この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。


風俗営業許可の申請で、最も手間がかかるのが図面です。


愛知県警察が求めているのは「営業所の平面図及び営業所の周囲の略図」ですが、実務では、平面図に加えて求積図と照明音響設備図を作成します。構造設備が基準に適合していることを、図面で説明する必要があるためです。


この記事では、それぞれの図面の役割と、作成時に押さえるべき点を整理します。



必要な図面の種類

図面 役割
平面図 営業所の間取り、客室・調理場等の配置、什器の位置を示す
求積図 客室等の床面積の計算根拠を示す
照明・音響設備図 照明器具と音響設備の位置・種類を示す
営業所の周囲の略図 保全対象施設の有無を示す(100m略図)


営業所の周囲の略図については、風俗営業許可の100m略図の作り方で詳しく解説しています。この記事では、営業所内部の3つの図面を扱います。


①平面図

記載する内容

営業所の全体の形状と寸法
客室の範囲と区分(客室が複数ある場合は、客室1・客室2のように番号を振る)
調理場、洗面所、廊下等の客室以外の部分
出入口の位置(営業所外に通じるもの、客室のもの)
テーブル、椅子、ソファ、カウンター等の什器の配置
什器の高さ(見通しに関わるもの)
方位


・什器の高さを書いてください
見通しを妨げる設備がないことを示すためです。解釈運用基準は、仕切り、ついたて、カーテンのほか、高さおおむね1メートル以上の背の高い椅子を見通しを妨げる設備として例示しています。ソファの背もたれの高さは、必ず記載してください。


・客室と客室以外を明確に区分してください
面積要件は客室にのみかかります。調理場、バーカウンターの内側の客が位置しない部分、洗面所は客室に含まれません。塗り分けやハッチングで、どこが客室かを一目で分かるようにしてください。


②求積図

面積は「うちのり」で計算します

警察庁の解釈運用基準は、明確に定めています。


「各客室の床面積」欄は、壁、柱等の区画の中心線から計るものではなく、うちのりの面積を記載する


建築図面の床面積は壁の中心線で計算されるのが一般的です。そのままでは使えません。壁の内側から内側までを測り直してください。16.5㎡ぎりぎりの設計だと、うちのりで測った瞬間に基準を割ることがあります。


計算の示し方

複雑な形状は、長方形や三角形に分割して計算する
分割した各部分にA、B、Cのように記号を振る
各部分の寸法(縦×横)と面積を明示する
合計を計算式とともに示す
客室が複数ある場合は、客室ごとに計算する


求積図で重視されるのは、見た目の美しさよりも「計算の根拠が追えること」です。分割の仕方、各部分の寸法、合計の計算式が明示されていれば、シンプルな図面で構いません。


③照明・音響設備図

記載する内容

照明器具の位置、種類、数量、ワット数
ダウンライト、ペンダントライト、間接照明等の区別
音響設備(スピーカー、アンプ、カラオケ装置等)の位置と数量
防音設備がある場合はその内容


・調光器がないことを示してください
照度の基準に満たない照度に自由に変えられるスライダックス等の照明設備は認められません。調光機能のない器具であることが分かるように記載してください。


・照度の根拠を説明できるように
図面に加えて、実測した照度の記録を用意しておくと、調査の際に説明しやすくなります。照度計は数千円で購入できます。客席の各所で測り、測定日とともに記録を残してください。


図面作成の実務的な進め方

内装業者から施工図面をもらう
現地で寸法を実測する(うちのり)
客室と客室以外を区分する
求積を計算する
什器の配置と高さを記入する
照明・音響設備を記入する
基準に適合しているか確認する


・施工図面をそのまま使えないことが多い理由
建築・内装の図面は、施工のために作られています。面積の計算方法が違う(中心線とうちのり)、什器の高さが書かれていない、照明の種類が記号のみ、といった違いがあります。申請用に作り直すのが実務です。


実地調査で照合されます

申請後、営業所の実地調査が行われます。


提出した平面図・求積図・照明音響設備図をもとに、実際にメジャーやレーザー距離計で計測が行われます。図面と現況が食い違えば、補正や図面の作り直しになります。


面積計算の根拠を聞かれたときに、すぐ答えられるようにしておいてください。


・申請のタイミング
愛知県公安委員会の審査基準によれば、標準処理期間の55日が適用されるのは、申請が到達した時点で営業所が存在し、実地調査が可能な場合に限られます。図面だけ先に出しても、この目安は適用されません。


よくある不備

面積を中心線で計算している/うちのりで測り直す必要があります
客室と客室以外の区分が曖昧/どこを測ったのか分かりません
什器の高さが書かれていない/見通しの判断ができません
求積の計算式がない/面積の根拠が示せません
図面と現況が違う/工事中に変更した部分が反映されていない
寸法の単位が不統一/ミリとセンチが混在している


実務上のポイント

施工図面をそのまま出さないでください。面積の計算方法が異なります
うちのりで実測してください。図面上の数値と現況がずれていることがあります
ソファの背もたれの高さを測ってください。見通しの判断に直結します
求積の計算式を残してください。調査で説明を求められます
工事の変更は必ず図面に反映してください。現況と一致していることが前提です
シンプルで分かりやすい図面にしてください。装飾より、必要な情報が漏れなく入っていることが重要です


まとめ

実務では平面図・求積図・照明音響設備図・周囲の略図の4種類を作成する
面積は壁の中心線ではなく、うちのりで計算する
客室と客室以外(調理場、カウンター内側、洗面所等)を明確に区分する
什器の高さを記載する。おおむね1メートルが見通しの目安
照明は種類・数量・ワット数を記載し、調光器がないことを示す
求積は分割して計算式を明示する
実地調査で図面と現況が照合される


図面は、作成そのものより「基準に適合しているかを確認しながら作ること」に価値があります。作図の過程で不適合が見つかれば、工事のうちに手直しできます。図面作成からのご依頼も承っています。


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