この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。
深夜酒類提供飲食店営業の届出は、営業を開始しようとする日の10日前までに、営業所の所在地を管轄する警察署へ提出します。
ここでつまずく方の多くは、期限を知らなかったのではなく、「その前に飲食店営業許可を取っておく必要がある」ことを開店直前に知ったというパターンです。
この記事では、物件を決めてから営業を開始するまでの流れ、飲食店営業許可と警察への届出の順番、10日前という期限の考え方、そして届出当日に何が行われるのかまでを整理します。
▶①保健所で飲食店営業許可を取得する(食品衛生法)
▶②警察署へ深夜酒類提供飲食店営業開始届出を提出する(風営法)
▶③届出は、営業を開始しようとする日の10日前まで
▶④窓口は、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課
風営法上の「飲食店営業」は、食品衛生法の許可を受けて営むものと定義されています。したがって飲食店営業許可を持っていない状態では、深夜酒類提供飲食店営業の届出という前提そのものが成り立ちません。
出典:風営法第2条第13項第4号、第33条/愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」
| 順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 営業形態を決める | 営業時間、接待の有無、遊興の有無。ここで必要な手続きが確定します |
| 2 | 物件を選ぶ・契約する | 契約前に用途地域を確認。第一種地域では深夜営業ができません |
| 3 | 内装の設計・工事 | 保健所の施設基準と、風営法の構造設備基準の両方を満たす設計にする |
| 4 | 保健所へ事前相談・申請 | 事前相談→申請→施設調査→許可の流れ。食品衛生責任者の設置が必要です |
| 5 | 飲食店営業許可を取得 | 許可を受けて初めて、風営法上の「飲食店営業」になります |
| 6 | 警察署へ届出 | 営業を開始しようとする日の10日前まで |
| 7 | 営業開始 | 開業後の義務(従業者名簿など)が発生します |
出典:食品衛生法第55条/愛知県「食品営業許可について」/名古屋市「食品取扱施設 営業許可」/愛知県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」
【実務上のポイント】
実際に手戻りが起きやすいのはステップ2と3です。物件を契約してから用途地域が第一種地域だと分かっても、契約はもう戻せません。また、内装工事が終わってから構造設備の問題が判明すると、追加工事の費用と時間が発生します。
物件を契約する前に営業できる地域か、内装工事に着手する前に基準を満たす設計かを確認してください。名古屋市も、施設の工事着工前に設計図面等を管轄の保健センターへ持参して相談するよう案内しています。
営業できない地域の判断は深夜酒類提供飲食店営業ができない用途地域の記事、物件を決める前のチェック項目は深夜営業できる物件の選び方の記事にまとめています。
飲食店営業は、食品衛生法第55条にもとづく許可が必要な業種です。愛知県内では、営業所の所在地によって許可権者が分かれます。
| 営業所の所在地 | 申請先 |
|---|---|
| 名古屋市 | 管轄の保健センター(市長許可) |
| 豊橋市・豊田市・岡崎市 | 各市の保健所(市長許可) |
| 上記以外の市町村 | 営業所の所在地を管轄する愛知県の保健所(知事許可) |
警察署の管轄と保健所の管轄は別々です。同じ市内でも窓口が異なるので、それぞれ確認してください。
飲食店営業許可との関係は、飲食店営業許可との違いを解説した記事で詳しく整理しています。
愛知県警察の案内では、「当該営業を開始しようとする日の10日前までに提出してください」とされています。
たとえば6月10日から深夜営業を始めたいなら、6月1日までに届出を完了させておく必要があります。
「10日前ちょうどに窓口へ行けばよい」と考えると、次のような事情で予定が崩れます。
・生活安全課の担当者が事件対応等で外出しており、その日は受け付けてもらえない
・担当者が休みで、対応できる職員が不在
・土日祝や年末年始は窓口が開いていない
・書類に不備があれば、整えて出し直すまで届出は完了しない
10日前の時点で「不備のない書類一式がそろい、かつ窓口に行ける日を確保できている」状態を作ってください。余裕を持って準備しておけば、こうした事情に振り回されずに済みます。
届出をしてから10日を待つ間、営業がまったくできないわけではありません。
▶届出が必要になるのは、午前0時から午前6時までの時間帯に酒類を提供する場合
▶午前0時前に営業を終える形であれば、届出の完了を待たずに酒類を提供して営業できる
▶10日間を「午前0時閉店のプレオープン期間」として使える
【実務上のポイント】
この10日間を、オペレーションの確認や常連づくりに充てるという考え方があります。スタッフの動線、提供スピード、レジ回りの流れは、実際に客を入れてみないと分かりません。
ただし、午前0時を過ぎて客が残っている状態にならない運用を徹底してください。ラストオーダーの時刻設定と、閉店の声かけのタイミングを事前に決めておくことをおすすめします。
届出は、書類を渡して終わりという手続きではありません。
▶事前に電話で予約を取っておくのが望ましい(予約に対応していない警察署もあります)
