この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。


ダーツ台やゲーム機を置くと、風俗営業5号(ゲームセンター等)の許可が必要になる場合があります。そして風俗営業は、原則として深夜に営業できません。
つまり「設備を置いたせいで深夜営業ができなくなる」という事態が起こり得ます。


この記事では、遊技設備・遊興・接待という3つの論点を整理し、それぞれどこに線が引かれているのかを見ていきます。



確認すべきは3つです    THREE


論点 問題になる場面 該当した場合
①遊技設備 ダーツ台・ゲーム機を置く 風俗営業5号の許可(深夜営業は原則不可)
②遊興 店側が客に働きかけて盛り上げる 特定遊興飲食店営業の許可
③接待 スタッフが客と一緒にゲームをする 風俗営業1号の許可(深夜営業は原則不可)


出典:風営法第2条第1項第1号・第5号、第2条第11項、第13条第1項


3つとも当てはまらなければ、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業できます。順に確認していきましょう。


①遊技設備を置くと5号営業になり得ます    DEVICE

風営法第2条第1項第5号は、射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができる遊技設備を設置して客に遊技をさせる営業を風俗営業としています。具体的な設備は施行規則第3条に定められています。


▶スロットマシンその他、遊技の結果がメダル等の数量により表示される遊技設備
▶テレビゲーム機(勝敗を争うもの、結果が数字・文字・記号で表示されるもの)
▶フリッパーゲーム機(ピンボール)
▶その他、遊技の結果が数字・文字・記号又は物品により表示される遊技設備
▶ルーレット台、トランプ及びトランプ台その他これらに類する遊技設備


出典:風営法第2条第1項第5号/同法施行規則第3条/警察庁「解釈運用基準」(令和7年5月30日付け通達)第4中2


5号営業になると深夜営業ができません

風営法第13条第1項により、風俗営業者は深夜(午前0時から午前6時まで)に営業を営むことができません。5号営業の許可を受けると、この制限がかかります。
「バーとして朝まで営業したいのにゲーム機を置いたせいでできない」という事態が起こり得ます。設備の導入は、営業時間の設計とセットで考えてください。


10パーセントルール    TENPERCENT

遊技設備を置いても、店舗内で占める割合が著しく小さい場合には、許可を要しない扱いとされています。


解釈運用基準 第4中3(1)イ

遊技設備設置部分を含む店舗の1フロアの客の用に供される部分の床面積に対して客の遊技の用に供される部分の床面積が占める割合が10パーセントを超えない場合は、当面問題を生じないかどうかの推移を見守ることとし、風俗営業の許可を要しない扱いとする。
当該床面積は、客の占めるスペース、遊技設備の種類等を勘案し、遊技設備の直接占める面積のおおむね3倍として計算する。ただし、1台の遊技設備の直接占める面積の3倍が1.5平方メートルに満たないときは、当該遊技設備に係る床面積は1.5平方メートルとして計算する。


▶遊技の用に供される部分=遊技設備が直接占める面積のおおむね3倍
▶1台の3倍が1.5平方メートル未満なら、1.5平方メートルとして計算する
▶分母は「1フロアの客の用に供される部分の床面積」
▶カウンターやレジの内側など専ら従業者の用に供される部分は分母に含まない
▶洗面所等、当該フロアと完全に区画されている部分も分母に含まない
▶雑居ビルの1フロアに複数の店舗がある場合、フロア全体ではなく当該店舗内のみで計算する


出典:警察庁「解釈運用基準」第4中3(1)イ


【実務上のポイント】
計算式は「設備面積×3(最低1.5平方メートル)÷客の用に供される部分の床面積」です。分母からカウンター内側が除かれる点に注意してください。店全体が広くても、客席部分が狭ければ分母が小さくなり、10パーセントを超えやすくなります。
この判断は面積の実測が前提になります。設備を導入する前に、図面上で計算しておくことをおすすめします。図面の作り方は図面の書き方を解説した記事で説明しています。


運動競技の実態がある設備の扱い    SPORTS

解釈運用基準には、10パーセントルールとは別に次の記述があります。


解釈運用基準 第4中2(4)

運動競技又は運動競技の練習の用に供されている実態が認められる遊技設備については、営業者により、当該遊技設備が本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技の用に供されないために必要な措置が適切に講じられていると認められる場合には、当面、賭博、少年のたまり場等の問題が生じないかどうかを見守ることとし、規制の対象としない扱いとする


デジタルダーツについては所轄への確認が必要です

デジタルダーツとシミュレーションゴルフについては、この規定を具体化するものとして平成30年9月21日付けの警察庁の通達で取扱いが示されているとされています。ただし、当事務所ではこの通達の原文を公表資料で確認できていないため、この記事で条件を断定することは避けます。
確実なのは、解釈運用基準に運動競技等の実態が認められる遊技設備を規制対象としない扱いとするという規定があることです。実際にあなたの店の設備がこれに当たるかどうかは、導入前に所轄警察署へ確認してください。


