入で注意すべきなのが騒音規制です。
愛知県では、「県民の生活環境の保全等に関する条例」と「風営法施行条例」の2つの法令で飲食店の営業騒音が規制されています。
詳しくは 愛知県公式ウェブサイトを参照して下さい。
飲食店・喫茶店・カラオケボックスは、夜間(午後10時〜午前6時)の営業騒音について、営業所の敷地境界で以下の基準を超えてはなりません。
|
① 第1・2種低層住居専用地域 第1・2種中高層住居専用地域 |
40db |
| ② 近隣商業地域・商業地域・準工業地域 | 50db |
| ③ 工業地域 | 60db |
| ④ 工業専用地域 | 70db |
| ⑤ その他の地域 | 50db |
40dBとは「深夜の住宅街」「図書館の中」程度の静けさです。住居系地域でカラオケを使用する場合、ほぼ完全な防音が必要だと認識してください。
飲食店・喫茶店は、住居系地域(上記表の第1区分)では、午後11時以降に以下の機器を使用してはなりません。
・カラオケ装置
・音響再生装置
・楽器
・拡声装置
・有線ラジオ放送受信装置
ただし、当該音響機器から発生する音が営業所の外部に漏れない場合は、この制限を受けません。
十分な防音設備を整えることで、住居系地域でも深夜帯のカラオケ使用が認められる余地があります。
病院・診療所(入院施設あり)・特別養護老人ホームの周囲50m以内:上記基準からさらに5dB減
住居系地域に接する工業地域・工業専用地域で境界から50m以内:上記基準からさらに5dB減
風俗営業・特定遊興飲食店営業・深夜酒類提供飲食店営業(午前0時〜6時)を行っている場合は、風営法施行条例に基づく騒音基準も適用されます。
| ー |
昼間 |
夜間 |
深夜 |
| 住居系地域 | 55db | 50d(ただし、午後10時以降は、40db) | 40db |
| 近隣商業・準工業・工業・工業専用・その他の地域 | 60db | 55db | 50db |
| 商業地域 | 65db | 60db | 50db |
深夜帯の営業が中心となるシーシャバーでは、最も厳しい「深夜」の基準が常に問題になります。
カラオケの音量は一般的に80〜90dBに達します。住居系地域の規制基準(40dB)をクリアするには、40〜50dB以上の低減が必要です。
愛知県の公式資料では、以下の防音設備による低減効果が示されています。
| 窓アルミサッシ引き違い窓 | 約20dB |
| 窓アルミサッシ二重窓 | 約25〜30dB |
| 窓防音サッシ | 約25〜30dB |
| 換気扇防音カバー | 約30dB |
| 壁コンクリートブロック(モルタル仕上げ) | 約40dB |
| 壁鉄筋コンクリート(モルタル仕上げ) | 約45dB |
| 出入口木製ドア | 約15〜20dB |
| 出入口鉄製ドア | 約20〜25dB |
☐店の外に出て音を聞いてみる(どこからどれくらい漏れているか確認)
☐窓・出入口に隙間がないか、開けっぱなしになっていないか確認
☐カラオケのボリュームを上げすぎていないか確認
☐壁・天井・床の防音性能を確認
☐室外機が住宅側を向いていないか確認
☐出入口が二重構造になっているか確認
☐帰宅する客が店外で大声を出していないか確認
愛知県条例では、飲食店の利用者(お客様)が発生させる騒音で周辺の生活環境を損なう行為も禁止されています。
カラオケで盛り上がったお客様が店外で騒ぐことも、条例違反になり得ます。スタッフによる退店時の声かけを徹底してください。
愛知県条例・風営法のいずれにおいても、騒音規制に違反した場合は行政処分(改善命令・営業停止)や罰則が科される可能性があります。
深夜酒類提供飲食店営業での騒音規制違反は、営業停止処分に直結しえます。風営法違反の前歴がつくと、将来的な許可申請にも悪影響を及ぼします。
カラオケを導入する前に、以下をすべて確認してください。
・現在の営業形態(届出・許可の種類)を確認した
・「接待」と「遊興」の違いを理解した
・カラオケの提供方法が「遊興」に該当するか確認した
・特定遊興飲食店営業許可の要否を確認した
・管轄の警察署生活安全課に事前相談した
・店舗の用途地域を確認した
・適用される騒音規制の基準値を確認した
・現状の防音性能を確認した
・必要な防音工事を実施または計画した
・音響機器の使用制限時間帯を把握した
・5つの鉄則をスタッフ全員に周知した
・採用時の説明マニュアルを作成した
・定期的な法令教育のスケジュールを組んだ
カラオケ導入に関する風営法の判断は、ケースバイケースで非常に複雑です。
「うちは大丈夫だろう」という自己判断は非常に危険です。
当事務所では、愛知県・名古屋市での風俗営業許可申請・深夜酒類提供飲食店営業届出のサポートを行っています。カラオケ導入に際しての法令相談も受け付けています。
所轄警察署との事前相談から届出完了まで、オープン準備中の忙しいオーナー様に代わって手続きを代行します。
まずは無料相談からお気軽にご連絡ください。
行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠
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