この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、風俗営業許可、深夜酒類提供飲食店営業開始届出、飲食店営業許可など、飲食・接客業の開業手続を取り扱っています。
シーシャバーの開業でいちばん高い壁は、風営法ではありません。改正健康増進法です。
2020年4月1日以降に新たに開設する飲食店は、店内での喫煙を認める経過措置の対象になりません。
つまり「普通の飲食店を開いて、そこでシーシャを提供する」という形は成り立ちません。この記事では、シーシャバーを開業するために必要な手続きを、風営法・食品衛生法・健康増進法・たばこ事業法の4つに分けて整理します。
| 手続き | 窓口 | 必要になる場合 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 飲食物を提供する場合(実質的に必須) |
| 深夜酒類提供飲食店営業開始届出 | 管轄警察署 | 午前0時以降に酒類を提供する場合 |
| 受動喫煙対策(健康増進法) | 保健所 | 店内で喫煙させる場合(必須) |
| 製造たばこ小売販売業の許可 | 財務局 | たばこを販売する場合 |
風営法の手続きは、この中でむしろ簡単なほうです。順に見ていきます。
改正健康増進法により、飲食店は原則として屋内禁煙です。2020年4月1日時点で営業していた一定規模以下の飲食店には経過措置がありますが、厚生労働省のガイドラインは次のように明記しています。
標識の掲示等を行うことで、店内での喫煙を可能とすることができる経過措置を設けている。法施行後に新たに開設する飲食店については、この経過措置の対象とはならず、屋内は原則禁煙となる。
出典:厚生労働省健康局健康課「改正健康増進法の施行業務に係るガイドライン(例)」(令和元年7月)/厚生労働省「受動喫煙対策」
インターネット上には「資本金5000万円以下かつ客席面積100平方メートル以下なら喫煙可能室を設置できる」という説明が見られます。しかし、これは2020年4月1日時点で現に営業していた飲食店(既存特定飲食提供施設)に限られた経過措置です。
これから新規に開業する店は、店舗が小さくても、この経過措置を使えません。この点を誤解したまま物件を契約し、内装を作ってしまうと、開業できないという事態になります。
健康増進法には、喫煙を主たる目的とする施設という区分(喫煙目的施設)が設けられています。シーシャバーを新規に開業する場合、この区分に当たるかどうかが焦点になります。
▶喫煙を主たる目的とする施設であること
▶たばこの対面販売を行っていること
▶通常主食と認められる食事を主として提供する営業ではないこと
▶法令等で定められた設備・技術的基準を満たしていること
▶標識を掲示すること
▶20歳未満の者を立ち入らせないこと(客・従業員とも)
【実務上のポイント】
上記は一般に説明されている要件ですが、具体的な基準や必要な手続きは、営業所の所在地を管轄する保健所が判断します。この記事で「これを満たせば必ず開業できる」と断定することはできません。
最も重要なのは、物件を契約する前、内装を設計する前に保健所へ相談することです。喫煙目的施設として認められるための設備基準は、換気設備を含む建物の条件に左右されます。工事後に基準を満たせないと分かっても、やり直しがききません。
喫煙目的施設の要件として「たばこの対面販売」が挙げられていますが、たばこの小売販売には、たばこ事業法にもとづく製造たばこ小売販売業の許可が必要です。窓口は財務局(東海財務局)になります。
保健所と警察署に加えて、財務局という3つ目の窓口が登場します。それぞれ所管が異なるため、個別に確認してください。
シーシャのフレーバーには、たばこ葉を使用するものと、たばこ葉を使用しないもの(茶葉やサトウキビを原料とするもの)があります。
たばこ葉を使用しない製品を扱う場合、たばこ事業法や健康増進法の適用がどうなるかは、製品の内容によって判断が変わります。
この記事で「ノンニコチンなら規制対象外」と断定することはできません。取り扱う製品を具体的に示したうえで、保健所および財務局に確認してください。判断を誤ると、開業後に営業の停止を求められる可能性があります。
ここまでの3つと比べると、風営法の手続きは分かりやすい部分です。