▶書類がそろっているか、営業内容や構造に法令違反がないかがチェックされる
▶所要時間はおおむね30分から1時間程度
▶問題がなければ「申請・届出受領書」が交付され、届出が完了する
▶手数料はかかりません
深夜酒類提供飲食店営業には、風俗営業のような実査(現地調査)がありません。警察側が営業所に立ち入って直接確認する機会がないため、届出時に営業者本人の同行を求め、面談や誓約書の記載を行う警察署があります。
また、同行までは不要でも、あらかじめ誓約書に署名して持参するよう求められることもあります。予約の電話をする際に、営業者の同行が必要かどうかもあわせて確認しておいてください。
深夜酒類提供飲食店営業は届出制なので、風俗営業のような許可証は交付されません。届出をした事実を示すものは、窓口で受け取る申請・届出受領書だけです。
▶受領書は、届出をしたことを示す唯一の公的な資料になる
▶求人媒体に採用広告を掲載する際、提出を求められることがある
▶後日の変更届・廃止届を作成するときに内容の確認に使う
▶届出書と添付書類の控えも、あわせて手元に残しておく
【実務上のポイント】
届出書は正本1通で足りますが、提出前に必ず一式コピーを取っておいてください。控えを残さないと、後から店名を変えたり内装を変えたりしたときの変更届で、前の内容が分からず苦労します。
受領書と控えは、飲食店営業許可証と同じ場所に保管するのが確実です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 開店の3か月以上前 | 営業形態(営業時間・接待の有無・遊興の有無)を確定。候補物件の用途地域を確認する |
| 開店の2〜3か月前 | 物件契約。内装工事の着工前に、保健所へ設計図面を持参して事前相談 |
| 開店の1〜2か月前 | 内装工事。食品衛生責任者を確保(資格がない場合は講習の受講日程を確保) |
| 開店の1か月前 | 保健所へ飲食店営業許可を申請。施設調査の日程を調整する |
| 開店の3週間前 | 飲食店営業許可の取得。並行して届出書類(平面図・営業の方法・住民票等)を準備 |
| 開店の2週間前 | 管轄警察署へ電話。届出の予約、必要書類、営業者同行の要否を確認する |
| 開店の10日前まで | 警察署へ届出。受領書を受け取る |
【実務上のポイント】
見落とされがちなのが食品衛生責任者です。調理師や栄養士などの資格がない場合、養成講習会を受講する必要があり、講習は日程が限られているため、直前では間に合わないことがあります。営業形態を決めた段階で、誰が食品衛生責任者になるかも決めておいてください。
必要書類の詳細は必要書類一覧の記事で、届出先は愛知県の警察署一覧で確認できます。
▶①午前0時前に営業を終える形でオープンし、届出完了後に深夜営業へ移行する
▶②開店日そのものを後ろにずらす
「とりあえず深夜も営業して、後から届出を出す」という選択肢はありません。無届で深夜に酒類を提供すれば、罰金や行政処分の対象になります。
罰則と行政処分の詳細は無届・接待の罰則を整理した記事で説明しています。
▶消防関係の手続(建物の用途や規模により異なるため、所轄の消防署へ確認してください)
▶個人事業の開業届・法人設立に伴う税務関係の届出
▶従業員を雇用する場合の労働保険・社会保険の手続
▶深夜に客へ遊興をさせる場合は特定遊興飲食店営業の許可、接待を行う場合は風俗営業の許可
営業を開始してよい旨の通知が届く手続きではありません。届出の日から10日が経過したことを、営業者自身で確認して深夜営業を始めることになります。受領書に記載された届出日から数えて、開始できる日をカレンダーに控えておいてください。なお、愛知県での具体的な取扱いは、届出先の警察署に確認しておくと確実です。
書類の作成は並行して進められます。ただし、届出の前提として飲食店営業許可が必要であるため、許可が下りる前に届出を受理してもらえるかは所轄の警察署の運用によります。実務上は、飲食店営業許可を取得してから届出に進むのが確実です。
ありません。営業を続ける限り、届出は有効なままです。ただし、届出事項に変更があったときは変更届、営業をやめたときは廃止届が必要です。詳しくは変更届・廃止届の記事をご覧ください。
使えません。届出は営業者ごとに行うものであり、営業者が変われば新たに届出が必要です。前のオーナー側では廃止届が必要になります。飲食店営業許可についても、地位の承継の手続きができる場合とできない場合があるため、保健所に確認してください。
▶順番は保健所(飲食店営業許可)→警察署(深夜酒類提供飲食店営業開始届出)
▶届出は営業を開始しようとする日の10日前まで。窓口は管轄警察署の生活安全課
▶担当者不在や書類不備で予定が崩れるため、期限ギリギリを狙わない
▶10日間は午前0時閉店のプレオープン期間として使える
▶届出当日は書類チェックがあり、所要時間は30分〜1時間程度
▶実査がないため、営業者本人の同行や誓約書の記載を求められることがある
▶許可証は交付されない。「申請・届出受領書」が唯一の公的な資料になる
▶受領書と控えは必ず保管する。採用広告の掲載や変更届で必要になる
▶物件契約前に用途地域、内装着工前に構造設備を確認する
この手続きは、書類そのものよりスケジュールの組み方で難易度が決まります。開店日を決めたら、そこから逆算して保健所の相談日を先に押さえてください。
開店日が決まっている案件のご相談にも対応しています。物件の所在地と開店予定日が決まっていれば、間に合うかどうかを含めてお伝えできます。