【愛知県】保全対象施設の調べ方|学校・病院との距離で風俗営業許可が取れないケースを解説

風俗営業(社交飲食店)の許可で、用途地域の次に立ちはだかるのが「保全対象施設との距離制限」です。そして、ここで命取りになるのが見落とし。地図に載っていない上階のクリニック、看板の出ていない事業所内保育所、まだ更地の学校建設予定地――こうした施設を一つでも見逃したまま申請すると不許可になります。本記事では、社交飲食店(1号営業)の開業を念頭に、保全対象施設の調査を「地図の準備・情報収集・現地調査」の流れに沿って、実際に使うツールまで含めて解説します。


この記事は、行政書士久遠事務所が、警察庁の解釈運用基準および愛知県・名古屋市・厚生労働省の公式情報に基づき執筆しています。用途地域そのものの解説は前回の記事(風俗営業ができる用途地域・できない用途地域)をご覧ください。本記事はその続編として、距離制限の調査実務に絞ってお伝えします。


保全対象施設の調査が「申請の命」と呼ばれる理由

用途地域が商業地域でも、近くに学校や病院があれば許可は下りません。問題は、これらの施設が必ずしも一目でわかる形で存在していないことです。行政書士の世界では、保全対象施設の調査を見落として申請すると不許可となり、依頼者から損害賠償を請求される事例が実際にあるため、「用途地域・保全対象施設の調査は申請の命」と言われています。それほど神経を使う工程です。


まずは愛知県の対象施設と距離をおさらいします。愛知県では学校(大学を除く)・幼保連携型認定こども園・保育所・病院・有床診療所が保全対象施設で、営業所の地域区分に応じて距離が変わります。


保全対象施設 準住居地域・その他の地域 商業地域
学校(大学を除く)・幼保連携型認定こども園 100メートル以内 70メートル以内
保育所・病院・有床診療所 50メートル以内 30メートル以内


(参照: 愛知県 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(第四条)


商業地域だと距離は最大でも70mに緩和されますが、調査結果を申請書に添付する「営業所周辺の略図」は、距離制限にかかわらず半径100mまで記載するのが実務上のルールです。そのため、調査自体も半径100mで網をかけて行います。


ステップ1 調査用の地図(100m略図)を用意する

調査の出発点は、正確な縮尺の地図です。距離を測る作業がある以上、適当な地図では役に立ちません。実務では株式会社ゼンリンの住宅地図(プリントサービスやZNET TOWNなど)を1000分の1(S=1:1000)の縮尺で用意し、営業所の外壁を起点に10m・20m・50m・100mの線を書き込んだ「100m略図」を土台にします。距離の起点は営業所の中心ではなく外壁である点に注意してください。


この100m略図そのものが、申請書に添付する正式な図面になります。縮尺の合わせ方、三角定規とコンパスを使った作図の手順、ゼンリンの「複製許諾証」の貼付といった作成上のルールは、別記事「100m半径略図・営業所周囲の略図の作り方」で詳しく解説しています。本記事では、この地図を使って実際に施設を調べる工程に絞って説明します。


ステップ2 行政情報・ネットで「あたり」をつける

現地に行く前に、ネットや行政の公開情報で保全対象施設の見当をつけ、地図に書き込んでおくと見落としを大きく減らせます。情報源は施設の種類ごとに使い分けます。


用途地域そのものの確認(名古屋市の場合)

営業所が営業可能な用途地域かどうかは、自治体の都市計画情報で確認できます。名古屋市の場合、インターネットで用途地域を閲覧・印刷できる「名古屋市都市計画情報提供サービス」が公開されています。電話照会の窓口(都市計画課)も用意されています。
(参照: 名古屋市 都市計画情報提供サービス(インターネット)のご案内


学校・保育所・図書館(市区町村のホームページ)

児童福祉施設(保育所など)、図書館、小中学校などは、市区町村役場のホームページで所在地を確認できます。開園予定の認可保育所も保全対象施設に該当するため、工事中で見落とさないよう、自治体の情報も併せて押さえておきます。


病院・診療所の病床の有無(医療情報ネット「ナビイ」)

診療所やクリニックに病床(入院設備)があるかどうかは、外観を見ても分かりません。ここで使えるのが、厚生労働省が運営する全国版の「医療情報ネット(ナビイ)」です。令和6年4月から全国統一システムとして公開されており、全国の診療所等の情報を病床の有無まで含めて検索できます。多くの場合はナビイで事足ります。
(参照: 厚生労働省 医療機能情報提供制度(医療情報ネット「ナビイ」)


もしナビイに掲載されていない診療所等があれば、その施設を管轄する保健所に問い合わせます。多くの場合、窓口で診療所等の一覧を閲覧できます。


通信制高校・大学のサテライト校舎(ネット+学校照会)

通信制高校はビルの一室にひっそり入居していることもあり、目立つ看板がないため見落としやすい施設です。あらかじめネットで営業所周辺の通信制高校を調べておくと安心です。ただし、通信制高校にはサポート校(学習塾形態で学校扱いにならない教室)も多く、学校に該当するかは学校のホームページである程度判別できます。不明な場合は学校の事務局や、本校がある都道府県の学事課へ問い合わせる必要があるため、本校の所在地・連絡先も控えておきましょう。大学のサテライト校舎も同様に見落としやすいので、ネットで事前に把握しておくとよいでしょう。


ネット情報を鵜呑みにしない
シーシャバーやバーの開業相談でも実感しますが、ネットの情報は参考になる部分も多い一方、間違いも少なくありません。行政書士のブログを含め、検索で出てきた答えをそのまま信じるのは禁物です。ネットは「答え」を探すためではなく、「答えの探し方」「問い合わせ先」を見つけるために使う――この姿勢が見落としを防ぎます。最終的な確認は、必ず管轄の行政庁や施設本体に取ってください。


ステップ3 実際に歩いて確認する

事前準備をした地図を持って、半径100m圏内を実際に歩きます。地図はリアルタイムで更新されていないため、歩いてみると地図にない建設中の保育所などを発見することも珍しくありません。必ず自分の足と目で確かめることが、必須になります。


歩いていて建築中の建物があれば、どんな施設になるのか必ず確認してください。建設現場の囲いに、工事スケジュールや入居テナント等の概要が表示されているはずです。それでも不明な場合は、市区町村役場の都市計画課などで調べられます。条例上、保全対象施設には「これらの用に供することが決定した土地」も含まれるため、現時点で更地でも、学校や病院の建設計画が決定していれば距離を測る対象になります。


物件契約前のチェックリスト

1:1000の100m略図を準備したか(作り方は略図記事を参照)


用途地域・市区町村HP・ナビイで施設情報を地図に書き込んだか


実際に歩き、上階・地下・看板なし・建設中の施設まで確認したか


病床の有無・学校該当性・保育所の認可状況を一次情報で確認したか


保全対象施設の調査は「歩けば終わる」単純作業ではありません。正確な地図の準備・行政情報の収集・現地調査を組み合わせ、距離の起点まで正確に押さえて初めて完了します。物件を契約してから不許可が判明すると、内装・賃料の損失は数百万円規模になりかねません。契約前の段階での調査こそが、最も確実なリスク回避です。


愛知県の社交飲食店開業をお考えの方へ
行政書士久遠事務所では、物件契約前の保全対象施設の現地調査から、100m半径略図・営業所周囲の略図の作成、許可申請の代行までワンストップで対応しています。シーシャバーをはじめとする現場経験をふまえ、見落としのない調査をお約束します。「この物件で許可が取れるか」の事前確認だけでもお気軽にどうぞ。


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