この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。
「バーだから届出だけで済む」と考えていませんか。実は、バーやダイニングバーは、風営法上の判断が最も分かれやすい業態のひとつです。
接待をしていなくても、照明を絞れば2号営業、小さな個室を作れば3号営業に該当し、風俗営業の許可が必要になります。さらに深夜0時以降も酒類を提供するなら、別の手続が必要です。
この記事では、バーが自分の店の位置づけを判断できるよう、4つの分岐に整理します。
①接待をするか → するなら1号営業
②客席の照度を10ルクス以下にするか → するなら2号営業
③見通し困難で5㎡以下の客席を設けるか → 設けるなら3号営業
④午前0時以降も酒類を提供するか → するなら深夜酒類提供飲食店営業の届出
①②③はいずれも風俗営業の許可が必要になる分岐です。④は届出で足ります。そして、風俗営業の許可を取ると、愛知県では原則として午前0時以降営業できなくなります。つまり①②③と④は両立しません。
Step1 接待をするか → するなら1号営業の許可(ここで確定)
Step2 客席の照度は10ルクス以下か → 該当するなら2号営業の許可
Step3 見通し困難で5㎡以下の客席があるか → あるなら3号営業の許可
Step4 午前0時以降も酒類を提供するか → するなら深夜酒類提供飲食店営業の届出
Step5 いずれも該当しない → 飲食店営業許可のみ
バーテンダーがカウンター越しに客と話すのは、通常は接待に当たりません。警察庁の解釈運用基準は、次の行為を接待に当たらないものとして挙げています。
・カウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為
・お酌をしたり水割りを作るが、速やかにその場を立ち去る行為
・これらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為
逆に、特定少数の客の近くにはべり、継続して談笑の相手となる行為は接待に当たります。常連客の前に張り付いて長時間話し込む運用が常態化すると、評価が変わり得ます。オーセンティックバーであっても、この線引きは意識しておく必要があります。
接待の判断基準は風営法の「接待」とは|接待に当たる行為・当たらない行為の一覧で6類型すべてを整理しています。
客席の照度を10ルクス以下として営むと、接待をしていなくても2号営業(低照度飲食店)に該当します。
・10ルクスは、ろうそくの火程度の明るさ
・測るのは客室。カウンターの内側の客が位置しない部分、調理場、洗面所は客室に含まれません
・飲食のみの客室では、時間の要素なく、いずれかの測定場所が10ルクス以下なら該当し得ます
「バックバーの照明が明るいから大丈夫」という判断は成り立ちません。客が座る側の照度が基準です。間接照明中心の設計にする場合は、必ず実測してください。
詳しくは2号営業(低照度飲食店)とは|10ルクス以下で許可が必要になる仕組みをご覧ください。
見通すことが困難で、かつ広さが5㎡以下の客席を設けると、3号営業(区画席飲食店)に該当します。
・2つの要件は「かつ」。どちらかを外せば該当しません
・見通しを妨げる設備の目安は、高さおおむね1メートル以上(仕切り、ついたて、カーテン、背の高い椅子等)
・面積はうちのりで計算します
カップルシートや半個室を作るなら、5㎡を超える広さにするか、見通せる構造にするかのどちらかで回避できます。設計段階で調整可能な部分です。
詳しくは3号営業(区画席飲食店)とは|個室・ボックス席で許可が必要になる基準をご覧ください。
午前0時以降も主として酒類を提供するなら、深夜酒類提供飲食店営業開始届出が必要です。
・営業開始日の10日前までに、営業所を管轄する警察署へ届出
・手数料は不要
・風営法上の営業時間の制限はない
・接待は一切できない
・構造設備の基準として、客室が2室以上ある場合は各9.5㎡以上が必要
・面積基準の混同に注意
バーに関わる面積基準は3つあります。3号営業の判定基準は5㎡以下、2号営業の構造設備は1室5㎡以上、深夜酒類提供飲食店営業は各9.5㎡以上。それぞれ別の制度の別の基準です。
深夜に営業する場合、「遊興」の論点も加わります。
【遊興に当たらない】
・バー等でスポーツ等の映像を単に不特定の客に見せる行為(客自身が応援等を行う場合を含む)
・単にテレビの映像や録音された音楽を流す行為
・客が自分から歌うと要望した場合に、マイクや歌詞カードを手渡す行為
【遊興に当たる】
・バー等でスポーツ等の映像を見せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる行為
・不特定の客に生演奏を聴かせる行為
・音楽や照明の演出等を行い、不特定の客にダンスをさせる行為
境目は「単に見せる」か「参加させる」かです。スポーツバーで店員が客に声を掛けて応援を盛り上げると、遊興に当たり得ます。深夜にこれを行い、かつ酒類を提供すると特定遊興飲食店営業の許可が必要になりますが、愛知県では営業所を設置できる地域が名古屋市の一部に限られます。
なお、解釈運用基準は、特に人々の関心の高い試合等が行われるときに、反復継続の意思を持たずにたまさか短時間に限って深夜に遊興をさせたような場合は、特定遊興飲食店営業としての継続性は認められないとしています。年に数回の大きな試合で盛り上がる程度であれば、直ちに許可が必要になるわけではありません。
| 区分 | 面積 | 照度 |
|---|---|---|
| 1号営業(接待) | 1室16.5㎡以上(和風9.5㎡以上)/1室のみは制限なし | 5ルクス以下にできない |
| 2号営業(低照度) | 1室5㎡以上(遊興させる態様は33㎡以上) | 10ルクス以下で該当/5ルクス以下にできない |
| 3号営業(区画席) | 見通し困難かつ5㎡以下の客席で該当 | 10ルクス以下にできない |
| 深夜酒類提供飲食店営業 | 客室が2室以上なら各9.5㎡以上 | 基準あり |
・深夜営業をするかどうかを最初に決めてください。する場合は、照度10ルクス超、区画席なし、接待なしの3つを同時に満たす設計にする必要があります
・照度は実測してください。照度計は数千円で購入できます。開業前に客席の各所を測り、記録を残しておくことをおすすめします
・調光器(スライダックス等)は設置できません。基準以下に落とせる設備があるだけで問題になります
・ソファやパーテーションの高さを確認してください。おおむね1メートルが目安です
・イベントを企画する前に、遊興の該当性を確認してください。「単に見せる」から「参加させる」に踏み込むと結論が変わります
・バーは接待・照度・区画席・深夜営業の4つの視点で判断する
・接待をしなくても、照度や個室の作り方で風俗営業に該当し得る
・風俗営業の許可を取ると、愛知県では原則午前0時以降営業できない
・深夜営業をするなら、照度10ルクス超・区画席なし・接待なしを同時に満たす必要がある
・面積基準は制度ごとに異なる(5㎡以下・5㎡以上・9.5㎡以上)
・スポーツ映像は「単に見せる」なら遊興に当たらないが、参加させると当たり得る
バーの開業でつまずくのは、コンセプトと手続が噛み合っていないときです。「薄暗くて個室があって深夜まで営業したい」は、そのままでは実現できません。どこを優先するかが決まれば、必要な手続は明確になります。
設計の前の段階からご相談ください。
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