ホストクラブ開業と2025年改正|売掛金・シャンパン・ランキングはどう変わったか

この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。


ホストクラブは風俗営業1号営業に当たり、公安委員会の許可が必要です。ここまでは以前から変わりません。


変わったのは、営業のやり方そのものが法律で規制されるようになったことです。2025年(令和7年)の風営法改正は、悪質なホストクラブへの対策を直接の目的として行われました。売掛金の請求方法、シャンパンの開け方、ランキングの掲示、スカウトへの声掛け。これまで業界の慣行だったものが、法律上の遵守事項・禁止行為として明文化されています。


この記事では、警察庁の解釈運用基準にもとづき、何がどう規制されるのかを具体的に整理します。



ホストクラブは1号営業です

ホストクラブは、キャストが特定の客に付いて継続的に談笑の相手となり、飲食物を提供します。これは接待に当たるため、風俗営業1号営業の許可が必要です。許可証には「社交飲食店」と記載されます。


2025年改正で追加された遵守事項・禁止行為の対象は「接待飲食営業」、すなわち1号営業です。ホストクラブはその中心にあります。


改正の全体像

警察庁は、改正の背景を次のように説明しています。


いわゆるホストクラブにおいて遊興又は飲食をした女性客が、売掛金等の名目で多額の債務を負担させられ、ホストやホストクラブ経営者から、その支払のために売春することや性風俗店で稼働すること等を要求される事案が発生し、社会問題化している。


これを受けて追加されたのが、次の5つです。


区分 内容
遵守事項 ①料金に関する虚偽説明
②客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求
③客が注文していない飲食等の提供
禁止行為(罰則あり) ④客に注文や料金の支払等をさせる目的での威迫
⑤威迫や誘惑による料金の支払等のための売春、性風俗店勤務、AV出演等の要求


①料金に関する虚偽説明

解釈運用基準は、2つの類型を示しています。


事実に相違する説明/表示している料金とは異なる額を説明するなど、虚偽の説明をすること
客を誤認させるような説明/一定の額しか持ち合わせがないと支払限度額を申告した客に対し「それでも大丈夫」等と申し向け、その額の範囲内でのみ飲食等を提供すると客に誤った認識を与えること


後者は、明確に嘘をついていなくても違反になり得るという点で重要です。「今日は◯万円まで」と言った客に対して曖昧に応じ、結果的にそれを超える請求をする運用は、規制の対象になります。


②客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求

最も適用範囲が広い規定です。解釈運用基準は、用語を細かく定義しています。


「恋愛感情その他の好意の感情」/好きな気持ち、親愛感のこと。恋愛感情のほか、憧れの感情等も含まれる
「同様の感情」/客の感情と同一である必要はなく、客の感情に相応する程度の感情を接客従業者が抱いていると客が誤信していればよい
「困惑」/困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況。畏怖している状況も含む
「業務上の不利益」/営業所内における序列の降格、遠隔地への左遷のほか、減給や報酬の減額
「必要不可欠である旨を告げること」/その言葉をそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同等程度の必要性・切迫性が示されていれば足りる


・「推し活」も対象です
解釈運用基準は、いわゆる「推し活」の一環として接客従業者に好意の感情を抱く客に対する行為についても、要件を満たせば違反になると明記しています。恋愛関係を装っていない場合でも、規制の外にはありません。


・立証のハードルが下げられています
基準は、接客従業者が客に同様の感情を抱いていると思わせるような言動をしながら要求行為を行った場合、客の好意の感情と誤信を知りながら利用する意図があったと推認されるとしています。さらに、当該客以外にも同様の言動をしながら営業していたことが認定されれば、真実の好意はなく、客に誤信があり、それを知っていたと推認できるとしています。


③客が注文していない飲食等の提供

実務上、最も直接的に運用の変更を迫る規定です。


解釈運用基準が挙げる該当例
いわゆるシャンパンコールを行うこと
いわゆるシャンパンタワーを組み上げること
接客従業者が自ら飲酒するためにシャンパンを開栓すること
客に飲酒させるためにシャンパンボトルを開栓すること
料理を提供すること


さらに基準は、これらを客が注文する前に行うことで、客に渋々応じさせたり、醸し出された歓楽的雰囲気を享受したものとさせたりすることが規制の対象になると説明しています。


「先に開けてしまって、後から会計に乗せる」という運用は成り立ちません。注文の意思確認を、いつ、どういう形で取るのか。店として明確なルールを作り、キャスト全員に徹底する必要があります。


④客に支払等をさせる目的での威迫(罰則あり)

ここからは罰則のある禁止行為です。


「威迫」とは

人を畏怖させるまでには至らないが、言語・動作・態度をもって気勢を示し、相手に不安・困惑の念を生じさせる行為。客に料金を支払わせるために声を荒げること等が該当する。


脅迫に至らないレベルの言動でも、規制の対象になります。「怖がらせるつもりはなかった」は通りません。


対象となる「支払等」の範囲は広い

解釈運用基準は、規制対象となる「料金の支払その他の財産上の給付」に次のものが含まれるとしています。


売掛金等と称される料金の事後の支払(掛払い、ツケ払い)
接客従業者が客に代わって料金を立て替えた場合の、求償権に係る債務の弁済
注文に係る契約が成立していると評価できる場合の「前入金」等と称される料金の事前の支払
来店頻度や利用額を増やすよう求めた場合における、将来の来店時に発生する料金の支払
違約金等の名目による金銭の交付
応援する接客従業者に対して行われる贈与(いわゆる「おひねり」


さらに、キャストが客に金銭を貸し付けて料金を支払わせた場合の貸金債務の弁済、準消費貸借契約を締結して料金債務を貸金債務に転換した場合の弁済も対象に含まれます。形式を変えても規制を逃れられない構造になっています。


