この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。


カラオケ機を置くこと自体は問題ありません。DJブースを設けることも、スポーツ中継を流すことも同じです。
問題になるのは、店側がどこまで働きかけるか。同じ設備、同じ映像でも、店の関わり方で必要な手続きが変わります。


この記事では、深夜酒類提供飲食店営業の届出だけでどこまでできるのかを、警察庁の解釈運用基準にもとづいて整理します。



3つの区分で考えてください    THREE

カラオケやゲームを扱う店では、次の3つを区別する必要があります。


店の関わり方 法律上の扱い 必要な手続き
設備を置いて、客が自由に使う 遊興にも接待にも当たらない 届出で足りる
不特定の客に働きかけて盛り上げる 客に遊興をさせること 深夜なら特定遊興飲食店営業の許可
特定少数の客のそばにはべって働きかける 接待 風俗営業の許可(深夜営業は原則不可)


出典:風営法第2条第1項第1号・第3項・第11項/警察庁「解釈運用基準」(令和7年5月30日付け通達)第2中4、第10中2


キーワードは「不特定」か「特定少数」かです。不特定の客に向けた働きかけは遊興、特定少数の客のそばでの働きかけは接待になります。


遊興に当たる行為    PLAY

警察庁の解釈運用基準は、次の行為を「客に遊興をさせる」ことに当たるとしています。


▶不特定の客にショー、ダンス、演芸その他の興行等を見せる行為
▶不特定の客に歌手がその場で歌う歌、バンドの生演奏等を聴かせる行為
▶客にダンスをさせる場所を設けるとともに、音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為
▶のど自慢大会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる行為
▶カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客に歌うことを勧奨し、不特定の客の歌に合わせて照明の演出、合いの手等を行い、又は不特定の客の歌を褒めはやす行為
▶バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為


遊興に当たらない行為    NOTPLAY


▶いわゆるカラオケボックスで不特定の客にカラオケ装置を使用させる行為
▶カラオケ装置を設けるとともに、不特定の客が自分から歌うことを要望した場合に、マイクや歌詞カードを手渡し、又はカラオケ装置を作動させる行為
▶いわゆるガールズバー、メイドカフェ等で、客にショーを見せたりゲーム大会に客を参加させたりせずに、単に飲食物の提供のみを行う行為
▶ボーリングやビリヤードの設備を設けてこれを不特定の客に自由に使用させる行為
▶バー等でスポーツ等の映像を単に不特定の客に見せる行為(客自身が応援等を行う場合を含む。)


出典:警察庁「解釈運用基準」第10中2(2)(3)


【実務上のポイント】
2つのリストを並べると、境界がはっきりします。設備を置いて客が勝手に使うのは遊興ではなく、店側が働きかけて盛り上げると遊興になるという構造です。
たとえばスポーツ中継は、流しているだけなら遊興ではありませんが、店員が客に呼びかけて応援に参加させれば遊興に当たります。客が勝手に盛り上がる分には問題ありません。
同じ設備、同じ映像でも、店の関わり方で結論が変わります。営業スタイルを決めるときに意識してください。


具体的にどこまでできるか    CASES


やりたいこと 深夜における扱い
BGMを流す 録音された音楽を流すのは積極的な行為に当たらず、遊興ではありません
カラオケ機を置き、客が歌いたいと言えばセットする 遊興に当たらないとされています
店員が客に「歌いませんか」と勧め、歌に合わせて照明を演出する 遊興。深夜なら特定遊興飲食店営業の許可が必要
店員が特定の客の隣で、歌を勧めて手拍子や掛け声をする 接待。風俗営業の許可が必要(深夜営業は原則不可)
スポーツ中継をモニターで流す 単に見せるだけなら遊興ではありません(客が自分で応援する場合を含む)
店員が客に呼びかけて一緒に応援する 遊興。深夜なら特定遊興飲食店営業の許可が必要
DJが選曲して流すだけ 個別の判断が必要です(後述)
DJが客を煽り、フロアでダンスをさせる 遊興。深夜なら特定遊興飲食店営業の許可が必要
バンドの生演奏を聴かせる 遊興。深夜なら特定遊興飲食店営業の許可が必要
ダーツ台を置き、客が自由に使う 遊興に当たりません
店員が客と一緒にダーツをする 接待に当たります


DJについては個別の確認が必要です

解釈運用基準は、単にテレビの映像や録音された音楽を流すような場合は積極的な行為に当たらないとする一方、実演者が客の反応に対応し得る状態で演奏・演技を行う行為は積極的な行為に当たるとしています。
DJが選曲して流すだけなのか、客の反応を見ながらプレイし場を盛り上げるのか。この記事で一律に「DJは遊興ではない」と断定することはできません。実際の演出内容をもとに、所轄の警察署に確認してください。


深夜以外なら遊興させられます    TIME

特定遊興飲食店営業の許可が必要になるのは、「深夜」「遊興」「飲酒」の3つがそろう場合です。


したがって、午前6時後から午前0時前の時間帯にのみ遊興をさせる営業であれば、深夜酒類提供飲食店営業の届出で対応できます。「営業の方法」の様式にも、遊興の内容と時間帯を記載する欄が設けられています。


