著者:行政書士 猪飼久遠 | シーシャ開業専門の行政書士
シーシャバー開業時に必要なたばこ販売許可について出張販売ではなく、自分自身がたばこ小売業者になることを選ぶ場合の手続きを解説します。
小売販売業許可の詳細は、財務省「製造たばこの小売販売業の許可」のページに掲載されています
シーシャバー開業で必要なたばこの販売許可。「出張販売と小売販売、どちらを選ぶべきか」は別記事(→「小売販売vs出張販売」選ぶべきはどちらか?)で詳しく解説しています。
2020年4月に改正健康増進法が全面施行されて以降、原則として飲食店での喫煙は禁止されました。しかし、一定の条件を満たす施設は「喫煙目的店(喫煙目的施設)」として例外的に店内喫煙が認められています。
喫煙目的店の条件のひとつが「たばこの対面販売を行っていること」です。つまり、たばこの販売許可がなければ対面販売ができず、喫煙目的店にもなれず、結果として店内でシーシャを吸わせること自体が違法になります。
⚠️ たばこ販売許可はシーシャバーの生命線
たばこの販売許可は、シーシャバーにとって「営業形態の根幹を支える許可」です。飲食店営業許可や深夜酒類の届出だけでは、シーシャを提供する法的根拠が成立しません。
出張販売ではなく、自分自身がたばこ小売業者になることを選択する場合の申請手順を解説します。小売販売業の許可は出張販売と比べてハードルが高い分、許可が自分に紐づくため他者の廃業リスクがなく、長期的な安定性があります。
| 手続名 | 製造たばこの小売販売業の許可 |
| 手続根拠 | たばこ事業法第22条 |
| 手続対象者 | 製造たばこの小売販売を業として行おうとする者 |
| 審査基準 | たばこ事業法第23条、たばこ事業法施行規則第20条〜第22条 |
| 標準処理期間 | 申請から決定まで2か月程度 |
| 手数料 | なし(許可を受けた場合は登録免許税15,000円の納付が必要) |
| 不服申立方法 | 行政不服審査法に基づく不服申立てによる |
| 提出先 | 予定営業所の所在地を営業区域とするJT支社の受付窓口 |
| 提出方法 | 郵送又は持参 |
| 相談窓口 | JT各支社(書き方等)、最寄りの財務(支)局担当課(制度全般) |
一般小売販売業:店舗や自動販売機で一般消費者にたばこを販売する形態です。
特定小売販売業:劇場・旅館・飲食店・大規模小売店舗(売場面積400㎡以上)など、閉鎖性があり、かつ喫煙設備を有する消費者の滞留性が高い施設内で販売する形態です。シーシャバーの場合、特定小売販売業に該当する可能性があります。特定小売販売業では距離基準が免除されるため、繁華街でも許可を取得できる余地があります。ただし取扱高基準(月間3万本)は適用されます。
予定営業所の立地が許可基準を満たすかを確認。最寄りのJT支社に相談できます。
許可申請書や誓約書、図面等の必要書類を揃えます。様式はJT各支社または財務省HPで入手可能。
予定営業所の所在地を営業区域とするJT支社に郵送または持参で提出。「小売販売業許可申請書受付票」は審査結果通知まで大切に保管。
JTがたばこ事業法及び同法施行規則等に基づき現地調査等を行います。
財務(支)局が審査を行い、許可または不許可を決定。申請から決定まで2か月程度。許可を受けた方は登録免許税15,000円の納付が必要。
小売販売業許可申請書(施行規則別紙様式第17号)に以下を添付します。
以下のいずれか1つに該当する場合は不許可です。
(1) 人的要件:たばこ事業法による罰金刑を受けて2年以内の者、破産者等。
(2) 場所の要件:予定営業所が袋小路に面しているなど、たばこ購入に著しく不便な場所。
(3) 距離基準:予定営業所と最寄りのたばこ販売店の距離が基準に達していない場合。
| 環境区分 | 繁華街(A) | 繁華街(B) | 市街地 | 住宅地(A) | 住宅地(B) |
|---|---|---|---|---|---|
| 指定都市 | 25m | 50m | 100m | 200m | 300m |
| 市制施行地 | 50m | 100m | 150m | 200m | 300m |
| 町村制施行地 | ― | ― | 150m | 200m | 300m |
※「指定都市」は人口50万人以上の市制施行地および東京都の特別区。環境区分は申請後のJT現地調査で判定。沖縄県は距離基準・取扱高基準とも適用されません。
(4) 自動販売機の管理要件:店舗に併設されていない場所で、管理・監督が不十分な場合。
(5) 取扱高基準:月間4万本に満たない場合(特定小売販売業は月間3万本)。
