シーシャバーの飲食店営業許可が取り消される7つのケース|停止・禁止・取消しの違いも解説

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。


飲食店営業許可は、取得したら終わりではありません。営業を続けるなかで一定の事情が生じれば、営業の停止や許可の取消しといった処分の対象になります。
ポイントは、「営業停止」「営業禁止」「許可取消し」は効果がまったく違うことです。取消しになれば、営業を再開するには新規申請からやり直しになります。


この記事では、根拠となる条文を確認したうえで、シーシャバーで起こりやすい7つのケースを整理します。



3つの処分は効果が違います    DIFFERENCE

食品衛生法第60条は、営業者がこの法律等に違反した場合について、営業許可の取消し、営業の全部または一部の禁止、期間を定めた営業の停止を定めています。


処分 内容 営業再開までの流れ
営業停止 期間を定めて営業を止めさせる処分。日数は自治体の基準で決まります 期間が明ければ再開できます
営業禁止 期間を定めず、原因が除去されるまで営業させない処分 原因を除去し、禁止の解除を受ける必要があります
許可取消し 許可そのものが失われます 新規に許可を取り直す必要があります


【実務上のポイント】
営業停止と許可取消しでは、事業へのダメージがまったく違います。
停止は期間が明ければ元に戻りますが、取消しになれば、施設の検査からやり直しです。その間に賃料は発生し続けます。
さらにシーシャバーの場合、飲食店営業許可がなければ喫煙目的施設としても成立しません。店内でシーシャを提供する根拠も同時に失われます。


処分の基準は自治体が定めています    STANDARD

どのような場合にどの処分を行うかは、各自治体が行政処分の基準を定めています。


停止の日数の決め方も自治体によって異なります。原因の究明と除去に要する日数、施設の改善に要する日数、従事者の教育に要する日数などを考慮して決められるのが一般的です。


営業所の所在地を管轄する自治体の基準を確認してください。


ケース① 食中毒を発生させた    CASE 1

最も典型的なケースです。提供した飲食物が原因で健康被害が生じた場合、営業停止などの処分の対象になります。


【実務上のポイント】
シーシャバーは「調理をあまりしないから食中毒とは無縁」と思われがちですが、そうとは言えません。
氷、カットフルーツ、生のミント、作り置きのシロップ。シーシャバーのドリンクには、温度管理と衛生管理が必要な素材が意外と多くあります。
とくに深夜帯のワンオペでは、手洗いやグラスの洗浄が雑になりやすい時間帯です。オペレーションの設計段階で意識してください。


ケース② 施設が基準に適合しなくなった    CASE 2

食品衛生法第61条は、営業の施設が基準に合わなくなった場合について、施設の改善を命じ、または営業の禁止・停止をすることができると定めています。


許可を取ったときは基準を満たしていても、営業を続けるなかで状態は変わります。


▶手洗い設備の水栓が壊れて、再汚染防止構造でなくなった
▶シンクを撤去した、あるいは物置になっていて使えない
▶調理場と客席の仕切り(扉)を外した
▶換気設備が故障したまま使っている
▶冷蔵設備の温度管理ができていない


とくに多いのが、レイアウト変更のついでに設備を動かしてしまうケースです。設備の基準は保健所検査の調理場・シンクの設備ルールの記事で解説しています。


ケース③ 食品衛生責任者が不在になった    CASE 3

食品衛生責任者は施設ごとに置かなければなりません。


スタッフに資格を取らせていた場合、その方が退職すれば責任者が不在の状態になります。これは法令違反の状態です。


【実務上のポイント】
この状態は、本人が気づかないまま続いていることが多くあります。退職の手続きのなかで、食品衛生責任者の選任まで意識が及ばないためです。
オーナー自身が資格を取っておけば、この問題は起こりません。講習は1日で修了でき、費用も他の手続きに比べて小さい額です。詳しくは食品衛生責任者の記事をご覧ください。


ケース④ 衛生管理の義務を果たしていない    CASE 4

現在の食品衛生法では、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が営業者の義務とされています。


具体的には、衛生管理計画を作成し、それにもとづいて実施し、記録を残すことです。


「小規模だから関係ない」ということはありません。飲食店向けには簡易な手引書が用意されており、それに沿った運用が求められます。


▶衛生管理計画を作成しているか
▶日々の記録を残しているか
▶従事者の健康状態を確認しているか
▶手洗いや器具の洗浄について、手順を決めているか


立入検査で最初に確認されるのが、この記録です。


ケース⑤ 改善命令に従わなかった    CASE 5

行政処分は、いきなり取消しから始まるわけではありません。多くの場合、指導や改善命令が先に来ます。


問題になるのは、その指導や命令に従わなかった場合です。


放置すると処分が重くなります

指摘を受けた時点で対応していれば、指導で終わる話です。期限までに改善しない、同じ指摘を繰り返す、といった状態が続くと、処分の段階が上がっていきます。
「言われたけれど工事の費用が出せない」という理由で放置するのが、最も避けたいパターンです。費用がかかるなら、その旨を伝えて相談してください。


