この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。
愛知県では、7つの用途地域(第一種地域)で深夜の酒類提供飲食店営業ができません。
これは風営法そのものではなく、愛知県の条例で定められた愛知県独自のルールです。他県の記事をそのまま当てはめると判断を誤ります。
この記事では、愛知県の条例が定める地域区分を条文にもとづいて整理し、どの用途地域なら深夜営業ができるのか、用途地域はどう調べるのか、そして条例施行前から営業していた店はどうなるのかを解説します。
酒類提供飲食店営業を営む者は、第一種地域にあつては、深夜において当該営業を営んではならない。
この「第一種地域」は、同条例第2条第1号および別表第一で、次の7つの用途地域と定められています。
▶第一種低層住居専用地域
▶第二種低層住居専用地域
▶第一種中高層住居専用地域
▶第二種中高層住居専用地域
▶第一種住居地域
▶第二種住居地域
▶田園住居地域
出典:愛知県「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」第2条第1号・第27条・別表第一/愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」
用途地域の名称に「住居」が付くため誤解されやすいのですが、準住居地域は第一種地域に含まれません。
愛知県の条例では、準住居地域は別表第二の「第二種地域」と定められています。第27条が禁止しているのは第一種地域だけですので、準住居地域では深夜の酒類提供飲食店営業が可能です。
| 地域区分 | 該当する用途地域等 | 深夜の酒類提供 |
|---|---|---|
| 第一種地域 | 第一種・第二種低層住居専用地域/第一種・第二種中高層住居専用地域/第一種・第二種住居地域/田園住居地域 | できない |
| 第二種地域 | 準住居地域 | できる |
| 第三種地域 | 第一種・第二種・第四種・第五種地域以外の地域(近隣商業地域、工業地域、準工業地域、用途地域の指定がない区域など) | できる |
| 第四種地域 | 商業地域(第五種地域を除く) | できる |
| 第五種地域 | 名古屋市千種区今池・内山、中区栄三〜四丁目・新栄一丁目・錦三丁目の一部(条例別表第四で番地まで指定) | できる |
出典:愛知県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 第2条・別表第一〜第四
準住居地域は深夜営業ができる地域ですが、条例の騒音規制では第一種地域と同じ「第二種地域」として、深夜40デシベルという最も厳しい数値が適用されます(条例第26条・第7条第1項)。
営業はできても、音の管理は商業地域より厳しく求められるということです。準住居地域の物件を検討する場合は、防音の設計もあわせて考えてください。
騒音規制の詳細は深夜営業の騒音規制の記事で解説しています。
用途地域は、都市計画法第8条第1項にもとづき市町村が都市計画で定めているものです。次の方法で確認できます。
▶市町村の都市計画担当課の窓口で確認する(最も確実)
▶市町村が公開している都市計画情報の地図サービスで確認する
▶不動産会社に、物件が所在する土地の用途地域を確認してもらう
【実務上のポイント】
インターネットの地図サービスは便利ですが、境界付近の物件では表示だけで判断しないでください。用途地域の境界は道路や地番で区切られており、隣のビルとは区分が違うということが実際に起こります。
契約の判断をする物件については、市町村の窓口で番地を示して確認するのが確実です。物件の所在地が第一種地域だった場合、そこでは深夜営業ができません。契約後に判明しても取り返しがつきません。
一つの建物が複数の用途地域にまたがって建っているケースがあります。この場合の取扱いについて、愛知県の条例や愛知県警察の案内に個別の定めは示されていません。
営業所の一部が第一種地域にかかる場合の判断は、届出先の警察署に確認してください。この記事で「大丈夫」「だめ」と断定できる論点ではありません。境界にかかる可能性がある物件は、契約前の確認が必須です。
管轄する警察署は愛知県の警察署一覧で確認できます。
