この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。


バーの開業で必要になるのは、保健所の飲食店営業許可と、警察署への深夜酒類提供飲食店営業開始届出の2つです。
ただし、その前に決めておくべきことがあります。営業時間、接待の有無、遊興の有無。この3つが、必要な手続きも選べる物件もすべて決めます。


この記事では、愛知県でバーを開業するまでの流れを、順を追って整理します。



最初に決める3つのこと    FIRST


決めること 選択肢 結果
営業時間 午前0時前に閉める 深夜酒類提供飲食店営業の届出は不要
午前0時以降も営業する 届出が必要
接待 しない 届出で営業できる
する 風俗営業の許可が必要(深夜営業は原則不可)
深夜の遊興 させない 届出で営業できる
させる 特定遊興飲食店営業の許可が必要(愛知県は名古屋市の一部のみ)


この3つを決めずに物件を探し始めると、後戻りできない失敗が起こります。


判断に迷う場合は、深夜酒類提供飲食店営業とはの記事風営法の「接待」とは何かを解説した記事カラオケ・DJ・ライブができるかを解説した記事をご覧ください。


開業までの流れ    FLOW


時期 やること
開店の3か月以上前 営業形態を確定。候補物件の用途地域を確認
開店の2〜3か月前 物件契約。内装工事の着工前に保健所へ設計図面を持参して事前相談
開店の1〜2か月前 内装工事。食品衛生責任者を確保(資格がなければ講習の日程を押さえる)
開店の1か月前 保健所へ飲食店営業許可を申請。施設調査の日程調整
開店の3週間前 飲食店営業許可を取得。並行して届出書類を準備
開店の2週間前 管轄警察署へ電話。届出の予約、必要書類、営業者同行の要否を確認
開店の10日前まで 警察署へ届出。申請・届出受領書を受け取る
届出から10日後 深夜営業を開始できる


出典:食品衛生法第55条/風営法第33条/愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続


【実務上のポイント】
届出から10日を待つ間も、午前0時前に営業を終える形であれば営業できます。この期間をプレオープンに充てれば、オペレーションの確認と常連づくりができます。
また、食品衛生責任者の養成講習は日程が限られています。資格保有者がいない場合、直前では間に合わないことがあります。営業形態を決めた段階で、誰が食品衛生責任者になるかも決めてください。


詳細は届出方法と流れの記事にまとめています。


物件選び    PROPERTY

最も取り返しがつかない工程です。契約前に次を確認してください。


▶用途地域が第一種地域でないこと(低層住専1・2/中高層住専1・2/第一種・第二種住居/田園住居)
▶準住居地域は営業できるが、深夜の騒音基準は40デシベルと最も厳しい
▶建物が用途地域の境界にまたがっていないか
▶客室を複数にするなら、一室9.5平方メートル以上を確保できる区画か
▶賃貸借契約と管理規約で深夜営業が認められているか
▶上下階・隣室に住居がないか
▶ビルの入口が深夜に施錠されないか


出典:愛知県「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」第2条・第26条・第27条/風営法施行規則第99条


用途地域は、市町村の都市計画担当課に番地を伝えれば確認できます。契約を急かされているときこそ、この一本の電話をしてください。


詳しくは営業できない用途地域の記事深夜営業できる物件の選び方の記事をご覧ください。


内装で気をつけること    INTERIOR

バーの内装でよく問題になるのが、次の3点です。


やりたいこと 制約
照明を落として雰囲気を出す 営業所内の照度を20ルクス以下にできない。10ルクス以下は風俗営業の対象
個室感のある席を作る 客室内に見通しを妨げる設備を設けられない(高さ100センチメートルが目安)
ダーツやゲーム機を置く 遊技設備として風俗営業5号の許可対象になり得る(深夜営業ができなくなります)


【実務上のポイント】
「見通しを妨げる設備」には、衝立だけでなく棚、植木、水槽なども当たり得ます。天井からカーテンやすだれを吊ることも同様です。
一方、カウンターについては、客室内の見通しを妨げない配置であれば高さが100センチメートルを超えても差し支えないという運用があります。壁際に調理場があってカウンターがその手前にあるような配置なら問題にならず、客室の真ん中で客席を分断する配置は認められません。設計段階で所轄警察署に確認してください。


図面の作り方は図面の書き方を解説した記事、ダーツ等の扱いはダーツバー・スポーツバーの深夜営業の記事をご覧ください。


必要書類    DOCUMENTS

深夜酒類提供飲食店営業の届出で、愛知県警察が案内している書類は次のとおりです。


▶深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書…1通
▶営業の方法を記載した書面
▶営業所の平面図
▶住民票(本籍又は国籍記載のもの)の写し
▶法人の場合/定款及び登記事項証明書、役員に係る住民票


