この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。


接待をするかどうかで、必要な手続きが「届出」か「許可」かに分かれます。
そして接待に当たるかどうかは、店の業態名でも、カウンター越しかどうかでもなく、従業員が客に対して具体的に何をしているかで判断されます。


警察庁は令和7年5月30日付けの通達で、接待の判断基準を6つの類型に整理して示しています。この記事では、その内容を行為ごとに見ていきます。



接待の定義    DEFINITION

風営法第2条第3項は、接待を「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義しています。警察庁は、この意味を次のように説明しています。


解釈運用基準 第2中2

営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。
言い換えれば、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。

出典:風営法第2条第3項/警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準」(令和7年5月30日付け通達・令和7年6月28日施行)第2中2


ここから、判断のカギが3つ読み取れます。


▶①営業者側の積極的な行為であること(客が勝手にしていることは接待ではない)
▶②相手を特定していること(不特定の客に対する行為は接待に当たりにくい)
▶③単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度であること


誰がやると接待になるのか    WHO


解釈運用基準 第2中3(接待の主体)

通常の場合、接待を行うのは、営業者やその雇用している者が多いが、それに限らず、料理店で芸者が接待する場合、旅館・ホテル等でバンケットクラブのホステスが接待する場合、営業者との明示又は黙示の契約・了解の下に客を装った者が接待する場合等を含み、女給、仲居、接待婦等その名称のいかんを問うものではない。
また、接待は、通常は異性によることが多いが、それに限られるものではない


「雇用していないから関係ない」「同性同士だから接待ではない」という理屈は通りません。店との了解のもとで客を装った者が行う場合も含まれます。


①談笑・お酌等    TALK

最も問題になりやすい類型です。


接待に当たる 接待に当たらない
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となる行為 お酌をしたり水割りを作るが、速やかにその場を立ち去る行為
特定少数の客の近くにはべり、継続して、酒等の飲食物を提供する行為 客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為
上記に付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為


出典:警察庁「解釈運用基準」第2中4(1)


【実務上のポイント】
分かれ目は「はべる」「継続して」の2語です。
水割りを作ってその場を離れるのは接待ではありません。しかし、客の隣や近くに留まり続けて会話の相手をすれば接待になります。カウンター越しであっても、特定の客の前に留まり続けて継続的に会話をすれば、同じ問題が生じます。
「うちはカウンターだけだから大丈夫」ではなく、スタッフが一人の客の前にどれだけ留まるかを基準に営業スタイルを設計してください。


②ショー等    SHOW


接待に当たる 接待に当たらない
特定少数の客に対して、専らその客の用に供している客室又は客室内の区画された場所において、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為 ホテルのディナーショーのように、不特定多数の客に対し同時にショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為


出典:警察庁「解釈運用基準」第2中4(2)


ここでも「特定少数」か「不特定多数」かが分かれ目です。


③歌唱等    SING

カラオケを置く店で最も重要な類型です。


接待に当たる 接待に当たらない
特定少数の客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨する行為 客の近くに位置せず、不特定の客に対し歌うことを勧奨する行為
特定少数の客の近くにはべり、その客の歌に手拍子をとり、拍手をし、又は褒めはやす行為 不特定の客の歌に対し拍手をし、又は褒めはやす行為
客と一緒に歌う行為 不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為
歌の伴奏のため楽器を演奏する行為


出典:警察庁「解釈運用基準」第2中4(3)


デュエットは接待に当たります

「客と一緒に歌う行為」は、明確に接待に当たるとされています。スナックでスタッフが客とデュエットをすれば、それは接待です。
一方、店内全体に向けて「次どなたか歌いませんか」と声をかけたり、依頼を受けてカラオケをセットしたりするだけであれば、接待には当たりません。特定の客のそばに留まるかどうかが決定的な違いです。


④ダンス    DANCE


接待に当たる 接待に当たらない
特定の客の相手となって、その身体に接触しながら、当該客にダンスをさせる行為 ダンスを教授する十分な能力を有する者が、ダンスの技能及び知識を修得させることを目的として客にダンスを教授する行為
身体に接触しない場合であっても、特定少数の客の近くに位置し、継続して、その客と一緒に踊る行為


出典:警察庁「解釈運用基準」第2中4(4)


⑤遊戯等    GAME


接待に当たる 直ちに接待に当たるとはいえない
特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為 客一人で、又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為


出典:警察庁「解釈運用基準」第2中4(5)


【実務上のポイント】
ダーツバーやボードゲームを置く店で問題になる類型です。客同士で遊ぶ分には接待になりませんが、スタッフが客と一緒にゲームをすれば接待に当たります。
「スタッフも一緒に楽しむ」という営業スタイルを想定しているなら、この点を必ず確認してください。ダーツやゲーム機を置く店の論点はダーツバー・スポーツバーの深夜営業の記事で扱っています。


