シーシャバーの共同経営は名義貸しになる?たばこ許可・飲食店許可の名義設計と注意点

「知り合いと一緒にシーシャバーを始めることになった。相手はたばこの販売許可を持っているし、二人の名義で許可を取れば問題ないだろう」——共同(協業)でシーシャバーを開業する相談で、もっとも多い誤解がこれです。


結論から言えば、たばこ小売販売業の許可も飲食店営業の許可も、共同名義で取ることはできません。「二人の名義で」は制度上不可能であり、誰の名義にするかを決めないまま走り出すと、後から無許可営業や名義貸しの問題、さらには協業解消時のトラブルに直結します。


このページでは、行政書士の立場から、協業でシーシャバーを始めるときに必ず押さえておくべき「名義」の論点を、根拠法令とともに整理します。


シーシャバーの現場を約2年半経験してきた立場から補足すると、開業時に「名義をどうするか」を曖昧にしたまま二人で始めてしまうケースは本当に多いです。仲が良いうちは問題が表面化しませんが、許可は片方の名義でしか取れない以上、利益配分や撤退の場面で必ず火種になります。最初に設計しておくことが、結局いちばんの近道です。



たばこ許可も飲食店許可も「1営業所1名義」が原則

まず大前提として、シーシャバーの開業に必要な主要な許可は、いずれも1つの営業所につき1名義(1事業者)で与えられるものです。複数の人や法人が連名で1つの許可を共有することはできません。


たばこ小売販売業の許可

製造たばこの小売販売を業として行うには、たばこ事業法22条1項により、その営業所ごとに財務大臣の許可を受けなければなりません。この許可は、許可を受けた特定の事業者(個人または法人)に与えられる属人的なものであり、「A社とB社の連名」といった共同名義は想定されていません。


シーシャバーでたばこ許可が問題になるのは、後述するとおり、店内でシーシャ(喫煙)を提供するための「喫煙目的施設」の要件に直結するためです。


飲食店営業許可

飲食店営業許可(食品衛生法に基づく許可)も、1施設につき1事業者です。共同名義はできません。シーシャバーは通常、ドリンクや軽食を提供するため飲食店営業許可が必要になりますが、これも誰の名義で取るかを1つに定める必要があります。


深夜0時以降に酒類を提供する場合は、別途「深夜酒類提供飲食店営業」の届出(風営法)も必要です。この届出も営業者単位であり、誰を営業者とするかが許可・届出全体で一貫している必要があります。


「営業主体を誰にするか」で許認可の出し直し要否が決まる

共同名義ができない以上、協業であっても営業主体(名義人)を1つに固める必要があります。そして、この「誰を営業主体にするか」によって、既存の許可を生かせるのか、それとも取り直しが必要なのかが変わります。


とくに居抜き物件で、前のオーナーがすでにたばこ許可や飲食店許可を持っているケースでは、ここが重要な分かれ目になります。


・営業主体が前オーナーのまま変わらない場合
前オーナーが名義人として実際に店を管理・運営し続けるなら、既存の許可をそのまま生かせる余地があります。消防の防火管理者選任届なども、管理権原者が変わらなければ出し直し不要となりうる場面があります。ただし、この形は後述する名義貸しのリスクと表裏一体です。


・営業主体を自分(または新法人)に移す場合
営業主体が変われば、たばこ許可・飲食店許可は新名義での取得が必要です。許可は属人的なものなので、前オーナーの許可をそのまま引き継ぐことはできません。前オーナーには廃業(廃止届の提出)をしてもらい、新たに取り直すのが原則の流れになります。


たばこ許可は「営業所の位置」や「取扱予定高」などの審査基準があります(たばこ事業法23条)。以前その場所で許可が下りていた居抜き物件なら、立地に関する基準は通りやすい傾向があります。


名義人と実営業者がズレると「名義貸し」「無許可営業」になる

協業でもっとも注意すべきなのが、許可の名義人と、実際に営業して利益を得ている主体がズレてしまうことです。これがいわゆる「名義貸し」の構造です。


たとえば「許可は前オーナー名義のまま残し、実際には自分が店を切り盛りして利益も取る」という形にすると、名義人(前オーナー)と実営業者(自分)が一致しません。


たばこ事業法上のリスク

たばこ事業法には、産業廃棄物処理法のように「名義貸し」を直接禁止する独立した条文があるわけではありません。しかし問題の本質は明確です。許可を受けた者以外が実際に小売販売を業として行えば、その実営業者は無許可営業となり、たばこ事業法49条により30万円以下の罰金の対象になります。


さらに、許可の取消し(たばこ事業法31条)を受けた場合、その取消しの日から起算して2年間は再申請しても許可されません(同法23条2号)。一度名義の問題でつまずくと、立て直しに時間がかかるということです。


名義貸しかどうかを見分ける物差し

「協業だから名義貸しになる/ならない」と単純には決まりません。判断の物差しになるのは、次のような点です。


・誰が管理権原者か
その施設を実際に管理・運営する権限を持っているのは誰か。名義人がこれに該当している実態が必要です。


・利益が誰に帰属しているか
売上・利益が名義人に帰属しているか、それとも名義を持たない側に流れているか。


・誰が実際に運営しているか
日々の営業を誰が回しているか。名義人が名前だけで実態に関与していない状態は危険です。


つまり、名義人が実際の営業主体として関与している実態があれば名義貸しにはなりませんが、名義人が名前だけで、別の人が営業の実権と利益を握っている状態は、名義貸し・無許可営業と評価されかねません。