| 営業スタイル | 必要な手続き |
|---|---|
| 午前0時前に閉店する | 深夜酒類提供飲食店営業の届出は不要 |
| 午前0時以降も営業するが、酒類を提供しない | 同上(ただし深夜の飲食店営業としての規制は受けます) |
| 午前0時以降に酒類を提供する | 深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要 |
| スタッフが客の隣で継続的に会話の相手をする | 接待に当たり、風俗営業の許可が必要 |
【実務上のポイント】
シーシャバーで注意したいのが接待です。シーシャは提供や火の管理でスタッフが客席に近づく回数が多く、そのまま会話が続きやすい業態です。
シーシャの準備や炭の交換のために客席に行くこと自体は問題ありませんが、そこに留まって継続的に談笑の相手をすれば接待に当たり得ます。スタッフの動き方を、開店前にルール化しておいてください。接待の判断基準は風営法の「接待」とは何かを解説した記事で解説しています。
届出の必要書類は必要書類一覧の記事、営業できる地域は営業できない用途地域の記事をご覧ください。
▶①提供する製品を決める(たばこ葉を使用するかどうか)
▶②保健所へ相談する(喫煙目的施設として成立するか、設備基準は何か)
▶③財務局へ相談する(たばこ小売販売業の許可の要否と要件)
▶④物件を探す(用途地域、換気設備、建物の構造)
▶⑤契約前に用途地域と喫煙対策の実現可能性を確認する
▶⑥内装設計・工事(保健所の施設基準と換気設備の基準を満たす設計に)
▶⑦飲食店営業許可を取得
▶⑧営業開始の10日前までに警察署へ届出(酒類を出す場合)
通常の飲食店より、②と③が先に来るのが特徴です。ここが成立しなければ、物件を探しても意味がありません。
経過措置の対象は施設ではなく、法施行時に営業していた事業者との関係で判断される部分があります。営業者が変わる場合の取扱いについては、必ず管轄の保健所に確認してください。「前の店ができていたから大丈夫」という判断は危険です。
喫煙目的施設については、20歳未満の者を立ち入らせてはならないとされています。これは客だけでなく従業員も対象です。アルバイトの採用にも影響します。
また、深夜に酒類を提供する店であれば、風営法により午後10時から翌午前6時まで18歳未満を客に接する業務に従事させることも、客として立ち入らせることもできません。詳しくは飲食店の深夜営業と18歳未満の記事をご覧ください。
喫煙目的施設の要件として、通常主食と認められる食事を主として提供する営業ではないことが挙げられています。軽食程度にとどめるのが一般的な整理ですが、どこまで許容されるかは保健所の判断によります。メニュー構成を具体的に示して相談してください。
健康増進法の規制対象は屋内です。屋外は原則として規制の対象外ですが、屋内か屋外かの判断は建物の構造によります。「屋根はあるが壁がない」といった空間の扱いは、保健所に確認してください。また、屋外であっても近隣への配慮は別途必要です。
▶シーシャバーの開業では、風営法より健康増進法への対応が大きな関門になる
▶2020年4月1日以降に新規開設する飲食店は、喫煙可能室の経過措置を使えない
▶新規開業なら喫煙目的施設として成立するかを保健所に確認する必要がある
▶たばこの対面販売には、たばこ事業法上の小売販売業の許可(財務局)が必要
▶喫煙目的施設には20歳未満(客・従業員とも)を立ち入らせられない
▶ノンニコチン製品の扱いは製品によって判断が変わる。断定せず確認する
▶午前0時以降に酒類を提供するなら深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要
▶シーシャの提供で客席に近づく機会が多い分、接待に当たらない動き方をルール化する
▶物件を探す前に、保健所と財務局へ相談する
シーシャバーは、手続きの順番が通常の飲食店と逆になる業態です。物件より先に、喫煙対策が成立するかを確認してください。
飲食店営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出に対応しています。受動喫煙対策については保健所への確認事項を整理したうえで、あわせてご案内します。