この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。
届出書類の中で、いちばん時間がかかるのが図面です。
法令上必要とされているのは「営業所の平面図」ですが、実務では求積図・音響照明設備図・周辺地図もあわせて求められることが多いのが実情です。
この記事では、それぞれの図面に何を描き、寸法をどこから測り、面積をどう計算するのかを整理します。
| 図面 | 区分 | 内容 |
|---|---|---|
| 営業所の平面図 | 法定書類 | レイアウト、家具の配置と寸法、出入口、間仕切り |
| 営業所求積図・客室等求積図 | 法定外 | 面積の計算根拠を示す図面 |
| 求積一覧 | 法定外 | 各求積図の計算式と面積をまとめた表 |
| 音響・照明設備図 | 法定外 | 照明器具とスピーカーの位置および一覧表 |
| 営業所周辺の略図 | 法定外 | 営業所の位置を示す地図 |
出典:愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」(法定書類)
法定外の図面も、多くの警察署で提出を求められます。理由は、深夜酒類提供飲食店営業には実査(現地調査)がなく、警察側は書類だけで営業所の状況を把握する必要があるためです。事前に所轄へ確認しておくと確実です。
届出書には「営業所の構造及び設備の概要」欄があり、次の項目を記載します。
▶建物の構造/建物内の営業所の位置
▶客室数/営業所の床面積/客室の総床面積/各客室の床面積
▶照明設備/音響設備/防音設備/その他
様式の備考では、照明設備欄は種類・仕様・基数・設置位置等、音響設備欄は種類・仕様・台数・設置位置等、その他欄は出入口の数、間仕切りの位置および数、装飾その他の設備の概要等を記載するとされています。
出典:愛知県警察「各種申請届出様式」別記様式第47号(風営法施行規則第103条関係)
「設置位置」を書く以上、図面に照明器具とスピーカーの位置が描かれていなければ説明できません。求積図や音響照明設備図が求められるのは、この記載欄を裏づけるためです。
ここが最も間違えやすいポイントです。
| 対象 | 測り方 |
|---|---|
| 営業所 | 壁芯(壁の中心線)から測る |
| 客室・調理場 | 内壁(うちのり)から測る |
この考え方は、警察庁の解釈運用基準の記載とも整合します。
「営業所の床面積」欄は、建築基準法上の床面積を記載することで足りるが、「各客室の床面積」欄は、壁、柱等の区画の中心線から計るものではなく、うちのりの面積を記載するものとする。
出典:警察庁「解釈運用基準」(令和7年5月30日付け通達)第12中12
▶寸法はメートル単位で、小数点以下第2位まで用いる
▶各区画の面積は、小数点以下第4位まで計算する
▶最終的な面積は、小数点以下第3位を四捨五入して記載する
▶「その他面積」=営業所面積 − 客室面積 − 調理場面積
▶求積図の番号と、求積一覧の番号を一致させる
【実務上のポイント】
求積一覧は別紙にしても、各求積図に計算式と面積を直接書き込んでも構いません。店舗が小さければ、図面に書き込むほうが枚数が減って見やすくなります。修正の手間を考えると、別紙の一覧にしておくほうが後々楽です。
また、図面はすべて同じ色分けルールで統一すると、確認が格段に速くなります。実務では、営業所を青、客室を赤、調理場を緑の線で囲むのが一般的です。平面図・求積図・音響照明設備図のすべてで同じ色を使ってください。
▶図面のタイトルと縮尺(1/50、1/100など。小型店舗なら1/40でも可)
▶営業所(青)、客室(赤)、調理場(緑)をそれぞれ線で囲む
▶営業所の入口を明記する
▶テーブル、椅子、カウンター、棚等の配置
▶家具等は、上から見た寸法(テーブルなら天板の寸法)と、横から見たときの高さを記載する
▶カウンター、衝立、棚等は必ず高さを書く
▶客室内の2か所について寸法を記載する(縦・横それぞれ最も広い部分)
▶凡例をつけ、凡例の数と図中の家具等の数を一致させる
▶方位
深夜に営業する飲食店は、客室の中に見通しを妨げる設備を置けません。外から見て店内の様子が分かる状態を保つ、という趣旨です。
警察庁の解釈運用基準は、これに当たるものとして仕切り、ついたて、カーテン、背の高い椅子(高さがおおむね1メートル以上のもの)を挙げています。
▶実務上は、高さ100センチメートルが目安になります
▶衝立やパーテーションだけでなく、棚、植木、水槽なども対象になり得ます
▶天井からカーテンやすだれを吊るすのも、見通しを妨げることになります
▶無色透明なガラス板でも、紙や布を貼れば見通せなくなるため、同じように高さが問われます
出典:風営法第32条第1項/同法施行規則第99条/警察庁「解釈運用基準」第12中8(1)。100センチメートルの目安および棚・植木・水槽等の取扱いは実務上の運用です。
高さの制限がかかるのは「客室の中の見通し」です。ですから、壁際に調理場があってカウンターがその手前にあるような配置なら、カウンターが100センチメートルを超えていても、客室の見通しは妨げていないと考えられます。
逆に、客室の真ん中にカウンターや棚があって、そこで客席が分断されてしまう配置は認められません。高さだけでなく、どこに何を置くかが問われます。
図面に家具の高さを書く理由は、ここにあります。個室感を出すために背の高いパーテーションで区切る内装は、この基準を満たしません。設計段階で確認してください。
図面は、施行規則第99条の技術上の基準を満たしていることを示す資料でもあります。
