この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
飲食店営業許可の図面で不備を指摘されやすいのが、換気設備の記載です。シーシャバーは炭でフレーバーを加熱する業態であり、通常の飲食店にはない一酸化炭素のリスクを抱えています。
ポイントは、法律の最低基準を満たすことと、シーシャバーとして安全な環境を作ることは別だということです。
この記事では、換気に関わる法的基準と、申請図面で何をどう書けばいいかを整理します。
シーシャはフレーバーを炭で加熱する構造です。炭が燃焼する過程で一酸化炭素が発生します。
一酸化炭素は無色・無臭で、人の感覚では気づけません。濃度が上がっても分からないまま、頭痛やめまい、吐き気といった症状が出ることになります。
東京都は2025年3月、水たばこ(シーシャ)による一酸化炭素中毒の危険について注意喚起を公表しています。換気扇をつける、扉や窓を開けるなどして室内の一酸化炭素濃度を下げるよう呼びかける内容です。
これは客の安全の話であると同時に、長時間その場にいるスタッフの安全の話でもあります。
出典:東京都「水たばこ(シーシャ)一酸化炭素中毒の危険」(2025年3月)
シーシャバー専用の基準があるわけではありません。飲食店や建築物に共通する基準が、炭を使う業態では特に厳しく効いてきます。
| 法律 | 基準 | 対象 |
|---|---|---|
| 建築基準法 | 居室の換気設備に必要な換気量の基準 | 建物の居室 |
| 建築物衛生法 | 一酸化炭素6ppm以下、二酸化炭素1,000ppm以下 | 特定建築物(一般の飲食店でも目安になります) |
| 事務所衛生基準規則 | 換気設備を設けている場合の一酸化炭素の基準 | 労働者の作業環境 |
| 健康増進法 | 喫煙室の技術上の基準(気流・区画・屋外排気) | 喫煙室を設ける施設 |
建築物環境衛生管理基準における一酸化炭素の含有率は、令和4年4月1日から「10ppm以下」から「6ppm以下」に改正されました。あわせて、外気の濃度が高い場合の特例規定も削除されています。
「10ppm以下」と書いている記事は、改正前の数値です。
出典:厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」(令和4年4月1日施行の改正を反映)
シーシャバーのスタッフは労働者です。事務所衛生基準規則は、作業環境における一酸化炭素の基準を定めています。
スタッフは営業時間中ずっとその環境にいるため、客より長く一酸化炭素にさらされる立場にあります。換気は客の安全だけでなく、働く人の安全の問題です。
シーシャバーは喫煙目的施設として店内で喫煙できる業態なので、喫煙室を別に設ける必要はありません。
ただし参考として、喫煙室の技術上の基準は次の3つです。
▶出入口で、室外から室内に0.2m/秒以上の気流があること
▶煙が室外に流出しないよう、壁・天井等で区画されていること
▶煙を屋外へ排気すること
シーシャバーでは店全体が喫煙空間なので「室外に流出しない」は直接の問題になりませんが、「煙を屋外へ排気する仕組み」は保健所でも確認されます。
排気(換気扇)だけ描いて、給気口を描いていない図面が非常に多くあります。これが最も多い不備です。
空気は入口と出口の両方がなければ流れません。給気口の位置も必ず記載してください。
給気口と排気口が隣り合っていると、空気が室内をめぐらずに短絡してしまいます。
できるだけ対角に配置し、室内全体の空気が入れ替わる設計にしてください。
丸を描いて「換気扇」とだけ書いた図面では、それが給気なのか排気なのか分かりません。「換気扇(排気)」「給気口」のように役割を書き込んでください。
【実務上のポイント】
差し戻しの原因は、ほとんどが「排気だけ描いて給気がない」というパターンです。
また、客席の換気ばかり詳しく描かれていて、調理場の換気扇が図面に出てこないケースもよくあります。この2つは別物です。事前相談の段階で「シーシャバーなので炭を使います」と伝えたうえで、配置を確認してもらうのが確実です。図面全般の書き方は飲食店営業許可に必要な図面の記事をご覧ください。