【実務上のポイント】
確認する際は、次の点を整理して持っていくと話が早く進みます。


・設置する機種の名称とメーカー
・設置台数と、1台あたりの設置面積
・客席部分の床面積(図面)
・他に遊技設備を置く予定があるか
・営業者が遊技の状況を目視やモニターで確認できる配置か


「ダーツ台を置いても大丈夫ですか」ではなく、具体的な機種と面積を示して相談してください。


②スポーツ観戦と生演奏は「遊興」の問題です    PLAY

遊技設備とは別の論点として、深夜に客へ遊興をさせると特定遊興飲食店営業の許可が必要になります。


行為 遊興か
スポーツ等の映像を単に不特定の客に見せる(客自身が応援等を行う場合を含む) 当たらない
スポーツ等の映像を見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる 当たる
BGMとして録音された音楽を流す 当たらない
不特定の客にバンドの生演奏等を聴かせる 当たる
ボーリングやビリヤードの設備を設けて不特定の客に自由に使用させる 当たらない
遊戯、ゲーム、競技等の大会に不特定の客を参加させる 当たる


出典:警察庁「解釈運用基準」第10中2(2)(3)


ダーツの大会を開催して客を参加させる営業は、遊興に当たります。深夜に行い酒類を提供するなら、特定遊興飲食店営業の許可が必要です。


大会を開くと、遊技設備の扱いも変わります

解釈運用基準は、遊技設備を用いた競技大会であって客に参加させるものを恒常的に開催するバーのように、遊技設備を用いて客に遊興をさせ、かつ客に飲酒をさせる業態の営業を深夜に営もうとする場合は、遊技設備を用いて客に遊興をさせることにつき法第2条第1項第5号の営業の許可を受ける必要があるとしています。
そしてこの場合、遊技設備が少なく客の遊技の用に供される部分の床面積が小さくても、10パーセントルールの取扱いは行われません(第24中4(2))。大会の恒常的な開催は、判断を大きく変えます。


なお、愛知県で特定遊興飲食店営業の許可を受けられるのは名古屋市の指定区域のみです。詳しくは特定遊興飲食店営業との違いを解説した記事をご覧ください。


③スタッフが一緒に遊ぶと接待になります    ENTERTAIN

解釈運用基準は、接待の判断基準のひとつとして次を挙げています。


▶特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為は、接待に当たる
▶客一人で又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為は、直ちに接待に当たるとはいえない


出典:警察庁「解釈運用基準」第2中4(5)


【実務上のポイント】
ダーツバーで最も現実的なリスクがここです。スタッフが客に誘われて一緒にダーツを投げれば、接待に当たります。
「常連さんに誘われたら断りにくい」という場面は必ず起きます。スタッフ全員に、客と一緒に遊技をしないという方針を明確に伝えておいてください。接待の判断基準は風営法の「接待」とは何かを解説した記事で詳しく整理しています。


よくある質問    FAQ

Q.ビリヤード台やボードゲームは大丈夫ですか?

ボーリングやビリヤードの設備を設けて不特定の客に自由に使用させる行為は、遊興に当たらないとされています。また、遊技の結果が数字等で表示されない設備は、施行規則第3条の遊技設備に当たりません。ただし、実際の機種によって判断が変わり得ますので、導入前に確認してください。

Q.トランプやポーカー台を置くのは?

施行規則第3条第5号は、ルーレット台、トランプ及びトランプ台その他ルーレット遊技又はトランプ遊技に類する遊技の用に供する遊技設備を明示的に挙げています。賭博に用いられる可能性がある設備として厳しく扱われる分野です。導入を検討する場合は、必ず事前に所轄警察署へ相談してください。

Q.年に数回のダーツ大会なら許可は不要ですか?

解釈運用基準では、2晩以上にわたって行われる催しは継続性が認められるとされ、また1回につき1晩のみ開催される催しを繰り返す場合でも、引き続き6か月以上開催されない場合でなければ継続性が認められるとされています(第10中3(4))。月1回や隔月といった頻度では、継続性が認められる方向に傾きます。

まとめ    SUMMARY

▶遊技設備を置くと風俗営業5号の許可対象になり得る。5号営業は深夜営業ができない
▶客の遊技の用に供される部分が、1フロアの客の用に供される部分の床面積の10パーセントを超えなければ許可を要しない扱い
▶遊技の用に供される部分は、設備が直接占める面積のおおむね3倍(1台最低1.5平方メートル)で計算する
▶分母にカウンター内側や完全に区画された洗面所は含まない
▶運動競技等の実態が認められる遊技設備は規制対象としない扱いとされている
▶スポーツ映像を単に流すのは遊興ではないが、呼びかけて応援に参加させると遊興
▶生演奏を聴かせるのは遊興。深夜なら特定遊興飲食店営業の許可が必要
▶大会を恒常的に開催すると、10パーセントルールの取扱いが行われなくなる
▶スタッフが客と一緒にゲームをすれば接待に当たる


このテーマは、設備を入れる前に確認しておけば防げる問題です。機種と台数と面積を整理して、導入前に所轄警察署へ相談してください。


設備の導入計画の段階からご相談いただけます。図面をもとに面積の計算もお手伝いします。