▶客室の床面積は一室9.5平方メートル以上(客室の数が一室のみの場合は適用されない)
▶客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
▶善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと
▶客室の出入口に施錠の設備を設けないこと(営業所外に直接通ずる客室の出入口を除く)
▶営業所内の照度が20ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
▶騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
【実務上のポイント】
図面を描いていて問題が見つかりやすいのは間仕切りと客室数です。個室を複数設ける計画なら、それぞれが9.5平方メートル以上必要になります。基準に満たない小部屋を作ってしまうと、図面の段階で行き詰まります。
図面は「作った店を記録する書類」ではなく、「工事の前に基準への適合を確認するための道具」として使ってください。
物件を決める前の確認事項は深夜営業できる物件の選び方の記事にまとめています。
平面図と同じ色分けで営業所・客室・調理場を囲み、そこに設備の位置を落とし込みます。
▶照明器具とスピーカー等の位置を図面上に記載する
▶凡例をつける
▶あわせて一覧表を作る
一覧表には、次の項目を入れます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 種類 | ダウンライト、ペンダントライト、スピーカー、アンプ等 |
| 仕様 | ワット数など |
| 設置数 | 客室・調理場・その他(入口、トイレ等)に分けて記載 |
| 合計 | 上記の合計数 |
営業所がどこにあるかを示す地図です。決まった様式はありません。
▶営業所周辺100メートル程度の範囲を表示する
▶営業所の位置と、周囲の目印になる道路や建物が分かればよい
▶北を示す方位マークを入れる
▶「届出場所」「届出店舗」等の記載で位置を明示する
▶距離の目安としてスケールを表示する
▶余白に営業所の所在地、名称、用途地域を記載しておくとよい
風俗営業では、学校や病院などの保全対象施設からの距離が問題になるため、周囲の略図にこれらを記入します。しかし深夜酒類提供飲食店営業には保全対象施設からの距離規制がありませんので、記入する必要はありません。
また、市販の住宅地図やインターネット上の地図をそのまま使うと、著作権の問題が生じることがあります。利用条件を確認し、必要な場合は複製許諾の手続きを取ってください。
【実務上のポイント】
図面はCADで作るのが一般的ですが、手書きが認められないという定めはありません。重要なのは、寸法と面積の根拠が読み取れることと、実際の店舗と一致していることです。
最も効率が良いのは、内装業者から施工図面のデータをもらい、それをもとに必要事項を加筆する方法です。工事を発注する段階で「届出用に図面データがほしい」と伝えておいてください。工事完了後に依頼すると、有償になったり対応してもらえなかったりします。
なお、建築確認申請の図面をそのまま使うのは適さないことが多いです。細かい変更が反映されていなかったり、面積の計算方法が届出で求められるものと異なったりするためです。あくまで参考として使ってください。
進め方としては、設計段階で一度図面を作って基準への適合を確認し、完成後に実測して仕上げるという二段階が現実的です。
そのままでは足りないことがほとんどです。募集用の間取り図には、照明器具や音響設備の位置、家具の高さ、間仕切りの詳細、面積の計算根拠が記載されていないためです。届出書の記載欄を埋められるだけの情報を加える必要があります。
施行規則第99条第1号には、「ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない」というただし書きがあります。したがって、客室が1室のみであれば9.5平方メートル以上という基準は適用されません。ただし、届出書には面積を記載しますので、測定と記載は必要です。
客室でも調理場でもない部分の面積です。入口の風除室、トイレ、通路、従業者の更衣室などが該当します。営業所の面積から客室面積と調理場面積を差し引いて計算します。
営業所の構造・設備を変更した場合は、軽微な変更を除いて変更届が必要です。その際、変更内容を示す図面を求められることがあります。詳しくは変更届・廃止届の記事をご覧ください。
▶法定書類は「営業所の平面図」だが、実務では求積図・音響照明設備図・周辺地図も求められることが多い
▶実査がないため、警察は図面だけで営業所を把握する
▶営業所の寸法は壁芯から、客室・調理場の寸法は内壁から測る
▶面積は小数点以下第4位まで計算し、第3位を四捨五入する
▶その他面積=営業所面積−客室面積−調理場面積
▶図面はすべて営業所=青、客室=赤、調理場=緑で統一する
▶家具は上から見た寸法と高さを記載。見通しを妨げる設備は高さ100センチメートルが目安
▶カウンターは客室内の見通しを妨げない配置なら高くてもよい
▶客室が複数なら一室9.5平方メートル以上。1室のみなら適用されない
▶周辺地図に保全対象施設の記入は不要。地図の著作権に注意する
図面は本来、工事の前に作るべきものです。設計段階で一度描いてみることで、基準に合わない内装を未然に防げます。
図面の作成のみのご依頼にも対応しています。設計図面のデータをお持ちであれば、そこから届出用に仕上げます。