この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。
午前0時を過ぎてお酒を提供する飲食店は、営業を始める10日前までに、警察署へ「深夜酒類提供飲食店営業開始届出」を出さなければなりません。
ところが、この届出が必要かどうかは「お店の名前」でも「お酒の売上比率」でもなく、風営法上の3つの要素で決まります。ここを取り違えたまま開店してしまう例が少なくありません。
この記事では、深夜酒類提供飲食店営業とは何か、届出が必要な店と不要な店の分かれ目、主食を提供する営業がなぜ除かれるのか、そして接待や遊興がある場合になぜ届出では足りないのかを、風営法と愛知県警察の公式情報にもとづいて整理します。
深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要かどうかは、次の3つをすべて満たすかどうかで決まります。
▶①午前0時から午前6時までの時間帯に営業するか
▶②その時間帯に客へ酒類を提供するか
▶③営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供する営業ではないか
①②③のすべてに当てはまれば、営業所の所在地を管轄する警察署へ営業開始届出が必要です。ひとつでも外れれば、この届出は不要になります。
出典:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第13項第4号・第5号、第13条第1項、第33条/警察庁「解釈運用基準」(令和7年5月30日付け通達)第11中6・7
ただし、この3つを満たしていても、お店で「接待」や「遊興」を行う場合は届出では足りません。その場合は別の許可が必要になります。詳しくは後述します。
正式には「深夜における酒類提供飲食店営業」といいます。風営法第33条にもとづく届出制の営業です。用語を3つに分解すると理解しやすくなります。
| 用語 | 風営法上の意味 |
|---|---|
| 深夜 | 午前0時から午前6時までの時間(法第13条第1項) |
| 飲食店営業 | 設備を設けて客に飲食をさせる営業で、食品衛生法の許可を受けて営むもの(法第2条第13項第4号) |
| 酒類提供飲食店営業 | 飲食店営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業。営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く(法第2条第13項第5号) |
つまり深夜酒類提供飲食店営業とは、飲食店営業許可を受けた店が、午前0時から午前6時までの時間帯に、主食を出す営業以外の形でお酒を提供する営業のことです。
警察庁の解釈運用基準では、「酒類を提供する」とは酒類を飲用に適する状態に置くこととされています。営業者が販売・贈与する場合に限られず、客が持参した酒類やボトルキープの酒類について、燗をしたり、グラス等の器具・氷・水割り用の水を提供したりする行為も「酒類を提供する」に当たります。
また「酒類」はアルコール分1度以上の飲料をいい、提供する酒類の量の多寡は問いません。「持ち込み制だから」「ほとんど出ないから」という理由で対象外にはなりません。
出典:警察庁「解釈運用基準」第10中5、第11中7(1)
実際の業態にあてはめると、おおむね次のように整理できます。
| 営業形態 | 届出 | 考え方 |
|---|---|---|
| バー・ショットバー(0時以降も営業) | 必要 | 酒類の提供が営業の中心であり、主食提供の営業に当たらないため |
| 午後11時に閉店するバー | 不要 | 深夜(午前0時以降)に営業しないため |
| 0時以降も営業するが、その時間は酒類を出さないカフェ | 不要 | 深夜に酒類を提供しないため(ただし深夜における飲食店営業としての規制は受けます) |
| ラーメン店・定食屋(0時以降も営業、ビールも提供) | 個別判断 | 「営業の常態として主食を提供している」といえるかによります(次章参照) |
| 接待を行うスナック・キャバクラ | 届出では不可 | 風俗営業(接待飲食等営業)の許可が必要。かつ風俗営業は深夜営業ができません |
| 深夜にショー・DJ等で客に遊興をさせる店 | 届出では不可 | 特定遊興飲食店営業の許可が必要になります |
【実務上のポイント】
届出の要否は店名や看板の業種ではなく、実際の営業内容で判断されます。「バー」と名乗っていなくても0時以降にお酒を出せば対象になりますし、逆に「バー」と名乗っていても0時前に閉めるなら対象外です。
まず決めるべきは「何時まで営業するか」です。ここが決まらないと、必要な手続きも、選べる物件も決まりません。物件を契約してから営業時間を考えると、後戻りができなくなります。
営業できる場所の制限については、深夜酒類提供飲食店営業ができない用途地域を解説した記事で詳しく説明しています。
条文上、酒類提供飲食店営業からは「営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むもの」が除かれます。居酒屋やラーメン店の扱いが分かれるのはこのためです。
この「営業の常態として」の解釈について、警察庁は次の基準を示しています。
ア 営業時間中客に常に主食を提供している店であることを要し、例えば、1週間のうち平日のみ主食を提供する店、1日のうち昼間のみ主食を提供している店等は、これに当たらない。
