この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。
この2つを分けるのは「接待をするかどうか」です。そして両者は、同じ営業所で時間帯によって使い分けることもできません。
接待を行うなら風俗営業の許可が必要ですが、風俗営業は原則として午前0時以降に営業できません。つまり「深夜まで接待をする店」は、制度上そもそも成り立ちません。
この記事では、届出と許可がどう違うのかを項目ごとに比較し、判断を誤ったときに何が起きるのかを整理します。
| 項目 | 深夜酒類提供飲食店営業 | 風俗営業(接待飲食等営業) |
|---|---|---|
| 手続き | 届出 | 許可 |
| 接待 | できない | できる |
| 深夜営業 | できる | 原則できない(法第13条第1項) |
| 手数料 | 不要 | 24,000円(パチンコ店以外) |
| 欠格事由 | なし | あり(法第4条各号) |
| 管理者 | 選任の規定なし | 選任が必要 |
| 地域規制 | 第一種地域で深夜営業不可 | 第一種地域は不可+保全対象施設からの距離規制 |
| 客室の照度 | 20ルクス以下にできない | 営業の種別により基準が異なる |
出典:風営法第2条第1項第1号・第3項、第4条、第13条第1項、第24条、第33条/愛知県警察「風俗営業の許可申請手続」
風営法第2条第3項は、接待を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義しています。
これは、店の名前や業態の呼び方で決まるものではありません。スナックだから接待、バーだから接待ではない、という単純な線引きはできず、実際に従業員が客に対して何をしているかで判断されます。
接待に当たる行為の具体的な考え方は、風営法の「接待」とは何かを解説した記事で詳しく整理しています。
風営法第13条第1項は、風俗営業者は深夜(午前0時から午前6時まで)においてその営業を営んではならないと定めています。
愛知県の条例では、この例外として次のように定められています。
▶営業延長が認められる時は午前1時(条例第5条第1項)
▶12月16日から翌年1月10日までの間で公安委員会規則で定める日は、県の全域が対象(同条第2項第1号)
▶接待飲食等営業について、第五種地域および条例別表第五に掲げる地域では午前1時まで(同条第3項)
▶県の全域で、午前6時後午前9時までは営業できない(条例第6条第1項)
出典:風営法第13条第1項/愛知県「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」第5条・第6条
「午前0時までは風俗営業として接待、0時からは深夜酒類提供飲食店営業として接待なし」という運用を考える方がいます。しかし、これは認められません。
深夜酒類提供飲食店営業の届出をしている店で接待を行えば、それが深夜であるかどうかを問わず、風俗営業の無許可営業となります。届出があるから多少の接待は許される、という考え方は成り立ちません。
届出には欠格事由の規定がありませんが、風俗営業の許可には人的要件があります。
風俗営業許可の要件・申請の流れについては、風俗営業許可の申請手続を解説したページで詳しく説明しています。
欠格事由(風営法第4条各号)の主なもの
▶破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
▶1年以上の拘禁刑に処せられ、又は一定の法律に違反して1年未満の拘禁刑若しくは罰金の刑に処せられ、執行を終わった日等から5年を経過しない者
▶集団的に又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれのある者
▶アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
▶風俗営業の許可を取り消されて5年を経過しない者
▶営業に関し、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
▶法人の役員が上記に該当するとき
出典:愛知県警察「風俗営業の許可申請手続」(風営法第4条各号)
令和7年11月28日施行の改正により、風俗営業の欠格事由には次のものが追加されています。
▶親会社等が許可を取り消された法人
▶警察による立入検査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
▶暴力的不法行為等を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
出典:愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」
深夜酒類提供飲食店営業の届出には、これらの欠格事由は適用されません。届出制だからです。この点を混同した記事が見られますので注意してください。
