この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。


「居酒屋だから届出は不要」とは限りません。逆に「ビールを出しているから必要」とも限りません。
分かれ目は「営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むもの」に当たるかどうかです。


この判断は、店名でもメニューの有無でもなく、営業の実態で決まります。この記事では、警察庁が示す3つの判断要素を具体的に見ていきます。



なぜ居酒屋だけ話が違うのか    WHY

風営法は、深夜酒類提供飲食店営業の対象となる「酒類提供飲食店営業」を次のように定義しています。


風営法第2条第13項第5号

酒類提供飲食店営業とは、飲食店営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。)をいう。

出典:風営法第2条第13項第5号


このかっこ書きが、居酒屋・ラーメン店・定食屋の扱いを分けています。主食を提供する営業は、深夜に酒を出しても届出の対象から外れるという構造です。


3つの判断要素    CRITERIA

「営業の常態として」の解釈について、警察庁は次の基準を示しています。


解釈運用基準 第11中7(2)

 営業時間中客に常に主食を提供している店であることを要し、例えば、1週間のうち平日のみ主食を提供する店、1日のうち昼間のみ主食を提供している店等は、これに当たらない。
 客が飲食している時間のうち大部分の時間は主食を提供していることを要し、例えば、大半の時間は酒を飲ませているが、最後に茶漬を提供するような場合は、これに当たらない
 「通常主食と認められる食事」とは社会通念上主食と認められる食事をいい、米飯類、パン類(菓子パン類を除く。)、めん類、ピザパイ、お好み焼き等がこれに当たる。

出典:警察庁「解釈運用基準」(令和7年5月30日付け通達)第11中7(2)


▶ア/営業時間中ずっと主食を提供していること
▶イ/客の飲食時間の大部分で主食を提供していること
▶ウ/主食とは米飯類・パン類(菓子パン類を除く)・めん類・ピザパイ・お好み焼き等


業態ごとの傾向    TYPES


業態 届出 考え方
深夜も営業する牛丼店・ラーメン店(ビールも提供) 不要の方向 営業時間中ずっと主食を提供し、客の大半が主食を注文しているため
深夜も営業する定食屋 不要の方向 同上
飲み中心で、〆にごはんものを出す居酒屋 必要の方向 「大半の時間は酒を飲ませているが、最後に茶漬を提供するような場合」に当たるため
昼は定食、夜は飲み中心の店 必要の方向 「1日のうち昼間のみ主食を提供している店」に当たるため
平日はランチあり、週末は飲みのみの店 必要の方向 「1週間のうち平日のみ主食を提供する店」に当たるため
深夜は主食メニューを止める店 必要の方向 営業時間中常に提供しているとはいえないため


「メニューにある」だけでは足りません

主食メニューを載せているだけでは、この要件を満たしません。客が実際にそれを注文し、飲食している時間の大部分で主食が提供されているという実態が必要です。
届出を避けるために形式的にごはんものをメニューに加える、という対応は通用しません。判断は営業の実態で行われます。


届出が不要でも受ける規制    STILL

主食提供営業に当たるとしても、深夜に飲食店営業を営む以上、風営法第32条の規制は受けます


▶営業所の構造設備を技術上の基準に適合するよう維持すること(法第32条第1項、施行規則第99条)
▶客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
▶営業所内の照度を20ルクス以下としないこと
▶騒音・振動を条例の数値未満に維持すること


出典:風営法第32条第1項・第2項/同法施行規則第99条


年少者の規制は扱いが変わります    MINOR

ここは実務上、大きな違いが生じる部分です。


風営法第32条第3項は、午後10時から翌午前6時までの時間に18歳未満を客に接する業務に従事させたり、客として立ち入らせたりすることを禁止しています。しかし、施行規則第102条に規定する営業には、この規定の適用がありません。


解釈運用基準 第28中3

施行規則第102条第1号に掲げる営業は、法第2条第13項第4号に規定する「営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むもの」と同一である。