イ 客が飲食している時間のうち大部分の時間は主食を提供していることを要し、例えば、大半の時間は酒を飲ませているが、最後に茶漬を提供するような場合は、これに当たらない。
ウ 「通常主食と認められる食事」とは社会通念上主食と認められる食事をいい、米飯類、パン類(菓子パン類を除く。)、めん類、ピザパイ、お好み焼き等がこれに当たる。
出典:警察庁「解釈運用基準」第11中7(2)
つまり、メニューに主食があるかどうかではなく、営業の実態として主食提供が中心といえるかが問われます。深夜帯だけ〆のごはんものを出す、という運用では要件を満たしません。
居酒屋を名乗っていても、深夜帯の実態が飲酒中心であれば、酒類提供飲食店営業に該当し届出が必要と判断される可能性があります。逆に、24時間主食を提供し続けるラーメン店であれば該当しない方向に傾きます。
この判断は、メニュー構成、客単価、深夜帯の提供実態などを個別に見て行う必要があります。迷う場合は、開店前に管轄の警察署生活安全課または行政書士に確認してください。
居酒屋のケースについては、居酒屋に届出が必要かを整理した記事で詳しく取り上げています。
深夜酒類提供飲食店営業の届出をしていても、できないことが2つあります。ここが最も誤解の多い部分です。
▶接待をすること/風俗営業(接待飲食等営業)の許可が必要になる
▶深夜に客へ遊興をさせること/特定遊興飲食店営業の許可が必要になる
接待とは、風営法第2条第3項で「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。これに該当する営業は風俗営業の許可対象であり、風俗営業は原則として深夜(午前0時以降)に営業できません。「深夜酒類の届出を出しているから多少の接待は問題ない」という理解は誤りです。
遊興をさせるとは、営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせることをいいます。単にテレビの映像や録音された音楽を流す行為は含まれませんが、ショーを鑑賞するよう客に勧める行為、客の歌に合わせて照明の演出や合いの手を行う行為などは該当するとされています。
出典:風営法第2条第1項第1号・第3項、第2条第11項、第13条第1項/警察庁「解釈運用基準」第2、第10中2
【実務上のポイント】
開業前に整理しておきたいのは、「接待をするか」「遊興をさせるか」「何時まで営業するか」の3点です。この3点の組み合わせで、届出で済むのか、風俗営業許可が要るのか、特定遊興飲食店営業許可が要るのかが決まります。
内装工事やスタッフ採用を始める前にここを決めておかないと、工事後に業態変更を迫られる、あるいは選んだ物件では必要な許可が取れないという事態になりかねません。
接待の判断基準は風営法の「接待」とは何かを解説した記事で、風俗営業許可との制度上の違いは風俗営業許可との違いを整理した記事で説明しています。深夜のカラオケやDJの可否についてはカラオケ・DJ・ライブができるかを解説した記事をご覧ください。
風営法上の「飲食店営業」は、食品衛生法の許可を受けて営むものと定義されています。したがって、深夜酒類提供飲食店営業の届出は、飲食店営業許可を前提とする手続きです。
▶①保健所で飲食店営業許可を取得する(食品衛生法)
▶②警察署へ深夜酒類提供飲食店営業開始届出を提出する(風営法)
▶③営業開始日の10日前までに届出を済ませておく
この2つは所管も根拠法も別の手続きです。飲食店営業許可を取っただけでは深夜に酒類を提供できませんし、逆に届出だけでは飲食店として営業できません。
飲食店営業許可そのものの要件・流れは飲食店営業許可との違いを解説した記事で、開業までの逆算スケジュールは届出方法と流れを解説した記事で詳しく説明しています。
愛知県内で届出を行う場合、愛知県警察が案内している内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 届出の期日 | 営業を開始しようとする日の10日前まで |
| 届出の窓口 | 営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課 |
| 営業できない場所 | 第一種地域(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、田園住居地域) |
| 届出書 | 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書…1通 |
| 添付書類 | 営業の方法を記載した書面/営業所の平面図/住民票(本籍又は国籍記載のもの)の写し/法人の場合は定款及び登記事項証明書、役員に係る住民票 |
出典:愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」
この届出は許可ではなく届出であるため、審査を経て可否が決まるものではなく、申請手数料も生じません。ただし、書類に不備があれば受理されず、営業開始が後ろにずれます。10日前という期限は「書類が整った状態で提出できる日」から逆算する必要があります。
なお、この届出には風俗営業のような実査(現地調査)がありません。そのぶん、営業所の状況を書類で確認することになるため、所轄によっては公式案内に載っていない資料を求められることがあります。
必要書類の詳細は必要書類一覧の記事に、県内の届出先は愛知県の警察署一覧にまとめています。
届出の要否とは別に、深夜に飲食店営業を行う店には風営法上の規制がかかります(法第32条)。届出が不要な業態であっても、深夜に営業する限りこれらは適用されます。
