この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。


風俗営業の営業所には、照度と騒音・振動の数値基準があります。照度は全国共通の国家公安委員会規則で、騒音・振動は愛知県の条例で定められています。


この違いを知らずに他県向けの情報を参考にすると、数値を取り違えます。愛知県の深夜の騒音基準は、地域によって40デシベルから50デシベル。これは、静かな図書館の中と同じくらいの水準です。


この記事では、照度と騒音・振動の基準を数値で整理し、内装設計で押さえるべき点を解説します。



照度の基準|営業の種別で違います

照度は、国家公安委員会規則(風営法施行規則第7条)が定める全国共通の基準です。


営業 営業所の照度
1号営業(社交飲食店・料理店) 5ルクス以上
2号営業(低照度飲食店) 5ルクス以上
3号営業(区画席飲食店) 10ルクス以上
4号営業(マージャン店・パチンコ店等) 10ルクス以上
5号営業(ゲームセンター等) 10ルクス以上
特定遊興飲食店営業 10ルクス以上
深夜酒類提供飲食店営業 20ルクス以上


深夜酒類提供飲食店営業の20ルクスが、最も厳しい基準です。「風俗営業ではないから緩い」という理解は誤りです。深夜営業を予定しているバーは、この点に注意してください。


上限もあります

客席の照度を10ルクス以下として営むと、2号営業(低照度飲食店)に該当します
したがって2号営業として営むなら、実質的に5ルクス超〜10ルクス以下の範囲での運用になります
接待をしていれば、照度にかかわらず1号営業です


調光器は設置できません

警察庁の解釈運用基準は、明確に定めています。


照度の基準に満たない照度に自由に変えられるスライダックス等の照明設備を設けることは認められない


つまみを回せば基準以下に落とせる調光器は、それだけで基準を満たさないと判断されます。雰囲気づくりのために調光器を入れたい、という要望はよくありますが、風俗営業では実現できません。内装業者への発注前に必ず伝えてください。


なお解釈運用基準は、照明設備のほかに営業時間中に常態として光を発することが想定される設備がある場合、双方の光によって常態として基準に達すれば足りるとしています。モニターや装飾照明の光も算入され得ます。


測定の対象は「客室」です

客室に含まれないもの
調理場
バーカウンターの内側の、客が位置しない部分
洗面所
和風の営業所における床の間、押入れ、廊下
ショーや歌舞音曲を実演するためのステージで、客が位置しないもの


厨房が明るくても、客が座る側が基準を満たしていなければ意味がありません。照度計を使って、客席の各所を実測してください。数千円で購入できます。


騒音の基準|愛知県の条例で定められています

騒音と振動の数値は、風営法第15条を受けて、各都道府県の条例が定めています。愛知県の数値は次のとおりです。


地域 昼間
(午前6時後〜午後6時前)
夜間
(午後6時〜午前0時前)
深夜
(午前0時〜午前6時)
第一種地域・第二種地域 55デシベル 50デシベル
(午後10時以後は40デシベル)
40デシベル
第三種地域 60デシベル 55デシベル 50デシベル
第四種地域・第五種地域 65デシベル 60デシベル 50デシベル


(出典:愛知県風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例第7条第1項)
・地域の区分
第一種地域は住居専用地域・住居地域・田園住居地域、第二種地域は準住居地域、第四種地域は商業地域、第五種地域は名古屋市の指定された区域、第三種地域はそれ以外です。なお、第一種地域では風俗営業の許可自体を受けられません。


振動は55デシベル

振動の数値は、地域・時間を問わず55デシベルです(条例第7条第2項)


深夜営業をする飲食店にも適用されます

深夜(午前0時〜午前6時)に営業する飲食店については、上の表の「深夜」の数値がそのまま適用されます(条例第26条)。つまり第一種・第二種地域なら40デシベル、それ以外は50デシベルです。深夜酒類提供飲食店営業の届出をしている店も、届出が不要な店も同じです。


