著者:行政書士 猪飼久遠 | シーシャ開業専門の行政書士
「シーシャバーって暗い雰囲気にしたいけど、法律で明るさの基準ってあるの?」──開業相談で必ず出る質問です。
結論から言えば、深夜酒類提供飲食店営業を行うシーシャバーには「営業所内の照度を20ルクス以下とならないように維持する」という明確な基準があります。
この記事では、20ルクスの実際の明るさ、測定方法、調光器(スライダックス)の扱い、そしてシーシャバーの雰囲気を保ちながら基準を満たす方法を解説します。
深夜0時以降にお酒を提供するシーシャバーは深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要です。この届出に基づく構造基準として、風営法施行規則第99条第1号に以下の規定があります。
「営業所内の照度が20ルクス以下とならないように維持するため必要な構造又は設備を有すること。」
つまり、店内の照度が20ルクスを下回らないように、構造または設備で確保しておく必要があるということです。シーシャバーは煙の演出や雰囲気作りのために店内を暗くしたいケースが多いですが、20ルクスを切ると深夜届出違反になります。
ルクスという単位はピンとこない方が多いと思います。具体的な明るさのイメージを示します。
・蛍光灯の真下:約34ルクス
一般的な事務所の蛍光灯の真下で測定した場合の数値です。
・蛍光灯から60cm離れた位置:約24ルクス
シーシャバーの一般的なテーブル位置に置き換えると、このあたりの数値になります。
・20ルクス:うっすらと顔の表情が見える明るさ
新聞は読めないが、向かいに座っている人の表情や手元の動きはわかるレベル。シーシャの煙が映える暗さでありつつ、お客さんが安全に動ける明るさです。
・10ルクス以下:低照度飲食店(風俗営業2号)の範囲
これより暗い店を営業する場合は、深夜届出ではなく風俗営業2号許可が必要になります。
つまり、20ルクスは「シーシャバーらしい暗さ」を演出する上で下限ギリギリの明るさと覚えてください。
照度は店内のどこを測っても同じ数値が出るわけではありません。光源に近いほど高く、遠いほど低くなります。だからこそ、どこを測るかが法令で決まっています。
風営法施行規則第30条を準用する形で、測定場所は以下のように定められています。
・テーブル等の飲食物を置く設備がある場合
その設備の上面(テーブルの上)、および上面の高さで客が通常利用する部分。シーシャバーの場合、ほとんどがこのパターンです。
・椅子だけの客席
椅子の座面、および座面の高さで客が通常利用する部分。
・椅子もない客席(畳席など)
客が通常利用する場所の床面。
ここで重要なのは、警察の立入調査では店内で一番暗い場所で測定される可能性があるという点です。「明るい席だけ20ルクス以上、奥の席は10ルクス」という状態はアウトです。
現場を知る行政書士として
照度は照度計という測定器で測ります。Amazonや楽天で3,000円程度から購入できます。スマートフォンのアプリでも測定できますが、精度にバラつきがあるため、開業前は必ず照度計で測ることをおすすめします。特に窓のない地下店舗や、奥まった席のあるレイアウトでは、想像よりも照度が低くなりがちです。
照明の明るさを段階的に変えられる「スライダックス(調光器)」。雰囲気作りに便利な設備ですが、深夜届出のあるシーシャバーでは扱いに注意が必要です。
スライダックスがあるだけで即違法、ではありません。重要なのは、スライダックスを最も暗い位置まで下げた時に20ルクスを下回るかどうかです。
・最低照度でも20ルクス以上を維持できる場合 → スライダックス設置OK
例えば、調光しても最も暗い状態が25ルクス程度にしかならない構造なら、スライダックス自体は問題ありません。
・最低位置にすると20ルクスを下回る場合 → 物理的な固定が必要
調光すれば20ルクス未満まで暗くなる構造の場合、つまみを動かせない状態に物理的に固定する必要があります。具体的には瞬間接着剤などで固定して、操作できなくするのが実務上の対応です。