項目 主食提供営業 飲み中心の店
深夜酒類提供飲食店営業の届出 不要 必要
22時〜翌6時の18歳未満の従事・立入り 風営法の規制の適用なし 禁止
構造設備・照度・騒音の規制 適用あり 適用あり
20歳未満への酒類提供 禁止 禁止


【実務上のポイント】
主食提供営業に当たると、深夜帯に18歳未満のスタッフを使える可能性が出てきます。深夜のラーメン店や牛丼店で若いアルバイトを見かけるのは、この規定によるものです。
ただし、労働基準法第61条第1項は、業務内容を問わず満18歳未満の者を午後10時から午前5時までの間に使用することを禁止しています。風営法の規制がかからなくても、労働基準法の制限は別に適用されます。この点を混同しないでください。


年齢に関する規制の詳細は飲食店の深夜営業と18歳未満の記事をご覧ください。


判断に迷う場合の考え方    JUDGE


【実務上のポイント】
届出の要否で迷ったら、届出をしておくほうがリスクは小さいという考え方があります。届出は手数料がかからず、有効期間も更新もありません。一方、届出が必要だったのに出していなければ、罰金や行政処分の対象になります。
ただし、届出をすれば18歳未満のスタッフを深夜帯に使えなくなるなど、営業上の制約も生じます。「どちらでも良い」ではなく、自分の店の実態がどちらに当たるのかを所轄警察署に確認するのが最も確実です。
メニュー構成、深夜帯の注文の傾向、営業時間による提供内容の変化を整理したうえで相談してください。


管轄する警察署は愛知県の警察署一覧で確認できます。


よくある質問    FAQ

Q.焼き鳥屋や串カツ屋は主食提供営業ですか?

焼き鳥や串カツは、解釈運用基準が例示する米飯類、パン類、めん類、ピザパイ、お好み焼きのいずれにも当たりません。メニューにごはんものを加えていても、客が飲食している時間の大部分で主食が提供されているといえるかが問われます。飲み中心の営業であれば、届出が必要な方向で検討してください。

Q.お好み焼き屋は主食提供営業になりますか?

解釈運用基準は、お好み焼きを「通常主食と認められる食事」の例として挙げています。ただし、それだけで結論が出るわけではありません。営業時間中ずっと提供しているか、客の飲食時間の大部分で提供されているかという要素も満たす必要があります。

Q.ランチもやっている居酒屋は主食提供営業ですか?

解釈運用基準は、「1日のうち昼間のみ主食を提供している店」はこれに当たらないと明示しています。ランチで定食を出していても、夜は飲み中心という営業であれば、主食提供営業には当たらない方向で判断されます。

Q.届出が不要でも、接待をしたら問題になりますか?

なります。接待をするなら風俗営業の許可が必要であり、これは主食を提供しているかどうかとは無関係です。店員が特定の客の隣に座って継続的に会話の相手をすれば、業態を問わず接待に当たります。詳しくは風営法の「接待」とは何かを解説した記事をご覧ください。

まとめ    SUMMARY

▶「営業の常態として通常主食と認められる食事を提供して営むもの」は、深夜酒類提供飲食店営業の対象から除かれる
▶判断要素は3つ。営業時間中ずっと/飲食時間の大部分/社会通念上の主食であること
▶主食とは米飯類・パン類(菓子パン類を除く)・めん類・ピザパイ・お好み焼き等
▶〆にごはんものを出すだけの居酒屋は、これに当たらない
▶昼だけ、平日だけ主食を出す店も、これに当たらない
▶届出が不要でも、構造設備・照度・騒音の規制は適用される
▶主食提供営業なら、22時以降の年少者規制(風営法)の適用がない。ただし労働基準法の制限は別途かかる
▶メニューに載せるだけでは要件を満たさない。営業の実態で判断される


居酒屋の判断は、このクラスタで最も個別性が高いテーマです。メニュー構成と深夜帯の注文の傾向を整理したうえで、開業前に確認してください。


「うちの店は届出が必要か」という判断からご相談いただけます。メニューと営業スタイルをお聞きして整理します。