【実務上のポイント】
たとえば「毎週金曜日の21時から23時まで生演奏」という営業なら、深夜にかからないため届出で対応できます。
ただし、イベントが盛り上がって0時をまたぐという運用にならないよう注意してください。終了時刻を明確にし、スタッフ全員で共有しておく必要があります。「営業の方法」の書き方は「営業の方法」の書き方を解説した記事をご覧ください。


単発イベントの扱い    EVENT

「年に数回だけ深夜にイベントをやりたい」という場合はどうなるでしょうか。解釈運用基準は、営業としての継続性について次のように整理しています。


解釈運用基準 第10中3(3)(4)

スポーツ等の映像を不特定の客に見せる深夜酒類提供飲食店営業のバー等において、平素は客に遊興をさせていないものの、特に人々の関心の高い試合等が行われるときに、反復継続の意思を持たずにたまさか短時間に限って深夜に客に遊興をさせたような場合は、特定遊興飲食店営業としての継続性は認められない
短期間の催しについては、2晩以上にわたって行われるものは、継続性が認められる。これに対し、繰り返し開催される催し(1回につき1晩のみ開催されるものに限る。)については、引き続き6月以上開催されない場合は、継続性が認められず、営業には当たらない


▶2晩以上にわたるイベント/継続性が認められる(許可が必要)
▶1晩のみのイベントを繰り返す場合/間隔が6か月以上空けば継続性が認められない
▶定期的に開催するなら、許可が必要になる可能性が高い


月1回、隔月といった頻度で開催するなら、継続性が認められる方向に傾きます。定期開催を予定しているなら、事前に確認してください。


愛知県では場所の制約があります    AREA

特定遊興飲食店営業の許可を取ろうと思っても、愛知県では営業所を設置できる地域が名古屋市の一部区域に限られています


▶名古屋市千種区/今池一丁目・三丁目・四丁目・五丁目、内山三丁目の指定番地
▶名古屋市中区/栄三丁目・四丁目・五丁目、錦三丁目、新栄一丁目、新栄町三丁目、東桜二丁目の指定番地
▶名古屋市東区/東桜二丁目の指定番地、東新町の全域


出典:愛知県警察「特定遊興飲食店営業の許可申請手続」/愛知県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 第22条


これ以外の場所では、深夜に遊興をさせる営業はできません。詳しくは特定遊興飲食店営業との違いを解説した記事をご覧ください。


よくある質問    FAQ

Q.カラオケ機を置くだけで届出の内容が変わりますか?

カラオケ装置は音響設備として、届出書の記載対象になります。設置する場合は、種類・仕様・台数・設置位置を記載してください。ただし、置くこと自体は遊興にも接待にも当たりません。詳しくは図面の書き方を解説した記事をご覧ください。

Q.客が盛り上がって騒いだ場合も遊興になりますか?

なりません。遊興かどうかは営業者側の行為で判断されます。解釈運用基準でも、スポーツ映像を単に見せる行為については「客自身が応援等を行う場合を含む」として遊興に当たらないと明記されています。
ただし、騒音については条例の数値規制があります。近隣トラブルの観点は深夜営業の騒音規制の記事で扱っています。

Q.ライブハウスのような営業をしたい場合は?

バンドの生演奏を不特定の客に聴かせる行為は遊興に当たります。深夜に行い、かつ酒類を提供するなら特定遊興飲食店営業の許可が必要です。愛知県では設置許容地域が名古屋市の一部に限られるため、物件の選択肢が先に決まってしまいます。深夜にかからない営業時間にするか、指定区域内の物件を探すかという選択になります。

Q.ゲーム機やダーツ台を置く場合、別の許可が必要ですか?

遊技設備を設置して客に遊技をさせる営業は、風営法第2条第1項第5号の営業(ゲームセンター等)として許可の対象になり得ます。ただし、店舗の1フロアの客の用に供される部分の床面積に対して、客の遊技の用に供される部分の床面積が占める割合が10パーセントを超えない場合は、許可を要しない扱いとされています(解釈運用基準第4中3(1)イ)。設置する台数と面積によって結論が変わりますので、事前に確認してください。詳しくはダーツバー・スポーツバーの深夜営業の記事をご覧ください。

まとめ    SUMMARY

▶設備を置いて客が自由に使う分には、遊興にも接待にも当たらない
▶不特定の客に働きかけて盛り上げれば遊興。深夜なら特定遊興飲食店営業の許可が必要
▶特定少数の客のそばにはべって働きかければ接待。風俗営業の許可が必要
▶BGMを流す、客の求めに応じてカラオケをセットするのは遊興ではない
▶スポーツ中継を流すのは遊興ではないが、店員が呼びかけて応援に参加させれば遊興
▶午前0時前に終える営業なら、遊興をさせても届出で対応できる
▶2晩以上のイベントは継続性が認められる。1晩のみでも6か月以内に繰り返せば同様
▶愛知県で特定遊興飲食店営業ができるのは名古屋市の指定区域のみ


判断の軸は一つです。店が働きかけているか、客が勝手にやっているか。この違いを意識して営業スタイルを設計してください。


「この演出は遊興に当たるのか」という段階からご相談いただけます。イベントの内容が決まっていれば、必要な手続きを整理してお伝えします。