深夜営業の騒音については深夜営業の騒音規制|愛知県は40〜50デシベルで詳しく解説しています。


特定遊興飲食店営業は別建てです

第一種地域・第二種地域/40デシベル
第三種地域・第四種地域・第五種地域/50デシベル
振動は55デシベル


40デシベルはどれくらいか

数字だけではイメージが湧きにくいので、目安を挙げます。


40デシベル/図書館の中、深夜の住宅街
50デシベル/静かな事務所、換気扇の近く
60デシベル/普通の会話、チャイム
70デシベル/掃除機、騒がしい事務所


カラオケや音響設備を使う店で、40デシベルを守るのは容易ではありません。木造・軽量鉄骨の建物、上下階に住居がある物件では、想定以上の防音工事が必要になります。物件を選ぶ段階で、建物の構造と近隣の状況を確認してください。


どこで測るのか

騒音・振動の数値は、店内ではなく、規制の対象となる場所で測られます。営業所の敷地境界や、近隣の住居との関係で判断されるものです。


店内の音量を下げれば済む、という話ではありません。壁や床、天井をどれだけ音が抜けるかが問題になります。防音工事の要否は、建物の構造と、隣接する部屋の用途によって変わります。


防音設備で押さえるべきポイント

/隣室・隣家と接する壁の遮音性能。既存の壁だけでは不足することが多い
床・天井/上下階への振動の伝わり方。スピーカーの直置きは振動を伝えやすい
出入口/扉の隙間から音が漏れる。二重扉や防音扉の検討
ダクト・換気口/見落とされやすい音の抜け道
/既存のサッシでは不足することが多い


・深夜営業をする場合の追加義務
風俗営業者及び特定遊興飲食店営業者は、深夜においてその営業を営むとき、客が営業所周辺で他人に迷惑を及ぼすことがないよう、営業所周辺の巡視、客への説明、従業員への教育等の必要な措置を講じなければなりません。また、営業所ごとに苦情の処理に関する帳簿を備え付け、最終の記載日から3年間保存する必要があります。


設計時に伝えるべきこと

内装業者・設計士に依頼するとき、次の情報を伝えてください。


取得予定の営業の種別(1号営業なのか、深夜酒類提供飲食店営業なのか)
客室の照度基準(5ルクス/10ルクス/20ルクス のどれか)
調光器は使用不可であること
営業所が属する地域の区分と、適用される騒音の数値
営業予定時間(深夜まで営業するなら、より厳しい数値が適用される)
音響設備の内容(カラオケ、生演奏、DJ等)


「風営法対応でお願いします」だけでは伝わりません。種別と数値を具体的に示してください。図面には照明器具の位置と種類、音響設備の配置を記載する必要があります。図面の作り方は平面図・求積図・照明音響設備図の作り方で解説しています。


実務上のポイント

照度は実測して記録を残してください。照度計は数千円です。客席の各所で測り、日付とともに残しておくと、調査の際にも説明できます
調光器を入れないでください。設置してあるだけで基準を満たさないと判断されます
営業所の地域区分を確認してください。騒音の数値が地域によって10〜25デシベル変わります
深夜営業をするなら、より厳しい数値を前提に設計してください。後から防音工事を追加すると、内装のやり直しになります
建物の構造を確認してください。木造・軽量鉄骨、上下階に住居がある物件は、防音費用が膨らみます
スピーカーは直置きしないでください。振動が構造体に伝わります


まとめ

照度は全国共通の規則、騒音・振動は愛知県の条例で定められている
照度は1号・2号が5ルクス以上、3〜5号と特定遊興が10ルクス以上、深夜酒類が20ルクス以上
調光器(スライダックス等)は設置できない
騒音は地域と時間で変わる。第一種・第二種地域の深夜は40デシベル、第三〜五種は50デシベル
振動は地域・時間を問わず55デシベル
深夜に営業する飲食店にも、深夜の騒音数値が適用される
深夜営業では、周辺の巡視と苦情処理簿の備付け(3年保存)が必要


照度と騒音は、設計段階なら安く、工事後だと高くつく典型です。図面ができた段階でご相談いただければ、基準に照らして確認できます。


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