この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。
令和7年6月28日施行の改正により、風俗営業の無許可営業の罰則は5年以下の拘禁刑、1千万円以下の罰金へと大幅に引き上げられました。
深夜酒類提供飲食店営業の届出だけで接待をしていた場合、これは「無許可営業」として扱われます。
この記事では、無届で営業した場合、届出だけで接待をした場合、深夜に遊興をさせた場合のそれぞれについて、何が問題になり、どういう結果につながるのかを整理します。
| やってしまったこと | 法律上の扱い | 罰則 |
|---|---|---|
| 届出をせずに深夜に酒類を提供した | 深夜酒類提供飲食店営業の無届 | 50万円以下の罰金 |
| 届出だけで接待をした | 風俗営業の無許可営業 | 5年以下の拘禁刑、1千万円以下の罰金 |
| 届出だけで深夜に遊興をさせた | 特定遊興飲食店営業の無許可営業 | 無許可営業として処罰の対象 |
出典:愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」/風営法
同じ「深夜営業の違反」でも、届出漏れと無許可営業では重さがまったく違います。最も避けるべきは2つ目と3つ目です。
令和7年6月28日施行の改正内容は次のとおりです。
▶無許可営業等の罰則/2年以下の拘禁刑→5年以下の拘禁刑
▶無許可営業等の罰金/200万円以下→1千万円以下
▶両罰規定に係る法人罰則/200万円以下→3億円以下
出典:愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」
両罰規定とは、従業員等が違反行為をした場合に、その法人にも罰金刑が科される仕組みです。法人で店舗を運営している場合、代表者個人だけでなく法人にも罰金が科される可能性があります。
金銭的な負担より深刻なのが、その後の営業への影響です。
風営法第4条第1項第2号は、1年以上の拘禁刑に処せられた者、又は同法第49条・第50条・第51条第1項の罪などを犯して1年未満の拘禁刑若しくは罰金の刑に処せられた者について、執行を終わった日等から5年を経過しないうちは風俗営業の許可をしてはならないと定めています。
風営法第49条第1号は、風俗営業の無許可営業を罰する規定です。無許可営業で罰金刑を受けると、それだけで5年間は風俗営業の許可を受けられないことになります。
「注意されたら、そのとき許可を取ろう」という考え方は、最も危険な選択です。接待を行うつもりがあるなら、営業を始める前に許可を取ってください。
出典:風営法第4条第1項第2号、第49条/警察庁「解釈運用基準」(令和7年5月30日付け通達)第12中7
なお、法人の場合、役員が欠格事由に該当すると、その法人も許可を受けられません。
「接待をやめて、普通の飲食店として営業を続ければいい」と考える方がいます。しかし、風営法第34条には次のような仕組みが置かれています。
無許可で接待飲食等営業又は特定遊興飲食店営業を営み摘発された者が、当該接待飲食等営業又は特定遊興飲食店営業に該当する行為のみを止め、飲食店営業については引き続いて営もうとする場合には、法第34条第1項又は第2項の規定に基づき、必要な指示を行い、又は飲食店営業の停止を命ずることができる。
つまり、接待をやめても、飲食店としての営業自体を止められる可能性があります。刑事罰とは別に、店を開けられなくなるという事業上のダメージが生じます。
風営法第37条第2項は、警察職員が営業所に立ち入ることができる場合を定めています。
▶午後10時から翌午前6時までの時間においても営業している酒類提供飲食店営業の営業所には、届出の有無を問わず立ち入ることができる
▶深夜において現に営業している飲食店営業の営業所には、食品衛生法上の許可の有無を問わず立ち入ることができる
▶許可を受けていない風俗営業・特定遊興飲食店営業の営業所にも立ち入ることができる
出典:風営法第37条第2項/警察庁「解釈運用基準」第36中3(1)
【実務上のポイント】
「届出をしていないから警察は来ない」ということはありません。無届であることこそが立入りの理由になり得ます。
