風俗営業の許可を取って開業すると、必ず備え付けなければならない書類のひとつが従業者名簿です。「従業員名簿でしょ、履歴書があれば十分では?」と考えてしまう方が非常に多いのですが、これは風営法で定められたまったく別物の法定書類です。
これから社交飲食店(1号営業)やコンカフェ、ガールズバー、シーシャバー(深夜酒類提供飲食店)などを開業する経営者の方に向けて、従業者名簿とは何か、何を書けばよいのか、いつまでに用意すればよいのかを、一次資料に基づいて整理します。
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この記事の要点
・従業者名簿は風営法第36条で備付けが義務付けられた法定書類(履歴書とは別物)
・必須記載事項は法令で決まっており、書き漏れは「不備」として処罰対象になりうる
・店側(営業者)が作成するもので、キャストが書くものではない
・構造検査(実査)の時点では「用紙」を用意しておけばOK
従業者名簿は、風俗営業を営む者が営業所ごとに備えておかなければならない名簿です。根拠となる条文は風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)第36条で、営業に従事する者の住所・氏名その他の事項を記載した名簿を営業所ごとに備えなければならないと定められています。
備付け義務があるのは風俗営業者(社交飲食店・マージャン店・ゲームセンター等の1号〜5号営業)だけではありません。特定遊興飲食店営業(クラブ・ライブハウス等)、深夜酒類提供飲食店営業(バー・居酒屋・ガールズバー・シーシャバー等)も対象です。深夜0時以降にお酒を出すお店であれば、許可営業でなくても従業者名簿が必要になるという点は見落とされがちなので注意してください。
従業者の住所・氏名を書くという点では履歴書と似ていますが、両者はまったく別の書類です。履歴書は採用される側(キャスト等)が自分について書くものですが、従業者名簿は採用する側、つまり営業者が作成するものです。法律で記載すべき項目が決まっているため、履歴書のコピーを添付しただけでは「不備」と判断されることがあります。
従業者名簿に書くべき事項は、法令で具体的に決まっています。法定の様式(決まったフォーマット)はありませんが、必須記載事項が漏れていると名簿不備となるため、店独自の様式を作る場合も以下を必ず盛り込んでください。
従業者名簿の必須記載事項
・住所
・氏名
・性別
・生年月日(及び確認年月日)
・国籍・地域(及び確認年月日)
・従事する業務の内容
・採用年月日
・退職年月日
このうち性別・生年月日・採用年月日・退職年月日・従事する業務の内容については、風営法第36条を受けた内閣府令(風営法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令)第25条に記載事項として定められています。これに住所・氏名(法第36条本文)と、年齢・国籍等の確認(法第36条の2)を合わせたものが、実際に名簿へ書くべき内容になります。
実務で最も多い不備が「確認年月日」の記入漏れです。生年月日と国籍・地域には、それぞれ「いつ確認したか」を書く欄があります。これは後述する本人確認書類でその従業者の年齢・国籍を確認した日付のことで、ここが空欄だと不備として扱われます。
業務内容の欄は、できるだけ具体的に書いてください。「接客」とだけ書くのではなく、フロアでの接客なのか、ホール業務なのか、ドリンク提供なのかが分かるように記載します。警察官が立入検査で特に注目するのがこの欄であり、実態と異なる虚偽の記載は厳禁です。
現場の業務は店ごとに細かく分かれています。「自分の店では従業者が実際に何をしているか」を言語化しておくと、この欄はスムーズに埋められます。
従業者名簿は、用紙だけでは完結しません。風営法第36条の2は、雇い入れの際に従業者の年齢と国籍を確認することを義務付けています。この確認に使った書類の写しを名簿と一緒に保管するのが実務上の基本です。
日本国籍の方は、本籍地(都道府県名)が記載された住民票記載事項証明書などで確認します。注意したいのは、運転免許証やマイナンバーカードには本籍地が記載されていないため、それだけでは風営法の確認要件を満たさないという点です。写真付き身分証(運転免許証等)と本籍入り住民票をセットで揃えるのが確実です。
外国籍の方は、在留カードや特別永住者証明書で在留資格を確認します。ここで極めて重要なのが、在留資格によっては風営法関連の店舗で一切働けないという点です。留学・家族滞在等の在留資格は、資格外活動許可があっても風俗営業での就労は認められません。確認を怠って雇用すると、不法就労助長罪として経営者も処罰対象になります。採用時に在留カードで就労資格を必ず確認してください。
確認書類のセット(例)
【日本人】写真付き身分証+本籍地入りの住民票記載事項証明書
【外国人】本籍(国籍)入りの確認資料+在留カード(または特別永住者証明書)の写し
「キャストは業務委託だから名簿は要らないのでは?」という相談をよく受けますが、これは誤りです。常勤・アルバイトはもちろん、派遣・体験入店・業務委託であっても、その営業所で業務に従事する者は全員が名簿の対象です。週1回だけのキャストでも、体験入店の1日だけでも記載が必要になります。
許可申請後の構造検査(実査)の段階では、まだ従業員の採用が途中であることがほとんどです。この時点では名簿の「用紙」を用意しておけば問題ありません。全員分が埋まっている必要はなく、必須記載事項が網羅された様式が準備できていることが確認されます。
従業者名簿は、その従業者が退職した日から起算して3年を経過する日まで保存しなければなりません(風営法施行規則第106条)。退職したらすぐ捨ててよいわけではない点に注意してください。パソコンで作成し、必要なときにすぐ表示・印刷できる状態であれば、電磁的方法による保存も認められています。
従業者名簿を備え付けていない、必要な記載をしていない、または虚偽の記載をした場合、100万円以下の罰金の対象となります(風営法第53条)。さらに行政処分として営業停止命令を受ける可能性もあります。
警察の立入検査で最初に確認されるのがこの従業者名簿です。きちんと整備されていれば「法令を遵守している店」という心証につながり、それ以上の調査に発展しにくくなります。逆に不備があれば心証が悪化し、短いサイクルでの再検査を招く端緒にもなります。
2025年6月28日に施行された改正風営法では、無許可営業等への罰則が大幅に強化され(拘禁刑5年以下・罰金1,000万円以下、法人は3億円以下)、業界全体への監視が強まっています。名簿管理のような基本書類こそ、これまで以上に丁寧に整えておくことをおすすめします。
従業者名簿は、開業後に慌てて作るのではなく、許可申請・実査の段階で必須記載事項を網羅した用紙を準備しておくのが基本です。確認年月日の記入漏れと、本人確認書類のセット保管を徹底すれば、立入検査でも問題なく対応できます。業務委託のキャストも対象になる点、外国人の在留資格確認が必須である点は、特に見落とさないようにしてください。
当事務所では、愛知県名古屋エリアを中心に風営法許可申請・深夜酒類提供飲食店の届出をサポートしています。従業者名簿の様式作成や、何を確認すればよいか分からないといったご相談も承っていますので、お気軽にお問い合わせください。
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