この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。


飲食店営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出は、どちらか一方を選ぶものではありません。午前0時以降にお酒を出すなら、両方が必要です。
この2つは根拠となる法律も、所管する役所も、手続きの性質もまったく別のものです。


この記事では、2つの制度がどう違い、どういう関係にあるのか、どちらを先に進めるのかを整理します。



結論:別々の手続きで、両方必要です    CONCLUSION


項目 飲食店営業許可 深夜酒類提供飲食店営業
根拠法 食品衛生法第55条 風営法第33条
所管 保健所(保健センター) 警察署(公安委員会)
性質 許可(審査を経て可否が決まる) 届出(審査を経るものではない)
目的 公衆衛生の確保 善良の風俗と清浄な風俗環境の保持
見るところ 調理設備、手洗い、給湯、食品衛生責任者など 営業所の場所、客室の構造、照明、音響など
手数料 必要(許可権者による) 不要
有効期間 あり(更新が必要) なし


出典:食品衛生法第55条/風営法第33条/愛知県「食品営業許可について」/愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続


なぜ両方必要なのか    WHY

理由は、風営法の条文の作りにあります。風営法では、「飲食店営業」を次のように定義しています。


風営法第2条第13項第4号

飲食店営業とは、設備を設けて客に飲食をさせる営業で食品衛生法の許可を受けて営むものをいう。


そして、深夜酒類提供飲食店営業の対象となる「酒類提供飲食店営業」は、この飲食店営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業と定義されています。


つまり、食品衛生法の許可を受けていない店は、そもそも風営法上の「飲食店営業」ではありません。深夜酒類提供飲食店営業の届出は、飲食店営業許可を土台にして成り立つ手続きなのです。


順番は保健所が先です    ORDER


▶①物件を決める(用途地域の確認)
▶②内装工事の着工前に保健所へ事前相談
▶③内装工事
▶④保健所へ飲食店営業許可を申請 → 施設調査 → 許可
▶⑤警察署へ深夜酒類提供飲食店営業開始届出(営業開始の10日前まで)
▶⑥営業開始


【実務上のポイント】
名古屋市は、施設の工事着工前に設計図面等を管轄の保健センターに持参して相談するよう案内しています。愛知県も事前相談から始まる流れを示しています。
ここが最も効率を左右します。工事が終わってから保健所に行き、設備が基準に足りていないと分かると、追加工事とスケジュールの遅れが同時に発生します。図面ができた段階で一度持ち込んでください。この一手間で、後の工程がすべて楽になります。


飲食店営業許可の要件・必要書類・施設基準については、飲食店営業許可の申請手続を解説したページで詳しく説明しています。開店日から逆算したスケジュールは届出方法と流れの記事にまとめています。


愛知県内の申請先    WHERE

飲食店営業許可は、営業所の所在地によって許可権者が分かれます。


営業所の所在地 飲食店営業許可の申請先
名古屋市 管轄の保健センター(市長許可)
豊橋市・豊田市・岡崎市 各市の保健所(市長許可)
上記以外の市町村 管轄の愛知県保健所(知事許可)


保健所と警察署は管轄が別々です

同じ市内でも、保健所の管轄と警察署の管轄は一致しません。それぞれ別に調べる必要があります。
深夜酒類提供飲食店営業の届出先は、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課です。市区町村ごとの管轄署は愛知県の警察署一覧で確認できます。


飲食店営業許可だけで足りる場合    ONLY

次のいずれかに当てはまる店は、深夜酒類提供飲食店営業の届出が不要です。


▶午前0時前に営業を終える店
▶午前0時以降も営業するが、その時間帯に酒類を提供しない店
▶営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供する営業(法第2条第13項第5号のかっこ書き)


ただし、深夜に営業する飲食店には、届出の要否にかかわらず風営法第32条の規制がかかります。構造設備の基準、照度、騒音、22時から翌6時の18歳未満の取扱いは、届出が不要な店でも適用されます。


該当性の詳しい判断は深夜酒類提供飲食店営業とはの記事をご覧ください。


飲食店営業許可も足りない場合    MORE

逆に、飲食店営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出では足りないケースもあります。


営業内容 必要な手続き
接待を行う 風俗営業(接待飲食等営業)の許可
深夜に客へ遊興をさせ、酒類を提供する 特定遊興飲食店営業の許可
客室の照度を10ルクス以下にする 風俗営業(低照度飲食店)の許可


いずれも飲食店営業許可が前提である点は共通です。飲食店営業許可は、飲食店として営業するための土台の手続きだと考えてください。


よくある質問    FAQ

Q.飲食店営業許可を取れば、深夜も自由に営業できますか?

できません。飲食店営業許可は食品衛生法上の許可であり、深夜の営業を認めるものではありません。午前0時以降に酒類を提供するのであれば、風営法にもとづく届出が別途必要です。

Q.飲食店営業許可の申請中に、警察へ届出を出せますか?

書類の準備は並行して進められます。ただし、届出の前提として飲食店営業許可が必要であるため、許可前に届出を受理してもらえるかは所轄警察署の運用によります。実務上は、許可を取得してから届出に進むのが確実です。

Q.飲食店営業許可の更新時に、深夜の届出もやり直しますか?

必要ありません。深夜酒類提供飲食店営業の届出に有効期間や更新の制度はありません。飲食店営業許可の更新は保健所の手続きとして別に進めてください。

Q.閉店するとき、両方に手続きが必要ですか?

必要です。保健所への廃業届と、警察への廃止届(廃止の日から10日以内)の両方を提出します。所管が違うため、片方だけで済ませてしまうケースが少なくありません。詳しくは変更届・廃止届の記事をご覧ください。

まとめ    SUMMARY

▶飲食店営業許可は食品衛生法、深夜酒類提供飲食店営業は風営法。別々の制度
▶所管は保健所と警察署。管轄も別々に調べる必要がある
▶午前0時以降に酒類を提供するなら両方必要
▶風営法上の「飲食店営業」は食品衛生法の許可を受けて営むものと定義されているため、順番は保健所が先
▶飲食店営業許可には手数料と有効期間があり、深夜酒類の届出にはどちらもない
▶内装工事の着工前に保健所へ事前相談する
▶接待をするなら風俗営業許可、深夜に遊興をさせるなら特定遊興飲食店営業許可が追加で必要
▶閉店時は保健所と警察の両方に届出が必要


「許可はひとつ取ればいい」と考えていると、開店直前に慌てることになります。保健所の手続きと警察の手続きは、それぞれ別に段取りを組んでください。


飲食店営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出を、まとめてご依頼いただけます。