この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。


深夜にDJやライブ、ショーで客を盛り上げながらお酒を出す営業は、特定遊興飲食店営業の許可が必要です。
そして愛知県では、この許可を受けられる場所が名古屋市千種区・中区・東区の指定された番地だけに限られています。


この事実を知らずに物件を決めてしまうと、構想していた営業がそもそも成立しません。この記事では、深夜酒類提供飲食店営業との境界と、愛知県での場所の制約を整理します。



結論:遊興の有無で分かれます    CONCLUSION


項目 深夜酒類提供飲食店営業 特定遊興飲食店営業
手続き 届出 許可
深夜の遊興 させられない させられる
営業できる場所 第一種地域以外 名古屋市の指定区域のみ
手数料 不要 24,000円
欠格事由 なし あり(法第4条各号)
営業時間 風営法上の終了時刻の制限なし 県の全域で午前5時〜午前6時は営業不可
深夜の騒音規制 第一種・第二種40dB/その他50dB 第一種・第二種40dB/その他50dB


出典:風営法第2条第11項、第31条の22/愛知県「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」第22条〜第24条・第26条/愛知県警察「特定遊興飲食店営業の許可申請手続


特定遊興飲食店営業とは    DEFINITION

風営法第2条第11項は、特定遊興飲食店営業を次のように定義しています。


風営法第2条第11項

特定遊興飲食店営業とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前6時後翌日の午前0時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)をいう。


分解すると、「深夜」「遊興」「飲酒」の3つがそろう営業ということになります。逆に、深夜は営業しない、深夜は酒類を提供しない、深夜は客に遊興をさせない、というものはこれに該当しません。


どこからが「遊興」か    PLAY

警察庁の解釈運用基準は、「遊興をさせる」とは営業者側の積極的な行為によって客に遊び興じさせることとしています。


「客に遊興をさせる」ことに当たる行為の例


▶不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為
▶不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為
▶客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為
▶のど自慢大会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為
▶カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを勧奨し、不特定の客の歌に合わせて照明の演出、合いの手等を行い、又は不特定の客の歌を褒めはやす行為
▶バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為


「客に遊興をさせる」ことに当たらないとされている行為の例


▶いわゆるカラオケボックスで不特定の客にカラオケ装置を使用させる行為
▶カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客が自分から歌うことを要望した場合に、マイクや歌詞カードを手渡し、又はカラオケ装置を作動させる行為
▶いわゆるガールズバー、メイドカフェ等で、客にショーを見せたりゲーム大会に客を参加させたりせずに、単に飲食物の提供のみを行う行為
▶ボーリングやビリヤードの設備を設けてこれを不特定の客に自由に使用させる行為
▶バー等でスポーツ等の映像を単に不特定の客に見せる行為(客自身が応援等を行う場合を含む。)


出典:警察庁「解釈運用基準」(令和7年5月30日付け通達)第10中2


【実務上のポイント】
一覧を並べると、境界がどこにあるかが見えてきます。設備を置いて客が勝手に使うのは遊興ではなく、店側が働きかけて盛り上げると遊興になるという構造です。
たとえば、スポーツ中継を流しているだけなら遊興ではありません。しかし店員が客に呼び掛けて応援に参加させれば遊興に当たるとされています。同じ設備、同じ映像でも、店の関わり方で結論が変わります。営業スタイルを決めるときに意識してください。


カラオケやDJの可否については、カラオケ・DJ・ライブができるかを解説した記事でさらに詳しく整理しています。


愛知県では場所が極端に限られます    AREA

特定遊興飲食店営業は、条例で指定された営業所設置許容地域でしか営めません。愛知県の指定は次のとおりです。


町名 区域
名古屋市千種区 今池一丁目 6〜17・28〜30番
今池三丁目 4番
今池四丁目 7・9〜11番
今池五丁目 1〜3・8〜13・18〜27番
内山三丁目 31〜33番
名古屋市中区 栄三丁目 1〜4・8〜14・19〜21番
栄四丁目 2〜18・20・21番
栄五丁目 1・3〜7番
錦三丁目 1〜4・6〜24番
新栄一丁目 1〜6・9〜14・25〜27番
新栄町三丁目・東桜二丁目 新栄町三丁目は全域/東桜二丁目は18・19・21〜23番
名古屋市東区 東桜二丁目 18・20〜23番
東新町 全域


出典:愛知県警察「特定遊興飲食店営業の許可申請手続」/愛知県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 第22条・別表第四・別表第五


