著者:行政書士 猪飼久遠 | シーシャ開業専門の行政書士
飲食店営業許可は、取ったら終わりではありません。営業開始後であっても、法令違反や施設基準の不適合があれば、許可の取消しを含む行政処分の対象になります。
「営業停止」「営業禁止」「許可取消し」──この3つの処分の違いと、シーシャバーで実際に起こりうる取消し事由を整理します。
食品衛生法に基づく行政処分は、軽い順に「営業停止」「営業禁止」「許可取消し」の3段階です(食品衛生法第55条・第56条)。
| 処分 | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 営業停止 | 期間を定めて営業を止められる | 3日〜10日が多い |
| 営業禁止 | 期間の定めなく営業を禁じられる | 原因が解消されるまで |
| 許可取消し | 許可そのものが消滅する | 取消し後2年間は再申請不可 |
営業停止は「一時的に止める」処分ですが、許可取消しは許可そのものがなくなります。取り消された日から2年間は再申請ができません(食品衛生法第52条第2項第1号)。さらに、処分を受けた事実はインターネット等で公表されます(食品衛生法第69条)。
以下は、食品衛生法の条文と各自治体の処分基準をもとに整理した、許可取消しに至り得るケースです。シーシャバーで実際に起こりやすいものを中心にピックアップしています。
飲食店の許可取消しで最もイメージしやすいケースです。食品衛生法第6条(不衛生な食品の販売禁止)に違反した場合、処分の対象になります。
処分の重さは被害の程度と悪質性によって段階が変わります。衛生上の危害がなく人体に害がなかった場合は営業停止3日以内、危害拡大のおそれがある場合や人体に害を与えた場合は営業停止10日以内または営業禁止、営業を継続することが衛生上・公益上危険な場合や事犯が著しく悪質な場合は許可取消しです。
シーシャバーでフードを提供している場合は対象になります。「ドリンクだけだから関係ない」と思いがちですが、氷や水の衛生管理不備でも食中毒は発生します。
開業時に保健所の検査を通過していても、その後の改装や設備の故障で施設基準を下回った場合、食品衛生法第56条に基づく処分対象になります。
シーシャバーで起こりやすいのは以下のパターンです。
・手洗い設備の撤去・使用不能
レイアウト変更時に手洗い設備を外してしまう、または物を置いて使えない状態にしているケース。保健所検査で見られるポイントを開業後も維持する必要があります。
・換気設備の故障放置
換気扇が壊れたまま営業を続けている場合。特にシーシャバーは炭を使う業態なので、換気設備の不備は衛生上の問題に直結します。
・調理場と客席の区画が崩れている
営業中にレイアウトを変えた結果、図面で申請した区画と実態がズレているケース。
関連記事:シーシャバーの保健所検査で落ちない!調理場・シンクの設備ルール
飲食店営業許可の要件として、各施設に食品衛生責任者を1名以上設置する義務があります(食品衛生法第48条第1項)。
開業時に食品衛生責任者を登録していても、その人が退職して後任を選任していない状態は法令違反です。シーシャバーは少人数で運営しているケースが多く、スタッフの入れ替わり時に食品衛生責任者の変更届を出し忘れるパターンがあります。
関連記事:シーシャバー開業に必須の食品衛生責任者とは?講習が間に合わない時の裏技
2021年6月から、原則すべての飲食店にHACCPに沿った衛生管理が義務化されています(食品衛生法第50条の2第2項)。小規模事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」で足りますが、衛生管理計画の策定と記録の保存は義務です。
「うちは小さいシーシャバーだから関係ない」は通用しません。策定していない場合は食品衛生法違反であり、処分の対象になります。
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(小規模事業者向け)とは、厚生労働省が公開している手引書に沿って衛生管理計画を策定し、日々の実施状況を記録・保存するものです。複雑な仕組みではありませんが、書面として整備しておく必要があります。
営業開始後であっても、欠格事由に該当した場合は許可取消しの対象になります(食品衛生法第52条第2項→第55条)。
具体的には、食品衛生法またはこれに基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わってから2年を経過していない場合です。法人の場合は、役員のうち1人でもこの欠格事由に該当すると、法人全体の許可が取消し対象になります。
関連記事:過去に犯罪歴があってもシーシャバーは開業できる?許可ごとの欠格事由を行政書士が解説
飲食店営業許可には、保健所が許可時に条件を付すことがあります(食品衛生法第52条第3項)。この条件に違反した場合も取消し事由に該当します。
許可条件は許可証に記載されています。許可証を受け取った後、条件欄を確認しないまま営業を始めているケースは少なくありません。
営業停止処分を受けたにもかかわらず営業を続けた場合、「事犯が著しく悪質」として一段階重い処分──すなわち許可取消しに発展します。
「3日だけ止められたけど、売上が厳しいから営業した」は最悪のパターンです。3日の停止が許可取消し+2年間の再申請不可に変わります。
現場を知る行政書士として
7つのケースの中で、シーシャバーで最も起こりやすいのは❷(施設基準の不適合)と❸(食品衛生責任者の未設置)です。開業時に全てクリアしていても、日々の営業の中で少しずつ基準からズレていくことがあります。特に少人数で運営しているシーシャバーでは、スタッフの退職時に食品衛生責任者の変更届を忘れるケースが多い。許可を取った後こそ、定期的に自店の状態を確認してください。
許可取消しは、営業停止や営業禁止とは次元が違う重さです。
・2年間は再申請ができない
食品衛生法第52条第2項第1号により、許可を取り消された日から2年間は欠格事由に該当し、新たに飲食店営業許可を申請しても不許可になります。
・処分の事実が公表される
食品衛生法第69条に基づき、処分の事実がインターネットを含む方法で公表されます。店名と処分内容が公開されるため、仮に2年後に再申請して許可を得ても、検索すれば過去の処分歴が出てくる状態になります。
・法人の場合は役員全員に影響する
法人で許可を取り消された場合、その役員全員が欠格事由に該当します。別の法人を設立して申請し直しても、同じ役員がいる限り許可は下りません。
・他の許可にも連鎖する可能性がある
飲食店営業許可が取り消された場合、深夜酒類提供飲食店営業の届出も意味を失います(飲食店営業許可が前提のため)。シーシャバーの場合、飲食店営業許可の取消しは事実上の全面閉店を意味します。
飲食店営業許可の取消し事由は、食中毒のような大きな事件だけではありません。施設基準の維持、食品衛生責任者の設置、HACCP衛生管理計画の策定──開業後の「当たり前の管理」を怠った結果、許可を失うケースがあります。
特にシーシャバーは、飲食店営業許可・たばこ販売許可・深夜酒類提供飲食店営業届出と、複数の許認可を束ねて営業しています。1つが崩れれば他も連鎖的に影響を受けます。許可を取ることがゴールではなく、許可を維持し続けることが経営の基盤です。
許可の更新手続きも忘れずに確認してください。
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