建築基準法の換気量の基準は、通常の居室を想定したものです。炭を燃焼させるシーシャバーでは、この基準を満たしていても一酸化炭素の濃度が上がる可能性があります。
内装業者や設備業者と相談する際は、「建築基準法の最低基準」ではなく「シーシャバーとして安全に保てる換気量」を基準にしてください。
換気量の設計は設備業者の専門領域です。行政書士が計算するものではありません。ただし、「炭を常時使用する業態である」という情報を必ず伝えること。これを伝えないと、通常の飲食店として設計されます。
警報器の設置が法的に義務づけられているわけではありませんが、設置をおすすめします。
一酸化炭素は無色・無臭なので、濃度が上がっても人の感覚では気づけません。警報器があれば、危険な水準に達する前に対応できます。
家庭用のものであれば数千円程度で購入できます。開業費用全体から見れば小さな額です。
見落とされがちですが、換気が弱い店ではスタッフが長時間働けません。
夏場は炭の熱も加わります。ワンオペで長時間という体制は、換気の能力次第で成り立たなくなります。設備投資と人件費はトレードオフではなく、連動していると考えてください。詳しくはスタッフは何人必要かの記事をご覧ください。
換気設備は、物件によって設置できる能力の上限が決まってしまいます。
▶ダクトを建物の外に出せるか
▶排気の経路について、建物のオーナーや管理会社の承諾を得られるか
▶上階や隣接テナントとの関係で、煙や臭いの問題が起きないか
▶必要な電気容量を確保できるか
ダクトを外部に出せない物件では、シーシャバーはそもそも成立しません。内見の段階で確認してください。物件選びの確認事項は出店できないエリアの記事、契約書の条項は賃貸契約書チェックリストの記事にまとめています。
【実務上のポイント】
換気は防音とも関係します。ダクトは煙の通り道であると同時に、音の通り道でもあります。
深夜営業をする場合、騒音の基準を満たすには開口部の対策が必要になりますが、換気のために開口を大きく取るとそこから音が漏れます。この2つは同時に設計する必要があります。騒音の基準はカラオケと騒音規制の記事で扱っています。
前のテナントが飲食店なら設備は残っていますが、シーシャの煙量に対応できるかは別の話です。通常の飲食店向けの能力では足りず、ダクトの増設が必要になることがあります。費用が想定を超える原因になりやすい部分なので、契約前に設備業者に見てもらってください。
補助にはなりますが、それだけでは足りません。営業時間中ずっと窓を開けておくのは、季節や騒音の面で現実的ではありません。機械換気で常時排気できる設備を前提に設計してください。
設計・施工は内装業者や設備業者の領域です。行政書士が換気量を計算するわけではありません。ただし、保健所に提出する図面への記載方法や、どの基準を満たす必要があるかの整理はご相談いただけます。設備業者が作った図面を申請用に落とし込む作業もお手伝いできます。
▶シーシャは炭の燃焼により一酸化炭素が発生する。無色・無臭で気づけない
▶建築物環境衛生管理基準の一酸化炭素は、令和4年4月から6ppm以下
▶スタッフは客より長時間さらされる。労働安全の問題でもある
▶図面には給気口と排気口の両方を、役割を明記して描く
▶給気と排気は対角に配置し、空気が流れる設計にする
▶客席の換気と調理場の換気は別物として設計する
▶設備業者には「炭を常時使用する業態」であることを必ず伝える
▶ダクトを外部に出せない物件では成立しない。内見で確認する
換気は「空気を入れ替えればいい」という単純な話ではありません。換気量の設計は設備業者に、法的要件の整理と図面作成は行政書士に。それぞれの専門と連携するのが確実です。
開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめをご覧ください。
保健所への事前相談から図面作成まで、内装業者との連携も含めて対応しています。
「この換気設備で申請が通るか」という確認だけでも構いません。LINEなら夜間・土日も対応します。
\『換気設備の相談』と送るだけ/