これ以外の場所では許可を受けられません

名古屋市の栄・錦・今池・東新町といった一部エリアを除き、愛知県内で特定遊興飲食店営業の許可を受けることはできません。一宮市でも稲沢市でも豊橋市でも、指定区域外である以上は同じです。
さらに、指定区域内であっても、児童福祉施設・病院・有床診療所・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院から30m以内は許可できません。「深夜にDJイベントをやるバー」を構想しているなら、物件探しの前提がここで決まります。


許可の要件も届出とは別物です    REQUIREMENT

特定遊興飲食店営業は許可制であり、風営法第4条各号の欠格事由が適用されます。内容は風俗営業の許可と同じものです。


必要書類も、深夜酒類提供飲食店営業とは大きく異なります。


▶営業の方法を記載した書類
▶営業所の使用について権原を有することを疎明する書類
▶営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
▶本籍又は国籍記載の住民票の写し
▶人的欠格事由に該当しない旨の誓約書
▶市区町村長の発行する身分証明書
▶法人の場合/定款、登記事項証明書、誓約書、密接な関連を有する法人に関する書面、株主名簿の写し、役員分の書類
▶管理者を選任する場合/誓約書、住民票、身分証明書、写真2葉


出典:愛知県警察「特定遊興飲食店営業の許可申請手続」(添付書類の発行・作成日は申請日から3か月以内)


手数料は24,000円で、キャッシュレス決済または愛知県収入証紙で納めます。届出が無料である深夜酒類提供飲食店営業とは、この点でも異なります。


特定遊興飲食店営業許可の申請手続については、特定遊興飲食店営業許可を解説したページで詳しく説明しています。接待を伴う場合は、風俗営業許可の申請手続を解説したページもあわせてご覧ください。


費用の比較は深夜酒類提供飲食店営業の費用の記事で確認できます。


営業時間の制限    TIME

愛知県の条例第23条は、特定遊興飲食店営業者は県の全域において、午前5時から午前6時までの時間はその営業を営んではならないと定めています。


深夜酒類提供飲食店営業には風営法上の営業終了時刻の制限がありませんので、この点も違いになります。


よくある質問    FAQ

Q.深夜以外の時間帯にライブをやるなら、届出だけで足りますか?

特定遊興飲食店営業は「深夜」「遊興」「飲酒」の3つがそろう営業です。午前6時後から午前0時前の時間においてのみ遊興をさせる営業であれば、これに該当しません。「営業の方法」の様式にも、遊興の内容と時間帯を書く欄が設けられています。ただし、イベントが0時をまたぐ運用にならないよう注意してください

Q.年に数回だけ深夜にイベントをやる場合も許可が必要ですか?

解釈運用基準では、平素は客に遊興をさせていないバー等において、特に人々の関心の高い試合等が行われるときに、反復継続の意思を持たずにたまさか短時間に限って深夜に客に遊興をさせたような場合は、特定遊興飲食店営業としての継続性は認められないとされています。
一方で、2晩以上にわたって行われる催しは継続性が認められるともされています。定期開催を予定しているなら、許可が必要になる可能性が高くなります。個別の判断は所轄警察署に確認してください。

Q.BGMを流すのは遊興ですか?

解釈運用基準では、単にテレビの映像や録音された音楽を流すような場合は、積極的な行為には当たらないとされています。BGMを流すこと自体は遊興に当たりません。ただし、DJが客を煽って盛り上げるような形になれば、判断は変わり得ます。

Q.指定区域外でナイトクラブを開きたい場合は?

愛知県内では、条例で指定された区域以外に特定遊興飲食店営業の営業所を設置できません。深夜に遊興をさせない営業形態に変更するか、指定区域内の物件を探すかという選択になります。「区域外だが特別に認めてもらう」という方法はありません

まとめ    SUMMARY

▶特定遊興飲食店営業は「深夜」「遊興」「飲酒」の3つがそろう営業(法第2条第11項)
▶遊興かどうかは、営業者側の積極的な行為があるかで判断される
▶設備を置いて客が自由に使うだけなら遊興ではない。店が働きかけて盛り上げると遊興になる
▶愛知県の営業所設置許容地域は、名古屋市千種区・中区・東区の指定番地のみ
▶指定区域内でも、児童福祉施設・病院・有床診療所・特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院から30m以内は不可
▶欠格事由は風俗営業と同じ(法第4条各号)。手数料は24,000円
▶県の全域で午前5時から午前6時までは営業できない(条例第23条)
▶深夜以外の時間帯に遊興をさせる営業であれば、深夜酒類提供飲食店営業の届出で対応できる


深夜にイベントを行う構想があるなら、物件を探す前にこの記事の区域表を確認してください。愛知県では、場所の選択肢が先に決まってしまう制度になっています。


「この営業内容だと遊興に当たるのか」という段階からご相談いただけます。