ケース⑥ 申請や届出に虚偽があった    CASE 6

申請の内容と実態が異なっていた場合も問題になります。


▶申請時の図面と実際の施設が大きく違う
▶実際とは異なる営業者の名義で許可を受けている
▶食品衛生責任者として届け出た人が、実際には関与していない


とくに名義の問題は、シーシャバーで論点になりやすい部分です。


【実務上のポイント】
共同経営や間借りの形で始める場合、許可の名義と実際の運営者がずれやすくなります。
「出資者は別にいるが、名義は自分」という状態が名義貸しと評価されれば、深刻な問題になります。詳しくは共同経営と名義設計の記事間借りで適法に開業する方法の記事をご覧ください。


ケース⑦ 有効期間が切れたまま営業していた    CASE 7

飲食店営業許可には有効期間があります。期間が切れた状態で営業を続ければ、無許可営業です。


これは「取り消される」のではなく、そもそも許可がない状態になります。遡って更新することはできず、新規申請からやり直しです。


▶有効期間は許可証に記載されている(おおむね5〜8年)
▶更新の案内が必ず届くとは限らない
▶無許可営業は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象


更新の手続きは飲食店営業許可の更新の記事で解説しています。


他の法律の違反はどう影響するか    OTHER

ここは誤解されやすい部分です。


風営法違反で飲食店営業許可が取り消されるわけではありません

食品衛生法にもとづく処分は、食品衛生法やそれに基づく処分に違反した場合を対象としています。
風営法違反、たばこ事業法違反、消防法違反によって、飲食店営業許可が直接取り消されるわけではありません。それぞれの法律で、それぞれの処分があります。


ただし、影響がないという意味ではありません。


違反 結果
風営法違反(接待の無許可営業など) 刑事罰のほか、一定期間は風俗営業の許可を受けられない欠格事由に当たります
たばこ事業法違反(無許可販売など) 同法の罰則の対象。あわせて、対面販売がなければ喫煙目的施設として成立しません
消防法違反(防火管理者の未選任など) 消防法にもとづく指導・命令の対象になります


シーシャバーは4つの許認可で成り立っている業態です。どれか1つが崩れれば、営業そのものが止まります。許可ごとの欠格事由は犯罪歴がある場合の記事で整理しています。


処分を避けるためにできること    PREVENT


▶許可証の有効期間をカレンダーに入れておく
▶食品衛生責任者はオーナー自身が取得しておく
▶衛生管理計画を作り、記録を残す習慣をつける
▶レイアウトや設備を変えるときは、事前に相談する
▶指摘を受けたら、その場で対応方針を確認する
▶変更が生じたら届出をする(複数の窓口に連鎖します)


変更届の整理はシーシャバー運営で必要な全変更届の記事をご覧ください。


よくある質問    FAQ


Q. 営業停止になったら公表されますか

自治体によっては、行政処分の内容を公表しています。公表の範囲や期間は自治体の運用によります。飲食店にとって、処分そのものより公表による影響のほうが大きいこともあります。


Q. 許可が取り消されたら、すぐ申請し直せますか

新規申請として手続きをやり直すことになります。ただし、取消しの原因が解消されていなければ、改めて許可を受けることはできません。また、取消しの理由によっては、一定期間は許可を受けられない場合もあります。状況を整理したうえで保健所に相談してください。


Q. 処分に納得できない場合はどうすればいいですか

行政処分に対しては、行政不服審査法にもとづく審査請求や、取消訴訟といった手段があります。ただし、争うより先に、処分に至る前の段階で対応するほうが現実的です。指導や弁明の機会がある段階で、専門家に相談してください。


まとめ    SUMMARY

▶食品衛生法第60条により、許可の取消し・営業の禁止・停止が定められている
▶停止は期間限定、禁止は原因が除去されるまで、取消しは許可そのものが失われる
▶処分の基準と停止日数の決め方は、自治体ごとに定められている
▶食中毒、施設基準への不適合、責任者の不在、衛生管理の不備が主な原因
▶改善命令に従わない、申請に虚偽がある場合も対象になる
▶有効期間が切れたまま営業すれば、そもそも無許可営業
▶風営法違反で飲食店営業許可が直接取り消されるわけではないが、別の処分がある


シーシャバーにとって、飲食店営業許可を失うことは、店内でシーシャを提供する根拠を同時に失うことを意味します。喫煙目的施設の要件が満たせなくなるためです。


開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめ、飲食店営業許可の手続きは飲食店営業許可の記事をご覧ください。


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