風営法第33条第5項は、条例の規定が施行され、または適用される時点で現に深夜において酒類提供飲食店営業を営んでいた場合について定めを置いています。用途地域の変更などによって、後から禁止地域になってしまうケースがあるためです。
ただし、警察庁の解釈運用基準では、この規定の適用について次のように整理されています。
適用対象となる「当該営業」とは、その規定の施行又は適用の際現に深夜において営んでいる酒類提供飲食店営業の範囲内の営業を意味する。営業所の新築、移築、増築等をした場合には、その酒類提供飲食店営業については、同項の適用はなくなる。
「営業所の新築、移築、増築等」には、営業所の建物の新築・移築・増築、客室の改築、営業所の建物につき行う大規模の修繕・大規模の模様替またはこれらに準ずる程度の間仕切り等の変更、営業所の建物内の客の用に供する部分の床面積の増加が該当する。
【実務上のポイント】
ここで注意したいのは、大規模なリノベーションが「営業所の新築、移築、増築等」に当たると、経過的な取扱いの前提が変わるという点です。
「昔からこの場所で深夜営業している店だから、改装しても大丈夫」とは限りません。既存店を居抜きで引き継ぐ場合や、大規模改装を予定している場合は、工事の計画段階で所轄警察署に確認してください。
深夜における酒類提供飲食店営業の禁止地域は、風営法が各都道府県の条例に委ねている事項です。そのため、禁止される地域の範囲は都道府県によって異なります。
▶全国共通/深夜(午前0時〜午前6時)の定義、届出制度そのもの(風営法)
▶愛知県独自/第一種地域での禁止、地域区分の内容、騒音規制の数値(愛知県条例)
インターネット上には「準住居地域も営業できない」と説明する記事がありますが、それは他県の条例にもとづく説明である可能性があります。愛知県の物件については、愛知県の条例で判断してください。
条例第27条が禁止しているのは「深夜において」当該営業を営むことです。深夜とは午前0時から午前6時までを指します。したがって、第一種地域の物件でも午前0時前に営業を終える飲食店であれば、この規制の対象にはなりません。ただし、0時を過ぎて客が残っている状態にならない運用が前提です。
条例第2条第3号では、第三種地域を「第一種地域、第二種地域、第四種地域及び第五種地域以外の地域」と定めています。用途地域の指定がない区域は第一種地域に該当しないため、第27条の禁止対象にはなりません。ただし、実際の物件については市町村と所轄警察署で確認してください。
異なります。風俗営業(接待飲食等営業など)の場合は、条例第4条により第一種地域に加えて、学校・幼保連携型認定こども園・保育所・病院・有床診療所からの距離による制限もかかります。深夜酒類提供飲食店営業には、この保全対象施設からの距離規制はありません。詳しくは風俗営業許可との違いを整理した記事をご覧ください。
条例別表第四・別表第五で、名古屋市の千種区今池・内山、中区栄・新栄・錦三丁目、東区東桜などの一部区域が第五種地域・別表第五の地域として番地単位で指定されています。これらは風俗営業の営業時間延長や特定遊興飲食店営業の設置許容地域に関わる区分です。深夜酒類提供飲食店営業については、いずれも第一種地域ではないため営業が可能です。
▶愛知県では第一種地域で深夜の酒類提供飲食店営業ができない(条例第27条)
▶第一種地域は7つ(低層住専1・2/中高層住専1・2/第一種・第二種住居/田園住居)
▶準住居地域は第二種地域なので深夜営業は可能。ただし騒音規制は深夜40デシベルと最も厳しい
▶近隣商業・工業・準工業・商業・用途無指定は営業可能
▶用途地域は市町村の都市計画担当課で番地を示して確認するのが確実
▶建物が用途地域をまたぐ場合の扱いは条例に定めがない。所轄警察署に確認する
▶既存営業の経過的な取扱いは、営業所の新築・移築・増築等をすると適用がなくなる
▶禁止地域は条例事項。他県の情報を愛知県に当てはめない
用途地域の確認は、物件を契約する前にしかできない判断です。内見の段階で不動産会社に用途地域を確認し、契約前に市町村の窓口で裏を取ってください。
物件の住所が分かれば、深夜営業ができる地域かどうかの確認からお手伝いできます。契約前のご相談を歓迎します。