| 書類 | 深夜酒類 | 風俗営業 |
|---|---|---|
| 営業の方法 | 〇 | 〇 |
| 営業所の平面図 | 〇 | 〇(周囲の略図も) |
| 本籍記載の住民票 | 〇 | 〇 |
| 営業所の使用権原を疎明する書類 | - | 〇 |
| 人的欠格事由に該当しない旨の誓約書 | - | 〇 |
| 市区町村長発行の身分証明書 | - | 〇 |
| 株主名簿の写し(株式会社) | - | 〇 |
| 管理者に係る書類・写真2葉 | - | 〇 |
出典:愛知県警察「風俗営業の許可申請手続」「深夜における酒類提供飲食店営業の営業開始届出手続」
風俗営業の添付書類には、発行・作成日が申請日から3か月以内のものという条件も付きます。深夜酒類提供飲食店営業と比べて、準備の負担が大きく変わります。
風俗営業許可で必要になる書類の全体像は、風俗営業許可の必要書類をまとめたページをご覧ください。深夜酒類提供飲食店営業の必要書類は必要書類一覧の記事にまとめています。
どちらも第一種地域では営業できませんが、風俗営業にはさらに保全対象施設からの距離規制があります。
| 施設 | 商業地域以外 | 商業地域 |
|---|---|---|
| 大学以外の学校、幼保連携型認定こども園 | 100m | 70m |
| 保育所、病院、有床診療所 | 50m | 30m |
出典:愛知県警察「風俗営業の許可申請手続」(1号〜4号営業の場合)/第五種地域は距離規制なし
【実務上のポイント】
物件選びの難易度が大きく変わるのはここです。深夜酒類提供飲食店営業なら問題ない立地でも、風俗営業では許可を受けられないということが起こります。
「まずは深夜酒類の届出で始めて、様子を見て接待も」という構想があるなら、物件を決める段階で風俗営業の地域規制も満たしているか確認してください。後から業態を変えたくても、場所が変えられなければ選択肢がありません。
地域規制の詳細は営業できない用途地域の記事で説明しています。
届出で足りると考えていた営業が、実際には接待に当たっていた場合、風俗営業の無許可営業となります。
令和7年6月28日施行の改正により、無許可営業等の罰則は次のとおり強化されました。
▶2年以下→5年以下の拘禁刑
▶200万円以下→1千万円以下の罰金
▶両罰規定に係る法人罰則は200万円以下→3億円以下の罰金
出典:愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」
また、無許可営業により処罰されると、その後5年間は風俗営業の許可を受けられない欠格事由に該当し得ます。「後から許可を取ればいい」という考え方は成り立ちません。
罰則と行政処分の詳細は無届・接待の罰則を整理した記事をご覧ください。
風俗営業と深夜酒類提供飲食店営業を、同じ営業所で時間帯によって使い分ける運用は認められません。深夜酒類提供飲食店営業として届出をしている店で接待を行えば、無許可営業として扱われます。どちらの営業形態で行くかを決めたうえで、必要な手続きを選んでください。
店名では決まりません。従業員が客の隣に座って継続的に談笑の相手をするといった接待に当たる行為があれば風俗営業、カウンター越しに注文を受けて飲食物を提供するだけであれば深夜酒類提供飲食店営業の届出、という方向で判断されます。実際の接客の内容によって結論が変わりますので、営業を始める前に確認してください。詳しくはスナック・ラウンジに風俗営業許可は必要かの記事をご覧ください。
風俗営業は原則として深夜に営業できないため、そもそも深夜の営業が予定されていません。ただし、営業形態と時間帯の組み合わせによって取扱いが変わることがありますので、具体的なケースは所轄の警察署に確認してください。
風俗営業では、営業所ごとに管理者を選任する必要があり、申請時に管理者に係る誓約書・住民票・身分証明書・写真2葉の提出が求められます。深夜酒類提供飲食店営業の届出には、管理者を選任する規定はありません。
▶分かれ目は接待の有無。接待をするなら風俗営業の許可が必要
▶風俗営業は原則として深夜(午前0時〜午前6時)に営業できない
▶愛知県では、接待飲食等営業について第五種地域および別表第五の地域で午前1時までの延長が認められる
▶同じ営業所で時間帯によって使い分けることはできない
▶深夜酒類の届出には欠格事由も管理者選任もない。風俗営業にはどちらもある
▶風俗営業の手数料は24,000円(パチンコ店以外)。深夜酒類の届出は無料
▶風俗営業には保全対象施設からの距離規制がある(商業地域以外で学校等100m、保育所・病院・有床診療所50m)
▶令和7年6月28日施行の改正で、無許可営業の罰則は5年以下の拘禁刑・1千万円以下の罰金、法人3億円以下に強化された
最も避けたいのは、届出で足りると思い込んだまま接待をしてしまうことです。接客の内容に少しでも迷いがあるなら、営業を始める前に確認してください。
届出で足りるのか、風俗営業許可が必要なのか。営業形態をお聞きしたうえで判断のお手伝いをします。