この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、シーシャバーの開業支援を取り扱っています。約2年半のシーシャバー勤務経験があります。
「知り合いと一緒にシーシャバーを始めることになった。相手はたばこの販売許可を持っているし、二人の名義で許可を取れば問題ないだろう」——共同で開業するご相談で、最も多い誤解がこれです。
結論からお伝えすると、たばこ販売の許可も飲食店営業許可も、共同名義で取ることはできません。
「二人の名義で」は制度上できません。誰の名義にするかを決めないまま走り出すと、名義貸しの問題や、協業を解消するときのトラブルに直結します。
🎙 現場から
名義をどうするか曖昧にしたまま二人で始めてしまうケースは、本当に多くあります。仲がいいうちは表面化しませんが、許可は片方の名義でしか取れない以上、利益配分や撤退の場面で必ず火種になります。最初に設計しておくのが結局いちばんの近道です。
シーシャバーの開業に必要な主要な許可は、いずれも1つの営業所につき1名義(1事業者)で与えられます。複数の人や法人が連名で1つの許可を共有することはできません。
| 許可・届出 | 名義の扱い |
|---|---|
| たばこ小売販売業許可 | 営業所ごとに許可を受けます(たばこ事業法第22条)。特定の事業者に与えられるものです |
| 飲食店営業許可 | 1施設につき1事業者。共同名義はできません |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 営業者単位。誰を営業者とするかを一貫させる必要があります |
つまり、協業であっても営業主体を1つに固める必要があります。
共同経営で最も注意すべきなのが、許可の名義人と、実際に営業して利益を得ている主体がずれることです。これがいわゆる名義貸しの構造です。
たとえば「許可は相手の名義のまま残し、実際には自分が店を切り盛りして利益も取る」という形にすると、名義人と実営業者が一致しません。
たばこ事業法には、名義貸しを直接禁じる条文が置かれているわけではありません。しかし問題の本質は明確です。
許可を受けた者以外が実際に小売販売を業として行えば、その実営業者は無許可営業となり、同法の罰則の対象になります。
また、許可が取り消された場合、一定期間は再申請しても許可を受けられません。一度つまずくと、立て直しに時間がかかります。
「協業だから名義貸しになる」と単純に決まるわけではありません。判断の軸になるのは次の点です。
▶誰が管理権原者か/その施設を実際に管理・運営する権限を持っているのは誰か
▶利益が誰に帰属しているか/売上と利益が名義人に帰属しているか
▶誰が実際に運営しているか/日々の営業を回しているのは誰か
名義人が実際の営業主体として関与している実態があれば、問題にはなりません。逆に、名義人が名前だけで、別の人が実権と利益を握っている状態は危険です。
シーシャバーで見落とされがちなのが、飲食店の屋内は改正健康増進法により原則禁煙だという点です。シーシャも喫煙にあたるため、飲食店だから当然に吸わせられるわけではありません。
店内で喫煙させるには、健康増進法上の「喫煙目的施設」の要件を満たす必要があります。
健康増進法施行令第4条には3つの類型がありますが、ドリンクを提供するシーシャバーが目指すのは第2号です。
たばこを販売する者によって、対面によりたばこを販売し、屋内で喫煙をする場所を提供することを主たる目的とし、併せて設備を設けて客に飲食をさせる営業(通常主食と認められる食事を主として提供するものを除く)を行うもの
「屋内の全部を専ら喫煙をする場所とする」のは第1号(公衆喫煙所)で、こちらは飲食を提供できません。混同しないでください。詳しくは改正健康増進法のガイドをご覧ください。
要件に「たばこを販売する者による対面販売」が含まれている以上、たばこ販売の許可を誰の名義で持つかが、店内で喫煙させられるかどうかに直結します。
協業における名義の設計は、業態の根幹に関わる問題です。
共同でやるなら、二人で新しく法人を設立し、その法人名義で許可・届出をすべて取得するのが最もきれいな形です。
▶許可の名義人=法人、実際の営業主体=法人。両者が完全に一致します
▶名義がずれる構造が物理的に発生しません
▶共同性は、出資比率・役員構成・利益配分で担保します
ただし、相手が個人で持っているたばこ販売許可を法人に引き継ぐことはできません。相手には廃止の届出をしてもらい、法人で取り直す流れになります。
【実務上のポイント】
「相手がたばこ許可を持っているから、それを生かして一緒にやろう」という発想は自然です。しかし、その許可を残したまま実態だけ二人で動かすと、名義のずれが生じます。
共同でやると決めたなら、法人を作って名義をまとめてしまうほうが、長い目で見て安全です。法人か個人かの判断材料は法人と個人事業主どちらで開業すべきかの記事をご覧ください。
法人を作らない場合は、どちらか一人を営業主体に定め、その人が実際に営業に関与する形にします。もう一人は、出資者・業務委託・従業員などの立場で関わります。
許可・届出はすべてその一人の名義で揃えてください。
▶許可ごとに名義人がばらばらになること
たばこ許可は相手、飲食店営業許可は自分、といった状態です。名義はどの許可・届出でも一貫させるのが鉄則です。
▶名義人が名前だけで、実態に関与していないこと
これが名義貸しと評価される典型です。
名義の設計と並んで重要なのが、二人の関係を定める契約書です。
許可の名義人が誰であっても、協業である以上、出資・役割・利益配分・撤退時の扱いを書面で固めておかなければ、後でもめます。
▶出資比率と初期費用の負担割合
▶役割分担(名義貸しでないことを示す実態の裏付けにもなります)
▶利益配分・損失負担
▶撤退・解消時の扱い
【実務上のポイント】
最後の項目がとくに重要です。片方が抜けるとき、許可・店舗・設備・在庫をどうするか。
とりわけ、たばこ販売の許可は名義人に紐づきます。解消時にここを決めていなければ、確実に争いになります。「店は続けたいが、名義人が抜ける」という状況は、営業そのものが止まる話です。
出資者として関わること自体は問題ありません。問題になるのは、名義人が名前だけで、出資者側が実権と利益を握っている状態です。どちらが実際に運営しているかが判断の軸になります。関係を契約書で明確にしておいてください。
名義人が抜ける場合、許可も一緒に失われます。残る側が新たに取り直すことになりますが、たばこ販売許可は受理月の末日から2月以内という審査期間があります。その間は店内でシーシャを提供できません。解消の段取りは事前に決めておいてください。
間借りも名義がずれやすい形態です。物件の使用権原と許可の名義の関係を整理する必要があります。詳しくは間借りで適法に開業する方法の記事をご覧ください。
▶たばこ販売許可も飲食店営業許可も、共同名義では取れない
▶協業でも営業主体を1つに固める必要がある
▶名義人と実営業者がずれると、無許可営業と評価される可能性がある
▶判断の軸は、管理権原・利益の帰属・実際の運営者の3点
▶喫煙目的施設の要件に「たばこの対面販売」が含まれるため、名義は業態の根幹に関わる
▶共同でやるなら法人を作って名義を統一するのが最もきれい
▶名義はどの許可でも一貫させる。ばらばらにしない
▶撤退時の許可の扱いを、契約書で決めておく
名義の設計と契約書の整備は、許可が下りるかどうかとは別の、開業後の安定を左右する部分です。走り出す前に固めておいてください。
なお、実際に紛争になった場合の対応は弁護士の業務領域です。当事務所がお力になれるのは、そうならないための設計の段階です。
開業に必要な手続きの全体像はシーシャバー開業に必要な許可まとめをご覧ください。
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