この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。
キャバクラ、スナック、ラウンジ、雀荘、ゲームセンター。これらの店を開くには、飲食店営業許可とは別に公安委員会の「風俗営業許可」が必要になることがあります。
ところが風俗営業許可は、人・場所・構造設備の3つすべてが基準を満たさないと下りません。とくに場所の要件は、物件を契約してから調べても手遅れになることがあります。
この記事では、これから開業する方が「自分の店に許可が必要か」「何を、どの順番で準備すればよいか」を判断できるよう、風俗営業許可の全体像を整理します。各論は個別記事で詳しく解説していますので、必要なところから読み進めてください。
風俗営業許可とは、風俗営業を営もうとする者が、営業所ごとに、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会から受けなければならない許可のことです(風営法第3条第1項)。愛知県内で営業する場合は、愛知県公安委員会の許可を受けます。
風営法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止することを目的とした法律です(法第1条)。「いかがわしい営業を取り締まる法律」というイメージを持たれがちですが、実際にはスナックや雀荘、ゲームセンターといった身近な業種が幅広く対象になっています。
・許可を受けずに営業するとどうなるか
無許可で風俗営業を営んだ場合、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(法人の場合は最大3億円の罰金)の対象となります。2025年(令和7年)6月28日施行の改正で、大幅に引き上げられました。
(参照: 愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」)
風営法第2条第1項は、風俗営業を1号から5号までの5つに分類しています。愛知県警察は、それぞれを次のように呼んでいます。
| 区分 | 愛知県警察の呼称 | 主な業態 |
|---|---|---|
| 1号営業 | キャバレー・料理店・社交飲食店 | キャバクラ、ホストクラブ、クラブ、ラウンジ、接待を行うスナック |
| 2号営業 | 低照度飲食店 | 客席の照度を10ルクス以下として営むバー等 |
| 3号営業 | 区画席飲食店 | 他から見通すことが困難で広さ5㎡以下の客席を設ける飲食店 |
| 4号営業 | マージャン店・パチンコ店等 | 雀荘、パチンコ店、その他射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業 |
| 5号営業 | ゲームセンター等 | スロットマシン、テレビゲーム機等の遊技設備を備える施設 |
このうち1号から3号までをまとめて「接待飲食等営業」といいます(法第2条第4項)。
許可は種別ごと・営業所ごとに受けます。同じ営業所で異なる種別の許可を重ねて受けることは、原則としてできません。たとえば「1号営業と2号営業を両方取っておく」という取り方はできない、ということです。
飲食店にとって、風俗営業許可が必要かどうかを決める最大の分かれ目が「接待」です。
風営法第2条第3項
この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。
条文はこれだけです。具体的にどこからが接待なのかは、警察庁の解釈運用基準が示す判断の枠組みにもとづいて個別に判断されます。「お酒を作れば接待」「カウンター越しなら接待にならない」といった単純な線引きはできません。
接待に当たる行為・当たらない行為については、風営法の「接待」とは|接待に当たる行為・当たらない行為の一覧で、警察庁の判断基準にもとづいて整理しています。
自分の店に許可が必要かどうかを業態から判定したい方は、風営法許可は必要?業態別に確認する判定方法とチェックリストをご覧ください。ガールズバー、コンカフェなど判断が分かれやすい業態を含めて整理しています。
ここを混同すると、開業スケジュール全体が狂います。3つの手続は、根拠法も窓口もまったく別のものです。
| 手続 | 根拠法・窓口 | 必要になる場合 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 食品衛生法/保健所 | 飲食物を提供する場合(風俗営業でも別途必要) |
| 風俗営業許可 | 風営法/管轄警察署(公安委員会) | 接待をする、照度10ルクス以下、5㎡以下の区画席、遊技をさせる場合 |
| 深夜酒類提供飲食店営業開始届出 | 風営法/管轄警察署(公安委員会) | 午前0時以降に主として酒類を提供する場合(接待・遊興なし) |
| 特定遊興飲食店営業許可 | 風営法/管轄警察署(公安委員会) | 深夜に客に遊興をさせ、かつ酒類を提供する場合 |
・接待をする店は、飲食店営業許可と風俗営業許可の両方が必要です
風俗営業許可を受けても、食品衛生法上の飲食店営業許可が免除されるわけではありません。先に保健所の飲食店営業許可を取り、そのうえで警察署に風俗営業許可を申請するのが基本的な順番です。
・風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の届出は、実質的に併用できません