シーシャの店内喫煙には「喫煙目的施設」の要件=たばこ許可が直結する

シーシャバーで見落とされがちなのが、飲食店は改正健康増進法により原則屋内禁煙だという点です。シーシャも喫煙にあたるため、「飲食店だから当然吸わせられる」わけではありません。


店内でシーシャを吸わせるには、多くのシーシャバーが「喫煙目的施設(喫煙目的室を設置できる施設)」として要件を満たす形をとります。この喫煙目的施設の要件は健康増進法施行令で定められており、主に次の2つです。


・施設の屋内の全部を専ら喫煙をする場所とすること
店内全体を喫煙可能な場所とする業態であること。


・たばこの対面販売(出張販売を含む)をしていること
そのうえで、喫煙場所の提供を主たる目的とし、あわせて飲食(主食を除く)を提供する営業であること。


ここで重要なのが、「たばこの対面販売をしていること」が要件に含まれている点です。実際、保健所が喫煙目的施設の要件適合性を確認する際の項目として「たばこ販売営業許可の情報の確認」が挙げられています。


つまり、シーシャの店内喫煙を適法に行うには、たばこ販売業の許可が事実上の前提になります。だからこそ、「たばこ許可を誰の名義で持つか」が、店内喫煙の可否そのものに直結するのです。協業における名義の設計が、業態の根幹にかかわってくるということです。


名義貸しを避けつつ協業を成立させる設計

では、協業でシーシャバーをやりたい場合、どう設計すればよいのか。名義貸しのリスクを避けながら共同経営を成立させる方法は、大きく2つです。


方法1:新しく法人を作り、法人名義に統一する

共同でやるなら、二人で新しい法人を設立し、その法人名義で許可・届出をすべて取得するのが、もっともきれいな形です。


この場合、許可の名義人=その法人、実際の営業主体=その法人、となり、両者が完全に一致します。名義貸しの構造が物理的に発生しません。二人は法人の役員・出資者として共同経営に関わり、共同性は出資比率・役員構成・利益配分で担保します。


ただし、法人を新設する場合、たばこ許可は法人名義での新規取得になります。前オーナー個人の許可を法人に引き継ぐことはできないため、前オーナーに廃業してもらい、法人で取り直す流れになります。


「相手がたばこ許可を持っているから、それを生かして一緒にやろう」という発想は自然ですが、その許可を残したまま実態だけ二人で動かすと、名義のズレが生じやすくなります。共同でやると決めたなら、いっそ法人を作って名義をまとめてしまうほうが、長い目で見て安全でわかりやすいことが多いです。


方法2:どちらか一人を名義人にし、その人が実営業者となる


法人を作らない場合は、どちらか一人を営業主体(名義人)に定め、その人が実際に営業に関与する形にします。もう一人は、出資者・業務委託・従業員などの立場で関わります。許可・届出はすべてその一人の名義で揃えます。


この形なら、名義人=実営業者が一致しているため名義貸しにはなりません。ただし、もう一人がどのように関わり、利益をどう分けるのかを契約で明確にしておく必要があります。


避けるべきなのは、許可ごとに名義人がバラバラになること(たばこ許可は前オーナー、飲食店許可は自分、というような状態)と、名義人が名前だけで実態に関与していない状態です。名義はどの許可・届出でも一貫させるのが鉄則です。


協業こそ「共同事業契約書」で固めておくべき

許可の名義をどう設計するかと並んで重要なのが、二人の関係を定める契約書です。許可の名義人が誰であっても、協業である以上、出資・役割・利益配分・撤退時の扱いを書面で固めておかなければ、後で必ずもめます。


とくに最低限、次の点は共同事業契約書(法人を作る場合は定款に加えて出資契約・株主間契約)で明確にしておくべきです。


・出資比率と初期費用の負担割合
誰がいくら出すのか。開業費用をどう分担するのか。


・役割分担
誰が何を担当し、どう運営に関わるのか。これは名義貸しでないことを示す実態の裏付けにもなります。


・利益配分・損失負担
利益と損失をどの割合で分けるのか。


・撤退・解消時の扱い
片方が抜けるとき、許可・店舗・設備・在庫、とくにたばこ許可の名義をどうするか。たばこ許可は名義人に紐づくため、解消時にここを決めていないと確実に争いになります。


名義の設計と契約書の整備は、許可が下りるかどうかとは別の、しかし開業後の安定を左右する「予防法務」の中核です。協業でシーシャバーを始めるなら、走り出す前にここを固めておくことを強くおすすめします。


なお、物件の賃貸借契約をめぐるトラブル(原状回復の範囲、使用目的の解釈、貸主との紛争など)が実際に法的な争いに発展する場面は、弁護士の業務領域です。当事務所では、許認可の設計と契約書の整備(予防法務)の段階でお力になります。


協業でのシーシャバー開業、名義と契約の設計はお任せください

「相手と一緒に始めたいが、たばこ許可や飲食店許可の名義をどうすればいいかわからない」「名義貸しにならないか不安」「法人を作るべきか迷っている」——こうしたご相談に、シーシャバーの現場経験をもつ行政書士が、許認可の設計から共同事業契約書の作成までトータルで対応します。お気軽にご相談ください。


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