警察庁の解釈運用基準では「客席で照度の基準に満たない照度に自由に変えられるスライダックス等の照明設備を設けることは認められない」とされており、「変えられること」自体が問題とされています。だからこそ、変えられないように物理的に固定するわけです。
警察が立入調査に来た時にだけ明るくして、普段は暗く営業している──こうした運用を防ぐためです。「設備として20ルクス以下にできない構造」になっていることが求められます。
スライダックス対応の選択肢
❶ 撤去して通常のスイッチに交換する
❷ 機能を停止して、最低位置でも20ルクス以上を維持できる照明に変更する
❸ 瞬間接着剤等でつまみを固定し、操作不能にする
コストと工事の手間で考えれば、開業時の内装段階で②の設計にしておくのが最も無駄がありません。
「20ルクスを守らないといけないのはわかった。でも明るい店にはしたくない」──これがシーシャバーオーナーの本音だと思います。多くのシーシャ屋さんで雰囲気を保ちながら20ルクスを確保するために取り入れてる対策は以下の通りです。
・電球色(オレンジ系)の照明を使う
同じ照度でも、白色光より電球色のほうが「暗く感じる」効果があります。シーシャバーらしい温かみのある雰囲気と、法令基準の両立が可能です。
・間接照明を複数配置する
1つの強い光源で照らすのではなく、複数の弱い光源で全体を照らす方が、シーシャの煙が映えやすく、なおかつ全席で照度を確保しやすくなります。
・テーブルランプを置く
各テーブルに小さな照明を置けば、テーブル上面の照度が確実に上がります。雰囲気作りにも貢献するので一石二鳥です。
・キャンドル風LEDを併用する
本物のキャンドルは火災リスクがあるため、LEDのキャンドルライトを使う店が増えています。電球色+ゆらぎの演出で雰囲気を作りながら、メイン照明で20ルクスを確保する設計です。
深夜届出の提出時点では、警察の実地調査は行われません。届出書類に音響照明図を添付して提出するだけで、照度は自己申告です。
しかし、届出後に警察の立入調査が行われ、その時に照度を測定されることがあります。立入で20ルクス未満が確認されれば、以下のような流れになります。
・指導
軽微な場合は口頭または書面での指導。改善期限を切られます。
・指示処分
指導に従わない場合や違反が継続する場合、正式な処分として指示が出されます。
・営業停止命令
悪質な場合や繰り返しの違反がある場合は営業停止命令。深夜届出の場合は届出効力に影響します。
照度を下げて運営した方が雰囲気は出るかもしれませんが、立入で1回見つかればその後の信頼回復は困難です。開業時点で20ルクス以上を構造的に確保するのが最も合理的な選択です。
シーシャバーの照度基準を整理すると以下の通りです。
・深夜営業を行うシーシャバーは20ルクス以上が必須
風営法施行規則99条1号の規定。シーシャバーの雰囲気作りで最も気をつけるべきポイント。
・測定場所はテーブル上面・椅子座面・床面のいずれか
一番暗い場所で測定される可能性があるので、全席で20ルクスを確保する必要がある。
・スライダックスは「最低照度でも20ルクス以上」なら設置可、下回るなら物理固定
瞬間接着剤等で操作不能にすることが実務上の対応。
・電球色+複数光源+テーブルランプで雰囲気と基準を両立
白色光より電球色のほうが暗く感じる効果を利用する。
照度は内装段階で決まる要素です。オープン後に照明を入れ替えるのは大きなコストと工事の手間がかかります。物件契約後・内装工事前の段階で、照度設計を含めた相談をしておくのが最も効率的です。
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法令
・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索)
第32条:深夜飲食店の構造基準
・風営法施行規則(e-Gov法令検索)
第30条:照度の測定場所
第99条第1号:深夜酒類提供飲食店の照度基準(20ルクス以上)
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