接待をする店(1号営業)は、後述のとおり原則として午前0時までしか営業できません。「風俗営業許可を取ったうえで、0時以降は深夜酒類の届出で営業する」という運用は認められていません。風俗営業許可と深夜酒類提供飲食店営業の違いで詳しく整理しています。
風俗営業許可は、①人(申請者・役員・管理者)②場所(営業所の所在地)③構造設備(営業所の造り)の3つすべてが基準を満たして初めて下ります。どれか一つでも欠けると許可されません。
風営法第4条は、許可を受けられない者を列挙しています。破産して復権を得ていない者、一定の刑罰を受けて5年を経過しない者、暴力的不法行為を行うおそれがある者、許可を取り消されて5年を経過しない者などです。
審査の対象は申請者本人だけではありません。法人の場合は役員全員、そして店ごとに置く管理者についても確認されます。役員のうち1人でも該当すれば、その法人は許可を受けられません。
2025年11月28日施行の改正で欠格事由が追加された点も含め、風営法の欠格事由をわかりやすく解説|具体例つき・2025年改正対応で具体例とともに整理しています。
愛知県では、風営法施行条例によって県内の区域を第一種地域から第五種地域までに区分し、風俗営業の場所を規制しています。
・第一種地域では風俗営業の許可を受けられません(第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、田園住居地域)
・許可を受けられる地域であっても、営業所から一定の距離内に保全対象施設があると許可されません
・1号営業の場合、商業地域以外では大学以外の学校・幼保連携型認定こども園から100m、保育所・病院・有床診療所から50m。商業地域ではそれぞれ70m・30m
・第五種地域(名古屋市の一部)には距離規制がありません
用途地域の調べ方は風俗営業許可の営業が可能な用途地域について、保全対象施設の確認方法は保全対象施設の調べ方|学校・病院との距離で風俗営業許可が取れないケースで解説しています。
保全対象施設の有無を示すために、申請には営業所を中心とした100mの略図を添付します。作り方は風俗営業許可の100m略図の作り方をご覧ください。
営業所の構造・設備についても、種別ごとに基準が定められています。1号営業(社交飲食店)の主な基準は次のとおりです。
・客室の床面積は、1室あたり原則5㎡以上(客室が1室のみの場合はこの制限を受けません)
・客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
・善良の風俗を害するおそれのある写真・装飾等の設備を設けないこと
・客室の照度を5ルクス以下としないこと
・騒音・振動が条例で定める数値に満たないように維持されること
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと(客室以外の場所から見通せない客室の場合)
構造設備の基準は、内装工事が終わってから満たしていないことが判明すると、やり直しになります。設計段階で確認しておくことが重要です。
風俗営業者は、営業所ごとに、業務を適正に実施するための管理者を1人選任しなければなりません(法第24条第1項)。
管理者にも欠格事由が適用され、未成年者は管理者になれません。また管理者は営業所ごとに必要なため、他の風俗営業店との兼任は原則としてできません。
申請時には、管理者について住民票・身分証明書・誓約書のほか、写真2葉(縦3.0cm×横2.4cm、申請前6か月以内に撮影した無帽・正面・上三分身・無背景のもの)が必要です。裏面に氏名と撮影年月日を記入します。証明写真機で撮る場合はサイズに注意してください。
(参照: 愛知県警察「風俗営業の許可申請手続」)
愛知県警察が公表している添付書類は、次のとおりです。
・許可申請書
・営業の方法を記載した書類
・営業所の使用について権原を有することを疎明する書類(登記事項証明書、賃貸借契約書の写し、使用承諾書等)
・営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
・本籍又は国籍記載の住民票の写し
・人的欠格事由に該当しない旨の誓約書
・市区町村長の発行する身分証明書
・法人の場合:定款、登記事項証明書、法人の誓約書、密接な関連を有する法人に関する書面、株主名簿の写し、役員全員分の住民票等
・管理者に係る誓約書、住民票等、写真2葉
・パチンコ店等の場合:遊技機が検定を受けた型式に属することを証する書類等
添付書類の発行・作成日は、申請日から3か月以内のものである必要があります。住民票や身分証明書を早く取りすぎると、申請時に期限切れになることがあります。
書類ごとの詳しい内容は、次の記事で解説しています。
・風営法(風俗営業許可)申請に必要な書類一覧|2025年改正対応・愛知県版
・許可申請書の書き方|別記様式第1号「その1・その2A」
・「営業の方法」(別記様式第2号)の書き方
・システム・料金表の作り方|記載項目と税込表示のポイント
・風営法の誓約書とは|種類・書き方・2025年改正の注意点
| 営業の種類 | 手数料 |
|---|---|
| パチンコ店(回胴式遊技機専門店を含む) | 25,000円+2,800円+40円×遊技機台数 |
| 上記以外の風俗営業 | 24,000円 |
同時に複数の許可申請をする場合や、3か月以内の期間を限って営む営業の場合は減額されます。逆に、地震・火災等による営業所の滅失によって申請する場合は加算されます。納付方法はキャッシュレス決済または愛知県収入証紙です。
(参照: 愛知県警察「風俗営業の許可申請手続」)