▶営業所の構造及び設備を、国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合するように維持すること(法第32条第1項、施行規則第99条)
▶客室の中に見通しを妨げる設備を置かないこと(高さ100センチメートルが目安。衝立、棚、植木、水槽、吊り下げたカーテン等が対象になり得ます)
▶営業所内の照度が20ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
▶騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること
▶午後10時から翌日の午前6時までの時間に、18歳未満の者を客に接する業務に従事させ、又は客として立ち入らせないこと(法第32条第3項。施行規則第102条に規定する営業には適用されません)
出典:風営法第32条/同法施行規則第99条・第102条/警察庁「解釈運用基準」第12中8(1)。100センチメートルの目安および棚・植木・水槽等の取扱いは実務上の運用です。
深夜に営業する飲食店は営業所内の照度を20ルクス以下としない構造・設備が求められますが、客室の照度を10ルクス以下として営業する店は、風営法上の低照度飲食店(第2条第1項第2号の営業)として風俗営業の許可対象になります。
「雰囲気を出すために暗くしたい」という内装の希望は、営業区分そのものを変えてしまう可能性があります。照明計画は設計段階で確認してください。
年齢に関する規制は飲食店の深夜営業と18歳未満の記事、騒音については深夜営業の騒音規制の記事で詳しく解説しています。
届出が必要であるにもかかわらず届出をせずに深夜営業を行った場合、風営法の罰則により50万円以下の罰金が定められています。あわせて、公安委員会による指示や営業停止といった行政処分の対象にもなります。
さらに注意が必要なのは、届出で済むと思って営業していたが、実際には接待に該当していたというケースです。この場合は風俗営業の無許可営業となり、罰則の重さが大きく変わります。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 深夜酒類提供飲食店営業の無届 | 50万円以下の罰金 |
| 風俗営業の無許可営業 (令和7年6月28日施行の改正後) |
2年以下→5年以下の拘禁刑、200万円以下→1千万円以下の罰金に強化 |
| 両罰規定に係る法人罰則 | 200万円以下→3億円以下の罰金に強化 |
出典:愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」
罰則と行政処分の全体像は無届・接待の罰則を整理した記事でまとめています。
深夜とは午前0時から午前6時までの時間です。その時間帯に営業していなければ、深夜酒類提供飲食店営業には当たりません。ただし、実際には0時を過ぎて客が残っていた、ラストオーダーの運用が曖昧だった、というケースが問題になります。「0時に完全に営業を終えている」といえる運用ができるかを確認してください。
必要になり得ます。警察庁の解釈運用基準では、「酒類を提供して営む」とは酒類を客に提供して営むことをいい、提供する酒類の量の多寡を問わないとされています。売上比率が小さいことは、届出を不要とする理由にはなりません。
該当する可能性があります。解釈運用基準では、「酒類を提供する」とは酒類を飲用に適する状態に置くことをいい、客が持参し、又はボトルキープの対象となっている酒類について、燗をしたり、グラス等の器具、氷、水割り用の水等を提供したりする行為も「酒類を提供する」に当たるとされています。
深夜酒類提供飲食店営業には風営法上の営業終了時刻の制限がありません。ただし、接待をしないこと、深夜に客へ遊興をさせないこと、構造設備・照度・騒音の基準を満たすこと、年少者に関する規制を守ることが前提です。「届出さえ出せば何をしてもよい」という手続きではありません。
届出自体は提出できます。ただし、無届のまま営業していた期間については罰則や行政処分の対象となり得ます。放置するほど不利になりますので、気づいた時点で早急に管轄の警察署または行政書士へ相談してください。あわせて、接待や遊興に当たる行為がなかったかも確認しておく必要があります。
▶深夜とは午前0時から午前6時まで(風営法第13条第1項)
▶深夜に酒類を提供する飲食店営業は、原則として営業開始の10日前までに警察署へ届出が必要(法第33条)
▶「営業の常態として通常主食と認められる食事を提供する営業」は除かれる(法第2条第13項第5号)
▶酒類の提供量の多寡は問わない。持ち込み酒に氷やグラスを出す行為も「提供」に当たる
▶接待をするなら風俗営業許可、深夜に遊興をさせるなら特定遊興飲食店営業許可が必要で、届出では足りない
▶飲食店営業許可(食品衛生法)が前提。保健所→警察署の順で進める
▶愛知県では第一種地域で営業できず、窓口は管轄警察署の生活安全課
▶届出は許可ではないため申請手数料は生じないが、書類不備があれば営業開始が遅れる
▶無届営業は50万円以下の罰金。接待に該当していた場合は無許可営業となり、令和7年6月28日施行の改正で罰則が大幅に強化された
深夜酒類提供飲食店営業でつまずくのは、書類作成そのものよりも「自分の店がどの区分に当たるのか」の見極めです。営業時間、接待の有無、遊興の有無、そして物件の用途地域。この4つを、物件を契約する前に整理しておいてください。
届出の要否がはっきりしない段階からのご相談にも対応しています。営業形態と物件の所在地が決まっていれば、必要な手続きを整理してお伝えできます。