(6) 営業所の使用権限:使用権限がない場合(許可後1か月以内に開業見込みがない場合を含む)。
(7) 法人の目的範囲:たばこ販売が定款の目的に含まれていない場合。
シーシャバーに特に関係する特例
・特定小売販売業の特例:距離基準を満たしているとみなされる。取扱高基準は月間3万本に緩和。
・視認の特例:繁華街・市街地で、最寄り店が歩行者から直接見えない場合は距離を測定しない。
・地上と地下の特例:異なる階層の道路に面している場合は距離を測定しない。
・ 4車線道路の特例:往復合計4車線以上の道路を隔てている場合は距離を測定しない。
その他の特例として、身体障害者等の特例(基準距離・取扱高ともに8割に緩和)、休業店・低調店の特例(距離を測定しない)、廃業跡地の特例(1欄左の環境区分の数値を適用)、大規模団地・交通拠点の特例(同)があります。
シーシャバーの開業には、たばこ販売許可のほかにも複数の許可・届出が必要です。これらをどの順番で、どのタイミングで進めるかで、開業までの期間が大きく変わります。
| 許可・届出 | 管轄 | タイミング |
|---|---|---|
| たばこ販売許可 | JT→財務局 | 内装設計確定後すぐ(最も時間がかかる) |
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 内装工事完了後に検査→即日〜数日で交付 |
| 深夜酒類提供飲食店営業届出 | 警察署 | 工事中に準備、開業10日前までに届出 |
| 防火対象物使用開始届 | 消防署 | 使用開始7日前まで |
【実務上のポイント】
出張販売許可が最も時間がかかるケースが多いため、これを起点にスケジュールを逆算することが重要です。物件契約後すぐにたばこ小売業者の選定と申請準備を開始→内装設計確定で図面作成・出張販売許可提出→並行して保健所事前相談・深夜酒類届出準備→工事完了後に保健所検査・消防届出→出張販売許可の審査結果を待って開業。標準処理期間の2か月を超えることも珍しくありません。余裕をもって3〜4か月前には動き始めてください。
小売販売業の許可を目指す場合、最大のハードルは距離基準です。そして距離基準のハードルの高さは、環境区分によって大きく変わります。繁華街(A)なら指定都市で25メートル、住宅地(B)なら300メートル。同じ場所でも環境区分の判定次第で結果が180度変わります。
環境区分は申請後のJT現地調査で正式に判定されますが、事前にある程度読むことはできます。Googleマップの航空写真やストリートビュー、実際の現地踏査で街路沿いの店舗構成を確認し、繁華街(A)の定義(乗車人員5,000人以上の駅がある、または遊興飲食施設・商店・観光客施設が50店以上連続する街路)に該当するかどうかを判断します。
⚠️ 不許可の最多パターン
「自分は繁華街(A)の25メートル基準だと思っていたが、実際には市街地の100メートル基準で判定されて不許可になった」──これが環境区分の見込み違いによる不許可です。距離基準ギリギリの案件では、申請前に行政書士が現地を踏査し、街路沿いの施設数を数え、環境区分の見立てを立てた上で申請の可否を判断します。見立てが厳しい場合は、財務(支)局への事前相談を行い、感触を掴んでから正式申請に進むこともあります。
※行政書士に依頼をしたら必ず許可が下りるわけではありません。
「たぶん大丈夫だろう」で申請して2か月待った挙げ句に不許可、というのが最悪のシナリオです。事前の調査と判断に手を抜かないことが、結果的に最短での許可取得につながります。
・店舗入口に「喫煙目的室の設置」標識を掲示
・喫煙できる場所であることを示す標識を掲示
・二十歳未満の者の立入り不可の標識を掲示
・たばこの販売・仕入れを記載した帳簿を保存
・営業所の移転・廃止は事前届出が必要
・相続・合併等による承継には承継手続きが必要
・1か月以上の休業は正当な理由がある場合でも事前届出が必要
・二十歳未満と思われる者には運転免許証やマイナンバーカード等で年齢確認を確実に行い、ポスター等で注意喚起を行ってください。
※喫煙目的店の具体的な条件は都道府県によって異なる場合があります。詳細は各都道府県や最寄りの保健所にお問い合わせください。
行政書士久遠事務所では、シーシャバーの現場経験を持つ行政書士が、フレーバー販売・たばこ販売許可・飲食店営業許可・風俗営業許可まで一貫してサポートします。「自分の店はどの許可が必要か」「どの許可をとればいいかわからない」など、お気軽にご相談ください。
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