申請窓口は、営業所の所在地を管轄する警察署の生活安全課です。会社の本店所在地でも、代表者の住所地でもありません。同じ名古屋市内でも区によって管轄署が異なります。
①営業形態・物件の確認(許可の要否、地域規制、保全対象施設)
②物件の契約・内装設計(構造設備基準の確認)
③保健所の飲食店営業許可を取得
④図面・書類の作成、証明書類の取得
⑤管轄警察署の生活安全課へ申請、手数料納付
⑥警察による書類審査・現地調査
⑦許可、許可証の交付
愛知県における風俗営業許可の標準処理期間は55日です。日曜・祝日等を除いた日数で計算されるため、実際の開業までにはさらに余裕が必要です。詳しくは風営法許可は申請から何日で取れる?標準処理期間55日の正しい読み方で解説しています。
許可証の交付を受ける前に営業を始めることはできません。物件の賃料は許可を待っている間も発生します。オープン予定日から逆算して、余裕を持ったスケジュールを組んでください。
風俗営業者は、深夜(午前0時から午前6時まで)に営業を営むことができません(法第13条第1項)。愛知県ではこれに加え、条例で午前6時後から午前9時までの営業も禁止されています。
・愛知県では原則として午前0時から午前9時まで営業できません
・パチンコ店等は、これに加えて午後11時から午前0時前も営業できません
・第五種地域等の接待飲食等営業は、条例で定める日に限り午前1時まで延長できます
業態ごとの営業時間の違いは、飲食店の営業時間は風営法でどう決まる?業態別の深夜営業ルールで詳しく比較しています。
建設業許可などと異なり、風俗営業許可に有効期間の定めはなく、更新の手続もありません。廃業したり、許可が取り消されたりしない限り、効力が続きます。
ただし、営業所や営業者の内容が変わったときは手続が必要です。構造設備の変更のように「事前に承認を受けなければならない」ものと、氏名・名称の変更のように「事後に届け出る」ものがあり、扱いが異なります。改装の内容によっては、営業所の同一性が失われて新規の許可が必要になる場合もあります。
許可取得後も、管理者の選任、従業者名簿の備付け、年少者に関する規制、騒音・振動の規制、広告宣伝の規制などの義務が続きます。従業者名簿は開業前から準備が必要な書類ですので、風営法の「従業者名簿」とは?開業前に用意すべき書類もあわせてご確認ください。
悪質なホストクラブ等への対策を背景に、風営法が改正されました。愛知県警察の案内によれば、内容は次のとおりです。
| 施行日 | 主な内容 |
|---|---|
| 令和7年6月28日 | 接待飲食営業を営む者の遵守事項(料金に関する虚偽説明、客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求、客が注文していない飲食等の提供)と禁止行為(威迫、売春・性風俗店勤務・AV出演等の要求)の追加/性風俗店のスカウトバック禁止/無許可営業等に対する罰則の強化 |
| 令和7年11月28日 | 欠格事由の追加(親会社等が許可を取り消された法人、立入検査後に許可証を返納した者、暴力的不法行為を行うおそれがある者が支配的影響力を有する者) |
インターネット上には、改正前の罰則(200万円以下の罰金)のまま書かれた記事が今も多く残っています。金額や欠格事由を確認するときは、公表日と改正の反映状況にご注意ください。
(参照: 愛知県警察「風営適正化法等の一部改正のご案内」)
・物件を契約する前に、その場所で営業できるかを確認してください。用途地域と保全対象施設の距離は、契約後に変えられません。第一種地域だった、学校が近すぎた、という理由で許可が取れなければ、賃料だけが発生します
・内装工事を始める前に、構造設備の基準を確認してください。客室の広さ、見通し、照明、施錠の有無は、設計段階で織り込めば追加費用が発生しません
・接待をするかどうかを最初に決めてください。接待の有無で、必要な手続も営業できる時間もまったく変わります。「とりあえず開業して、様子を見て接待を始める」という進め方は、無許可営業のリスクを抱えることになります
・証明書類は取得のタイミングに注意してください。住民票や身分証明書は発行から3か月以内である必要があります
・役員や管理者の欠格事由は、早い段階で確認してください。申請直前に判明すると、体制の組み直しから始めることになります
・風俗営業許可は、営業所ごと・種別ごとに公安委員会から受ける許可
・1号から5号までの5種別。飲食店で問題になるのは主に1号(接待)・2号(照度)・3号(区画席)
・人・場所・構造設備の3つすべてを満たす必要がある
・愛知県では第一種地域では許可されず、保全対象施設からの距離規制もある
・手数料は24,000円(パチンコ店等は別途計算)、窓口は営業所所在地の管轄警察署生活安全課
・標準処理期間は55日。許可証の交付前に営業はできない
・愛知県では原則として午前0時から午前9時まで営業できない
・有効期間や更新はないが、変更があれば承認申請または届出が必要
風俗営業許可でつまずくのは、書類作成そのものよりも「自分の営業がどの区分に当たるのか」「この場所で営業できるのか」の見極めです。接待の有無、物件の用途地域、周辺の保全対象施設。この3つは、物件を契約する前に整理しておいてください。
営業形態や物件が決まっていない段階でのご相談にも対応しています。「この物件で許可が取れるか」という確認だけでも構いません。
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