また、接待飲食営業に関しては、表示した料金と実際の請求額が違うことや、客が注文していないと主張する飲食等の伝票処理状況を確認するため、会計帳簿や経理書類の提出を求めることも認められていると解釈運用基準に明記されています(第36中1(1))。
| よくある考え方 | 実際は |
|---|---|
| 「少しくらいの接待なら大丈夫」 | 接待に当たる行為があれば、程度を問わず無許可営業の問題になります |
| 「0時前だけ接待をすればいい」 | 時間帯を問わず、接待をするには風俗営業の許可が必要です |
| 「カウンター越しなら接待にならない」 | 場所ではなく行為の内容で判断されます |
| 「常連客だけだから問題ない」 | 客の範囲は判断に影響しません |
| 「注意されてから直せばいい」 | 処罰されると5年間、風俗営業の許可が取れなくなります |
接待の判断基準は風営法の「接待」とは何かを解説した記事で、遊興の線引きはカラオケ・DJ・ライブができるかを解説した記事で詳しく整理しています。
▶①今の営業内容が、届出で足りるのか許可が必要なのかを確認する
▶②届出で足りるなら、速やかに届出を行う
▶③許可が必要な内容なら、まず該当する行為を止める
▶④許可を取得できる要件(人・場所・設備)を満たすか確認する
【実務上のポイント】
無届の状態は、時間が経つほど不利になります。営業を続けている間はずっと違反状態が続いているためです。
また、許可が必要な営業をしていた場合、許可を取りたくても、その場所では地域規制で許可が下りないということがあります。風俗営業には第一種地域に加えて、学校・幼保連携型認定こども園から100メートル、保育所・病院・有床診療所から50メートル(商業地域は70メートル・30メートル)という距離制限があるためです。
まず自分の営業内容と物件の状況を確認してください。判断がつかなければ、所轄の警察署または行政書士に相談することをおすすめします。
物件の地域規制については営業できない用途地域の記事をご覧ください。
なり得ます。解釈運用基準では、代理人や従業者が自己の目的のためその地位を濫用した場合であっても、その者がそのような行為をなし得べき地位に置かれている以上、外形上営業者の営業と異なるところがなく「当該営業に関し」行為をしたものと認められるとされています(第31中5(2))。
スタッフへの教育と、営業ルールの明確化が営業者の責任になります。
無届で深夜に酒類を提供して営業していれば、罰則の対象になり得ます。ただし、気づいた時点で速やかに届出を行うことは、状況を改善する行動です。放置するより確実に良い選択です。管轄の警察署に連絡して、状況を伝えたうえで手続きを進めてください。
解釈運用基準では、結婚式の二次会として新郎・新婦の友人が飲食店営業の営業所を借りて主催する祝賀パーティーには営利性がなく、営業には当たらないとされています。ただし同時に、営業者が深夜に及ぶパーティーのために営業所を有償で貸し、酒類を提供するとともに余興に合わせて照明や音響の調整を行うという行為を反復継続しようとする場合は、当該営業者は特定遊興飲食店営業の許可を受ける必要があるとも明記されています(第10中3(2))。主催者ではなく、店側の行為が問われます。
▶深夜酒類提供飲食店営業の無届は50万円以下の罰金
▶届出だけで接待をすれば、風俗営業の無許可営業になる
▶令和7年6月28日施行の改正で、無許可営業は5年以下の拘禁刑・1千万円以下の罰金、法人は3億円以下に強化された
▶無許可営業で処罰されると、5年間は風俗営業の許可を受けられない
▶接待をやめても、飲食店営業自体の停止を命じられることがある
▶立入りは届出や許可の有無を問わず行われる
▶従業員が行った行為でも、営業者の責任として扱われ得る
▶すでに営業を始めてしまった場合は、放置せず早期に確認と対応を
最も避けたいのは、届出で足りると思い込んだまま接待をしてしまうことです。判断に少しでも迷いがあるなら、営業を始める前に確認してください。
「今の営業内容で問題ないか」という確認のご相談も承っています。すでに営業を始めている方のご相談にも対応します。