この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。
「前もスナックだったから、そのまま営業できますよね」。これは、風俗営業の開業で最も多い誤解のひとつです。
風俗営業の許可は、営業者ごと・営業所ごと・種別ごとに受けるものです。前の営業者の許可を引き継ぐことはできません。内装がそのまま残っていても、あなた自身が新規に許可を取る必要があります。
そして、前の店が許可を取れていたからといって、あなたが取れるとは限りません。この記事では、居抜き物件を検討するときの注意点を整理します。
風俗営業の許可は、営業所ごとに受けるものですが、許可を受けた者に与えられるものです。
・前の営業者の許可を、そのまま使うことはできません
・店名や内装が同じでも、営業者が変われば新規の許可申請が必要です
・手数料24,000円も、標準処理期間も、新規と同じようにかかります
・引き継げるのは相続・合併・分割だけです
風営法は、相続、法人の合併、法人の分割による承継について、公安委員会の承認を受けることで営業を続けられる制度を設けています。裏を返せば、これ以外の方法で許可が移ることはありません。店舗の売買や事業譲渡では引き継げません。
・「前の営業者の許可のまま営業する」は無許可営業です
名義をそのままにして実質的な経営者だけを入れ替える形は、名義貸しにあたり、無許可営業として5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金の対象になり得ます。法人の場合は3億円以下の罰金です。
ここが居抜き物件の落とし穴です。
・前の店の許可取得後に、近くに保育所や有床診療所ができている
・近隣に学校や幼保連携型認定こども園の建設予定地ができている
・都市計画の変更により、用途地域が変わっている
保全対象施設は、後から増えます。とくに保育所は開設が続いている施設です。10年前に許可が取れた場所でも、今は取れないことがあります。
・前の店が2号営業(低照度飲食店)で、あなたは1号営業(接待あり)を予定している
・前の店が深夜酒類提供飲食店営業の届出だけで、風俗営業の許可は取っていなかった
構造設備の基準は、営業の種別によって違います。とくに客室の床面積は、2号営業なら1室5㎡以上ですが、1号営業では1室16.5㎡以上です。前の店が2号営業だった内装をそのまま使うと、面積要件を満たさないことがあります。
前の店が無許可で営業していた、という可能性も否定できません。「ずっとこの形で営業していた」は、適法だったことの証明にはなりません。
居抜きの魅力は内装費の節約ですが、そのまま使えるかどうかは別問題です。
1号営業を予定している場合のチェック項目
・客室が2室以上あるなら、それぞれ16.5㎡以上あるか(和風の客室は9.5㎡以上)
・ボックス席の仕切りやソファの背もたれが、見通しを妨げる設備になっていないか(高さおおむね1メートルが目安)
・個室やVIPルームの出入口に施錠の設備が付いていないか
・照明に調光器(スライダックス等)が入っていないか
・客室の照度が5ルクス以下にならない照明になっているか
・善良の風俗を害するおそれのある写真・装飾がないか
・調光器は特に多いパターンです
雰囲気づくりのために調光器が入っている居抜き物件は珍しくありません。解釈運用基準は、照度の基準に満たない照度に自由に変えられる調光設備を設けることは認められないとしています。撤去または交換が必要になります。
・鍵の付いた個室も要注意
客室の出入口に施錠の設備を設けることはできません(営業所外に直接通ずる出入口を除く)。前の店が個室に鍵を付けていたなら、撤去が必要です。
見落とされやすい点です。
・保健所の飲食店営業許可も、営業者が変われば新規に取得が必要です
・設備の基準が改正されていると、厨房設備の改修が必要になることがあります
・食品衛生責任者の設置も必要です
風俗営業許可の申請には、飲食店営業許可が前提になります。保健所の手続がどれくらいかかるかも、スケジュールに織り込んでください。
・前の営業者の許可証を見せてもらう/営業の種別(社交飲食店か低照度飲食店か等)を確認します
・前の営業者が廃止届を出す予定か確認する/同一営業所で許可が重複することはできません
・現状の図面をもらう/客室の面積を確認するために必要です
・造作の所有関係を確認する/造作譲渡の対象範囲と、撤去が必要になった場合の負担
・賃貸借契約書の使用目的を確認する/風俗営業を営むことが契約上認められているか
・許可証の記載を必ず見てください
許可証には営業の種別が記載されています。「社交飲食店」なら1号営業、「低照度飲食店」なら2号営業、「区画席飲食店」なら3号営業です。あなたが予定している営業と一致するかどうかで、内装の使い回しができるかが決まります。
すべてがマイナスというわけではありません。
・厨房設備・空調・給排水がそのまま使える/初期費用の圧縮効果は大きい
・防音工事が済んでいる/騒音基準のクリアが容易になる
・同じ種別の営業なら、構造設備の手直しが少ない/前が1号営業で今回も1号営業なら、面積要件は満たしている可能性が高い
前の店と同じ種別の営業をするのであれば、居抜きの利点は大きく残ります。問題になるのは、種別が変わる場合と、周辺状況が変わっている場合です。
・「前も同じ業態だった」は確認の出発点であって、結論ではありません。必ず自分で調べ直してください
・保全対象施設は、契約前に現地を歩いて確認してください。とくに保育所と有床診療所は、看板が小さく見落としやすい施設です
・許可証の種別を確認してください。2号営業の居抜きで1号営業をやるなら、面積要件で引っかかる可能性があります
・調光器と個室の鍵は、居抜きでよく残っています。撤去費用を見込んでおいてください
・前の営業者の廃止届の予定を確認してください。スケジュールに影響します
・風俗営業の許可は引き継げない。営業者が変われば新規申請
・引き継げるのは相続・合併・分割のみ。事業譲渡や店舗売買では引き継げない
・前の店で許可が取れていても、周辺状況が変われば結論が変わる
・営業の種別が違えば、構造設備の基準も違う(1号16.5㎡/2号5㎡)
・調光器、個室の施錠設備は撤去が必要
・飲食店営業許可も新規に取得が必要
居抜き物件は、「前と同じ種別の営業をするなら強い」「種別が変わるなら要注意」と整理できます。物件の情報と、予定している営業内容を教えていただければ、そのまま使えるかどうかを判断してお伝えできます。
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