⑤威迫や誘惑による売春等の要求(罰則あり)

「誘惑」/甘言を弄することによって相手方を動かし、その判断の適正を誤らせること
対象となる行為には、売春、性交類似行為、性風俗店での稼働、性行為映像制作物への出演が含まれます
これらを外国において行うことも含まれます(海外売春)


解釈運用基準は、「誘惑」の例として、将来の関係をほのめかしながら売上への貢献や性風俗店での稼働を求める言動を挙げています。威迫を伴わない、一見やさしい働きかけであっても規制の対象です。


広告・ランキング表示の規制

2025年改正に合わせて、広告規制の解釈も明確化されました。


規制の対象となる広告
接客従業者の指名数、売上額等の営業成績や役職を殊更に強調するなど、著しく客の飲食をする意欲をそそり、又は接客従業者間に過度な競争意識を生じさせ、営業に関する違法行為を助長するような歓楽的・享楽的雰囲気を過度に醸し出すもの


いわゆる「ランキング制」の広告表示が、法第16条の広告規制の対象になることが明示されました。店外の看板、Webサイト、SNSでの発信すべてが対象です。単に店名と料金のみを表示する広告は、原則として規制の対象になりません。


店内の掲示も構造設備基準に関わります

見落とされやすい点です。


風俗営業の構造設備基準は、「善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備」を設けないことを求めていますが、解釈運用基準は、上記の「接客従業者間に過度な競争意識を生じさせる広告」がこれに含まれるとしています。


つまり、店内のランキングボードや売上掲示が、構造設備の基準に抵触する可能性があるということです。広告規制の問題であると同時に、許可の要件そのものに関わります。内装や什器を決める段階で確認してください。


構造設備の全体像は1号営業(接待飲食等営業)とは|社交飲食店・料理店の定義で解説しています。


客引き・スカウトの規制

解釈運用基準は、客引きについても具体的な当てはめを示しています。


マッチングアプリ等で、当初は来店を求める目的を秘して近付き、交際関係に至った段階で来店を求める行為も、客引きに該当し得る
ホストクラブの従業者が通行人の女性に、個人的な交際の申込みや接客従業者の募集を装って声を掛け、身辺に立ちふさがったり、つきまとったりする行為も、客観的な状況から「客引きをするため」と認められれば禁止行為に当たる


また、性風俗店を営む者がスカウト等から求職者の紹介を受けた場合に紹介料を支払うこと(いわゆるスカウトバック)が禁止されました。罰則があります。


立入りで会計帳簿を求められます

警察の立入りは、法の施行に必要な限度で行われるものであり、経営状態の把握のために会計帳簿の提出を求めることは、本来認められていません。


ただし解釈運用基準は、接待飲食営業について例外を明記しました。


接待飲食営業を営む風俗営業者が表示し、又は客に説明した料金と実際に請求された料金が異なることや、客が注文していないと主張する飲食等の実際の伝票処理状況等を確認するため、会計帳簿や経理書類等の提出を求めることは認められる


伝票の処理方法が、そのまま行政の確認対象になるということです。注文と提供と会計が対応する形で記録が残る運用にしておく必要があります。


開業の要件

ホストクラブの開業に必要な要件は、1号営業として共通です。


飲食店営業許可(保健所)+風俗営業許可(公安委員会)
手数料24,000円、標準処理期間55日
第一種地域では営業不可。保全対象施設からの距離規制あり
客室が2室以上なら1室16.5㎡以上(和風9.5㎡以上)
管理者の選任が必要
愛知県では原則として午前0時から午前9時まで営業できない
18歳未満の者を客に接する業務に従事させること、客として立ち入らせることはできない


なお、2025年11月28日施行分で欠格事由が追加され、親会社等が許可を取り消された法人、立入検査後に許可証を返納した者、暴力的不法行為を行うおそれがある者が支配的影響力を有する者が加わりました。法人での申請では、関係会社の状況まで確認が必要です。


詳しくは風営法の欠格事由をわかりやすく解説2025年(令和7年)風営法改正まとめをご覧ください。


実務上のポイント

注文の意思確認の方法を、開業前にルール化してください。誰が、いつ、どう確認して、どう記録に残すか。ここが2025年改正の中心です
売掛金の扱いを見直してください。請求の方法が威迫と評価されないか。立替えや前入金も規制の対象に含まれます
ランキング表示は、店内・店外・SNSのすべてを点検してください。広告規制と構造設備基準の両方に関わります
キャストへの周知が不可欠です。「推し活」も対象に含まれること、憧れの感情も「好意の感情」に含まれることを、具体例とともに共有してください
伝票の運用を整えてください。立入りで会計帳簿の提出を求められることが明示されました
採用ルートを確認してください。スカウトへの紹介料の支払いは、性風俗店については禁止されています


まとめ

ホストクラブは風俗営業1号営業。2025年改正の直接の対象
遵守事項3つ(虚偽説明・恋愛感情につけ込む要求・注文していない飲食等の提供)
禁止行為2つ(威迫による支払要求・売春等の要求)には罰則がある
シャンパンコール、シャンパンタワー、事前開栓が明示的に例示された
売掛金、立替え、前入金、おひねりまで規制の対象に含まれる
ランキング表示は広告規制と構造設備基準の両方に関わる
立入りで会計帳簿・伝票処理状況の確認が明示的に認められた
無許可営業は5年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金、法人は3億円以下


2025年改正は、営業の中身にまで踏み込んだ規制です。適正に運営している店でも、料金説明・注文確認・広告表示の3点は見直しが必要になります。


これから開業される方も、すでに営業されている方も、運用の点検からご相談いただけます。


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