風俗営業(社交飲食店)の許可申請では、営業所の周りに保全対象施設がないことを示す図面を添付します。これが「営業所を中心とした100m半径略図」、いわゆる100m略図です。一見ただの地図に見えますが、縮尺・起点・複製の許諾など決まりごとが多く、雑に作ると受理されません。本記事では、社交飲食店(1号営業)の開業を念頭に、この略図をゼロから作る手順を、実際に使う道具とともに解説します。
この記事は、行政書士久遠事務所が、警察庁の解釈運用基準および各種公式情報に基づき執筆しています。略図に書き込む保全対象施設をどう探すか(現地調査・建設予定地の確認など)は、別記事「【風営法許可】保全対象施設の調査方法」で詳しく解説しています。本記事は、その調査結果を載せる「図面そのものの作り方」に絞った内容です。
100m略図は、営業所を中心として、半径100mの範囲に学校・病院・保育所などの保全対象施設があるかどうかを示す図面です。営業所が商業地域にある場合の距離制限は最大でも70mですが、略図に記載する範囲は距離制限にかかわらず半径100mまでとするのが実務上のルールです。商業地域だからといって70mで作図を打ち切ってはいけません。
なお、保全対象施設の種類と距離は都道府県条例で異なります。愛知県の場合は次のとおりです。
| 保全対象施設 | 準住居地域・その他の地域 | 商業地域 |
|---|---|---|
| 学校(大学を除く)・幼保連携型認定こども園 | 100メートル以内 | 70メートル以内 |
| 保育所・病院・有床診療所 | 50メートル以内 | 30メートル以内 |
(参照: 愛知県 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(第四条))
言葉だけでは分かりにくいので、まず仕組みを図で示します。営業所を中心に距離ごとの線を引き、範囲内の保全対象施設を拾い出す――これが100m略図の基本構造です。
略図の土台になるのは、正確な縮尺の地図です。距離を測る図面である以上、適当な地図では役に立ちません。実務では株式会社ゼンリンの住宅地図を使うのが一般的で、次のようなサービスが利用できます。
・ゼンリン住宅地図プリントサービス:必要な場所の住宅地図をコンビニのマルチコピー機で印刷できる
・ゼンリン住宅地図出力サービス:必要な場所の住宅地図をインターネットで出力できる
・ZNET TOWN:必要なエリアの住宅地図をネットで閲覧・出力でき、印刷時に縮尺を1000分の1に設定できる
申請書に添付する100m半径略図には、1000分の1(S=1:1000)の縮尺の地図を使います。縮尺はスケールバーで必ず確認してください。1:1000なら、地図上の10cmが実際の100mにあたります。半径100mの円を描くと、地図上では半径10cmの円になります。
用意した地図に、調査範囲を書き込みます。ここで最も重要なのは、距離の起点は「営業所の外壁」であって、営業所の中心ではないという点です。中心から測ってしまうと距離が短く出てしまい、本来かかるはずの施設を見逃す原因になります。
まず、営業所の外壁から10m・20m・50m・100mの位置に、三角定規を使って平行線を引きます。
次に、引いた線同士をコンパスでつなぎます。こうすると、営業所の外壁のどの部分からも10m・20m・50m・100mの位置に線が引かれた状態になり、営業所の形に合わせた楕円が出来上がります。これが100m略図の骨格です。
距離は水平面の直線距離で測ります。営業所がビルの2階以上や地下にある場合も、その位置から垂直に地面へ下ろした地点を起点とします。
骨格ができたら、調査で確認した保全対象施設を地図に落とし込みます。半径100m以内の建物を一つずつチェックします。記録方法に決まった様式はなく、後で自分が分かれば構いません。この下調べをもとに、提出用の清書版を仕上げます。
営業所が商業地域にあって距離制限が70m・30mであっても、半径100m以内の保全対象施設はすべて記載します。
保全対象施設の探し方そのもの(医療情報ネット「ナビイ」での病床確認、通信制高校の判別、建設予定地の確認など)は、保全対象施設の調査方法の記事で詳しく解説しています。略図はあくまで「調査結果を正確に載せる器」だとお考えください。
意外と忘れられがちなのが、この工程です。ゼンリンの地図を出力して申請書に添付する際は、複製の許諾を証する「複製許諾証」の貼付が必要です。地図は著作物であり、無断で複製して提出するのは適切ではありません。
複製許諾証は、株式会社ゼンリン、で購入できます。1枚あたりの単価で販売されており、出力した地図に貼り付けて使います。正規の手続きを踏むことで、安心して図面を提出できます。
ここまでの工程を経て完成した略図は、おおむね次のようなイメージになります(下図は解説用に作成した架空の例です)。用途地域を色分けし、同心円と番号付きの保全対象施設、凡例、距離の一覧表をひとつの図面にまとめます。
申請書類には、100m半径略図のほかに「営業所周囲の略図」を求められることがあります。両者は似ていますが役割が異なります。100m半径略図が保全対象施設との距離を示す図面であるのに対し、営業所周囲の略図は、最寄り駅や主要道路からの位置関係など営業所の場所を分かりやすく示すための図面です。どちらも管轄警察署によって求める様式や記載事項が異なる場合があるため、申請前に必ず管轄の生活安全課で確認してください。
・1:1000の縮尺の地図を用意したか(スケールバーで確認)
・距離の起点を営業所の外壁にしたか(中心ではない)
・外壁から10m・20m・50m・100mの線を引き、コンパスでつないだか
・商業地域でも半径100m以内の施設をすべて記載したか
・複製許諾証を貼付したか
・管轄警察署に様式・記載事項を確認したか
100m略図は、保全対象施設の調査結果を「正確に・誰が見ても分かる形で」示すための図面です。縮尺と起点を間違えなければ、作図自体は決して難しくありません。とはいえ、規定距離との差が1m未満のようなギリギリの立地では、土地家屋調査士や測量士による測量図の添付を求められることもあり、判断に迷う場面も出てきます。図面の作成に不安があれば、調査と併せて専門家に任せるのが確実です。
愛知県の社交飲食店開業をお考えの方へ
行政書士久遠事務所では、100m半径略図・営業所周囲の略図の作成から、保全対象施設の現地調査、許可申請の代行までワンストップで対応しています。シーシャバーをはじめとする現場経験をふまえ、受理される図面づくりをお手伝いします。「図面作成だけ」「この物件で許可が取れるかの事前確認だけ」でもお気軽にどうぞ。
【行政書士久遠事務所】
風営法許可の要否判定から申請・取得・更新・変更届まで、
風俗営業に関わる各種手続きをワンストップでサポートします。
✓ 初回相談無料✓ 名古屋市内出張対応✓ 許可の維持管理サポート