この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。
風俗営業の開業で、物件の次に取り返しがつかないのが内装です。
工事が終わってから基準を満たしていないと分かれば、作り直しになります。壁を1枚動かす、照明を入れ替える、什器を買い直す。どれも設計段階なら図面の修正だけで済んだものです。
この記事では、内装の打ち合わせに入る前に決めておくべきことを、順番に整理します。
①取得する許可・届出の種別/これが決まらないと基準が決まりません
②客室を何室にするか/面積要件がかかるかどうかが決まります
③営業時間/深夜まで営業するかで、適用される基準が変わります
この3つが決まっていない状態で内装業者と打ち合わせをすると、後戻りが発生します。デザインの話より先に、この3つを確定させてください。
| 項目 | 1号営業 | 2号営業 | 深夜酒類提供飲食店営業 |
|---|---|---|---|
| 客室の床面積 | 1室16.5㎡以上 (和風9.5㎡以上) 1室のみは制限なし |
1室5㎡以上 (遊興させる態様は33㎡以上) |
1室9.5㎡以上 1室のみは制限なし |
| 照度 | 5ルクス以上 | 5ルクス以上 (10ルクス以下で営む) |
20ルクス以上 |
| 見通しを妨げる設備 | 設けられない | 設けられない | 設けられない |
| 客室出入口の施錠設備 | 設けられない | 設けられない | 設けられない |
| 営業時間(愛知県) | 原則、午前0時から午前9時まで営業不可 | 制限なし | |
3号営業(区画席飲食店)だけは、「見通しを妨げる設備を設けないこと」の対象外です。ただし照度は10ルクス以上が必要で、客室の内部が営業所の外部から容易に見通せないことも求められます。
・1号営業は、客室が1室だけなら面積の制限を受けません
・個室・VIPルームを1つ作った瞬間に「客室2室」となり、それぞれ16.5㎡以上必要になります
・深夜酒類提供飲食店営業も同じ構造で、2室以上なら各9.5㎡以上です
小規模な店で「個室を1つだけ」という設計は、多くの場合成立しません。個室が欲しいなら、店舗全体の広さから逆算する必要があります。
警察庁の解釈運用基準が挙げる例です。
・仕切り
・ついたて
・カーテン
・背の高い椅子(高さがおおむね1メートル以上のもの)
・什器選びに直結します
ボックス席のソファの背もたれ、パーテーション、装飾棚、観葉植物。高さおおむね1メートルが目安です。ソファは既製品でも背もたれが1メートルを超えるものが多いため、発注前に高さを確認してください。
なお解釈運用基準は、壁際に調理場がある場合に、客室内の見通しを妨げない方法で調理場との間に設備を設けることは可能としています。厨房を隠す造作は問題になりません。
客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
店の出入口の鍵は問題ありませんが、店内の個室の扉に鍵を付けることはできません。
1号〜3号営業では、客室の内部が営業所の外部から容易に見通せないことが求められます。エントランスの造作、扉の位置、窓の処理で対応します。
・調光器(スライダックス等)は設置できません。基準以下に落とせる設備があるだけで問題になります
・照度の基準は営業の種別で異なります(1号・2号は5ルクス以上、3〜5号は10ルクス以上、深夜酒類は20ルクス以上)
・測定の対象は客室です。厨房やカウンター内側の明るさは算入されません
・照明器具の位置と種類は、申請図面に記載します
「雰囲気を出すために暗くしたい」という要望は、風俗営業では制約が大きい部分です。間接照明を主体にする場合は、施工後に必ず実測してください。
愛知県では、条例で騒音・振動の数値が定められています。
・第一種地域・第二種地域/深夜は40デシベル
・第三種地域/深夜は50デシベル
・第四種地域・第五種地域/深夜は50デシベル
・振動は地域・時間を問わず55デシベル
カラオケや音響設備を使う店では、防音工事が必須になることが多い部分です。壁・床・天井だけでなく、扉の隙間、ダクト、換気口も音の抜け道になります。詳しくは照度・音響・防音設備の基準と愛知県条例の騒音規制値をご覧ください。
見落とされやすい点です。構造設備の基準は「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備」を設けないことを求めていますが、警察庁の解釈運用基準は、次のものがこれに含まれるとしました。
接客従業者の指名数、売上額等の営業成績や役職を殊更に強調するなど、著しく客の飲食をする意欲をそそり、又は接客従業者間に過度な競争意識を生じさせ、営業に関する違法行為を助長するような歓楽的・享楽的雰囲気を過度に醸し出す広告
店内のランキングボードや売上掲示が、構造設備の基準に抵触する可能性があります。愛知県では、条例でも「営業行為に関連して、従業者に売上げの競争を強制しないこと」が風俗営業者の遵守事項とされています。内装の一部として掲示スペースを設計する場合は、事前に確認してください。
①物件の確認(用途地域・保全対象施設)
②営業の種別と客室数、営業時間を決定
③基準を踏まえた図面の作成
④保健所へ事前相談(飲食店営業許可の施設基準)
⑤必要に応じて所轄警察署へ事前相談
⑥内装工事
⑦照度の実測、図面との照合
⑧飲食店営業許可の取得
⑨風俗営業許可の申請
・保健所の事前相談は工事着工前に
飲食店営業許可には、シンクの数、手洗い設備、床・壁の仕様など、食品衛生法上の施設基準があります。工事後に不足が判明すると、追加工事になります。名古屋市は、施設の工事着工前に設計図面等を管轄の保健センターに持参して相談するよう案内しています。
・申請のタイミングにも影響します
愛知県公安委員会の審査基準によれば、標準処理期間の55日が適用されるのは、申請が到達した時点で営業所が存在し、実地調査が可能な場合に限られます。工事が終わっていない段階で申請すると、この目安が適用されません。工事完了と申請のタイミングを合わせてください。
・内装業者に「風営法対応で」とだけ伝えないでください。営業の種別と、具体的な数値を示してください
・客室を何室にするかを最初に決めてください。1室なら面積の制限を受けません
・ソファやパーテーションの高さを確認してください。おおむね1メートルが目安です
・調光器を発注しないでください。撤去または交換が必要になります
・保健所の事前相談を工事前に済ませてください。風俗営業許可の前提になります
・工事完了後に照度を実測してください。申請前に自分で確認しておけば、補正を避けられます
・図面は工事の実施内容と一致させてください。実地調査で照合されます
・設計の前に、営業の種別・客室数・営業時間の3つを決める
・客室を分けると面積要件がかかる(1号16.5㎡、深夜酒類9.5㎡)
・見通しを妨げる設備の目安は高さおおむね1メートル
・個室に鍵は付けられない
・調光器は設置できない
・騒音は愛知県条例で地域・時間ごとに定められている
・ランキング掲示は構造設備の基準に関わる
・保健所の事前相談は工事着工前に。標準処理期間55日は工事完了後の申請が前提
内装は、図面の段階で確認すれば無料、工事後に直すと高額という構造です。設計士や内装業者との打ち合わせに入る前の段階からご相談ください。
【行政書士久遠事務所】
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