この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
「シーシャの料金は取らず、VIPルームの使用料に含めてしまえば手続きが軽くなるのでは」——こうしたご相談を受けることがあります。
結論からお伝えすると、料金の建て付けを変えても、必要な手続きは変わりません。むしろVIPルームの構造によっては、風営法上の別の問題が生じます。
この記事では、この営業形態で押さえるべき3つの論点を整理します。
「シーシャは無料提供」「ルーム代に込み」という料金体系にしても、店内で喫煙させるための条件は変わりません。
理由は、健康増進法の側にあります。
健康増進法施行令第4条第2号は、喫煙目的施設の要件のひとつとして「たばこを販売する者によって、対面によりたばこを販売し」ていることを挙げています。
つまり「販売していない」状態にすると、この要件を満たせなくなります。結果として喫煙目的施設として成立せず、屋内は原則禁煙になります。
料金に含めれば許可が不要になるのではなく、販売の形をなくすと、そもそも店内で吸わせられなくなるという構造です。
【実務上のポイント】
料金体系を工夫して手続きを軽くする、という発想はシーシャバーでは機能しません。たばこの販売許可は、店内喫煙の前提条件だからです。
VIPルーム込みの料金にすること自体は問題ありませんが、それとは別に、たばこの対面販売の形を整える必要があります。喫煙目的施設の要件は改正健康増進法のガイドで解説しています。
風営法第2条第1項第3号は、「他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが5平方メートル以下である客席」を設けて客に飲食をさせる営業を、風俗営業のひとつとしています。
| 客席の状態 | 3号営業に該当するか |
|---|---|
| 5㎡以下だが、他から見通せる | 該当しない |
| 見通しは困難だが、5㎡を超える | 該当しない |
| 5㎡以下で、かつ他から見通すことが困難 | 該当する |
該当すると風俗営業許可が必要になり、午前0時以降の営業ができなくなります。深夜帯が売上の中心になるシーシャバーにとって、これは業態の前提が崩れる話です。
VIPルームを設計する段階で、面積と見通しの両方を確認してください。
午前0時以降に酒類を提供する場合は、さらに客室の床面積が9.5㎡以上(客室が1室のみの場合を除く)という条件が加わります。
▶5㎡以下かつ見通し困難/営業時間を問わず3号営業に該当
▶5㎡超〜9.5㎡未満/深夜営業をするなら不可
▶9.5㎡以上/どちらの営業形態でも可
面積基準の詳細はシーシャバーに個室は作れるかを解説した記事をご覧ください。
「スタッフが個室に入ると接待になるのでは」というご質問をよくいただきます。
シーシャの調整、炭の交換、フレーバーの説明のために入室し、作業が終われば退室する。この形であれば、通常の接客業務として扱われます。
風営法上の接待は「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」であり、特定少数の客に対して継続的・積極的に働きかけることが判断の軸になります。
シーシャの調整を終えたあとも個室に留まり、客と継続的に会話したり同席して飲食したりすれば、接待と評価される可能性が高まります。
この場合は風俗営業許可が必要になり、無許可であれば5年以下の拘禁刑もしくは1千万円以下の罰金(法人は3億円以下の罰金)という重い法定刑の対象になります。2025年の風営法改正で引き上げられた水準です。
【実務上のポイント】
個室は、この線引きが崩れやすい場所です。他の客の目がなく、外からも見えないため、状況がエスカレートしやすくなります。
「作業が終わったら退室する」というルールを明文化し、客から引き止められたときの断り方まで決めておいてください。接待の判断基準は接待の境界線を解説した記事で整理しています。
▶客席の面積は5㎡を超えているか
▶深夜営業をするなら、客室は9.5㎡以上あるか
▶深夜営業をするなら、見通しを妨げる設備になっていないか
▶たばこの対面販売の形が整っているか
▶スタッフの入退室のルールが決まっているか
▶換気が個室の中まで機能する設計になっているか
最後の項目も重要です。シーシャは煙の量が多いため、個室の換気が不十分だと客の滞在環境が悪化します。設計上の注意点はシーシャバーの換気設備と法律の記事をご覧ください。
午前0時前に閉店する営業であれば作れます。見通しの制限は深夜酒類の届出をする場合にかかるものだからです。ただし、5㎡以下で見通しが困難な客席は、営業時間を問わず3号営業に該当します。0時閉店のメリットは午前0時で閉める3つのメリットの記事で解説しています。
料金設定そのものに規制はありません。問題になるのは、料金体系ではなく店舗の構造と接客の実態です。「個室代に何を含めるか」より、「その個室がどういう構造か」「そこでスタッフが何をするか」のほうが判断を左右します。
「あのスタッフに作ってほしい」という技術サービスへの指名であれば、それ自体が接待になるわけではありません。ただし、指名を売りにした料金体系を設け、歓談が主体になるようであれば、実態として接待に近づきます。設計する前に警察署へ相談してください。
▶料金体系を変えても、必要な手続きは軽くならない
▶むしろ「販売していない」状態にすると、喫煙目的施設の要件を満たせなくなる
▶5㎡以下かつ見通し困難な客席は、風営法3号営業に該当する
▶深夜営業をするなら、客室9.5㎡以上と見通しの条件もかかる
▶シーシャの作業のための入室は接待にならないが、留まって歓談すると評価が変わる
▶個室は線引きが崩れやすい場所。スタッフのルールを明文化する
VIPルームは、面積・見通し・接客・換気の4つが同時に絡む設計です。内装に着手する前にご相談ください。
開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめをご覧ください。
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