この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。


「売上も伸びてきたので、そろそろ法人化したい」。


税務上のメリットを考えて法人成りを検討される方は多いのですが、風俗営業許可は個人から法人に引き継ぐことができません。法人として、新規に許可を取り直すことになります。


手数料も、55日の審査期間も、書類の準備も、最初と同じだけ必要です。この記事では、法人化を検討する際に押さえておくべき点を整理します。



なぜ引き継げないのか

風俗営業許可は、営業所ごとに、許可を受けた者に与えられるものです。


個人事業主のAさんが受けた許可は、Aさん個人に対する許可です
Aさんが設立した株式会社は、法律上は別人格です
したがって、法人として改めて許可を受ける必要があります


代表者が同一人物であっても、許可は移りません。「実質的に同じ店だから」という理由は通用しません。


引き継げるのは3つの場合だけ

風営法は、次の場合について、公安委員会の承認を受けることで営業を続けられる制度を設けています。


相続(営業者が死亡した場合)
法人の合併
法人の分割


裏を返せば、これ以外の方法では許可は移りません。


個人から法人への法人成り、事業譲渡、店舗の売買、株式譲渡以外の方法による経営権の移動。いずれも承継の対象外です。


名義をそのままにするのは違法です

個人名義の許可のまま、実質的な営業主体だけを法人に変えることはできません。
これは名義貸しにあたり、無許可営業として扱われる可能性があります。


2025年(令和7年)6月28日施行の改正により、無許可営業の罰則は5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人の場合は3億円以下の罰金に引き上げられました。


「手続が面倒だから、しばらく個人名義のままで」という判断は、以前とは比較にならないリスクを伴います。詳しくは2025年(令和7年)風営法改正まとめをご覧ください。


法人化に必要な手続

法人を設立する(定款の事業目的に注意
賃貸借契約の名義を法人に変更する
保健所の飲食店営業許可を法人名義で取得する
風俗営業許可を法人として新規申請する
許可を受ける(標準処理期間55日)
個人名義の許可について廃止の手続を行う


・飲食店営業許可も引き継げません
保健所の飲食店営業許可も、営業者が変われば新規取得が必要です。風俗営業許可の前提になるため、こちらを先に済ませる必要があります。


つまずきやすい3つのポイント

①定款の事業目的

定款の事業目的に、風俗営業に該当する事業が記載されているかを確認してください。「飲食店の経営」だけでは足りない場合があります。


設立時の定款に盛り込んでおけば、後の定款変更と登記が不要になります。これから設立するなら、司法書士や行政書士に事前に相談してください。


②賃貸借契約の名義

申請には、営業所の使用について権原を有することを疎明する書類が必要です。賃貸借契約が個人名義のままだと、法人が権原を有することを示せません。


貸主との交渉と、契約書の名義変更に時間がかかることがあります。早めに着手してください。あわせて、契約書の使用目的に風俗営業を営む旨が反映されているかも確認しておいてください。


③役員全員の欠格事由

個人申請では本人だけを見れば足りましたが、法人では役員全員が審査の対象になります。


節税のために配偶者や親族を役員に入れるケースがありますが、その方に欠格事由があると法人として許可を受けられません。役員構成を決める前に確認してください。


なお2025年11月28日施行の改正で、親会社等が許可を取り消された法人、暴力的不法行為を行うおそれがある者が支配的影響力を有する者が欠格事由に追加されています。詳しくは法人で風俗営業許可を取る場合の役員要件をご覧ください。


営業の空白期間をどうするか

最も現実的な問題です。


法人としての許可が下りるまで、法人は営業できません
標準処理期間は55日です
その間、個人名義の許可で営業を続けることになります
法人の許可が下りた時点で切り替え、個人の許可は廃止の手続をします


重要なのは、切り替えのタイミングです。法人の許可が下りる前に個人の許可を廃止してしまうと、営業できない期間が生じます。


逆に、実態が法人に移っているのに個人名義のまま営業を続ければ、名義貸しの問題が生じます。会計処理・雇用契約・賃貸借契約の切り替え時期と、許可の切り替え時期を揃えてください。


法人化のタイミング

・これから開業するなら
将来的に法人化する見込みがあるなら、最初から法人で許可を取るほうが合理的です。手数料24,000円と55日の審査を、二度払う必要がなくなります。


・すでに個人で営業しているなら
決算期や消費税の課税事業者になるタイミングに合わせて検討されることが多いと思いますが、風俗営業許可の55日を逆算してスケジュールを組んでください。法人設立、飲食店営業許可、風俗営業許可と順番に進むため、全体では3か月程度を見込む必要があります。


かかる費用

法人設立費用(登録免許税、定款認証等)
飲食店営業許可の手数料(保健所。自治体により異なります)
風俗営業許可の手数料24,000円
証明書類の実費(役員全員分の住民票・身分証明書、登記事項証明書等)
賃貸借契約の名義変更費用(貸主・管理会社による)


費用の内訳は風俗営業許可の費用|手数料・実費・行政書士報酬の内訳で解説しています。


実務上のポイント

これから開業するなら、法人化の予定を先に考えてください。二度手間と二重の費用を避けられます
定款の事業目的に、風俗営業に該当する事業を入れてください。設立時なら追加費用がかかりません
賃貸借契約の名義変更を早めに進めてください。貸主の承諾が必要で、時間がかかることがあります
役員に入れる方の欠格事由を確認してください。個人申請にはなかった論点です
許可の切り替えタイミングを、会計・雇用・契約の切り替えと揃えてください。実態と名義がずれる期間を作らないでください
名義をそのままにする選択肢はありません。無許可営業の罰則は2025年改正で大幅に強化されました


まとめ

個人の風俗営業許可を法人に引き継ぐことはできない
承継が認められるのは、相続・合併・分割の3つだけ
法人として新規に許可を取り直す(手数料24,000円、標準処理期間55日)
飲食店営業許可も法人名義で新規取得が必要
定款の事業目的、賃貸借契約の名義、役員の欠格事由が主な確認点
個人名義のまま法人が営業する形は、無許可営業として扱われるおそれがある
これから開業するなら、最初から法人で取るほうが合理的な場合が多い


法人化は、税務だけでなく許認可のスケジュールとセットで考える必要があります。「決算期に合わせて法人化したい」というご相談があれば、風俗営業許可の期間から逆算した進め方をご提案できます。


これから開業される方も、法人化の可能性がある段階でご相談いただければ、無駄のない形を選べます。


【行政書士久遠事務所】
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