このほか、求積図・音響照明設備図・周辺地図・メニュー表・賃貸借契約書の写しなどを求められることがあります。所轄によって異なるため、事前に電話で確認してください。


詳細は必要書類一覧の記事、「営業の方法」の書き方は「営業の方法」の書き方を解説した記事をご覧ください。


費用    COST


項目 費用
深夜酒類提供飲食店営業の届出 手数料は不要
住民票(本籍記載) 300円程度(市町村により異なります)
登記事項証明書(法人) 書面請求1通600円
飲食店営業許可の申請手数料 許可権者により異なります
風俗営業の許可申請手数料(接待をする場合) 24,000円
特定遊興飲食店営業の許可申請手数料 24,000円


出典:法務省「登記手数料について」/愛知県警察「風俗営業の許可申請手続」「特定遊興飲食店営業の許可申請手続」


費用の詳細は費用をまとめた記事をご覧ください。


届出先    WHERE

届出先は営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課です。本店所在地でも代表者の住所でもありません。


市名と警察署名が一致しないケースが多くあります。尾張旭市は守山署、岩倉市は江南署、知立市は安城署といった具合です。愛知県の警察署一覧で確認してください。


開業後にやること    AFTER


▶従業者名簿を備え付ける(深夜帯以外を含む全従業者が対象)
▶構造設備を基準に適合するよう維持する
▶照度を20ルクス以下にしない
▶騒音・振動を条例の数値未満に維持する
▶午後10時〜翌午前6時は18歳未満を接客業務に従事させない・立ち入らせない
▶20歳未満に酒類を提供しない
▶店名変更や改装があれば変更届(10日以内。法人の名称等は20日以内)
▶閉店時は廃止届(10日以内)と保健所への廃業届


詳しくは届出後にやることをまとめた記事変更届・廃止届の記事をご覧ください。


業態別の注意点    TYPES


業態 主な論点
居酒屋 主食を提供する営業に当たれば届出が不要になる場合があります
ダーツバー・スポーツバー 遊技設備の10パーセントルール、遊興の該当性
シーシャバー 改正健康増進法への対応が最大の関門になります
ガールズバー・コンカフェ 接客の距離と継続性が接待該当性を左右します
スナック・ラウンジ 接待をするかで、営業時間も物件の選択肢も変わります


よくある質問    FAQ

Q.開業までにどのくらいの期間が必要ですか?

物件の状況や内装工事の規模によって変わりますが、物件契約から開店まで2〜3か月をみておくと余裕があります。飲食店営業許可の取得と、届出の10日前ルールが工程を規定します。食品衛生責任者の講習を受ける必要がある場合は、さらに前倒しで動いてください。

Q.個人と法人、どちらで開業すべきですか?

深夜酒類提供飲食店営業の届出については、法人だと定款・登記事項証明書・役員全員分の住民票が追加で必要になるという違いがあります。届出自体の難易度は大きく変わりません。税務や責任の面での判断は、税理士等にご相談ください。

Q.居抜き物件なら手続きは簡単になりますか?

内装工事の負担は減りますが、届出は営業者ごとに行うため、あなたの名前で新たに届出が必要です。前のオーナーの届出をそのまま使うことはできません。また、居抜きの内装が現在の基準を満たしていないこともあります。とくに90センチメートル程度の衝立に継ぎ足しがされて100センチメートルを超えているケースは珍しくありません。契約前に確認してください。

Q.行政書士に依頼するとどこまでやってもらえますか?

当事務所では、営業形態の判断から図面の作成、届出書一式の作成、警察署への提出まで対応しています。物件の候補段階から、その場所で営業できるかの確認だけを承ることもできます。

まとめ    SUMMARY

▶最初に営業時間・接待の有無・遊興の有無を決める。すべてがここから決まる
▶順番は保健所(飲食店営業許可)→警察署(深夜酒類提供飲食店営業開始届出)
▶届出は営業開始日の10日前まで。窓口は営業所を管轄する警察署の生活安全課
▶物件契約前に用途地域を確認する。第一種地域では深夜営業できない
▶内装工事の着工前に保健所へ事前相談する
▶照度20ルクス以下は不可、見通しを妨げる設備も置けない(高さ100センチメートルが目安)
▶届出の手数料は不要。実費は住民票と登記事項証明書程度
▶届出から10日を待つ間は、午前0時閉店のプレオープンとして使える
▶開業後も従業者名簿の備付けや構造設備の維持などの義務が続く


バーの開業でつまずくのは、書類作成そのものより順番とスケジュールです。開店日を決めたら、そこから逆算して保健所の相談日を先に押さえてください。


稲沢市・一宮市を中心に、名古屋市および愛知県内全域に対応しています。物件の候補段階からのご相談を歓迎します。