この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。


風俗営業1号営業の客室は、1室あたり16.5㎡以上。和風の客室なら9.5㎡以上。ただし、客室が1室のみである場合は、この制限を受けません。


数字だけ見ると単純ですが、実際につまずくのは「どこからどこまでが客室なのか」「1室と数えるのか2室と数えるのか」「面積はどう測るのか」という部分です。


この記事では、面積要件の判断で問題になる3つの論点を整理します。



面積要件の一覧

制度 客室の床面積
風俗営業1号(社交飲食店・料理店) 1室16.5㎡以上(和風の客室は9.5㎡以上)
客室が1室のみの場合は制限なし
風俗営業2号(低照度飲食店) 1室5㎡以上(客に遊興させる態様の営業は33㎡以上)
風俗営業3号〜5号 面積の基準なし
深夜酒類提供飲食店営業 1室9.5㎡以上
客室が1室のみの場合は制限なし
特定遊興飲食店営業 33㎡以上


なお、3号営業(区画席飲食店)については、構造設備としての面積基準はありませんが、「見通すことが困難で広さ5㎡以下の客席を設けている」ことが3号営業に該当する要件そのものです。意味合いが違うので混同しないでください。


論点①|どこまでが「客室」か

面積を測る対象は、店全体ではなく「客室」です。解釈運用基準は、客室を客に飲食をさせ、又は客に遊興をさせるために客に利用させる場所と定義しています。


客室に含まれないもの
調理場
バーカウンターの内側の、客が位置しない部分
洗面所
和風の営業所における床の間、押入れ、廊下
ショーや歌舞音曲を実演するためのステージで、客が位置しないもの


・つまずきやすい例
店舗全体が25㎡ある物件で、厨房が6㎡、トイレが2㎡、カウンター内側が2㎡だとします。客室として数えられるのは15㎡で、16.5㎡に届きません。客室が1室だけなら制限を受けないので問題ありませんが、2室に分けるとどちらも基準を満たせません。


・カウンター席の扱い
カウンターの客が座る側は客室に含まれます。含まれないのは、内側の客が位置しない部分だけです。カウンターの天板の扱いも含め、線の引き方は図面作成の段階で確認しておくと確実です。


論点②|「1室」か「2室」か

ここが最も重要です。客室が1室だけなら面積の制限を受けませんが、2室以上になると、それぞれが16.5㎡以上必要になります。


2室と評価され得る例
壁で仕切られた個室・VIPルームを設けた
カーテンやパーテーションで空間を分けた
高さのある仕切りでボックス席を囲んだ


・「個室を1つだけ」が実現できないことがあります
25㎡の店で、5㎡の個室を1つ作ったとします。この瞬間、客室は「20㎡の部屋」と「5㎡の部屋」の2室になり、5㎡の部屋が16.5㎡未満なので基準を満たしません。


小規模な店舗で「個室が欲しい」という要望が実現できないのは、この構造によるものです。


・見通しを妨げる設備との関係
1号営業では、そもそも客室の内部に見通しを妨げる設備を設けることができません。解釈運用基準は、仕切り、ついたて、カーテン、高さおおむね1メートル以上の背の高い椅子を例示しています。


つまり1号営業では、「面積要件を満たす個室」を作れたとしても、その中を仕切ることはできません。


論点③|面積の測り方

解釈運用基準は、許可申請書の記載要領で明確に定めています。


「各客室の床面積」欄は、壁、柱等の区画の中心線から計るものではなく、うちのりの面積を記載する


・建築図面の数値をそのまま使えません
建築図面の床面積は、壁の中心線で計算されるのが一般的です。風営法では、壁の内側から内側まで(うちのり)で測ります。壁厚の分だけ、建築図面より小さくなります。


16.5㎡ぎりぎりの設計をしていると、うちのりで測った瞬間に基準を割ることがあります。余裕を持った設計にしてください。


・実地調査では実測されます
申請後の調査では、提出した平面図・求積図をもとに、実際にメジャーやレーザー距離計で計測が行われます。図面と現況が食い違えば、補正や作り直しになります。面積計算の根拠を説明できるようにしておいてください。


求積図の作り方

申請には、営業所の平面図に加えて、面積の根拠を示す求積図が必要です。


客室、調理場、その他の部分を明確に区分する
客室ごとに面積を計算し、計算式を示す
複雑な形状は、長方形や三角形に分割して計算する
寸法はうちのりで記入する


求積図で重視されるのは、見た目の美しさよりも「計算の根拠が追えること」です。分割の仕方、各部分の寸法、合計の計算式が明示されていれば、シンプルな図面で構いません。


図面の作成方法は平面図・求積図・照明音響設備図の作り方、営業所周辺の地図は風俗営業許可の100m略図の作り方で解説しています。


和風の客室とは

1号営業の客室のうち、和風の客室は9.5㎡以上で足ります。許可証には「料理店」と記載されます。


畳を敷けば和風の客室になる、という単純な話ではありません。営業の形態全体が和風のものであるかどうかで判断されます。料亭・小料理屋のような営業を想定した区分です。判断に迷う場合は、営業の内容を具体的に示して所轄の警察署に確認してください。


実務上のポイント

個室を作るかどうかを、設計の最初に決めてください。1室のままなら面積制限を受けません。分けた瞬間に16.5㎡の壁が立ちます
厨房・トイレ・カウンター内側を除いて計算してください。店舗全体の面積では判断できません
うちのりで測ってください。建築図面の数値より小さくなります
ぎりぎりの設計は避けてください。実地調査で実測されます
求積の根拠を説明できるようにしてください。計算式を残しておけば、調査でも慌てません
深夜営業も検討しているなら9.5㎡も意識してください。深夜酒類提供飲食店営業では、客室が2室以上なら各9.5㎡以上が必要です


まとめ

1号営業の客室は1室16.5㎡以上(和風9.5㎡以上)。客室が1室のみなら制限なし
2号営業は1室5㎡以上(遊興させる態様は33㎡以上)、3〜5号は面積基準なし
調理場、カウンター内側の客が位置しない部分、洗面所は客室に含まれない
個室を1つ作ると「客室2室」となり、それぞれ16.5㎡以上必要になる
面積は壁の中心線ではなく、うちのりで測る
実地調査では実測される。図面と現況を一致させる
深夜酒類提供飲食店営業は各9.5㎡以上(1室のみは制限なし)


面積要件は、数字を知っているかどうかより、どこを測るかを理解しているかで結果が変わります。物件の図面をお持ちいただければ、客室として数えられる範囲と面積を確認してお伝えできます。


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