⑥その他    OTHER


接待に当たる 接待に当たらない
客と身体を密着させたり、手を握ったりするなど客の身体に接触する行為 社交儀礼上の握手、酔客の介抱のために必要な限度での接触等
客の口許まで飲食物を差出し、客に飲食させる行為 単に飲食物を運搬し、又は食器を片付ける行為
客の荷物、コート等を預かる行為


出典:警察庁「解釈運用基準」第2中4(6)


接待をするなら風俗営業の許可が必要です    LICENSE

接待をして客に飲食をさせる営業は、風営法第2条第1項第1号の接待飲食営業に当たり、公安委員会の許可が必要です。


深夜酒類提供飲食店営業の届出では接待できません

届出をしている店で接待を行えば、風俗営業の無許可営業として扱われます。令和7年6月28日施行の改正により、無許可営業の罰則は5年以下の拘禁刑、1千万円以下の罰金(法人は3億円以下)に強化されました。
さらに、無許可営業で処罰されると、その後5年間は風俗営業の許可を受けられません。「後から許可を取ればいい」という考え方は成り立ちません。


制度の違いは風俗営業許可との違いを整理した記事で、リスクの詳細は無届・接待の罰則を整理した記事で解説しています。


よくある質問    FAQ

Q.カウンター越しの接客なら接待になりませんか?

カウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為は、接待に当たらないとされています。しかし、これはカウンターという場所が理由ではありません。
接待の判断基準は「特定少数の客の近くにはべり、継続して談笑の相手となる」かどうかです。カウンター越しであっても、特定の客の前に留まり続けて会話の相手をすれば、接待に当たり得ます。場所ではなく行為で判断されます。

Q.世間話をするだけでも接待になりますか?

なりません。解釈運用基準では、お酌や水割りを作る行為に付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は接待に当たらないとされています。問題になるのは、それが「継続して」「はべりながら」行われる場合です。

Q.スナックは必ず風俗営業の許可が必要ですか?

店名や業態の呼び方では決まりません。実際の接客内容によって判断されます。ママやスタッフが客の隣に座って継続的に会話の相手をしたり、客とデュエットをしたりすれば接待に当たります。一方、カウンター越しに注文を受けて提供するだけであれば、深夜酒類提供飲食店営業の届出で足りる可能性があります。実際の営業スタイルを整理したうえで判断してください。詳しくはスナック・ラウンジに風俗営業許可は必要かの記事をご覧ください。

Q.ガールズバーやメイドカフェは接待になりますか?

業態名では決まりません。単に飲食物の提供のみを行うのであれば接待にも遊興にも当たりませんが、スタッフが特定の客のそばに留まって継続的に会話の相手をすれば接待に当たります。「席に着いて話す」という営業スタイルを想定しているなら、風俗営業の許可を前提に検討してください。詳しくはガールズバー・コンカフェに風俗営業許可は必要かの記事をご覧ください。

Q.接待に当たるかどうか、自分で判断できますか?

6つの判断基準を営業スタイルに当てはめれば、方向性は見えます。ただし、実際の判断は個別の事情によって変わります。営業時間、席の配置、スタッフの動き方、客層などが影響します。
この記事で「あなたの店は接待に当たらない」と断定することはできません。迷う場合は、営業を始める前に所轄の警察署または行政書士に確認してください。

まとめ    SUMMARY

▶接待とは「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(風営法第2条第3項)
▶判断のカギは「営業者側の積極的な行為」「相手を特定していること」「通常の飲食に伴う役務を超えること」
▶談笑・お酌等/特定少数の客の近くにはべり継続して談笑すれば接待。水割りを作って立ち去るだけなら接待ではない
▶歌唱等/客と一緒に歌えば接待。不特定の客に呼びかけたりカラオケをセットするだけなら接待ではない
▶遊戯等/スタッフが客と一緒にゲームをすれば接待。客同士で遊ぶ分には接待ではない
▶その他/手を握る、口許まで飲食物を差し出すのは接待。社交儀礼上の握手や飲食物の運搬は接待ではない
▶カウンター越しかどうかは基準ではない。場所ではなく行為で判断される
▶接待の主体は性別も雇用関係も問わない。営業者本人でも接待になる
▶接待をするなら風俗営業の許可が必要。届出では営めない


接待の判断は、「スタッフが特定の客のそばにどれだけ留まるか」に集約されます。営業スタイルを設計する段階で、この点を意識してください。


「この接客は接待に当たるのか」という判断からご相談いただけます。営業スタイルをお聞きしたうえで、必要な手続きを整理してお伝えします。