この記事の執筆者:行政書士久遠事務所
愛知・名古屋エリアを中心に風営法許可申請を専門に取り扱う行政書士事務所です。風俗営業許可・特定遊興飲食店営業許可・深夜酒類提供飲食店営業届出など、開業に関わる各種申請を専門にサポートしています。
風俗営業許可でいちばん多い失敗は、書類の不備ではありません。契約してしまった物件では、そもそも許可が取れなかったというケースです。
営業所の場所に関する要件は、後から変えることができません。用途地域も、近くの学校の位置も、契約後に動かせるものではないからです。それでも家賃は発生し続けます。
この記事では、物件を契約する前に必ず確認しておくべき点を、優先順位の高い順に整理します。
①用途地域/第一種地域では風俗営業の許可が取れません
②保全対象施設との距離/学校・保育所・病院等が近いと許可が取れません
③建物の構造/客室の面積、見通し、天井高が基準を満たせるか
④使用権原/賃貸借契約書に風俗営業を禁じる条項がないか
⑤建物の登記と現況/登記事項証明書が取得できるか、違法建築でないか
①と②は、その物件では絶対に許可が取れない「入口の要件」です。ここでつまずくと、内装をどう工夫しても解決できません。真っ先に確認してください。
愛知県では、風営法施行条例により県内の区域が第一種から第五種に区分されています。
| 区分 | 該当する地域 | 風俗営業 |
|---|---|---|
| 第一種地域 | 第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、田園住居地域 | 許可されません |
| 第二種地域 | 準住居地域 | 可(距離規制あり) |
| 第三種地域 | 近隣商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域、市街化調整区域等 | 可(距離規制あり) |
| 第四種地域 | 商業地域 | 可(距離規制は緩和) |
| 第五種地域 | 名古屋市千種区今池・内山、中区栄・新栄・錦の指定された丁目・番 | 距離規制なし |
・深夜酒類提供飲食店営業も同じです
風俗営業だけでなく、深夜酒類提供飲食店営業も第一種地域では営めません。「許可が取れないなら届出で」という逃げ道はありません。
・市街化調整区域は要注意
第三種地域には市街化調整区域が含まれますが、市街化調整区域では新たな建物が建築できない場合があります。既存建物の用途変更も制限されることがあるため、別途、市町村の建築部局への確認が必要です。
用途地域の調べ方は風俗営業許可の営業が可能な用途地域についてで解説しています。
許可できる地域であっても、営業所から一定の距離内に保全対象施設があると許可されません。
| 商業地域以外 | 商業地域 | |||
|---|---|---|---|---|
| 大学以外の学校・幼保連携型認定こども園 | 保育所・病院・有床診療所 | 大学以外の学校・幼保連携型認定こども園 | 保育所・病院・有床診療所 | |
| 1号〜4号営業 | 100m | 50m | 70m | 30m |
| 5号営業 | 70m | 30m | 50m | 30m |
| 4号・5号で3か月以内の期間営業 | 30m | |||
・見落としやすい施設
「学校」には幼稚園が含まれます。また「有床診療所」には、入院設備のある歯科診療所も含まれ得ます。看板だけでは入院設備の有無が分からないため、実際に確認が必要です。
・建設予定地も対象になり得ます
現時点で更地でも、保全対象施設の建設予定地であれば規制の対象になることがあります。周辺の開発計画も含めて確認してください。
保全対象施設の調べ方は保全対象施設の調べ方|学校・病院との距離で風俗営業許可が取れないケースで詳しく解説しています。
場所の要件をクリアしたら、次は建物そのものです。
1号営業(キャバクラ・スナック等)を予定している場合
・客室を2室以上作るなら、1室あたり16.5㎡以上(和風の客室は9.5㎡以上)が必要
・客室が1室だけなら、面積の制限はありません
・客室の内部が営業所の外部から容易に見通せない構造にできるか
・客室内に見通しを妨げる設備を置かない設計にできるか
・照度を5ルクス以下にしない照明が組めるか
・騒音・振動が条例の数値を下回るようにできるか
・柱と梁の位置を見てください
既存の柱や下がり天井は、動かせません。客室を16.5㎡確保しようとしたら柱が邪魔だった、というのは物件を見た段階で分かります。図面をもらって、想定するレイアウトを描いてみてください。
・騒音は近隣の状況にも左右されます
条例が定める数値は、地域の区分や時間帯によって異なります。木造・軽量鉄骨の建物、上下階に住居がある物件は、防音工事の費用が想定以上になることがあります。建物の構造と近隣の状況は、契約前に確認してください。
申請には、営業所の使用について権原を有することを疎明する書類が必要です。
・所有物件の場合/営業所に係る登記簿謄本又は登記事項証明書等
・賃借物件の場合/営業所に係る賃貸借契約書の写し又は使用承諾書等
・契約書の使用目的を確認してください
賃貸借契約書に「飲食店営業に限る」「風俗営業を目的とする使用を禁ずる」といった条項があると、契約書の写しを添付しても権原を疎明したことになりません。契約前に、風俗営業を営むことを貸主に伝え、契約書の文言に反映してもらってください。
・転貸の場合は特に注意
サブリース物件や又貸しの場合、所有者から転貸の承諾を得ていることを示す書類が別途必要になります。愛知県警察も、所有権を有している者との契約内容(直接的又は間接的)によって必要な書類が異なるとしています。
・建物の登記事項証明書が取得できるか(未登記建物ではないか)
・登記上の所有者と、契約の相手方が一致しているか
・増築部分が未登記になっていないか
古い雑居ビルでは、増築部分が未登記のままというケースがあります。図面と現況、登記が食い違うと、申請の段階で説明を求められます。
| 順番 | 確認すること | 確認先 |
|---|---|---|
| 1 | 用途地域 | 市町村の都市計画課、都市計画情報のWeb地図 |
| 2 | 保全対象施設の有無 | 現地調査、地図、市町村の施設一覧 |
| 3 | 建物の構造・面積 | 物件図面、内見 |
| 4 | 契約条件 | 不動産会社・貸主 |
| 5 | 最終確認 | 営業所を管轄する警察署の生活安全課 |
1と2は、申込みを入れる前に済ませてください。3以降は申込み後でも間に合いますが、契約書に押印する前に終えておくのが安全です。
・不動産会社の「風営OK」を鵜呑みにしないでください。不動産会社が確認しているのは貸主の意向であって、風営法上の可否ではないことがあります
・前の店が風俗営業をしていたことは、根拠になりません。許可は営業者ごとに受けるものです。周辺状況が変わっていれば結論も変わります
・申込みの前に、住所だけでも調べてください。用途地域と周辺施設は、住所が分かれば机上で概ね判断できます
・契約書に風俗営業を営む旨を明記してもらってください。後から追加するのは難しくなります
・迷ったら契約前に相談してください。「この住所で許可が取れるか」という確認だけでも対応しています
・第一種地域では風俗営業も深夜酒類提供飲食店営業も営めない
・保全対象施設との距離は、営業の種別と用途地域で変わる
・第五種地域(名古屋市の指定された丁目・番)には距離規制がない
・客室を2室以上作るなら、1号営業では1室16.5㎡以上が必要
・賃貸借契約書の使用目的に風俗営業を営む旨を反映してもらう
・用途地域と保全対象施設は、申込みを入れる前に確認する
物件は、風俗営業の開業で最も取り返しがつかない部分です。気になる物件が見つかった段階で、住所を教えていただければ確認できます。契約前のご相談を歓迎しています。
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