この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。
深夜に営業する飲食店には、条例で定められた騒音・振動の数値基準があります。愛知県では、地域によって40デシベルまたは50デシベルです。
数字だけ見ると分かりにくいのですが、営業できる地域かどうかと、静かに営業できるかどうかは別問題です。
とくに準住居地域は、深夜営業が認められる一方で騒音基準は最も厳しくなります。この記事では、愛知県の数値基準と、実務上の対策を整理します。
愛知県の条例では、深夜(午前0時から午前6時まで)における飲食店営業の騒音・振動について、次の数値が定められています。
| 地域 | 深夜の騒音 | 振動 |
|---|---|---|
| 第一種地域(低層住専1・2/中高層住専1・2/第一種・第二種住居/田園住居) | 40デシベル | 55デシベル |
| 第二種地域(準住居地域) | 40デシベル | 55デシベル |
| 第三種地域(近隣商業・工業・準工業・用途無指定など) | 50デシベル | 55デシベル |
| 第四種・第五種地域(商業地域など) | 50デシベル | 55デシベル |
出典:愛知県「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」第26条・第7条第1項
第一種地域では深夜の酒類提供飲食店営業そのものができません。一方、準住居地域(第二種地域)は深夜営業ができるのですが、騒音基準は第一種地域と同じ40デシベルが適用されます。
「営業できる用途地域だった」と安心して契約すると、音の管理で苦労することがあります。準住居地域の物件を検討する場合は、防音の設計も同時に考えてください。
営業できる地域の判断は営業できない用途地域の記事をご覧ください。
デシベルは対数の単位なので、直感的につかみにくい数字です。目安として、40デシベルは図書館の中や静かな住宅地の昼間、50デシベルは静かな事務所の中といった水準にあたるとされています。
これは営業所の内部の音量ではなく、規制される場所で測定した値です。店内でBGMを流していても、外に漏れなければ基準を超えません。逆に、店内が静かでも壁が薄ければ問題になり得ます。
風営法施行規則第99条は、深夜に営業する飲食店の構造設備の基準として「騒音又は振動の数値が条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること」を求めています。
この意味について、警察庁の解釈運用基準は次のように説明しています。
営業活動に伴う騒音が条例で定める数値に達する場合は、防音設備を設けなければならないとするものである。しかし、例えば、音響設備を設けないため特に騒音が発生しない場合や、建物の壁が厚いこと、営業所の境界地まで相当な距離があること等により外部に音が漏れない場合にまで防音設備の設置を義務付けるものではない。
▶音響設備を置かず、特に騒音が発生しない店/防音設備は求められない
▶壁が厚い、隣接建物まで距離があるなど外部に音が漏れない店/同上
▶BGMやカラオケで音が出る店/基準を満たすための防音設備が必要になる
なお、届出書には「防音設備」の記載欄があります。設備を設ける場合は、その種類・仕様等を記載してください。図面の作り方は図面の書き方を解説した記事で説明しています。
騒音・振動の測定には、計量法第71条の条件に合格した騒音計及び振動レベル計を用いることとされています。同法第70条の検定に合格したもののほか、指定製造事業者が同法第71条の基準に適合するように製造したものが該当します。
出典:風営法施行規則第32条/警察庁「解釈運用基準」第17中4
スマートフォンの騒音測定アプリの数値は、公的な測定値ではありません。自主的な目安として使うのは構いませんが、行政の判断はこの方法による測定結果に基づきます。
【実務上のポイント】
音の問題は、開業後に対処するより物件選びと内装設計の段階で防ぐほうが圧倒的に安いです。内見の際に次を確認してください。
・上下階と隣室に何が入っているか(住居が接していないか)
・建物の構造(木造か、鉄筋コンクリート造か)
・出入口が住宅側を向いていないか
・前のテナントが同じような業態だったか、苦情の履歴がないか
・深夜帯に実際に現地へ行き、周辺の静けさを確認したか
とくに見落とされやすいのが「客の出入りの音」です。店内の防音を完璧にしても、深夜に出入口で客が立ち話をすれば苦情の原因になります。出入口の位置と、退店時の動線は設計段階で考えてください。
物件を決める前の確認事項は深夜営業できる物件の選び方の記事にまとめています。
▶BGMの音量に上限を決め、スタッフ全員で共有する
▶深夜帯は音量を下げる運用にする
▶出入口の扉を開けっ放しにしない(自動閉鎖の仕組みを入れる)
▶退店時に店外で騒がないよう、声かけを行う
▶店外の掲示で近隣への配慮を呼びかける
▶近隣に挨拶をしておき、連絡先を伝えておく
【実務上のポイント】
騒音の苦情は、数値を超えているかどうかより先に「話し合いの余地があるか」で展開が変わります。連絡先を知らない相手からの騒音は、直接行政へ苦情が行きます。
開店前に近隣へ挨拶をしておくことは、法律上の義務ではありませんが、実務上は非常に有効です。
騒音・振動の基準に違反した場合、風営法第34条にもとづく指示や飲食店営業の停止命令の対象になり得ます。
刑事罰の前に、まず店を開けられなくなるという事業上のリスクがあります。詳しくは無届・接待の罰則を整理した記事をご覧ください。
騒音の規制は、営業活動に伴う騒音を対象としています。店内の客の声も営業に伴って生じるものである以上、店の管理が問われ得ます。音量の管理と、店外での声かけを運用に組み込んでください。
商業地域(第四種地域)でも深夜の騒音基準は50デシベルです。第一種・第二種地域より緩やかですが、無制限ではありません。また、商業地域であっても上階が住居であるビルは珍しくありません。用途地域と、建物の実際の使われ方は別に確認してください。
一律に必要と決まっているわけではありません。解釈運用基準では、建物の壁が厚いことや境界地まで相当な距離があることにより外部に音が漏れない場合にまで、防音設備の設置を義務付けるものではないとされています。ただし、カラオケを設置する以上、外部への音漏れは実際に起こりやすくなります。物件の構造を確認したうえで、必要な範囲の対策を検討してください。
▶愛知県の深夜の騒音基準は、第一種・第二種地域で40デシベル、第三種〜第五種地域で50デシベル
▶振動はいずれの地域も55デシベル
▶準住居地域は深夜営業ができるが、騒音基準は最も厳しい40デシベル
▶音響設備を置かない店や、外部に音が漏れない構造の店には防音設備が義務づけられるわけではない
▶測定は計量法の条件に合格した騒音計・振動レベル計で行われる
▶物件選びの段階で、上下階・隣室の用途と建物の構造を確認する
▶店内の音だけでなく、客の出入りの音が苦情の原因になりやすい
▶基準違反は指示や飲食店営業の停止命令の対象になり得る
音の問題は、開業後の対処より設計段階の予防が圧倒的に効きます。物件を決める前に、上下階と隣室を確認してください。
物件の候補段階からご相談いただけます。営業スタイルと立地に応じて、確認すべき点をお伝えします。